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フランス在住、“父親休暇”の体験者が見た「男性育休『義務化』」とは

 
男性育休義務化は、子を持たない人も含め「休むことが許されない」日本の働き方を問い直す機会になるはずです。大いに盛り上がり、賛成反対入り混じっての侃々諤々の議論となることを願っています。
Huffingtonpost 2019年06月13日 10時21分 JST | 更新 2019年06月13日 10時21分 JST
 
〇盧蟒膸 フランス在住ライター
 
 自民党の有志議連が提唱する「男性育休義務化」が話題になっています。
 私の住むフランスでは、子どもの誕生時に11日間取得できる「父親休暇」を、サラリーマン男性の7割が取得しています。私の夫も二人の子どもの誕生時にその休暇を取得し、大変な時期を夫婦揃って乗り越えるため、とても大きな恩恵を受けました。
 その経験とフランスでの実例から見て、今回の育休義務化について考えるところをまとめたいと思います。
 
□義務化「議論」は政治主導で
 
 まず私は、男性育休義務化を「議論すること」に賛成です。
 「義務化」という強い言葉での議論喚起は、男性の育児参加が日本社会の重要議題であると世間に広く知らせる効果があります。
 議連の方々の狙いも、男性育休義務化を実現することに加え、この「男性の育児参加の必要性を知らしめること」にあるようです。
 現代の日本社会は、女性の労働力を前提とした経済システムが確立し、出産適齢年齢の世帯の多くが共働きとなっています。『お父さんは外で仕事・お母さんは内で家事育児』という昭和的な性別分業のあり方は、社会一般モデルとして通用しなくなっています。
 その一方、保育園など家庭外保育手段は不足し続け、実家を頼れない孤立した子育てが常態化しています。祖父祖母も現役でフルタイム勤務をしていたり、互いに遠くに住んでいたりで、年に数回しか会わない、というケースも多いです。
 この状況で子どもを育み守る大人の数を確保するために、父親が育児に関わることは、もはや必要不可欠の流れです。
 
〇育児は誰が担うもの?
 
 それなのに、労働現場ではいまだに性別分業社会の固定観念が強く残っています。
 長時間労働の悪弊はなかなか改善されず、育休取得を望む男性を「使えない男だ」と批判する声も聞こえ続けます。
 とても残念な現実です。
 男性が自主的に育児に関わっていくための、時間も環境も社会的認識も、全く足りていないのです。
 その時間・環境・社会的認識を迅速に作って行くために、政治主導でできることの一つが、この男性育休義務化の政策論議だと思います。
 
□義務化すべきは「育休」か、それとも「産休」か?
 
 男性育休を義務化することそのものに関しては、「誰に」「何を」「どう」義務化するか、によって実現可能性が変わるので、私の賛成・反対もその内容に寄ります。
 そしてその内容は、「なんのために男性を休業させ家庭に返すのか」の目的によって変わります。
 義務化を論じる際には、この「なんのために」の共通認識を社会全体で固めることが大切で、制度の詳細はその後、目的への最短距離として考えていくべきものでしょう。
 議連の活動に関する報道を見ると、その目的は「企業や社会の男性の育児参加に対する意識改革を行なっていくこと」(6月5日ハフポスト記事より)とあります。
 これは言い換えると、「男性にもっと育児に参画して欲しい」「企業や社会はそれを後押しして欲しい」ということで良いかと思います。
 
〔写真〕男性の育休「義務化」を目指す議員連盟の設立総会で決意を語る松野博一元文科相 KASANE NAKAMURA/HUFFPOST JAPAN
 
 参考までに男性の育児参画が日本より盛んな国の制度を見ると、父親用の休業として、「産休」と「育休」の二種類を提示しています。
 この二つの違いはなんでしょうか?
 「産休」は母親産休に時期を合わせたもので、子の誕生直後の育児のスタートアップを父母同時に行うとともに、男性が「家庭運営のできる成人」として家にいることで、出産でダメージを受けた母親をサポートする狙いがあります。
 「育休」は、就業親が保育園など家庭外保育手段ではなく、自宅保育を望む・選ぶ場合の、保育者として子と共に過ごすめの長期休業です。
 並べて見ると「産休」と「育休」は、目的の違う休業であると分かります。
 勤労女性には産む性である身体的必要上と、性別分業社会で育児担当者とみなされてきた経緯から、この二つの休業制度が整えられてきました。
 一方、自ら出産せず、性別分業社会で育児担当者とみなされてこなかった男性には、長年「親の義務を果たすために仕事を休むこと」が想定されませんでした。
 父親として仕事を休む必要性が認められた際も、産む性ではないことから「産休」は当然スルーされ、母親に代わる保育者としての「育休」のみが整えられた、という経緯です。
 
〇男性も女性も、パパとママになるのは同じタイミング。
 
 しかし実際には産休は、産後の身体の回復の時間だけでなく、乳幼児との新生活を整備していく「育児のスタートアップの時間」という側面があります。そしてこれは親であれば、男女の性別問わず必要な時間です。
 この観点で考えると、今の日本で父親たちに義務化すべきはどちらでしょう?
 「産休」でしょうか、「育休」でしょうか、その両方でしょうか?
 
□国家戦略だったフランス版「男性産休」
 
 私の在住するフランスでは、男性に11日間与えられる「父親休暇」がある、と冒頭で書きました。これはまさに、女性の「産休」に相当するものとされています。
 目的は前述の通り、父親としての育児のスタートアップと、出産でダメージを受けた母親のサポートです。
 休業中の父親の収入補填も女性の産休と同じく、医療保険から支給されます。
 なぜフランスでこの制度がスタートしたかというと、それは現在の日本とまさに同じく、「父親が育児をする」ための時間・環境・社会認識が整っていなかったから。
 男女ともに取得できる育休制度があっても、その取得は日本同様母親に偏り、父親の方は全く伸びない状態が続きました。
 それを変え、父親の育児参画を可及的速やかに促進するために考えられたのが、父親にも「産休」相当の時間を与える策でした。「育児のスタートアップ時間を父親に与えよう」と、国家戦略として導入されたのです。
 その際の制度設計は、取得可能性を最優先して考えられたそうです。
 
〇11日間の「父親休暇」があるフランスでは、取得期間延長の議論が進められています
 
 例えば取得期間は、職場が一時欠員を許容できる長さ(11日間)で設定。企業への負担を可能な限り減らすよう、休業中の給与補填は国が支払い、企業側負担はありません。
 また産休中の父親が実際に育児実務をこなせるよう、母親の産後入院中、助産師から父親・母親揃って育児指導をする仕組みも整えられました。
 この「男の産休」制度は2002年の施行直後から好調なスタートを切り、休業した男性の育児実績がデータで確認されていると、高評価を得ています。17年後の現在では、期間を3〜4週間に延長する議論が進められています。
 
□「父親研修」とセットの「産休」義務化
 
 フランスのこの例を見るにつけ、日本で男性育休を義務化するなら、私はまず「産休」に相当する数週間の休業とするのが良いと思います。
 最もハードな新生活立ち上げの時期に父母が揃って家庭にいられて、かつ労働現場での欠員の影響も長期育休ほど大きくない。
 加えて、現状の「育休」を取得したい人にはその権利を保障する、二階建ての制度が望ましいと考えます。
 その際には、この男性産休が女性の産休と同じくらい必要不可欠なものと銘打ち、福利厚生の一環として、企業側に従業員の取得を義務とさせることが必要でしょう。
 女性が産休を取ることに意を唱えることがナンセンスなように、男性の産休も考えてもらう。
 またこの休業期間中、男性が育児当事者としての自覚とスキルを養えるような対策も欠かせません。
 保健所などの公的機関で父親研修を開催し、育休手当の給付にはその研修に参加することを必須とする、手当申請そのものを父親研修で行うようにする、といった関連付けも考えられます。
 
□意識の低い男性に育休は無意味? → 育児意識を高めるために義務化が意味を持つ
 
 男性育休義務化の話では必ず、「育児意識の低い男性に育休を与えても意味がない」との指摘が上がります。
 私はこれは逆だな、と思います。
 育児意識の低い男性にこそ、それを醸成するための時間と手段を与える必要がある。育児意識の高い男性は、義務化されなくとも自主的に育休を取得するでしょう。
 
〇男性と女性がともに子育てできる社会に
 
 低い育児参画意識をより高くするために、義務化は意味があるのです。
 現在育休取得者は有権利者の約6%、育休でない短期有給休暇制度でこの誕生時に休業する父親たちは4割強と言われています。父親の半数以上は、子の誕生という人生の一大事にも通常通りに仕事を続け、休業してもほんの短期間という人がまだまだ多い。
 義務化が働きかけるのは、この「子が生まれても育児時間を取らない父親たち」。そうして「育児する父親」の絶対数が増えれば、もともと育児意識の高い父親たちには、より育児のしやすい社会になっていきます。
 人手不足が常態化する社会で、企業側の反対は当然のことと思います。
 ですが、この人手不足は、過去30年、未来の労働力となる子どもが生まれやすい・育ちやすい社会を整えてこれなかった官民の行動の結果です。
 育児しにくい労働環境を維持しながら、「自己責任で産めよ増やせよ」と、労働者側にばかり負担を求めてはこなかったでしょうか。
 明日の日本をより良い形で継続するには、官も民もそれぞれに荷を背負い、全員一致で「子どもが生まれやすい・育ちやすい」社会を作っていく必要があります。
 そしてそれは、可及的迅速に向き合うべき課題です。
 男性育休義務化は、その認識を日本全体で共有するための、大きなきっかけになる。そしてそれは、子を持たない人も含め「休むことが許されない」日本の働き方を問い直す機会になるはずです。
 大いに盛り上がり、賛成反対入り混じっての侃々諤々の議論となることを願っています。
 
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社説:副業推進 働く人のための制度に

2019/6/12 13:42 (JST)
©株式会社京都新聞社
 
 政府の規制改革推進会議が働き方改革を促す答申を出した。副業・兼業の普及に向け、複数の企業で働いた場合の労働時間の管理ルールを見直すといった内容だ。
 
 人手不足が深刻化する中、働き方の選択肢を増やし、離職などを防ぐのが改革の目的という。
 
 副業は、第二の人生の準備として中高年が経験を広げる機会となったり、企業の成長促進につながったりすると期待されている。
 
 だが、本業との両立に伴う長時間労働をどう抑制するかといった課題がある。多様な働き方の実現が長時間労働や非正規社員の増加を招くようでは本末転倒だ。
 
 本当に働く人のための制度になることが大前提である。丁寧な条件整備が欠かせない。
 
 厚生労働省が副業の容認を打ち出したのは2017年12月のことだ。国の「モデル就業規則」では、それまで副業や兼業は原則禁止とされてきた。
 
 一つの仕事にとらわれず、多様な働き方を求める人が増えている現状を踏まえて方針転換した。モデル規則を改定したが、企業の導入は一部にとどまっている。
 
 労働者の長時間労働を助長し、体調不良やパフォーマンスの低下につながりかねないためで、経団連も現状では慎重な立場だ。
 
 答申は、労働時間の管理ルールの見直しを提言している。
 
 現行の労働基準法では、労働時間は合算して算定し、時間外労働が発生すれば、副業先が残業代を支払う義務を負うことになっている。企業がこれらの負担を嫌い、副業や兼業に消極的になっている恐れがあると指摘する。
 
 しかし、現行制度を変えるのは容易ではない。労働時間の管理方法について厚労省は有識者会議で検討を進めているが、社員の健康管理の実効性が問われる。
 
 副業を求める労働者側の事情はいろいろであり、下手に緩和すると際限がなくなる恐れもある。政府は実態を把握した上で、明確な指針を示す必要がある。
 
 答申はほかにも、介護休暇の柔軟化などの提言が盛り込まれた。安倍晋三首相は「スピードこそ最も重要な要素」との認識で改革を進めるとしている。
 
 月内にも規制改革実施計画を閣議決定する方針というが、拙速は避けるべきだ。
 
 副業の容認は働く人のキャリア形成や自己実現はもちろん、企業文化や風土も大きく変えることになる。現場の声を十分踏まえた議論が欠かせない。
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 「宿日直の許可基準、現状より改悪は許されず」、全医連

第12回シンポジウムで公表、「働き方改革に背く」
2019年6月9日 橋本佳子(m3.com編集長)
 
 全国医師連盟は6月9日、都内で開催した第12回シンポジウム「医師の働き方〜先行事例の紹介と、これからの展望」で、「宿日直の許可基準、現状より改悪することは許されない」という声明を公表した。近く厚生労働省が公表予定とされる、宿日直に関する通知をけん制することが狙い。
 
 声明では、現状では宿日直体制で時間外診療を行っている“違法状態”の病院が少なくないと指摘。宿日直基準の見直しが文言や医療行為の現代化に留まるのであれば問題ないが、宿日直中に容認される「通常業務の頻度」と「労働時間の上限」の設定次第では、現状の“違法状態”を合法化することになると問題視している。宿日直基準の緩和は、医師の働き方改革の方向性に真っ向から背くことになる上、これまでの裁判所の判決とも整合性が取れなくなると指摘する。
 
 全医連代表理事の中島恒夫氏は、「介護老人保健施設や介護医療院などは宿日直で対応できるだろうが、2次救急の告示病院だったら、宿日直で対応できるわけはない」と指摘した。「勤務医が過重労働で心身を壊され、過労死したら、誰がその病院に、その地域に後任として赴くのか。だからこそ、仲間を失いたくはない」と述べ、真の医師の働き方改革を進める必要性を訴えた。
 
全国医師連盟代表理事の中島恒夫氏
 宿日直に関する厚労省通知では、宿日直許可を取り消さない宿日直の通常業務の日数や労働時間の上限が示されている。声明が言及した「裁判所の判決」とは、奈良県立奈良病院の2人の産婦人科医が、未払いだった「時間外・休日労働に対する割増賃金」の支払いを求めた裁判での大阪高裁の判決で、通知の基準が大きく影響していると考えられるとした(『「宿直扱い」違法、最高裁不受理で確定』を参照)。
 
 声明では、夜間診療・休祝日診療を宿日直扱いすることで、以下の3つの大きな問題が生じると指摘している。
1.手薄な人員による医療提供体制
2.宿日直業務時間を労働時間にカウントしないことによる長時間労働の隠蔽
3.正当な時間外労働手当を支払わず、些少な宿日直手当で誤魔化している労働基準法違反
 
 シンポジウムでは、「先行事例」として、淀川キリスト教病院(大阪市)産婦人科の柴田綾子氏と、仙台厚生病院(仙台市)の医学教育支援室室長の遠藤希之氏が講演。産業医の林恭弘氏が労基法の基礎知識について解説した(記事は、別途掲載)。
 
 「医師の働き方改革は、病院管理者の働かせ方改革」
 「先行事例」の紹介に先立ち、中島氏は「医師の働き方改革について、勤務医の立場からの議論が少ない」とシンポジウムの企画趣旨を説明。その上で、「医師の働き方改革は、病院管理者の働かせ方改革」として、管理者に改革を呼びかけるとともに、勤務医に対しては自己防衛する必要性を訴えた。
 
 中島氏は、「過労死隠しも犯罪」、「賃金不払いも犯罪」と指摘。「時間外労働や休日および深夜労働に対する割増賃金の未払い」は、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」、ひいては医道審議会で処分の対象になり得ると警鐘を鳴らし、病院管理者の自覚を促した。
 
 この3月に報告書をまとめた厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」について、中島氏は「現状は働き方改革的に問題なので、現状を合法化する」といった議論が展開されたと見る。病院管理者の代表は、(1)「労基法違反を前提にしなければ病院を経営できない」ことをはっきりと発言する、(2)そのツケを自分の病院の勤務医にではなく、行政に対してぶつけるべきだった、(3)法律違反を前提とした労務体制でしか医療を提供できないのであれば、厚労省にこれまでの失政を認めさせ、国民に謝罪させる――という対応をすべきだったと問題視した。
 
 医師が過重労働になる要因は複数あるとし、主治医制からグループ制(複数主治医制)など運営体制を見直すとともに、勤務医自身も労働契約書の内容を確認するなど「自己防衛策」が必要だとした。研修医、研修修了後に分け、注意点も提示した。
 
(提供:中島氏)

 

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 境真良さん「好況アニメ産業が抱える「ブラック労働」 クオリティ劣化でブーム終了に繋がる懸念も」

弁護士ドットコム 2019年06月08日 09時44分
 
〔写真〕好況アニメ産業が抱える「ブラック労働」 クオリティ劣化でブーム終了に繋がる懸念も
GLOCOM客員研究員の境真良氏(2019年4月/弁護士ドットコム撮影/東京)
 
『サマーウォーズ』や『時をかける少女』などで知られるアニメ制作会社「マッドハウス」がこのほど、労働基準監督署から是正勧告を受けた。制作スケジュールやスタッフィングなどを管理する制作進行の担当者について、労使協定で定められた上限を超える違法な時間外労働と割増し賃金の未払いがあったというものだった。
 
これまでも、アニメーターの労働環境について過酷だという指摘がされていた。ここにきて、多くのヒット作を世に出してきたマッドハウスの労働問題が浮上したことから、インターネット上では、「日本のアニメ業界やばい」という声が再燃している。はたして、問題の本質をどう捉えるべきなのだろうか。
 
コンテンツ産業にくわしい国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)客員研究員の境真良氏は「アニメ市場は好況にあるが、現場の負担を減らす仕組みを整えないと、品質劣化でブーム崩壊につながる恐れもある」と話す。境氏に語ってもらった。
 
●アニメーターは労働集約性が高い
今年のNHK朝ドラ「なつぞら」にも取り上げられているアニメーターですが、日本のアニメの国際競争力に注目が集まる一方で、その労働環境については長年、懸念されてきました。
 
アニメの制作工程を一言で説明するのは困難ですが、ザックリ言うと、私たちが目にする動画は無数の静止画の連続表示で作られていて、その静止画を描いているのが、アニメーター(原画、動画担当全般)です。
 
アナログ時代には、一度描いた絵を部品的に使い回したり、目で見て問題ない程度まで静止画の量を省いたりして、省力化を図ってきました。制作工程がデジタル化され、静止画の自動生成技術を補完的に用いるなどして、省力化がさらにすすめられてきました。
 
それでもこの部分に大きな労働集約性(人間の手による仕事が多いこと)がみられることは事実です。ですから、アニメ産業の中で人数的に多数を占めるのは、アニメーターということになります。
 
●アニメ産業は景気がいい時期にある
たしかに、アニメーターは、「給料が安い」とか「生活が不安定」とか「拘束時間が長い」とかいう話が語られてきました。
 
これについて一つずつ考えてみましょう。
 
昨年、文化庁メディア芸術連携促進事業として、大日本印刷(DNP)と日本アニメーター・演出協会(JAniCA)が、「アニメーター実態調査2019」(2019年調査)を実施しました。
 
(参考)調査概要の報告(JAniCA)
 
2019年調査によると、まず、「給料が安い」については、アニメ産業の全体値ではありますが、35歳以上に限ってみれば、全産業平均値を超える収入があります。そういう意味では、「給料が安い」とまでは(基準次第ながら)いえません。
 
ただ、その原因ですが、アニメ産業全体の成長が現在、極めて順調だという理由によります。
 
日本動画協会が2017年におこなった調査「アニメ産業レポート2018」によれば、関連したライブなども含む広義のアニメ産業市場全体でみれば、2009年からずっと市場は成長基調にあります。特に、2014年からは海外事業が大きく成長するかたちでこれを押し上げています。つまり、こうした産業全体の成長による底上げがあっての現状だということです。
 
つまりは、現時点でアニメーターは「給料が安い」は、幸いにして正しくないようです(一部例外がありますが、それについては後ほど触れます)。しかし、それは今がアニメ産業にとって景気がいい時期だから、ということが言えると思います。
 
●業務委託ではたらく人が多い
ここで、収入の額だけでなく、「生活が不安定」「拘束時間が長い」という働き方の部分について、雇用形態から説明してみたいと思います。
 
一般に、雇用形態と聞くと、企業と雇用契約を結んで一定時間、一定の場所で、一定の範囲で企業の指示に従って労働する、というものを考えます。
 
この点においては、コンビニでアルバイトする人も、銀行員も同じです。しかし、アニメ産業の場合、そうではない人が少なくありません。それが業務委託契約に基づく請負業(業務委託)です。
 
2019年調査によると、就業場所は約68%が制作会社なのに、契約形態でみると企業の役職員(役員、正社員、バイト・パート含む)になっている人は約23%に過ぎず、約50%がフリーランス、約19%が自営業となっています。
 
企業の役職員は、当然その企業で就業していると仮定すると、全体の約45%はフリーランスまたは自営業であるにもかかわらず、制作会社に行って仕事をしているわけです。
 
●業務委託と雇用契約とのちがい
ある人がフリーランスや自営業として業務委託で働くか、役職員として雇用契約によって働くかで立場はどう変わるのか、あるいは企業側はどうちがうのかというと、大きく3つあげることができます。
 
まず、雇用契約で働く場合に受けられる社会保険は、業務委託だとありません。一番問題になる健康保険については、JAniCAを通じて文芸美術国民健康保険に加入することができます。加入しなくても、地域での国民健康保険がありますので、問題はありませんが、雇用保険はありません。
 
次に、収入の額ですが、職員であれば適用される最低賃金制度の適用が業務委託にはありません。これについては後で説明します。
 
最後に、これが本質的なところでしょうが、役職員であれば作品制作や業務がないときでも、往々にして、時間拘束と引き換えに一定の収入が発生しますが、業務委託は作品や各話毎の担当する一定の仕事が終わればそれで収入が入るあてがなくなり、次の仕事が決まるまで収入の保証はありません。アニメーターについて言われる「生活が不安定」というのは、ここのことだと思います。
 
このちがいは、企業側にとっては逆になります。
 
つまり、制作業務のためにスタッフを確保しても、雇用契約によれば負うことになる社会保険の企業負担部分を負担しなくてよいことになり、支払額も最低賃金制度の適用を免れ、さらに仕事がなければそのスタッフをリリースすればいいだけで、社員を食べさせるために仕事を探さなきゃと必死になる必要はない、ということになるのです。
 
●業務委託が広がっているわけ
なぜこういうことになったのかというと、「作品市場」と「労働市場」の相関です。「作品市場」というのは私の造語ですが、「作品の需給関係」と考えてください。
 
アニメ産業が成長しているときには、「作品市場」は作れば儲かる需要過多な状況ですから、労働市場は需要過多となり、スタッフを安定的に確保すべく、雇用型の形態が主流となります。
 
しかし、いったんアニメブームが過ぎて仕事がなくなると、スタッフの確保は企業にとって負担になりますので、スタッフには社員ではなくフリーランス、あるいは自営業になってもらい、アニメ制作のプロジェクトが立ち上がれば、そのとき招集されて仕事をする、という形態が合理的になります。
 
これはアニメを映画と読み替えれば、日本の映画産業で先行して起きていた動きと同じですから、その影響もあったのかもしれません。
 
一度こういう流れになると、「作品市場」の業況後退の波をスタッフは個人としてもろにかぶることになります。制作企業側の品格によっては、その不安定さだけでなく、支払額を最低賃金より低く絞り込んでくることも、契約以上の要求をしてくることもあるでしょう。
 
日本のアニメ産業は幾度かブームを経験して、そのたびに、ブーム後の冷え込みを経験しています。アニメーターの労働環境にかかる問題は、その波の中で次第に形成されてきたものと言えます。
 
●海外市場が収益源となってきている
ところが今、そこに1つの波が来ているように思います。最大の変化は、海外市場が収益源になってきたことです。
 
日本のアニメ作品そのものは、1960年代から海外に輸出され、人気作品も早くから出ていました。しかし、その多くがかなり安い価格で取引されており、文化的評価もけして高くなかった。ジブリ作品が米国アカデミー賞長編アニメ部門の最優秀作品賞をとるような高い評価を表立って与えられるようになったのは、日本のアニメで育った世代が社会の中心に食い込んできた1990年代以降のものです。
 
それ以降も日本のアニメの人気は根強く、すでに触れたように2014年以降の大きな成長の結果、海外事業収益は市場全体の半分近くにまで迫ってきています。これまでの日本アニメ産業は、メディアが、映画、テレビ放送、DVDと変遷・多様化しても、結局は日本のファンの財布、つまり日本経済の総規模の一定量が成長の限界となっていました。
 
しかし、海外市場はこれと異なり、一度収益のチャンネルができれば、大きな成長が期待できる領域です。しかも、海外では日本のような全方位的なメディアミックス型のビジネス展開ができているわけではないので、これはアニメ作品そのものの収益増とみてよい数値でしょう。
 
これを支えるのが、NetflixやAmazonといったネット配信業者による主力商品としているような、日本製アニメへの高評価です。こうしたメディアの追い風は海外で日本のアニメの人気を再生産していきますし、さらに、海外での好評価は国内市場の再評価・再拡大にもつながっています。今のスタッフの収入状況は、これらが相乗効果的にアニメ産業の好調に結びついた結果と言えると思います。
 
●現場は「労働力過少状態」にある
しかし、好事魔多しと言いますか、好調なときほど、次の問題が潜んでいるともいえるのではないでしょうか。
 
ここまで説明してきた通り、アニメ産業の労働環境はさまざまな問題を孕んではいますが、「作品市場」の拡大で大きく改善されてきた。つまり、アニメ産業全体としての業況維持こそが、労働環境改善のカギです。
 
ですが、日本アニメ産業は幾度ものブーム崩壊を経験しています。もちろんエンターテインメントですから、「飽き」というのはあるものですが、多くの場合「飽き」の引き金になるのは過剰生産、そして品質劣化です。品質劣化の象徴が「作画崩壊」などにみられる見た目の劣化なのですが、「粗製濫造」という言葉があるように、その背後にあるのは、やはり過剰生産、そして事業計画・計画進行の軽視などによる制作現場の混乱や疲弊です。
 
マッドハウスのケースからも、今のアニメ産業の現場は労働力過少状態にあり、現場に大きな負担を強いている現状がうかがえます。とはいえ、熟練スタッフの供給がすぐ増えるわけではありません。人手があればいいだろうとばかりに、技能が未熟な人材を動員したり、他作品に専念中のスタッフを突然かき集めたりしても、いい結果につながるわけはありません。
 
クリエイティブの現場は、工場のように整然としたものではありえません。それゆえ、「拘束時間が長い」というのも肯けますし、そもそも生活と仕事の区別がつきにくく、非効率な過程も中にはあることを認めざるをえません。しかし、それらを呑み込める潤沢な時間的余裕を生むためにも、十分な人的資源が重要なのです。
 
●他の産業に人材流出させないためにも
さらに、2019年調査で気になるのは、この好況下にあっても、20代までの経験が浅い人材の収入は、産業全体の収入と比べて大きく見劣りするということです。
 
アニメの品質維持を長期に見込めば、人材のエコシステムは最大の重要事です。そのためには、有意な技能者が適切に経験を積み、あるいは選別されて、優れた技能者として成長していく仕組みである必要があります。
 
その最初のステージで収入が過少であるという理由で、たとえば地方出身で東京に移住したら生活が成り立たないとか、生活を維持するには実家の支援が必要だがそれば望めないとかで、将来の日本アニメ産業を支える存在になるかもしれない人材が、ほかの産業に流れてしまうことになれば、日本アニメ産業、あるいは日本文化における大きな損失です。
 
この点では最低賃金制度の問題も気になります。そもそも、賃金は労働市場で決まるべきものなのですが、一般的に雇用する側のほうが労働者よりも立場が強いため、雇用者が過度に賃金を絞る可能性が想定されています。これを防止するために、あえて設けられたのが最低賃金制度です。
 
ですから、単純に契約形態だけでみる限り、フリーランスや自営業への支払額は、法律上の「賃金」ではないので、この制度の対象外ではあります。この点について、だからアニメ制作企業が雇用契約に移行すべきだという意見もあるでしょう。
 
しかし、私は、契約上は業務委託型が維持されても全然かまわないと思うのです。ただし、もし賃金水準が問題なのであれば、その業務形態が実質的に短期雇用とみなしうるものについては、最低賃金制度の射程に入るとして、規制の運用をしていく。このほうが、「作品市場」の動向による作品数の増減も想定される中での制作企業と制作スタッフの間の負担バランスのとり方としては、より妥当だと思います。
 
ただ、それを言うなら、本来、業務委託型、あるいはフリーランスや自営業の制作スタッフは、その仕事の不安定さゆえに、雇用型のスタッフより高い報酬を得ていいわけです。そういう意味では、業務委託型が大きな部分を占めるのであれば、今は雇用型が多い他産業と同じかやや上回るレベルである制作スタッフ人材の収入も統計的にもっと伸びていいようにも思います。
 
●「人材の質量両面における充実に尽きる」
現状をみる限り、日本アニメ産業の最大の重要事は、海外市場をいかに強く、安定的な収益源にするかというところにあります。
 
本論と外れますので、ここではその手法論について触れませんが、いずれにせよ、その核心は品質の維持、つまり常に世界中のファンを飽きさせない名作を生みつづけることにあります。そのために一番重要なのは、人材の質量両面における充実に尽きます。
 
ここで説明した重点や問題点は、解決法に異論はあろうと思いますが、アニメ産業にたずさわる方々にとってわかりきっていることだと思います。今、国の関係機関もそれぞれの問題意識でアニメ産業に向かい合っており、マッドハウスの事案に見るように、それぞれが問題点の指摘や問題改善の支援に乗り出しています。
 
ただし、アニメ産業にはアニメ産業に特徴的な事情もあり、これまであまりアニメ産業に関わりがなかった、あるいは表面的な関わり方だった機関にとって、対応の仕方には他産業へのそれとは異なる工夫が必要でしょう。
 
労働環境をみる厚労省や公正取引委員会、アニメが世界で売れることを支持する経産省、総務省、そしてさらなる名作の誕生に向けて支援する文化庁などには、それぞれの視点や問題意識は大切にしながら、あくまで、それぞれの関与が総合的に作用することでアニメ業界の課題解決をどう後押しできるかという視座に立って、アニメ産業に向き合っていただければと思います。
 
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育休明けの転勤命令 カネカの対応に違法性はないのか
渡辺輝人  | 弁護士(京都弁護士会所属)
6/7(金) 11:50
 
 カネカが公式HPに育休明け配転に見解を表明した
 
 大手化学メーカー「カネカ」の男性労働者が育休明けに配転命令を受け、退職に至った件については、同じ子育て世代の男性の問題として、筆者も注目しているところです。
 
 この件については、当事者がツイッターで訴え始めて世論が目を向け、日経ビジネスの記事が当事者取材の先鞭をつけました(こちら)。ただし、会社の措置について違法性はないことを前提とした記事の記載は気になりましたので後述します。
 
 世論の盛り上がりを受け、カネカが公式HPで「当社元社員ご家族によるSNSへの書き込みについて」というコメントを発するに至り(こちら)、この会社で、当該問題が生じていたこと自体は確定しました。
 
事実関係の整理
 上記日経ビジネスの記事、カネカのコメントを前提に、労働者(夫)を中心にして、事実を整理すると以下のようになります。労働者の夫婦は40代で妻も有職の共働き夫婦のようです。
 
2019年1月 妻出産。長女生まれる
時期不明  カネカが夫の異動の必要性を認識
3月25日 夫が育休入り(4月19日までの予定)
4月中旬  夫婦が新居に引っ越し、子ども保育園入所
4月22日 月曜日。夫が育休明け
4月23日 会社が夫に関西への転勤の内示
5月7日  夫が退職日を5月31日とする退職届
5月10日 妻の職場復帰予定日
5月16日 夫の転勤予定日
5月31日 夫がカネカを退職
 
日本は使用者の転勤を命じる権限が強い
 日本の使用者は、諸外国と比較して、労働者の配転(転勤)に関して、極めて大きな指揮命令権(配転命令権)を持つと言われます。このような強大な配転命令権は、終身雇用・年功序列賃金など、労働者が会社の一員としてのメンバーシップを保障されることと対比をなしてきたとされますが、近年は、労働者の地位の保障は脆弱化しており、使用者の指揮命令権の強大さとのアンバランスさが目につきます。指揮命令権の強大さと労働者の地位の低さのアンバランスは、いわゆるブラック企業では更に顕著な問題として現れます。
 
 このような強大な権限は、特定の労働者に対する嫌がらせや排除目的でもしようされるため、これまでも配転の違法性は裁判所で繰り返し争点となってきました。もちろん、このような目的が認定されれば、配転命令は違法となりますが、日本の裁判所は使用者の権限を強く認める方向の判断をしがちです。この点については、違法性を判断する裁判官が、キャリア公務員と同様で転勤ばかりなので、配転に関しての判断が甘くなりがちだ、という指摘は、労働事件を扱う弁護士の中では昔からあります。
 
 カネカも、上記コメントで「発令から着任までの期間は、一般的には1〜2週間程度です。転勤休暇や単身赴任の場合の帰宅旅費の支給といった制度に加え、社員の家庭的事情等に応じて、着任の前後は、出張を柔軟に認めて転勤前の自宅に帰って対応することを容易にするなどの配慮をしております。」としており、従来の裁判所の傾向に沿った正当性を主張していますが、何やら若き日の奥田民生さんが転勤族の悲哀を歌うユニコーンの名曲「大迷惑」を想起します。転勤を経験したことのない筆者としては、このような急な転勤を当然のように命じることを公式HPで堂々と書くこと自体が驚きです。
 
育児介護休業法10条、26条がある
 ただ、このような使用者の強大な配転命令権も、育児や介護を行っている労働者との間では、一定の修正がされています。育児介護休業法10条は「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」とし、同法26条は「事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。」としているのです。
 
 使用者がこれらに違反する配転命令をした場合は、違法となります。実際、高齢で身体障害を抱える父母(父は身体障害1級、要介護3、母は身体障害4級)の介護の必要性があるのに配転を命じた事例で、配転命令を違法とし、慰謝料の支払いを命じた裁判例があります(札幌高等裁判所平成21年3月26日判決 東日本電信電話事件)。
 
 新生児の育児と高齢の父母の介護を単純に比較はできないでしょうが、前者が身体的負荷も、精神的ストレスも、非常に高いものであることは論を俟たないでしょう。スタンダードな労働法の教科書でも「今後は、配転命令の権利濫用判断における『転勤に伴い通常甘受すべき程度の不利益』であるか否かの判断基準は、「仕事と生活の調和」の方向へ修正されていくことが予想されよう。」としています(菅野和夫『労働法』11版689頁)。
 
違法性がないとは言い切れない
 本件ではカネカが「着任日を延ばして欲しいとの希望がありましたが、元社員の勤務状況に照らし希望を受け入れるとけじめなく着任が遅れると判断して希望は受け入れませんでした。」と認めており、この点を含む会社の対応に、違法性がないとは言い切れないと考えます。現在、あきらかにされている程度の事実関係では、違法性の有無を判断できない、というのが妥当でしょう。
 
 少子化が深刻な社会問題となり、ワークライフバランスの確立が官民挙げての喫緊の課題となっている折ですので、一過性の問題とせず、突っ込んだ検討がされることを期待せずにはいられません。
 
 また、この件では、労働者が労働局などに相談して、なかなか上手く事が運ばない状態が現れていますが、労働行政は、警察権限を持っており、“真っ黒”な事案には機動的に対処しますが、裁判所がしないと違法/適法の判断が難しいような事案では、及び腰になることも多いです。一般論としては、この種の相談は、労働局よりも、労働者側の労働事件を専門に扱う弁護士(特に日本労働弁護団に所属する弁護士)にすることをお奨めします。
 
渡辺輝人
弁護士(京都弁護士会所属)
1978年生。日本労働弁護団常任幹事、自由法曹団常任幹事、京都脱原発弁護団事務局長。労働者側の労働事件・労災・過労死事件、行政相手の行政事件を手がけています。残業代計算用エクセル「給与第一」開発者。基本はマチ弁なので何でもこなせるゼネラリストを目指しています。著作に『残業代請求の理論と実務』(2018年 旬報社)。
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 ハイヒールは「纏足」 「#KuToo」海外でも大きな関心

2019/6/7 07:04 (JST)6/7 09:46 (JST)updated
©株式会社全国新聞ネット
 
太田清 47NEWS編集長
 
厚労省で記者会見するグラビア女優でライターの石川優実さん(右)=3日午後
 長時間履くと足腰を痛めることもあるパンプスやハイヒールの着用を「女性のマナー」として強制するのはやめてほしいと、日本でオンラインの署名集めが行われたことや、根本匠厚生労働相が国会でこうした動きにコメントしたことについて、海外の主要メディアは7日までに、相次いで報道、関心の高さをうかがわせた。 
 
 日本でのハイヒール着用問題が国際的に注目されるのは、日本が科学技術や経済で先進国であるにもかかわらず、男女の平等や機会均等の面で立ち遅れているとの認識が根強いことが背景にあるとみられる。 
 
 同日までに伝えたメディアは米紙ニューヨーク・タイムズ(以下いずれも電子版)、米CNN、米FOXニュース、英BBC放送、英紙ガーディアン、ロイター通信、オーストラリア公共放送、中東のテレビ局アルジャジーラなど。 
 
 このうちガーディアンは、グラビア女優でライターの石川優実さん(32)が、強制をやめるよう求める1万8800人超の署名と要望書を厚生労働省に提出。このキャンペーンが性暴力を告発する動き「#MeToo」と、「靴・苦痛」を掛け合わせ「#KuToo」とネーミングされていることを紹介。根本氏が5日の衆院厚労委員会で「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲かと思う」と述べたことも伝えた上で、「ハイヒールは現代の纏足(てんそく)のようなもの」「男性のスーツも含め服装の規制を緩めるべき」などとする運動家の声を伝えた。 
 
 BBCは英国でも、金融会社で働くことが決まった女性がハイヒール着用を求められ、同様に反対署名集めを始め、会社側に方針を撤回させたことを伝えた。 
 
 ニューヨーク・タイムズは「ハイヒールを履くのが嫌だったり足の痛みに耐えかねたりする女性は、ハイヒールが必要とされない職場に移るしかないが、これは女性に限った話で男性は(ヒールの低い)快適な靴で過ごしている」と指摘。また、フィリピンやカナダのブリティッシュコロンビア州で、企業が女性にハイヒール着用を義務付けることを禁ずる法律が制定されたとも強調した。
 
 一方、アルジャジーラは、ジェンダーギャップ(男女格差)の大きさを国別に順位づけした昨年の世界経済フォーラム報告で、日本は149カ国中110位にすぎなかったと指摘。CNNも日本は男女平等の面で、先進7カ国中、最下位だとした。 
 
 オーストラリア公共放送は昨年のカンヌ国際映画祭で、「トワイライト」シリーズ出演で人気の米女優クリステン・スチュワートさんが、ドレスコードに反発しレッドカーペット上でハイヒールを脱いだことを紹介した。 (共同通信=太田清)
 
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最賃、せめて1300円に!

引引き上げで超格差社会の是正へ

〜経済評論家・森永卓郎さん


 

 

 

 

 最低賃金の改定審議が間もなく始まります。安倍政権は2020年代半ばまでに全国平均千円の目標を掲げていますが、経済評論家の森永卓郎さんは超格差社会化を是正するためにも、せめて時給1300円程度への引き上げを政治決断すべき――と話します。 

 アベノミクスは大企業と富裕層には莫大(ばくだい)な富をもたらしましたが、庶民にはほとんど恩恵をもたらしていません。特に非正規労働者の賃金はめちゃくちゃ低いままです。

 日本の企業の内部留保は450兆円、現預金の保有残高は260兆円と、〃カネ余り〃は過去最高を更新しています。一方、働く者の実質賃金は安倍政権下で5%も低下。「超格差社会」化が進行中です。

 これを是正するために、政府が唯一直接コントロールできる所得政策が最低賃金です。日本の最賃は全国平均874円。年間2千時間働いても170万円にしかなりません。世界的に見ても異常な低さです。

最賃引き上げへ政治決断を

 海外では最賃の引き上げが続いています。韓国では文在寅大統領が就任後2年間で30%近く引き上げ、時給8350ウォン(835円)にしました。韓国の制度では、週40時間働けば8時間分の「週休手当」が支払われますので、最賃は実質千円の水準です。

 日本もせめて今の1・5倍の1300円程度にすれば、非正規労働者の暮らしは今よりもずっとよくなります。それは、就職氷河期で正社員になれず、いまだに非正規から抜け出せないロスジェネたちを救うことにもつながります。10年かけて毎年5%ずつ上げるのです。この程度の上げ幅ならば企業も省力化で対応は十分可能。政治が決断すべきです。

 最賃引き上げは人手不足も解消します。首都圏の牛丼チェーン店の深夜帯は、既に時給1500円前後に上昇しています。高い賃金なら働こうという人はたくさんいます。慌てて外国人労働者を呼ぶのではなく、最賃を思い切って引き上げるべきです。 

経営者らの本当の狙い

 政府の経済財政諮問会議の民間議員(新浪剛史サントリーホールディングス社長など)らが5月、消費拡大効果などを訴え、最賃の「5%」引き上げを主張しました。

 おそらく彼らの狙いは、正社員を全て非正規労働者にしてしまおうということだとみています。そうするためには、今の最賃はあまりにも低過ぎる、ということなのでしょう。

 実際、「終身雇用はもう限界」(豊田章男トヨタ自動車社長)、「終身雇用を守っていくには難しい段階に入った」(中西宏明経団連会長・日立製作所会長)など、正規雇用をなくそうという企業トップの発言が相次いでいます。

暮らしと経済よくするために

 民間議員の新浪氏らが最賃引き上げを有効な経済政策だと本気で考えているのか、疑問です。本当に経済をよくしようというならば、消費税率の引き下げを言うべきです。ところが同氏は消費税10%へ予定通りの引き上げを主張するなど、経済を冷やす庶民増税を進めようとしています。

 暮らしと経済をよくするためにも、安定した正規雇用を守りながら、今は最賃の引き上げに全力を傾けることが求められます。

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男性の育休取得率は6.16% 「もはや、啓発では足りないのは明らかだ」

統計開始の1996年以来、女性が8〜9割で推移しているのに対し、男性は0〜6%台を低迷している。
 
中村 かさね (Kasane Nakamura)
Huffingtonpost 2019年06月04日 14時38分 JST | 更新 17時間前
 
※グラフが見られない方はこちらから。
 
2018年度の男性の育休取得率が6.16%で過去最高となった。厚生労働省が6月4日に雇用均等基本調査の速報値を発表した。
 
厚生労働省の雇用均等基本調査によると、1996年度の統計開始以来、男性の育休取得率は少しずつ増加傾向にあるものの低迷している。
 
2002年には、少子化対策として「2012年までに男性の育休取得率10%を達成する」ことを目指していたが、目標には遠く及ばないまま、「17年までに10%」「20年までに13%」と目標を先送りしてきた。
 
この間、女性の育休取得率は大幅に増加。1996年には49.1%だったが、2018年度は速報値で82.2%となっている。
 
「この体たらくを見て、甘い考えだと認識した」
男性の育休取得をめぐっては、自民党有志が6月5日に「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」を発足する予定だ。
 
 企業側は、日本生命が2013年に「目標100%」を掲げるなど、独自の取り組みが進められ、ワーク・ライフバランス社が取り組む「男性育休100%宣言」プロジェクトなど、まとまった動きも出てきている。
 
一方、育休からの復職直後に望まない転勤を命じられるなど、カネカによるパタハラ疑惑も浮上。
 
イクメンプロジェクトの座長を務める認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事は「企業側が男性育休取得に後ろ向きであるからこそ、男性が育休を取れないのだ」と指摘する。
 
イクメンプロジェクトは、男性育休など男性の家庭参加を進めるための啓発事業で、2010年に始まった。「当初は啓発を政策的に行うことで、男性育休取得率が上がり、それが男性の家事育児参加へと繋がっていき、男女共に子育てする社会の実現に資すると思っていた」と駒崎さんは振り返る。
 
だが、9年が過ぎても取得率は今も6.16%。
 
「この体たらくを見て、それが甘い考えだと認識した。もはや、啓発では足りないのは明らかだ。届出をした労働者は免除する等の例外対策を取りつつも、原則的には男性育休(産休)を企業への義務とする、男性育休(産休)義務化を推し進めるべきだ」と憤った。
 
女性副市長に、民間から初の就任。組織改革で人口減少を止められるか…超 速乾! 夏の清涼チノ(Ito-Yokado)亡くなった親友との「再会」に涙 『おもいでケータイ再起動』ららぽーとで開催(TIME&SPACE)
男女ともに本音で生きられる社会について考える失敗作と認めたら光が見えた。「クラフトボス ブラウン」が生まれ変わるまで
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中村 かさね (Kasane Nakamura)
 
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F35爆買い6兆円見直し、最低時給1500円etc―マスコミが報じない野党「共通政策」
志葉玲  | フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
Yahoo News 2019年6/3(月) 11:50
 
野党5党派と市民連合による「政策協定調印式」 筆者撮影
 
 立憲民主党など野党5党派*は、先月29日、夏の参院選の勝敗を左右する32の改選1人区で、30の選挙区で候補者一本化に合意した。残る2区も調整を続けるという。同日、5党派の党首らは、市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(以下、「市民連合」)が提出した13の政策へ署名。野党共闘の「共通政策」とした。この野党5党派と市民連合による「政策協定調印式」には、多くのマスコミ関係者が取材に来たにもかかわらず、ニュースとなるのは候補者一本化ばかりで、共通政策の具体的内容は、ほとんど報じられていない。そこで、筆者の独断と偏見で日本社会の課題と、それに対応する野党の共通政策を取り上げる。
 
*野党5党派は、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党、衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」。
 
○総額7兆1480億円の米国産兵器爆買いを精査
 共通政策の中でも、タイムリーな内容が「膨張する防衛予算、防衛装備について精査」というものだろう。先日、来日した米国のドナルド・トランプ大統領が安倍晋三首相との会談後の会見で、米国産ステルス戦闘機F35について「日本は105機購入すると発表した」と満足げに語った件についての筆者執筆の記事は、大変大きな反響があった(関連記事1、2)。
 
 F35は、今年4月に航空自衛隊三沢基地所属の機体が青森県沖で墜落したばかりで、搭乗していた自衛官パイロットも行方不明のまま。墜落原因の究明もできていない。その一方で、既に購入決定分に加え、追加購入分を合わせると実に147機のF35を爆買いするという安倍政権の方針に変更はなく、1機およそ110億円という機体の価格に加え、維持管理費も含めると、総額は約6兆2000億円という莫大な額となる。
 
 さらに米国と北朝鮮が対話を模索する中で、米国産のミサイル防衛システム「イージス・アショア」2基で約6000億円、やはり米国産のE-2D早期警戒機9機も約3480億円で購入するとし、安倍政権の米国産兵器の爆買い総額は約7兆1480億円に達する。一括で支払うわけではないにしても、とんでもない額である(国債発行分を除いた日本の年間の国家予算は60兆円程)。社会保障費を削減する一方で、消費税率を10%に引き上げようとしている安倍政権は、米国産の兵器の爆買いには、湯水の様に税金を使うというわけだ。こうした中、野党5党派が「膨張する防衛予算、防衛装備について精査」することを共通政策に掲げたことは特筆に値するだろう。
 
市民団体「武器取引反対ネットワーク」の資料より
○時給1500円、1日8時間働けば暮らせるようにする
 多くの有権者にとって、選挙における関心事は景気対策であろう。今年1月の月例経済報告で、安倍政権が「戦後最長の景気回復」にあると発表した一方で、翌2月の日経新聞の世論調査では、8割の人々が「景気回復を実感していない」と回答している。人々が景気回復を実感できない大きな理由の一つに実質賃金(生活物資の物価水準で除して、実際上の購買力に換算した金額)が上がっていないことが大きいのだろう。実質賃金の長期的な推移を見ると、むしろ安倍政権以前よりも実質賃金は低下している。同時期の先進諸国が実質賃金が上昇している中、相対的に日本の人々は豊かになっているどころか、むしろ貧しくなっているとすら言える。
 
実質賃金指数の推移の国際比較 出典:全労連 http://www.zenroren.gr.jp/jp/housei/data/2018/180221_02.pdf
 「健康で文化的な生活」を保障するには、日本弁護士連合会が昨年4月に「最低賃金額の大幅な引上げ」を求める声明を発表した通りであろう(関連情報)。では、現在、時給874円(全国平均)である最低賃金をいくらまで上げればよいのか。安倍政権は、「働き方改革実行計画」(2017年)で、年3%程度引き上げて全国平均1000円を目指す目標を掲げている。だが、京都総評(京都地方労働組合総評議会)の調査によれば、1人暮らしの25歳の男性が人間らしく生活するために必要な費用は1639円だという(関連情報)。この数字に近いのが、野党5党派の共通政策だ。「地域間の大きな格差を是正しつつ最低賃金『1500円』を目指し、8時間働けば暮らせる働くルールを実現し、生活を底上げする経済、社会保障政策を確立し、貧困・格差を解消すること」としている。
 
 一方、日本商工会議所(日商)など中小企業3団体は先月28日、最低時給1000円への引き上げる政府方針に「強く反対する」との声明を発表した。
 
 
「経営基盤が脆弱で引上げの影響を受けやすい中小企業の経営を直撃し、雇用や事業の存続自体をも危うくする」というのがその理由である。時給1000円であっても年収200万円程度のワーキングプアであり、日商などの声明にはネット上でも「まともな給料を払わない企業は潰れた方がいい」等の批判が相次いだのであるが、確かに最低賃金の引き上げと共に中小企業支援策も充実させていく必要があるだろう。これに関して、野党の共通政策では具体的な文言はないが、共産党は大企業が下請け企業を搾取するような取引を適正化させるなど、様々な具体策を提言しており興味深い。
 
 
野党5党派の共通政策 市民連合提供
 
 
○保育、教育に関する予算を飛躍的に拡充
 先月29日、自民党衆院議員の桜田義孝・前五輪相が少子化問題に関連して「子供を3人くらい産むようお願いしてもらいたい」と発言し、SNS等のネット上で大きな反発を招いた。これらの反発の背景には、個人、特に女性の自己決定権に国が指図するような気持ち悪さに加え、子育て・教育への支援が整っていない中で、「子どもが欲しくても、育てられない」と多くの人々が感じていることがある。
 
 少子化の最大の原因は、国立社会保障・人口問題研究所の調査で明らかにされているように、「教育や子育てにお金がかかりすぎるから」だ。安倍政権の主導の下、先月10日に、低所得層の大学や短期大学などの学費に公的支援を行うとする「大学修学支援法」が成立したが、同法では「年収270万円未満が目安」「年収380万円未満にも一部支援」であるなど厳しい所得制限があり、中間層は学費支援の対象外だ。報道では「大学無償化法案」とも呼ばれていたが、実際には「無償化」とは程遠い内容だ。
 
 夫婦のうち約48.8%(総務省調べ)が共働きである中、待機児童問題も相変わらず深刻である。共同通信の調査によれば、昨年4月時点で待機児童が100人以上の自治体を対象に、認可保育所等の今年4月入所の状況を尋ねたところ、待機児童の大半を占める0〜2歳児の約4分の1が定員からあふれ入所できなかったという(関連情報)。安倍政権は、幼児教育・保育の無償化を今年10月から行うとしているが、むしろ待遇改善で保育士不足を改善することこそ、待機児童問題の解消のために必要だろう。保育士の資格を持ちながら、保育士の仕事をしていない「潜在保育士」は全国で約80万人いるとされ、その大きな理由が過度の業務負担と低賃金だからだ。
 
 これらの問題を解消していくには、子育て・教育への公的支出を増やす必要があるが、GDPに占める教育への支出割合で、OECD加盟34カ国中で日本が最低という状況がここ数年続いている。そのような状況において、「保育、教育、雇用に関する予算を飛躍的に拡充する」という野党5党派の共通政策は大きな意味を持つだろう。
 
○沖縄関連、脱原発、税制見直し等
沖縄県名護市の海岸に墜落したオスプレイ 2016年12月 筆者撮影
 野党5党派の共通政策の全てについてコメントすると長くなるので、本稿では割愛するが、上述してきたことの他にも、筆者は注目している。例えば、基地問題。沖縄県名護市の辺野古・米軍新基地の建設は、昨年秋の知事選、今年春の県民投票で反対の民意が示された。共通政策で「辺野古米軍新基地の建設を直ちに中止」とあることは評価できる。また、日本の主権を著しく蔑ろにしている日米地位協定の改定は、米軍犯罪や騒音、事故等の基地問題への対応に不可欠だ。共通政策が「日米地位協定を改定」を明記していることは重要だ。
 
 脱原発や、太陽光や風力などの再生可能エネルギー普及の重要性については、筆者は繰り返し強調し、いくつも記事を配信してきたテーマなので、ここでは説明を省く。共通政策で「原発ゼロ」「再生可能エネルギーを中心とした新しいエネルギー政策の確立」とあるので、その実現を期待したい。
 
 「消費税率引き上げを中止し、所得、資産、法人の各分野における総合的な税制の公平化」も重要だろう。消費税は特に低所得者層に負担が大きく、諸外国では食料などの生活必需品には課税しないことも多い。また、消費税の税収がそもそもの目的である社会保障の拡充というより、法人税引き下げの穴埋めに使われているとの野党側の批判も、毎年のように社会保障費が削減される中、説得力がある。憲法上の税の理念からすれば、「応能負担の原則」、つまり、より富める者がより多くの割合で納税すべきであって、税制によって生活の苦しい人々をより苦しくすることがあってはいけない。その点、野党5党派の「税制の公平化」は評価できる。ただ、政治団体「れいわ新選組」を立ち上げた山本太郎参議院議員は「消費税の廃止」まで踏み込んでいる。野党5党派にも、単なる消費税率引き上げ反対で良いのか、引き下げも検討するべきではないか、論議してもらいたいものだ。
 
○なぜ、マスメディアは野党の政策を報じないのか?
野党5党派と市民連合による「政策協定調印式」には、報道各社の大勢の記者達が集まったが… 筆者撮影
 本稿では末尾に、野党の「共通政策」とされた13の政策を転載するが、冒頭にも書いた通り、これらの政策をマスメディアはほとんど紹介していない。日本のマスコミ、とりわけ民放及びNHKは放送法で「公平・公正」「不偏不党」の報道姿勢が求められているものの、実際には、政府与党の政策と、野党側の政策では、報じられる頻度があまりにも違いすぎる。その大きすぎる差は、有権者の判断する材料を奪うことになっていると、メディア人達は自覚しているのだろうか?
 
 こうした問題については、以前、とあるメディアの幹部が筆者に語ったことが大変興味深かった。曰く、「政策論議で、政府与党だけでなく、野党側の主張をもっと紹介すべきじゃないかと私は思うんですが、若いスタッフ達は『野党の主張を紹介するとニュースが党派性を持ってしまうのでは?』なんて言うんですよ」とのこと。これには筆者も呆れるやら苦笑するやらだった。政府与党の主張を取り上げることも、また党派性を帯びるのだ。自公による政権が長期化し、メディア人達の感覚もそれが当たり前であるかのように麻痺しているのだろうか?だが、政府与党の主張を何の疑いもなく連日報じる一方、野党側の主張を軽んじるのであれば、言い方が悪いが、それは報道機関というよりも、政府与党のPR機関であろう。
 
 今後、選挙が近づくにつれ、野党側の政策もその詳細が明らかになってくる。メディア人達には、本当の意味での「公平・公正」「不偏不党」を意識して報道を行ってもらいたいものだ。
 (了)
 
野党5党派と市民連合が合意し、野党の「共通政策」とされた13の政策は以下の通り。
 
1 安倍政権が進めようとしている憲法「改定」とりわけ第9条「改定」に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くすこと。
 2 安保法制、共謀罪法など安倍政権が成立させた立憲主義に反する諸法律を廃止すること。
 3 膨張する防衛予算、防衛装備について憲法9条の理念に照らして精査し、国民生活の安全という観点から他の政策の財源に振り向けること。
 4 沖縄県名護市辺野古における新基地建設を直ちに中止し、環境の回復を行うこと。さらに、普天間基地の早期返還を実現し、撤去を進めること。日米地位協定を改定し、沖縄県民の人権を守ること。また、国の補助金を使った沖縄県下の自治体に対する操作、分断を止めること。
 5 東アジアにおける平和の創出と非核化の推進のために努力し、日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交正常化、拉致問題解決、核・ミサイル開発阻止に向けた対話を再開すること。
 6 福島第一原発事故の検証や、実効性のある避難計画の策定、地元合意などのないままの原発再稼働を認めず、再生可能エネルギーを中心とした新しいエネルギー政策の確立と地域社会再生により、原発ゼロ実現を目指すこと。
 7 毎月勤労統計調査の虚偽など、行政における情報の操作、捏造(ねつぞう)の全体像を究明するとともに、高度プロフェッショナル制度など虚偽のデータに基づいて作られた法律を廃止すること。
 8 2019年10月に予定されている消費税率引き上げを中止し、所得、資産、法人の各分野における総合的な税制の公平化を図ること。
 9 この国のすべての子ども、若者が、健やかに育ち、学び、働くことを可能とするための保育、教育、雇用に関する予算を飛躍的に拡充すること。
 10 地域間の大きな格差を是正しつつ最低賃金「1500円」を目指し、8時間働けば暮らせる働くルールを実現し、生活を底上げする経済、社会保障政策を確立し、貧困・格差を解消すること。また、これから家族を形成しようとする若い人々が安心して生活できるように公営住宅を拡充すること。
 11 LGBTsに対する差別解消施策、女性に対する雇用差別や賃金格差を撤廃し、選択的夫婦別姓や議員間男女同数化(パリテ)を実現すること。
 12 森友学園・加計学園及び南スーダン日報隠蔽(いんぺい)の疑惑を徹底究明し、透明性が高く公平な行政を確立すること。幹部公務員の人事に対する内閣の関与の仕方を点検し、内閣人事局の在り方を再検討すること。
 13 国民の知る権利を確保するという観点から、報道の自由を徹底するため、放送事業者の監督を総務省から切り離し、独立行政委員会で行う新たな放送法制を構築すること。 
 
志葉玲
フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。
 
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 中日新聞社説 就職氷河期 押しつけ就労では困る

 
就職氷河期 押しつけ就労では困る
中日新聞 2019年6月3日
 
 「就職氷河期時代」に就職が困難だった世代への就労支援策を政府がまとめた。今も苦境が続く世代だ、支援は必要である。だが、単に人手不足の業種への労働力としか見ていないのではないか。
 
 氷河期世代が就職に苦戦したのは決して自己責任では片付けられない。社会問題が背景にある。
 
 この世代はバブル経済が崩壊した直後の約十年間に高校・大学を卒業した。団塊ジュニア世代も含まれ人口が多く世代全体では約千七百万人いる。今、三十代半ば〜四十代半ばになった。
 
 バブル崩壊後、企業は新卒採用を絞ったため非正規で働く人や就職をあきらめた人がいた。採用試験に落ち続けるなどで心が傷つきひきこもりになった人もいる。
 
 今も非正規雇用は約三百七十万人、無業者は約四十万人いて低収入で家庭が持てず生活に不安を抱えたままの人もいる。新卒時に正社員採用から漏れるとなかなか正社員になれない新卒一括採用と終身雇用の負の影響を受けている。
 
 苦境はまだある。
 
 まもなく親の介護に直面するし独身だと自身の高齢期はひとりで生きねばならない。十分な年金を受け取れず生活保護に頼らざるを得ない人が増えるとみられる。
 
 政府はもっと早い段階で対策を打てなかったのだろうか。
 
 今回、今後三年間で集中的に取り組む支援策をまとめたことは歓迎するが、実効性に疑問がある。
 
 都道府県が経済団体や各業界と連携して採用の促進や処遇改善を後押しするというが採用は企業の判断次第だ。あくまでも働き掛けを行うにすぎない。職業訓練やこの世代を雇用した企業への助成金制度も既に実施しているが、目立った効果はでていない。既存の対策を集めただけでは心もとない。
 
 短期で資格を取得し就労につなげる支援も提言しているが、想定する業種は建設や運輸業だ。人手不足の業界へ就労を誘導し押しつけようとしていないか。
 
 そもそも氷河期世代といっても置かれた状況はさまざまだ。その実態把握なしで対策は進められない。就労や将来の希望を丁寧にくみ取らないと支援はうまくいかない。その上で実効性ある支援をきめ細かくそろえるべきだ。
 
 とはいえ既に中年期を迎えた。非正規でも生活できるような待遇改善は早急に進めねばならない。
 
 企業も人材をコスト削減の対象としか見ないのではなく「人財」として見直し、生かす多様な働き方を模索してほしい。
 
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