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 東京新聞 2017年9月9日 朝刊

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017090902000146.html

厚生労働省は8日の労働政策審議会に、収入が高い一部専門職を労働時間規制から外す「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)創設を柱とする労働基準法改正案などを一つにした「働き方改革」関連の一括法案要綱を示した。来週にも了承を得て、今月下旬に召集見通しの臨時国会に提出したい考え。労働組合や過労死遺族らが「過労死促進法」「定額働かせ放題」などと批判してきた見直しが多く盛り込まれた。野党の反発も必至だ。 (編集委員・上坂修子)

労政審で、労働側が最も抵抗してきたのが「残業代ゼロ」制度創設と裁量労働制の拡大。厚労省は要綱に盛り込み、二〇一九年四月の施行を目指す。

労基法は労働時間を「一日八時間」「週四十時間」と規定。労使協定を結べばこれを超えて働かせられるが、割増賃金を払わなければならない。「残業代ゼロ」制度は、高収入の一部専門職を規制の枠外とする。企業は残業代支払い義務を免除され、働く人は成果を出すまで過重労働を強いられかねないと懸念される。

厚労省は年収千七十五万円以上の金融ディーラーなどが対象と説明するが、具体的には法成立後に省令で定める。なし崩しに将来、対象が拡大しかねない。

働く人の健康を守る対策を強化するとして連合が求めた年百四日以上の休日確保義務は盛り込まれたが、日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎幹事長は「この程度では過労死は防げない」と言う。

裁量労働制も同じ問題点が指摘される。

仕事の進め方や出退勤を労働者の裁量に委ね、労使で定めた「みなし労働時間」分だけ賃金を支払う制度で、深夜や休日の労働以外、追加の残業代は払われない。

職種や業務内容によって対象が限定されているが、法案要綱は、企画や立案、調査を担う営業職などにも拡大するとした。総務省の労働力調査(今年七月時点)によると、営業職に就く人は約三百六十万人。

情報産業労連がITエンジニアを対象に実施した調査(一五年四〜五月時点)によると、繁忙期の労働時間が一日「十三時間以上」の割合は、裁量労働制の適用者が28%。そうでない人よりも10ポイント高かった。法案が成立すれば、長時間労働を強いられる労働者がさらに増える恐れがある。

これらの見直しは、企業の競争力を強化する成長戦略の目玉として、政府が一四年に打ち出した。安倍晋三首相が掲げた「世界で一番、企業が活躍しやすい国」は経営側の視点。労政審でも経営側は「企業の競争力、生産性向上の観点から見直しは必要」と訴えた。

労働問題に詳しい森岡孝二関西大名誉教授は「一番の問題は労基法の根幹の残業代支払い義務を免除すること。過労死をなくすという流れに逆行する。労基法の歴史で過去最大の改悪」と指摘している。


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               兵庫県立大学客員研究員
               大阪損保革新懇世話人  松浦 章
 
損保業界最大手の損保ジャパン日本興亜は、7月28日、社内文書「『働き方改革』の推進策(2017年10月ワークルール改定等)」において、営業課支社・保険金サービス課の職員に対して適用してきた「企画業務型裁量労働制」を2017年10月1日より「事業場外労働制」に変更することを明らかにしました。

同社は改定の背景について次のように述べています。
 
◆現在多くの社員に適用している企画業務型裁量労働制は、時間の使い方を個 
人の裁量に委ねる自由な制度である一方で、アウトプットと生産性の相関関  
係が把握しにくい側面があります。
◆生産性向上を実現するためには、各自の仕事に対する目的意識や優先順位付
け、仕事の進め方自体の変革が必要ですが、合わせて労働時間を客観的に把
握する仕組みも必要であり、「時間管理」と「多様な働き方」が両立するワー
クルールへの改定を検討してきました。
 
このように述べたうえで、営業や保険金サービス(自動車保険などの調査・支払業務)の職種に幅広く適用してきた「企画業務型裁量労働制」を見直すこととしたものです。
 
同社は現在、嘱託などを除く18,000人の職員のうち、入社4年目以上の総合系、専門系、技術調査系職員6,000人以上に「企画業務型裁量労働制」を導入しています。本来「企画業務型裁量労働制」の対象外であるはずの、営業や保険金サービスの職員に対しても、この制度が広く適用されているのが特徴です。

この問題については、3月22日の参議院・厚生労働委員会で、小池晃議員(日本共産党書記局長)が、「損保ジャパン日本興亜の人事部資料を見ますと、企画業務型裁量労働制の対象として『営業』とはっきり書かれております。これは明らかに対象外だと思います。実際、労働者へ聞いたところ、支店とか20人から30人程度の支社の一般の営業職にまで企画業務型が導入されている。これ直ちに調査すべきじゃないですか」と厚労省に調査・是正を求めていました。

また、2017年6月26日のSOMPOホールディングス(損保ジャパン日本興亜の金融持ち株会社)株主総会では、株主から「こんな問題で損保ジャパン日本興亜、SOMPOホールディングスの名前が国会で取り上げられるというのは、やっぱり企業イメージとしてマイナスではないかなと思います。ぜひ、法律違反というふうに見えるようなさまざまな制度はおやめになったほうが良いのではないか」との質問が出されました。

筆者自身もこれまで、さまざまな学会・研究会・集会等で損保業界の違法な労働時間制度を取り上げ、政府・日本経団連がすすめようとしている労働法制「改正」に警鐘を鳴らしてきました。働き方ASU-NETの本コラムにも2014/06/03、2017/01/17、20170402と3回にわたって掲載しています。
 
同社は、現行制度は違法ではない、改定するのは社内文書のとおりあくまでも「時間管理」と「多様な働き方」の両立のためだと言うのでしょうが、社会的な批判によって変更を余儀なくされたであろうことは想像に難くありません。同社の挙げる理由はともかく、違法な労働時間制度が改定されることに異論はありません。

ただ問題は、この改定によって違法性がなくなるわけではないということです。筆者は損保業界の「事業場外労働制」についても「企画業務型裁量労働制」同様、かねてより一貫してその違法性を問題視してきました。20170402の本コラムでは次のように指摘しています。
 
「問題にすべきは『企画業務型裁量労働制』だけではありません。同社では、裁量労働制の対象にならない入社4年未満などの営業・保険金サービス部門2,000人に「事業場外労働制」を適用しています。この制度は『事業場外で業務に従事した場合、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものと』(労基法第38条の2)みなすものです。しかし損保の営業や保険金サービスの仕事は、けっして労働時間の把握が困難なものではありません。営業であれば代理店を訪問することが中心業務です。行き先ははっきりしており連絡も簡単に取れる状況にあります。制度導入自体、労基法違反と言わなければなりません。この制度により、外出する日は、どれだけ働いても1日の労働時間は『みなし労働時間』の8時間しかカウントされないのです。結果、多くの労働者がサービス残業を余儀なくされています」
 
 
なお前述の株主総会でも、事業場外労働制について次のような株主の発言がありました。
 
「2014年1月24日の最高裁判決*で、海外の添乗員の人たちにやはり同じように事業場外労働制を適用していた旅行社に、それは違法だという判決が出ています。・・・・・・きちっと法律にそった労働時間管理、その中で長時間労働を縮小していく、なくしていく、そういうことが企業としても非常に求められているんではないでしょうか。ぜひ、本当に法律の趣旨にそった真摯な対応をお願いしたいと思います」
 
これに対して同社の笠井聡執行役員(人事部特命部長)は、「ご指摘のとおり法令に違反しないようにしていきたいと思っております」と回答しました。しかし、同社の今回の改定は、法令違反を解消するのではなく、別の「違法」な制度に乗り換え、法令違反を延命させるだけのものと言わざるをえません。
 
*阪急トラベルサポート事件
募集型の企画旅行の添乗業務に従事し、事業場外労働制が適用されていた労働者が、使用者に対して、時間外割増賃金等の支払い等を求めて提訴した事案。最高裁は、労働者が会社から貸与された携帯電話を携行していること、労働者の実際の行動については同人が記録する詳細な添乗日報によって把握することができること、などを理由に、「労働時間を算定し難いときに当たるとは言えない」として、使用者の主張を退けました。
 
株主総会の資料によれば、SOMPOホールディングスの櫻田謙吾CEOには1億2,200万円、損保ジャパン日本興亜の西澤敬二社長には1億400万円の役員報酬が支払われています。もちろん経営者としての苦労があることは否定しません。しかし現場の社員もやはり大変な苦労をして毎日の業務を遂行しているのです。「働き方改革」をこれだけ掲げるのであれば、何よりも社員の状況に思いをはせ、「生産性向上」の前に、まず労働基準法を遵守し適正な賃金を支払うことからスタートすべきではないでしょうか
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佐々木亮 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表

連合の「容認」やら「撤回」やらで動きが激しかった2週間

残業代ゼロ法案をめぐって連合が「条件付賛成」に転じたと報道されたり、その後、その方針を「撤回」したと報道されたりと、この2週間ほど目まぐるしく動きがありました。

・連合、批判から一転容認 「残業代ゼロ」修正を条件に

・「残業代ゼロ」容認撤回、連合が決定 中執委で会長陳謝

連合の公式見解では、条件を出してはいるものの残業代ゼロ法案への反対は変わらないとの説明がなされていましたが、一般的に言って、条件を出した場合、相手がその条件を飲めば賛成するのが普通なため、ああした報道になるのは当然です。

むしろ、連合の態度が非常に分かりにくい態度だったことは、動かしようのない事実だと思います。

とはいえ、いろいろありましたが、最終的に、連合が「条件」に関して政労使合意をするという方針を撤回したことで、一連の「騒動」は一件落着となりました。

どうしても残業代ゼロ制度を通したい日本経済新聞

そんな中、日本経済新聞は、連合の残業代ゼロ法案の「容認」姿勢を後押ししようと必死でした。

・「脱時間給」で綱引き 生産性向上に期待、長時間労働には懸念

しかし、連合が方針を変えたので、逆ギレしたのか、水野裕司編集委員の署名記事で、次の記事が掲載されました。

・誰のための連合か 「脱時間給」容認撤回

これが、また、上から目線の記事の割には、法案への理解が不足しており、極めてトンチンカンな内容なので、解説しておこうと思います。

法案に書いてないことを前提に自論を展開

まず、同記事では 

連合は本当に働く人のための組織なのか。「脱時間給」制度の創設を一度は容認しながら撤回した連合の姿勢から抱くのは、そんな疑問だ。

と記載して、いきなり不満をぶちまけます。

まぁ、残業代ゼロ法案を成立させたい日経新聞の立場的に腹が立つのは仕方ないとしましょう。

問題は、次です。

労働時間ではなく成果に対して賃金を払う脱時間給は、働いた時間では成果が測れないホワイトカラーが増えてきた社会の変化に即したものだ。

 出ました。脱時間給。

日経新聞は、「脱時間給」という独特の表現で残業代ゼロ法案を表します。

ただ問題は「脱時間給」という用語ではなく、「労働時間ではなく成果に対して賃金を払う」としているところです。

何度も指摘していますが、今回、残業代ゼロ法案と呼ばれている労基法改正案は、賃金制度を決める法案ではありません。

法案の条文を一個一個見ても、そんな内容は入っていません。

くどいようですが、この法案には、賃金制度をああしろ、こうしろという内容は、一切含まれていません。

いいですか。何度でも言いますよ。日経新聞の中の人、聞こえていますか?

ところが、水野編集委員の署名記事では、この誤った認識を前提に、「誰のための連合か」とやるのだから、目も当てられません。

定時前に帰った労働者に賃金を満額払うことは今でもできる

さらに、同記事では、

工場労働が中心だった時代と違い、経済のソフト化・サービス化が進んだ現在は、労働時間で賃金を決められるよりも成果本位で評価してもらいたいと考える人も増えていよう。効率的に働けば労働時間を短くできるメリットも脱時間給にはある。そうしたホワイトカラーのことを連合は考えているのか。

との記載もあります。

この「成果本位で評価してもらいたいと考える人」とこの法案は無関係です。完全に無関係です。

何度も言いますが、この法案は賃金制度や評価制度を決める法案ではないからです。

そして、「効率的に働けば労働時間を短くできるメリットも脱時間給にはある」ともありますが、ないです。全くないです。

この法案と、効率的に働いた場合に労働時間を短くできることとは、何の関係もありません。

現在の労働法において、効率的に働いた労働者が仕事を終えて定時前に帰った場合に賃金を満額払ったらダメだという規制は一切ありません。

したがって、日経の言うところの「脱時間給」という制度を導入しなくても、これはできるのです。

ただ、企業がやっていないだけです。

ちなみに、現行法が企業に対し規制しているのは、定時より長く働いた労働者に残業代・割増賃金を支払わせることです。

ところが、日経の言うところの「脱時間給」はこの残業代を払わないでいいという制度です。

つまり「脱時間給」が導入されて初めて可能になるのは残業代を払わないでいいということだけです。

お金は一定でいくらでも働かせることができる、これが日経が導入したくて、したくてたまらない「脱時間給」の実態です。

同記事では、「そうしたホワイトカラーのことを連合は考えているのか。」と上から目線で連合に向けて述べていますが、そもそも前提が間違っているので、連合としては困ってしまうのではないでしょうか。

賃金制度とこの法案は無関係

さらに、記事は続きます。

単純に時間に比例して賃金を払うよりも、成果や実績に応じた処遇制度が強い企業をつくることは明らかだ。企業の競争力が落ちれば従業員全体も不幸になる。連合が時代の変化をつかめていないことの影響は大きいといえよう。

 まず、ここで「単純に時間に比例して賃金を払う」としているのは疑問です。

我が国のいわゆる正社員と言われる人たちは、単純に時間に比例して賃金が払われているわけではありません。そもそもほとんどの正社員は月給制です。

もし賃金が時間に対して単純比例だとすると、労働日が異なる月ごとに賃金額が変わるはずですが、そうはなっていませんし、基本給以外の各手当の趣旨も、単純に時間比例で賃金額が決まっているものは少ないでしょう。

単純に時間に比例して支払われるのは残業代くらいしかないと思います。

要するにこの記事のこの箇所は、残業代を払うこと自体を攻撃しているわけです。

加えて、「成果や実績に応じた処遇制度が強い企業をつくることは明らかだ」とあるのですが、これ、今でもできます・・。

というか、やっている企業もたくさんありますよね。

日経こそ、時代の変化をつかめていないのではないでしょうか。

そして、何度も言いますが、今回の法案は賃金制度とは無関係なので、この記載で連合を攻撃している意味が分かりません。

極めてトンチンカンな記事

このようにこの記事は、徹頭徹尾、法案に記載されていない制度があることを前提に書かれています。

この後の箇所もツッコミどころが満載なのですが、全文引用になりかねないのでこの辺でやめておきましょう。

日経新聞の水野編集委員は、まずは法案を読んでから記事をお書きになった方がよいと思います。

それって、記者にとっては当然のことだと思うのですが、日経では違うんですか?
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             全国過労死を考える家族の会代表                                                                                    寺西 笑子


  私たちは、1991年の結成以来、過労死(過労自殺を含む)の労災認定を支援するとともに、過労死の防止のために一貫して取り組んできました。20146月には、多年にわたる私たちの願いが実を結んで、議員立法によって全過労死等防止対策推進法(略称・過労死防止法)が全会一致で成立しました。また、20157月には、「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会」を目指して、過労死等防止対策「大綱」が閣議決定されました。


この法律と大綱によって、国の責任で過労死の調査研究が行われるようになるとともに、過労死防止を目的に毎年11月を中心に全国各地で啓発シンポジウムが開催され、さらに年度を通して中学・高校・大学等で啓発授業が実施されています。そうした場で私たちは過労死被災者の家族として夫や妻、息子や娘の過酷な労働実態を語ってきました。


ところが、安倍内閣は、過労死防止法が成立した4日後には、「日本再興戦略 改訂2014」を閣議決定し、残業代ゼロとも定額ただ働きとも言われる制度(「高度プロフェッショナル制度」、以下「高プロ制」と略称)を創設し裁量労働制を拡大する方針を閣議決定しました。そして昨年9月には、安倍首相のもとに設置された「働き方改革実現会議」で、「時間外労働規制」による36協定の見直しがにわかに言い出しました。その結果、本年3月には、安倍首相と神津連合会長と榊原日本経団会長の間の「政労使合意」にもとづいて「時間外労働規制」を軸とする働き方改革の「実行計画」が発表されました。


昨年10月には、「第1回過労死白書」の公表と時を同じくして、電通の新入社員高橋まつりさんの過労自殺の労災認定が発表され、大きな反響を巻き起こしました。多くの若者が過労とストレスで潰されるまで働かされているなかで、政府が働き方改革を言い出した以上は、過労死防止に不可欠な残業の上限規制が実現するのではないかと期待されました。しかし、結局のところ、「政労使合意」にもとづく「実行計画」は、1日や1週間の残業規制には手をつけず、年間最長960時間、単月100時間、26か月平均80時間という過労死ラインの残業を法律で認める制度設計になっていました。


過労死は、実際には、労災認定された事案に限っても、脳・心臓疾患では月100時間以内の残業でも多発しています。また精神障害では80時間以内の残業でも多発しています。政労使合意の実行計画はこういう現実をまったく無視しています。連合がこれに合意したのは、過労死ゼロの流れに逆行し、働きすぎを助長するもので、私たちはとうてい納得できません。2年以上前から高プロ制の導入と裁量労働制の拡大が国会に上程されまま審議入りしていません。連合はこれについてはこれまで明確に反対してきました。 


なぜダメなのか。高プロ制は成果賃金制度ではなく、あらかじめ決められた額しか支給しない固定賃金制度に変えるものです。年収要件は1075万円以上という「一部の高所得者だけが対象」との印象を持ちますが、いちど成立すると年収要件はどんどん切り下げていくことが可能になり、経団連が要望する年収400万円以上まで適用される対象者が拡大しかねません。


裁量労働制は、実労働時間ではなく見なし労働時間によって時間管理を行う制度で、(国会に上程されている法案では企画業務型裁量労働制の)対象労働者が従来の労働者にとどまらず、「営業(課題解決型)などを行う労働者に拡大されることになっています。年収要件や年齢要件に縛りがなく、低・中所得者でも対象とされ、多数の若者が働かせ放題になるために過労死が多発する可能性があります。


連合はこれらについてはこれまで明確に反対してきました。ところが、連合執行部は、最近になって、ささいな修正要望と引き替えに、唐突に、高プロ制の導入と裁量労働制の拡大までも容認するに姿勢に転じました。報道ではこれが3月に出た「実行計画」と一体化されて、あらたな政労使合意案として、秋の臨時国会に上程されるとも言われています。


連合の修正要望は年間104日の休日を義務づけるとしています。週40時間制と年20日の年次有給休暇および16日の祝日を前提すれば、年間休日日数は140日(労働日数は225日)あるはずです。「高プロ制」のもとでは、労働時間の上限がなくなるのですから、年間104日以上の休日の確保が義務づけられたとしても、365日から104日を引いた261日は、何時間働かせても違法ではないことになります。仮に261日を毎日12時間働くと「労働時間」は年3132時間に達します。実際にはそんなことはほとんど不可能です。それは死ぬほど働くことを意味します。


働き方改革をめぐるこの間の政府レベルの議論は、もっぱら経済界の主導で進められてきました。過労死問題の当事者団体である私たち家族の会は、ヒアリングさえ受けたこともなく、完全に蚊帳の外に置かれてきました。他方、私たちは、高プロ制等に反対する連合主催の集会で挨拶に立って、残業ゼロの流れに逆行する残業代ゼロの労働時間制度に反対する立場を表明してきました。


 今回の連合の唐突な方針転換には傘下の組合からも批判や疑問が噴出していると言われています。森友学園問題、加計学園問題、大臣発言、都議選の結果などによって、安倍内閣の支持率が大きく下がっているもとで、労働時間制度の改悪も頓挫する可能性があります。そういうなかで、連合は安倍内閣を助けてどうするだろうかという見方もあります。


いずれにせよ、私たちは、連合が過労死ラインの残業容認と高プロ制の創設および裁量労働制の拡大を柱とする労働基準法改悪の推進役を買って出ることのないように要望します。連合は、働くものの生命と健康を守るという労働組合の原点にいまこそ立ち戻るべきときではないでしょうか。


 以上、過労死防止を願う家族の立場から申し入れます。                  


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                     兵庫県立大学客員研究員 松浦 章

連合が従来の方針を転換し、「高度プロフェッショナル制度」の導入と、「企画業務型裁量労働制」の営業職などへの拡大を容認したことに波紋が広がっています。

連合の神津里季生会長は、「高度プロフェッショナル制度」について、新たな健康確保措置を義務づけることで「大幅に改善できる」と胸を張ったと報道されています。しかしこれまで連合自身が「残業代ゼロ制度」であると一貫して批判してきたこと、制度の骨格には何ら変更がないことなどから、連合傘下の労働組合ですら異論が続出していると言われています。一方「企画業務型裁量労働制」についても、「一般の営業職」を対象外にすることで、政府提案を受け入れようとしています。神津会長は、裁量労働制が営業職全般に拡大されないために、「対象業務については、商品販売のみを事業内容とする営業所等で働く労働者は対象となり得ないことなどを明確化する」と述べています。しかしこれで歯止めをかけたと言えるのでしょうか。

本稿では、今回の連合修正提案を受け、日本経団連のこれまでの主張と、現実に営業職にまで「企画業務型裁量労働制」が導入されている損害保険業界の実態から、「企画業務型裁量労働制」拡大の問題点についてあらためて明らかにしたいと思います。

連合修正案は日本経団連にとって「痛くもかゆくもない」

まず日本経団連ですが、これまで企画業務型裁量労働制の拡大について、「複合化する仕事の実態に対応し、裁量性のあるPDCA*型業務と課題解決型法人営業を対象業務に追加する」(『2016年版経営労働政策特別委員会報告』)という言い方をしてきました。ここでは、連合神津会長の言う「商品販売のみを事業内容とする営業所等で働く労働者」などは、表面上はもともと対象とされていないのです。ここに「一般営業職」を対象外とするから大丈夫だといくら力説しても、日本経団連にとっては痛くもかゆくもありません。

*PDCA=Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)

なお、「高度プロフェッショナル制度」についても付け加えれば、上記の経団連経労委報告は「この制度に対して、過重労働を助長するとの見方もあるが、法律要件に健康確保措置の実施が盛り込まれているほか、対象者はとりわけ高い付加価値の創出が期待される社員であることから、能力発揮への期待と人材の引き留めのため、企業は健康確保に最大限配慮した対応をとると考えられる」(同上)と述べています。修正案の目玉である「健康確保措置」について、建前上ここまで言及しているのです。このように日本経団連にとって何の影響もない修正案にどれだけの意味があるのでしょうか。

損保ジャパン日本興亜の違法な「裁量労働制」

次に損保業界の実態との関係ですが、筆者はこれまでも本コラムで、損保各社の違法な「企画業務型裁量労働制」導入を指摘してきました。とりわけ損保ジャパン日本興亜の「企画業務型裁量労働制」については、本来対象外であるはずの営業や保険金サービス(自動車保険などの損害調査・保険金支払業務)の職員に対してもこの制度が適用されていること、職員18,000のうち、「企画業務型裁量労働制」が6,000人強の社員に導入され、そこに「事業場外労働制」と名ばかり「管理監督者」を加えると、実に60%以上の社員が労働時間管理の対象外となっていることを問題視してきました。

6月26日に開催された、同社の金融持ち株会社SOMPOホールディングスの株主総会では、違法性を追及した株主に対して、笠井聡執行役員(人事部特命部長)が次のように回答しました。

「損保の営業社員につきましては、直接お客さまに保険を売る営業をしているわけではございません。代理店の皆さまに対する企画、それから販売のプランニングというか、そういうような業務を中心にやっております。ですので、私どもはこれはいわゆる純粋な営業職員ということではなく、企画型の裁量労働制が適用される職種であるというふうに考えております。ここは、労働組合とも充分に話し合いをしておりまして、それを本当に労働基準監督署にも届出をして適法に運用しているというふうに考えております」

この回答には大きなごまかしがあります。厚生労働省労働基準局監督課の通達(厚労省ホームページ「裁量労働制の概要」)によると、「企画業務型裁量労働制」とは次の3要件をすべて満たす業務とされています。

会社運営の企画、立案、調査分析の業務

仕事の進め方を大幅に従業員に任せる業務

時間配分について上司が具体的な指示をしない業務

したがって、会社をあげて行う企画の内容を考える主体となったり、新しく参入する事業を検討したりするなど、会社の「舵取り」にかかわる仕事がこれに該当します。直接保険を売るとか売らないとかではないのです。たしかに損保の営業は代理店に対して行うものですが、だからと言って「企画業務型裁量労働制」の対象になるとは到底考えられません。もしそうであれば、多くの企業の「営業職」はほとんど対象になってしまいます。そもそも労働基準法「改正」など必要ないということになります。

裁量労働制「修正案」は何の歯止めにもならない

「直接お客さまに保険を売る営業をしているわけではございません」という回答は、連合神津会長の言う「対象業務については、商品販売のみを事業内容とする営業所等で働く労働者は対象となり得ない」という修正案が何の歯止めにもなりえないことをも明らかにしています。多くの企業の「営業」業務は、いまや大半が、企画・立案を中心とした「提案型営業」です。御用聞き(訪問販売)のような単純な商品販売など現実にはないということです。またあったとしてもその境界線はきわめてあいまいであることを認識しない空論だと言わなければなりません。この点、現在明らかにに「違法」である損保ジャパン日本興亜の「企画業務型裁量労働制」は、連合の言う修正案では晴れて「合法」になります。そして、すべての業務が「勤務時間を自分でコントロールできる仕事」だとされ、「成果達成に向けて自己の裁量で自由に勤務」できることになってしまいます。しかしいま同社で導入されているのは入社4年目からです。26〜27歳の若い社員が自由な時間に出退勤できるものかどうか、少し考えただけでわかることではないでしょうか。

 また、連合神津会長はこうも言っています。

「そもそも、現在の裁量労働制にも問題点があります。裁量労働制で働く者は、仕事の進め方や時間配分に関して主体性を持ちたいと思いつつも、実際には、労働時間(在社時間)が長かったり、取引関係における短納期などの要因により業務に対する裁量性が小さかったりするなど、本来の制度趣旨に沿わない実態にあります。対象業務拡大の前に、裁量労働制の適正な運用がなされるようにすべ きです」

 これだけを見ればもっともな指摘です。そうであるならば、まず連合傘下の労働組合が、現実の裁量労働制の実施・運用を適正に行っているのかどうか、検証すべきではないでしょうか。損保ジャパン日本興亜の多数派労働組合は連合です。同社は、この連合傘下の「労働組合とも充分に話し合い」を行い、認めてもらっているから何の問題もないと抗弁しているのです。

同社の「企画業務型裁量労働制」については、3月22日、参議院・厚生労働委員会で共産党の小池晃議員が取り上げ「損保ジャパン日本興亜の人事部資料を見ますと、企画業務型裁量労働制の対象として『営業』とはっきり書かれております。これは明らかに対象外だと思います。実際、労働者へ聞いたところ、支店とか、20人から30人程度の支社の一般の営業職にまで企画業務型が導入されている。これ直ちに調査すべきじゃないですか」と追及しました。これに対して塩崎恭久・厚生労働大臣は、「労働基準法違反ということを確認された場合には当然厳しく指導していかなきゃいけないというふうに思います」と回答しています。

 すでに国会マターとなっているこうした問題を検証し、労働基準法違反がまかり通っている現状を明らかにすることが連合の当面行うべき仕事ではないでしょうか。

 連合の軽率な行動は多くの労働者の生活と、場合によっては命までしばってしまいます。もし連合が労働者の代表と言うのであれば、代表にふさわしい、労働者に堂々と顔向けのできる行動をとるべきでしょう。そうでなければ「代表」などと考えないでほしい、少なくとも労働者の労働条件改善のじゃまだけはしないでほしい、というのが多くの声ではないでしょうか。
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 毎日新聞2017年7月14日 東京朝刊

https://mainichi.jp/articles/20170714/ddm/005/070/129000c

過重労働に対して厳しさを増す社会の目を、裁判所が強く意識したのだろう。

広告最大手・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺した事件について、東京簡裁が、労働基準法違反(長時間労働)で電通を略式起訴した検察の処分を「不相当」とした。

略式手続きの場合、公開の裁判は開かれない。だが、今回の判断を受け、法人としての電通は正式起訴され、裁判は公開の法廷で行われる。

公判では、検察側の証拠が明らかになるうえ、電通側代表者の被告人質問も行われる。労務管理の実態や違法残業の背景が、つまびらかにされる可能性がある。裁判所の判断は妥当と考える。

高橋さんの残業時間は過労死ライン(月80時間)を大きく超える105時間だったと、労働基準監督署は認定した。捜査は本社だけでなく、大阪などの支社にも及び、電通の違法残業の全容解明が望まれた。

電通では1991年にも入社2年目の社員が過労自殺した。2010、14、15年には労基署から長時間労働の是正勧告を受けた。

だが、労働環境は一向に改善されなかった。だからこそ、改まらない企業体質や、幹部らの旧態依然とした意識について、公判で原因解明する必要がある。

検察は、高橋さんの当時の上司らについて、残業の強制などは確認されず、悪質性はないと判断し、起訴猶予とした。一方、法人としての電通については、会社側が違法な残業を防ぐための体制の不備を認めたため、刑事責任を問えると判断した。

事件を略式で済まそうとしたのは、同じような過去の労働事件の例にならったからだ。 だが、過重労働の問題をこれ以上放置できないという世の中の流れが強まり、裁判所も姿勢を変えてきた。今年に入って裁判所は、厚生労働省の過重労働撲滅特別対策班が捜査した別の事件でも、検察の略式起訴を「不相当」と判断した。

違法な長時間労働の慣行は、今も多くの企業に残っている。企業に違法行為をやめさせ、法令順守を徹底させる必要がある。今回の裁判を、企業に根強い「常識」を根底から変える契機としなければならない。

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朝日DIGITAL(耕論) 2017年7月14日


寺西笑子さん(全国過労死を考える家族の会代表)

飲食店チェーンの店長だった夫は1996年に、49歳で過労自殺しました。店は年中無休で、朝に出勤したら、ほぼ毎日が午前様。月2回の休日すらつぶれがちで、亡くなる前1年間の労働時間は、約4千時間に上っていました。さらに叱責(しっせき)され、心身とも疲れきり、うつ病になった末の出来事でした。労働災害に認定され会社は謝罪しました。

 過労自殺には、「自ら死を選んだ」という無理解があります。私自身、最初は「家族のことは考えなかったんか」と夫に怒りをぶつけました。でも、違うんです。疲労困憊(こんぱい)になると、ダメージは心臓や脳だけでなく、精神を襲うこともある。あんなに家族思いだったのに、正常な判断力を奪われ、選ぶ余地なく死に追い込まれた夫に、今はねぎらいの言葉しかありません。長時間労働は心も壊すのです。

 人は、何のために働くのでしょうか。まず睡眠時間や自分の時間、家族との時間があり、そのために労働があるはず。だから労働基準法は、労働時間を原則、週40時間と定めるのではないでしょうか。

 なのに、これまでは労使が協定を結べば事実上、青天井に残業できました。そこで政府と連合と経済界は今春、協定を結んでも超えられない罰則つきの上限を作ろうとし、極めて忙しい月の残業上限を「100時間未満」とすることで合意してしまいました。

 天井ができるから前進だ、という人もいます。でも、私にとっては後退です。今まで国が認めてきた残業時間は、労使協定があっても「原則45時間」で、それ以上は例外でしかなかった。なのに、わざわざ倍以上の時間数を法律に書いて、容認してしまうのです。しかも、100時間は過労死認定の基準ラインです。

 せっかく長時間労働はいけないという風潮が広がってきたのに、これでは「100時間までOK」という「過労死合法化」になりかねない。法案化の前に、今からでも見直してほしい。理想は残業ゼロですが、せめて月45時間以下にすべきです。経済のため、100時間までは仕方ない、という逆算は本末転倒です。

 もちろん、やるべき仕事をこなしたり仕事を覚えたりするため、時間を気にせずに働くという日本人の美徳もあると思います。ただ、働き手がそうであればこそ、会社が正しい労働時間管理をして「帰らなあかん」というブレーキは踏まないといけない。本当に国際競争力や労働力確保を考えるなら、過労死ラインまで残業させる国が、外国にどう映るかも考えるべきです。

 命より大切な仕事はありません。ご本人も家族も、長時間労働に注意して、最後は命を守ってほしい。たとえその働き方が合法でも、過労死ラインは超えてはいけない。死んでからでは、遅いのです。(聞き手・吉川啓一郎)
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しんぶん赤旗 2017年6月22日、23日 ▽写真(省略)

時間規制ないも同然に


政府は「働き方改革実行計画」で、時間外労働(残業)の上限設定を打ち出し、労働政策審議会が塩崎泰久厚労相に建議しました。この水準や内容をどう見るか。過労死問題に取り組む関西大学名誉教授の森岡孝二さんに聞きました。(行沢寛史)

 ―働き方改革実行計画による上限規制をどう見ていますか。

労働時間の規制は労働者の安全や健康、人間らしい生活を守る一番の要です。それがいっそう弱まることになると危惧されます。

実行計画は、残業の上限を2〜6カ月平均で80時間、1カ月で100時間未満としています。年間の上限は休日労働を含めると960時間になります。

これは残業の上限を労災認定において過労死とされる時間より高いところに置くもので、文字通り死ぬほど働かせることを法認=放任するものです。

実際、過労死は100時間未満の残業でも多発しています。

厚労省「過労死等の労災補償状況」によると、100時間未満の脳・心臓疾患の労災認定は、2014年度で125件あり、このうち60件が死亡事案です。15年度も117件が認定され、うち54件が死亡です。

建設事業や自動車運転業務は上限規制が適用除外になっていて過労死が多発していますが、実行計画では、その見直しは5年後に先送りされました。過労自殺が多い看護や介護など深夜交替制勤務も特別の措置がありません。月100時間など論外というほかありません。

“働きすぎ”とは本来、労働基準法が定めた「週40時間、1日8時間」を超えて働く.働かされることです。ところが政府は過労死するかどうかを働きすぎの基準にしています。それでは「週40時間、1日8時間」の規制はないも同然です。(以上紂以下隋

特例のない限度基準を


―現状でも長時間労働が問題になっていますね。


日本で異常な長時間労働が続いているのは、労基法がザル法で、労働時間の規制に抜け道があるからです。いわゆる三六(さぶろく)協定では、労使で協定を結べば時間外・休日に上限なく残業をさせることができます。


よく日本の労働時間は短くなっているかのようにいわれます。しかし、これはパートタイム労働者などの労働時間が比較的短い非正規労働者の増加によるもので、フルタイム男性労働者の実労働時間は、この間ほとんどかわっていません。

総務省の最近の「社会生活基本調査」では、フルタイム男性労働者は週53時間、年間ベースでは2700時間台です。これは総務省「労働力調査」の1950年代半ばの労働時間と同じ水準です。

そのうえ、この30年あまり、情報化で業務量が増加し、労働密度が高まり、精神的疲労が強まりました。

1987年には労基法が改定され、週48時間制から40時間制に移行しました。しかし、結果は平日の労働時間が長くなり、実際は週50時間制が常態化しています。過労死職場では、1日14〜15時間という戦前並みの長時間労働が問題になっています。

ところが実行計画は、残業の限度を原則として「月45時間、年360時間」とし、さらに特例的な延長を認めています。ここには1日や1週間の上限はありません。これでは、1日24時間働かせることも可能です。終業と始業の間に一定の休息を保障する「インターバル規制」も努力義務にとどまっています。最低連続11時間の休息を義務づけているEUとは大違いです。

 ―秋の臨時国会では、過労死ラインの残業容認法案と上程済みの「残業代ゼロ」法案が合体されて審議されそうな雲行きです。

政府は、後者に関して、一定の賃金の正社員から残業概念をなくす「高度プロフェッショナル制」を創設するとともに、裁量労働制を営業職にも拡大し、いくら働いても一定時間しか労働時間とみなさない労働者を一挙に増やそうとしています。

これは「過労死促進法」とも呼ぶべきもので、労働時間規制の形骸化どころか、解体といっていいでしょう。

安倍内閣は、「共謀罪」によって民主主義を窒息させ、戦争法=安保関連法の強行や9条改憲表明で平和を破壊しようとしていますが、雇用と労働の分野でも時代逆行的な流れが進んでいます。

しかし、過労死家族の会や過労死弁護団の長年の運動が実って過労死防止法が制定されるなど、「過労死ゼロ」の流れを押しとどめることはできません。

出発点は現行の労働時間の延長の限度基準(週15時間、月45時間、年360時間など)を特例なしに労基法に明記することです。そして近い将来、国際水準並みに、残業込みで1日最大10時間、1週最大48時間を実現させることが必要です。残業はあくまで臨時的な仕事の増加に限るべきです。1日8時間、1週40時間の労基法の原則を理想に終わらせてはなりません。(了)

 

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 毎日新聞 2017年6月13日 東京朝刊 オピニオン

https://mainichi.jp/articles/20170613/ddm/005/070/198000c

 

長時間の勤務で健康を害し、死亡する勤務医が後を絶たない。命を守る現場の疲弊を何とか食い止めなければならない。残業時間を規制するなどして改善を図るべきだ。

 新潟市民病院の女性研修医(当時37歳)が2016年、自宅近くの公園で死亡しているのが見つかった。研修医として同病院で勤務していたが、救急患者対応の呼び出しが多く、心身の不調を訴えていた。月平均の残業は過労死ライン(80時間)の2倍を超える約187時間。251時間の月もあったといい、過労死として労災認定された。

 医師の自殺率は一般より高い。その多くは長時間の勤務が絡んでおり、過労による病死を含めると毎年100人を超える医師が命を落としていることになる。一つの医科大学の卒業生数に匹敵する数である。

 特に若い勤務医や研修医の多くは長時間労働が常態化している。仕事で緊張を強いられ、患者やその家族からの苦情でストレスを感じている医師も多い。研修医の4割近くが抑うつ状態との調査結果もある。

 一方、宿直勤務をしても患者に対応していない時間は労働時間に含まれないため、労災認定されることは少ない。研修医は「労働」とみなされない場合さえある。同病院は「医師としての学習が目的で、労働時間に当たらない」と主張していた。

 開業医に比べて勤務医の仕事量が多すぎる上に、救急や麻酔科など特定の診療科に突発的な仕事が集中していることにも原因がある。

 政府の「働き方改革実行計画」では残業時間を原則45時間(月)と定めたが、医師は規制の対象外とされ、5年間の猶予が認められた。

 医師には原則として診療を拒めない「応招義務」が課せられており、一律に残業時間規制をすると患者の診療に支障を来す恐れがあると医師会などは主張する。

 ただ、若い勤務医や研修医の過酷な長時間労働を前提にした勤務体制のままでは、今後も過労死は続出するだろう。診療に支障を来すどころではない。

 厚生労働省は勤務医の残業時間規制に関する検討会を設置する予定だ。多忙な診療科の医師の増員、開業医との連携も含めて、実態に即した対策を打ち出すべきである
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 休みが半年で4日だけ。連続勤務は最大で91日――。そんな働き方をしていた女性が心臓疾患の疑いで急死し、労災(過労死)認定された。 時間外労働は月平均70時間余り。国の過労死認定基準(過労死ライン=月100時間か2〜6カ月の平均80時間)未満だったが、休日の少なさによる疲労の蓄積が考慮された。

 2015年11月に亡くなったのは山口県の弁当販売会社員・斎藤友己さん(当時50)。タイムカードから見える典型的な1日はこうだ。午前7時過ぎに出勤し、車で弁当を配送して午後1時前に休憩。15分程度で昼食をかきこみ、午後4時過ぎに退勤――。土日も同じように働いた。

 労働基準法上の法定労働時間は1日8時間(週40時間)で、雇い主は「毎週1日か4週で4日」の法定休日を必ずとらせる義務がある。ただ、労使が協定(36〈サブロク〉協定)を結んでいれば時間外や法定休日にも働かせることができ、現在は事実上の「青天井」。斎藤さんの会社の36協定でも法定休日労働は上限なしだった。

 3月末、政府は「働き方改革」の柱として、時間外労働に罰則付きの上限を新設する「実行計画」を決めた。年間の上限は休日労働を含まず年間720時間。月あたりの上限は休日労働を含むものの、繁忙期は過労死ラインぎりぎりの数字にとどめられた。そして、休日労働への上限規制は計画に盛り込まれなかった。

 なぜ休日労働は別扱いなのか。

 法定休日に働かせる場合の賃金割増率は35%以上と、時間外労働(25%以上)より高く設定され、経営者側に強く抑制が働く▽36協定は労使が合意しないと締結できず、法定休日労働に関しても労働組合のチェック機能が働く――という複数の「歯止め」がある、と国側は説明する。

 だが厚生労働省の13年度調査では、法定休日の36協定がある企業などのうち2割強で、1カ月(4週)のうち4日とも働かせることを可能とする内容に労使が合意していた。

久々の休みでも、斎藤さんは会社から「人手が足りない」と電話があれば家を出た。家計を少しでも助けようと無理を重ねていたという。会社もそんな斎藤さんに集中的に休日出勤を頼んだ。勤務先の社長は取材に「36協定の範囲内。皆に休まれたら小さな会社は回らない」と話す。

 厚労相の諮問機関・労働政策審議会は今月5日に出した建議の中で、休日労働の抑制を努力義務とする規定を労基法の指針に盛り込むことも求めた。しかし、罰則はない。「休みをちゃんととれる」会社になることが働き手確保などの面で利益となり、仕事の見直しにもつながる――。そんな先々を見据えた「改革」が経営者や働く現場に浸透しない限り、効果は期待できない。今後法整備に取り組む政府はもちろん、企業も労働組合も重い宿題を背負った。 (さかもとてるあき 大阪社会部)
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