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2019年10月4日付、「教員の長時間労働の解消を求め、これに逆行する一年単位の変形労働時間制の導入に反対する」意見書を発表しました!
https://www.jlaf.jp/04iken/2019/1004_346.html

カテゴリ:労働,子ども・教育,意見書


教員の長時間労働の解消を求め、これに逆行する一年単位の変形労働時間制の導入に反対する

第1教員の長時間労働の実情とあるべき改善の方向性

1 教員の長時間労働の現状と中教審答申

(1)教員の長時間労働の現状
文部科学省(以下「文科省」という)が実施した2016年度の勤務実態調査によると、教員の1日当たりの学内勤務時間の平均は、小学校で11時間15分、中学校で11時間32分となっており、所定労働時間である7時間45分を大幅に上回っている。自宅などに持ち帰って行う業務を除いても、小学校教員の約3割、中学校教員の約6割が、いわゆる過労死ライン(月80時間以上の時間外勤務)を超えて勤務をしている。
また、厚生労働省が2017年に実施した全国の5,600校の学校と56,456名の教員を対象としたアンケート調査によると、所定時間を超えて業務を行う理由は「自身が行わなければならない業務量が多いため」(69.6%)が最も多く、次いで「予定外の業務が突発的に発生するため」(53.7%)、「業務の特性上、その時間帯でないと行えない業務があるため」(48.9%)であった。また、教員の業務に関連するストレスや悩みのトップは「長時間勤務の多さ」(43.4%)であり、78.5%もの教員が、過重勤務防止に向けて必要だと感じる取り組みとして「教員(専科教員を含む)の増員」を挙げた(2018年度版過労死等防止対策白)。
日本の教員の長時間労働は国際的にも突出しており、OECD(経済協力開発機構)が2019年6月19日に発表した教員の労働や学習環境に関する国際調査では、中学校教員の勤務時間が調査参加国平均で週38.3時間であったのに対し、日本は56.0時間(調査参加国中最長)、小学校教員の勤務時間も調査参加国中最長の週54.4時間であった。
長時間労働の結果、精神疾患に罹患する教員も多く、公立学校の教員に占める精神疾患による病気休職者数はここ数年5,000人前後(全教職員数の0.5%強)で推移している(後述する文科省の答申23頁)。
このような、教員の長時間労働の現状が、教員の心と身体を危険に晒す人権侵害であることは明らかである。
また、教員が多忙であることにより、教員が、児童・生徒とコミュニケーションを取ったり、相談に乗ったり、様子を確認するなどという、児童・生徒と向き合う時間を確保することができない状態が生まれている。教育とは、児童・生徒の学習権を充足させるための責務として行われるべきものであり、本来教員と児童・生徒との直接の人格的接触により行われるという本質的要請があると、最高裁判決でも指摘されている(1976年旭川学力テスト事件最高裁判決)。教員が児童・生徒と向き合う時間を持つことができなければ、児童・生徒との直接の人格的接触の機会を確保することできず、児童・生徒の学習権や成長・発達権を十分に保障することができなくなってしまう。政府には、児童・生徒の学習権や成長発達権を保障する責務に照らしても、教員の長時間労働を解消すべきことが求められる。

(2)中教審答申
中央教育審議会の「学校における働き方改革特別部会」は、2019年1月、「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」(以下「答申」という)及び「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という)を発表した。
ガイドラインでは「勤務時間」の上限の目安を、原則として、1ヶ月の超過勤務を45時間以内、1年間の超過勤務を360時間以内と設定し、答申では「勤務時間」管理の徹底を求めている。さらに、答申では、労働安全性管理の徹底や教員一人ひとりの意識改革、「学校以外が担うべき業務」や「必ずしも教員が担う必要のない業務」などを例示し、学校及び教員の業務の「適正化」を求め、勤務制度として新たに一年単位の変形労働時間制の導入を提言した。
しかし、この答申及びガイドラインには、教員の長時間労働解消に逆行する極めて大きな問題があると言わざるを得ない。以下詳論する。

2 教員の長時間労働を悪化させてきた安倍教育再生

 2012年の第2次安倍政権発足後、「教育再生」と称し矢継ぎ早に教育制度「改革」を推し進めてきた。
その内容は、以下のように、公教育への競争原理の導入と、児童・生徒及び教員への管理強化である。
全国悉皆の学力テストを復活させ、小中一貫校の設置を法制化し、テスト成績や学校の複線化で競争主義的な教育を進め、道徳の教科化によって「愛国心」等の徳目を児童・生徒に押し付けて心の中まで管理しようとしている。また政府の意向を教育現場に徹底するために、教員の身に付けるべき資質を文科省が示したり、「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)を推奨して教員の教え方まで政府が介入し、教科書検定基準を変えて政府見解を教科書に記載させ、教育委員会に首長の影響力を強めるなどの制度改定を行ってきた。
一連の「教育再生」により、小学校からの英語の必修化やプログラミング教育の導入、道徳の教科化などにより、授業時数が増加し、さらに政府が推奨する教え方を行うための研究・研修等の授業準備に多大な労力を要求され、教員の管理強化のため、授業計画書や各種報告書作成などの書類作成が教員に要求され事務作業も増加した。
現在の教員の長時間労働の深刻な状況は、安倍政権の「教育再生」によって悪化し続けてきたものであって、教員の長時間労働解消のためには、この競争主義的教育と管理強化を推し進める「教育再生」政策こそが見直されなければならない。

3 答申及びガイドラインの問題点

 ガイドラインでは、前述のとおり「勤務時間」の上限の目安を定め、答申では「勤務時間」管理の徹底を求めている。しかし、上限違反に対する使用者たる自治体への罰則が設けられておらず、実効性に疑問が残る。
また、公立学校の教員については、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)により、「超勤4項目」に該当する場合を除く超過勤務の禁止と時間外割増手当の不支給が一体のものとして規定されている。この点、答申は、「教員勤務実態調査の結果によると、所定の勤務時間外に行っている業務としては超勤4項目に関する業務以外のものがほとんどであることが明らかになっている。」(答申44頁)と給特法の超勤禁止原則が形骸化していることを認めながら、時間外割増手当は支給しないとする給特法の基本的枠組みを維持し、超勤4項目以外の勤務時間を時間外割増手当の支給対象とすることを否定していることも問題である(答申46頁)。
さらに、答申では業務の役割分担及び適正化として、「学校以外が担うべき業務」や「必ずしも教員が担う必要のない業務」などを例示し、学校や教員が担う業務の見直しの方向性が示されている。この点、見直しの対象とされている業務には、「学習評価や成績処理」など、教員が本来行うべき業務も含まれており、学校現場の教員の意見を踏まえずに見直しが行われれば、教員と児童・生徒との関わりが希薄化し、教員の専門性や子どもの学習権に応えるべき教育の質を下げることにつながることも危惧される。業務の改善を行う場合、学校現場の教員の意見を十分に反映して行われるべきである。
加えて、答申では一年単位の変形労働時間制の導入が提言されているが、これはかえって教員の長時間労働を悪化させる恐れのある問題の大きい制度であり、これについては項を改め詳しく論じる。

4 正規教員の増員を行うべき

 文科省が公表した2016年度勤務実態調査では、「授業」や「授業準備」、「学年・学級経営」等、教員の本来業務と言うべき業務に必要な時間が10年前の調査よりも軒並み増加している。これらの業務は、教員以外が行うことは考えられず、学校業務の「適正化」や教員の「意識改革」では長時間勤務の解消はできないことを示している。このような教員の本来業務について業務時間が増加し、これが教員の多忙化につながっている以上、その本来業務を担う教員の増員を行う以外に解決策はない。前述のとおり2017年に実施された教員に対するアンケート調査において約8割もの教員が過重勤務防止のために教員の増員が必要だと回答したのも、教員の人数が不足している現場の実感を表したものである。
中教審の答申でも、小・中学校ともに「授業」に従事する時間が増加していることから、総授業時数を増加させた2008年の学習指導要領改訂以降、定数改善が図られてきているが、これらはよりきめ細かな指導等を行うことを目的としたものであり、「教師一人一人の業務負担の軽減という観点から十分な効果が生じているとは言えない」(答申13頁)として、現在の教員定数が業務負担の軽減には不十分であることを認めている。
また、非正規(臨時的任用や非常勤講師、期限付任用等)の教員については、労働条件が不安定なため、児童・生徒に対する継続的な指導や他の教員との協働の点でも問題が指摘されており、非正規教員の正規化も不可欠である。
これまで、多くの教員が自己の生活を犠牲にして、児童・生徒の教育のために力を尽くしてきた。しかし、答申も指摘する通り、このような教員の使命感や自己犠牲に依存した教育制度は「持続可能であるとは言えない」(答申5頁)し、その中で教員が疲弊していくのであれば、それは「‘子供のため’にはならないものである」(答申2頁)。
教員の人間らしく働く権利を保障し、教員が児童・生徒と向き合い、児童・生徒の学習権・成長発達権を保障するためには、正規教員の増員を行うべきである。

第2 一年単位の変形労働時間制を教員に導入することは反対である

1 はじめに

 答申は、「第6章教職の勤務の在り方を踏まえた勤務時間制度の改革」において、「児童生徒が学校に登校して授業をはじめとする教育活動を行う期間と、児童生徒が登校しない長期休業期間とでは、その繁閑の差が実際に存在している。」として、「地方公務員のうち教師については、地方公共団体の条例やそれに基づく規則等に基づき、一年単位の変形労働時間制を適用することができるよう法制度上措置すべきである。」と提言している。

2 一年単位の変形労働時間制の問題点

(1)一年単位の変形労働時間制とは
一年単位の変形労働時間制は、一年間の平均週労働時間が40時間を超えなければ、各日、各週の8時間あるいは40時間を超える時間についても時間外労働時間と見なさない制度であり(労基法32条の4)、「労使が労働時間の短縮を自ら工夫しすすめていくことが容易になるような柔軟な枠組みを設けることにより、……労働時間の短縮を目的とする」(1988年1月1日基発第1号)ものとして、導入されたものである。
一年間の変形労働時間制を導入するためには、書面による労使協定で法律が定める一定の事項(‖仂櫃箸覆誅働者の範囲、対象期間、F団蟯間(対象期間中の繁忙となる期間)、ぢ仂欖間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間、ネ効期間)を定めたうえで、当該労使協定を所轄労働基準監督署に届けなければならない。
また、労働日数は対象期間について1年当たり280日、1日及び1週間の労働時間はそれぞれ10時間、52時間が限度とされている。連続労働日数の限度は6日であるが、特定期間中は12日(1週間に1日の休日が確保できる日数)である。

(2)一年単位の変形労働時間制の問題点
人間は、一日の始業・終業時間が一定であり、毎日の労働時間が一定していることにより人間の生活サイクルが安定し、健康で文化的な生活を送ることができる。しかし、変形労働時間制のもとでは時期によって始業・終業時間が異なることで生活サイクルが狂い、また、閑散期には休日が多くなる一方、繁忙期には1日の労働時間が伸張され、休日が少なくなるため、疲労やストレスが蓄積し、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が奪われることになる。
また、労働日数の上限が1年当たり280日とされており、週休2日制を採用する場合(年間労働日数261日)と比べると、年間総労働時間を短縮するものとなっていない。閑散期に休日を割り当てられても、業務量が減らないのであれば、結局出勤せざるをえなくなる。
さらに、変形労働時間制の方が、通常の勤務時間制度よりも平均して月間15時間も労働時間が長くなるという調査結果もある(「仕事特性・個人特性と労働時間」(労働政策研究報告書No.128、2011年)。
このように、変形労働時間制は労働時間の短縮を図るという立法趣旨に反して、長時間労働を招いている。

3 一年単位の変形労働時間制を教員に導入することの問題点

(1)教員の業務の性質上、一年間の変形労働時間制はなじまない
そもそも、変形労働時間制は、変形期間を通じて計画的な時間管理をすることで週40時間労働制を実現するものであり、あらかじめ業務の繁閑を見込んで、それに合わせて労働時間を配分でき、突発的なものを除き、恒常的な時間外労働がないことを前提とした制度である。
 しかし、教員の業務は、夏季休業期間などの時期も、研修、プール指導、補習、部活動指導等の業務があり、業務量全体が減少するわけではなく、あらかじめ業務の繁閑を見込めるものではない。
また、教員の業務は、児童生徒間のトラブルへの対応など、予測できない業務が生じることが多く、また、児童生徒の家庭との連絡等も業務時間外に行わざるをえないなど、時間外労働が恒常化している。
このように、教員の業務の性質からみても、あらかじめ業務の繁閑を見込むことができず、また、恒常的な時間外労働がないことを前提とした一年単位の変形労働時間制はなじまない。

(2)労使協定等が排除されるおそれがある
また、答申は、地方公共団体の条例やそれにもとづく規則等に基づき、一年単位の変形労働時間制を導入できるよう法制度上の措置をとることを提言しているところ(48頁)、これが職員団体に労働協約締結権がないことを前提に、労使協定を結ぶことなく、条例等により一律に学校に変形労働時間制を導入できるとするのであれば、労働基準法が変形労働時間制の導入に労使協定を手続要件とした趣旨を没却するものである。
労基法は、労働条件の最低基準を定めるとともに、とくに労働者にとって不利益な労働条件を実施する場合には、過半数労働組合又は過半数労働者代表者との労使協定を要件とすることで、労働者の保護を図るものである。
答申が、仮に、教員への一年単位の変形労働時間制の導入に際し、労使協約を必要としないということを前提としているのであれば、労働者保護を目的とする労働法の体系を全く理解していないものと言わざるをえない。

4 小括

 以上のとおり、教員の業務の性質上、一年単位の変形労働時間制はなじまない。また、労使協定を手続要件からはずすのであれば、教員を無権利状態に貶めるものである。このような問題がある教員への一年単位の変形労働時間制の導入には反対である。

第3 まとめ

 以上の述べてきた通り、教員の深刻な多忙化を解消するために、正規教員の増員が行われるべきである。また、文科省の答申が導入を提言した一年単位の変形労働時間制は、教員の長時間労働の解消に逆行するものであり、その導入に反対する。

                               以上

  2019年10月4日
自 由 法 曹 団
団 長 船 尾  徹

 

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高齢者に働けと言いながら年金を減らす「在職老齢年金」の時代錯誤
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191018-00217839-diamond-bus_all&p=1
2019/10/18(金) 6:01配信 ダイヤモンド・オンライン

高齢者に働けと言いながら年金を減らす「在職老齢年金」の時代錯誤
働くと年金が減る「在職老齢年金制度」は時代に逆行した制度といえます Photo:PIXTA

 働くと年金が減る「在職老齢年金」という制度の適用範囲を縮小することが検討されているようだ。しかし、「人生100年時代」に高齢者の労働意欲を本当に高めるためには、適用範囲の縮小ではなく、制度自体を廃止すべきである。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

● 在職老齢年金制度で 所得が一定以上の高齢者は年金が減額

 在職老齢年金は、サラリーマン(男女を問わず、公務員等も含む。以下同様)が加入する老齢厚生年金(公的年金の2階部分と呼ばれるもの)の受給者が対象になる制度で、自営業者などには無関係なので、本稿でも対象をサラリーマンに絞って記すこととする。

 この制度は、大ざっぱに言えば「65歳までは、給料プラス年金が月額28万円を超えたら、超えた分の半分を年金から減額する」「65歳からは、給料プラス年金が月額47万円を超えたら、超えた分の半分を年金から減額する」ものである。

 そして、限られた年金の原資を本当に必要な人に分配しよう、という趣旨で作られたものなのだろう。それ自体は理解できるが、後述のように弊害が多いので、廃止すべきだ。

● 厚労省は「月収62万円超」への縮小を検討 財務省は制度の縮小・撤廃に慎重か

 人生100年時代を迎えつつある今、「高齢者にも働いて年金保険料や税金を納めてもらい、年金の受給開始をできるだけ待ってもらおう」というのが時代の流れである。

 そこで、政府が6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)には、在職老齢年金を「将来的な制度の廃止も展望しつつ、速やかに見直す」と明記された。

 しかしこのたび、厚生労働省は在職老齢年金について、収入基準を引き上げて適用対象の人数を減らす方向で検討を始めた。年齢にかかわらず、月収62万円を基準とする模様である。

 廃止ではなく「適用範囲縮小」にとどめるのは、「廃止すると年金支給額が大きく増えてしまうから」ということのようだが、これは納得できない理由だ。

 しかも、財務省の審議会は 、見直し自体にも慎重なようである。財政再建至上主義の財務省であるから仕方ない面はあるが、非常に残念である。

● 高額所得者には累進課税で対応すべき

 「高額所得者の年金を減らして低所得者に多く払ってやりたい」という発想は確かに理解できる。しかし、それなら高額所得者に課している累進課税を強化すれば良いだろう。

 税制(本稿では年金制度を含めて考える)は、公平・中立・簡素が基本原則だといわれている。それならば、「簡素」の観点から、年金についても「高額所得者は除く」などとせず、一律に支給すれば良い。公平のための貧富の格差の是正は、累進税率を高めることで解決すれば良いのだ。

 筆者が「簡素な制度」を望む理由の1つには、「政府の情報提供が国民へ完璧に伝わるわけではない」という点もある。

 例えば「働いて収入を得ると、その分だけ年金が減らされて損をする」と思っている国民も多い。しかし在職老齢年金制度は「働けば年収は増えるが、働いたほどには増えない」というだけのことである。そうした誤解を受けないように制度を作るのは難しいから、在職老齢年金の制度そのものを廃止してしまうべきだ、と言いたい。

 「中立」の観点からも、問題である。高額所得者の中でも若者には関係なく、自営業者等にも関係なく、高齢者のサラリーマンにだけ課せられる「税金」のようなものだからである。

 そして何より問題なのは、経済活動に中立ではないことである。一定以上の所得を稼いでいるサラリーマンに対して「働くインセンティブを失わせる」ものだからである。

● 人生100年時代に逆行しかねない

 高度成長期のサラリーマンは、15歳から55歳まで、人生の半分以上を働いて過ごした。そうであれば、人生100年時代には、「元気であれば20歳から70歳まで働く」という時代を迎えるのが自然であろう。政府も企業に定年延長等々を求めている。

 日本のマクロ経済を見渡しても、少子高齢化による労働力不足は一層深刻化していくので、高齢者や女性の労働力に期待するところが大である。

 かつて、現役世代の失業が問題となっていた時代には、「高齢者が働くことで若者の仕事を奪ってしまわないように、高齢者の働くインセンティブをそぐこと」も是とされたのかもしれない。しかし、時代が変わり、制度が時代にそぐわなくなっている。

 そんな時に、60歳以上のサラリーマンの勤労意欲をそぐような制度は、有害としか言いようがない。

● 年金支払額だけに着目するのは問題

 サラリーマンの高額所得者は、年金保険料も所得税も多額に支払っているはずだ。そうした人が在職老齢年金制度のせいで働くインセンティブを阻害されて引退してしまったりしては、政府の収入が減ってしまう。

 支払う年金を減らすことだけを考えて、収入を減らしてしまったのでは、角を矯めて牛を殺してしまうことにもなりかねない。その意味でも慎重な判断が必要であろう。

 加えて、所得の高いサラリーマンの中には、日本経済に大きく貢献している人もいるはずである。そうした人が働くインセンティブを阻害されて引退してしまうとすれば、それは日本経済にとって大きな損失だといえよう。

 「そうした人は使命感が強いはずだから、所得に関係なく働くはずだ」と考える人もいるだろうし、筆者もそうであることを願うが、さすがにそれは期待しすぎというものだろう。

塚崎公義
 

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2019年10月17日 / 最終更新日 : 2019年10月17日 shinbunroren
http://shimbunroren.or.jp/?p=1115

ハラスメント防止対策の強化を求める意見書(10月17日)

 新聞労連、民放労連、出版労連などメディア関連労組でつくる「日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)」は10月17日、ハラスメント防止対策の強化を求める意見書をまとめ、厚生労働大臣と労働政策審議会の雇用環境・均等分科会の委員に提出・送付しました。MICが4〜5月に、就職活動中の学生などを含めたあらゆる職場・業界の人を対象に実施したアンケート結果では、「不適切な相談」が新たな「二次被害」を生み、被害を拡大させている実態が浮かび上がってきました。泣き寝入りが常態化していた財務事務次官のセクシュアルハラスメント問題以前の社会に後戻りさせないための仕組み作りを求めています。


ハラスメント防止対策の強化に関する要望書

―被害者が不利益にならない確実な救済制度構築を―

2019年10月17日 

厚生労働大臣 加藤 勝信 様
労働政策審議会 雇用環境・均等分科会委員各位

日本マスコミ文化情報労組会議 
議長 南 彰 
(新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)

 日頃より、あらゆる人が働きやすい環境の確立に向けて尽力されている皆さまの活動に心より敬意を表します。

 さて、今年の通常国会でパワーハラスメント防止法等が成立し、また、6月の国際労働機関(ILO)の総会では、「仕事の世界における暴力とハラスメント(いじめ、嫌がらせ)の根絶」に関する条約(ハラスメント禁止条約)が日本政府も賛成する形で採択されました。

 日本はこれまで、ハラスメント問題への取り組みが遅れていましたが、国内外の二つの動きは、当事者たちが声を上げ、社会や政府などを動かして手に入れたかけがえのない第一歩です。条約の批准に向けて、その前提となる国内法整備について、この秋の労働政策審議会での議論でフリーランス・自営業者(多くの芸能人を含む)への保護を中心に実効性の高い対策を進めていかなければなりません。

 メディア・文化・情報関連の職場で働く労働者がつくる「日本マスコミ文化情報労組会議」(MIC)では、昨年4月の財務事務次官によるテレビ朝日記者に対するハラスメント問題を受け、特にセクシュアルハラスメントに関する実態調査を重ねています。

 「メディア業界が足元で起きているハラスメントに向き合ってこなかったために、被害を受けても泣き寝入りを強いるような社会をつくってしまっていたのではないか」という反省のもと、今春には、職域を越えた院内集会「いま、つながろう セクハラのない社会へ」を開き、職域横断のセクシュアルハラスメントアンケートも実施しました。

 1061人から回答を得たこの職域横断のアンケートからは、勇気を出して相談した場で傷付けられて失望し、追い詰められていく被害者の実態が浮かび上がっています。

 相談を受けた人事担当者や上司、相談窓口の対応が不適切なケースも多く、「隙があったのでは?」「誤解を与える言動があったのでは?」などと被害者側の過失を問われたり、いわれのない噂をたてられたりするなど、被害者の方が職場に居づらくなるケースも散見されました。中には、調査もせず放置したり、被害が認められても、加害者を処分せず昇進させたりしているケースもあります。

 不適切な相談が新たな「二次被害」を生み、被害を拡大させているといっても過言ではありません。また、加害者が被害者よりも役職や関係性において優位な立場にいることが多いなか、組織のなかにおいて加害者をかばう対応も繰り返されています。こうした構造が、ハラスメント被害に遭った人のうち、実際に相談・通報をした人がわずか27.3%にとどまったという実態につながっています。公平で、実効性のある救済をすべての人に担保するために、第三者機関などによる相談窓口や救済機関の監視・チェックが必要です。また不適切な対応だった場合、外部や第三者機関が対応できる仕組みが必要です。

 私たちはいま、泣き寝入りが常態化していた財務事務次官問題以前の社会に後戻りさせてしまうのか否かの岐路に立たされているという危機感を持っています。せっかく声を上げ始めた被害者たちが、絶望して再び沈黙を強いられる状況にならないような取り組みを進めていかなければなりません。

 長い年月を経ても、被害のトラウマが残り、記憶から消すことが難しいのがハラスメントの特徴です。被害そのものから及んだダメージだけでなく、訴えても被害を放置され、バッシングされるなど、その後の対応に傷つき、就労不能に陥り、休職や離職に追い込まれた仲間もいます。戻りたくても戻れず、収入を失い、健全な社会生活の継続が出来なくなるケースも存在します。被害者の尊厳を著しく傷つけるだけでなく、経済的打撃も与えるのです。経営側にとっても大切な人材を失い、企業ブランドにも傷がつくことは大きな損失です。加害者も被害者も出さないことが経営側の責務です。立法、行政、司法などの公的機関も当然、その重い責務を負っています。

 グローバルな人権問題であり、健康や労働への参画などにも影響するハラスメント問題に対する実効性のある法整備は急務です。「ハラスメントのない社会」の実現に向けて、厚労省及び貴分科会において、下記の事項に積極的に対応していただくよう要望します。

― 記 ―

●国会の付帯決議の速やかな具体化

 今年の通常国会でパワーハラスメント防止法案などが成立した際に、衆参各院の厚生労働委員会で行った付帯決議では、「ハラスメントのない社会」の実現に向けて早急に取り組むべき課題が整理されています。国権の最高機関が全会一致で示した意思を重く受け止め、速やかな具体化を求めます。

● 「第三者」 からの被害やフリーランス ・就職活動生など を保護対象に

  「顧客」や「取引先」「取材先」は業務遂行上の必要からやむを得ず付き合っている相手で、「職場」という概念の領域です。これは厚生労働省の男女雇用機会均等法のマニュアルなどにおいても示されてきた考え方です。

 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)のセクシュアルハラスメントに関するアンケートでも、「第三者」から被害を受け、「仕事に支障が出るかもしれないから」などの理由で泣き寝入りしている実態が浮き彫りになりました。経営側の事後措置義務が発生し、被害者が保護されることを明確にするため、業務上のハラスメントの「加害者」として、「顧客、取引先、取材先など 」の第三者を明記して、経営側が措置を行うことを明文化するよう求めます。また、経営側が保護する「被害者」の対象には、 フリーランスや就職活動中の学生、教育実習生 、研究者 等 など も含めるよう求めます。

 協同組合日本俳優連合、一般社団法人プロフェッショナル パラレルキャリア・フリーランス協会、MICフリーランス連絡会が 19年9月9日に 厚労省及び貴分科会 へ 提出した「フリーランスへのハラスメント防止対策等に関する要望書」について も 、MICとして支持しています。国会の付帯決議に沿って、 対策を進めることを強く求めま す。

●被害者の相談・救済体制の強化

 セクシュアルハラスメントを中心に、ハラスメント行為が認知されても、「被害者が加害者を陥れよう として訴えた」などという誤解や偏見が生まれ、バッシングを されるなどの二次被害を受けるケースが後を絶ちません。そのために職場の人間関係が損なわれ、被害者が精神的に追いつめられて退職するケースもあります。

 ハラスメントは身体的・精神的ダメージを伴う人権侵害であり、休職や離職などの経済的な打撃を招く危険もあります。被害者が通常の社会生活や業務に戻るには、 加害者の業績や人柄など のフィルターを排除 し、 ハラスメント行為 事実のみに目を向け た 被害者ファーストの迅速かつ丁寧な 調査・判断による、加害者への 客観的な 処分 がなにより重要です。 ほかにも加害者から被害者に対する謝罪や賠償などのけじめが必要ですが、企業内の調査で「加害行為」と「被害」の判断をあいまいにして被害者を異動させる、あるいは加害者と被害者の両者を異動させるという、被害者にとって不利益な人事措置 で解決を図 ろうとする 対応 もたびたび起きています。「事後措置義務」を規定し、被害者の相談・救済体制を強化することを求めます。

 現状では、従業員規則など社内規定に基づいて、ハラスメントの実態を調査・認定し、人事処分などの意思決定を行 う機関における男性の割合が高い状況にあります。特にセクシュアルハラスメント の調査・認定・ 処分決定 は、男性のみに偏ると、男性の感覚で処理をしがちで、多くの場合は女性である被害当事者の声が届きにくいのが実態です。事後の人事措置を行う社内機関のジェンダー比率も均等を目指して見直しを義務化するよう求めます。

●加害者への対応(罰則強化など)

 ハラスメント行為が認定されても、加害者に対しては従業員規則などに基づく懲戒処分を行うか、雇用など生活全般にわたる影響を避けるためにあい まいな判断をくだすかという、二者択一になりがちで、労働組合でも対応に苦慮しているケースがあります。また、ハラスメントの加害・被害の有無をうやむやにして終わらせた場合、加害者側にハラスメント行為の 自覚がないまま、別の職場で加害を繰り返す事例も数多く起きています 。

 特にセクシュアルハラスメントに関して、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号、最終改正・平成28年8月2日厚生労働省告示第314号)において、「職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと」と規定されていますが、現状、措置が適正に行われないため、被害者が泣き寝入りしているケースが散見され ていることはアンケート 結果でも 明確で す。 より実効性を高めるため、国家公務員を対象にした人事院規則のような形で処分の目安に関する規定を各事業主に設けさせることを指針上義務付けることを求めます。

 また、 被害と加害のこれ以上の負の連鎖を止めるために、加害者への処分制度として「加害者への教育的指導」を 取り入れ、それに対する基本的姿勢や必要性を法律で規定するよう求めます。 また、その教育的指導を行うために、早急に政・労・使によるセクシュアル ハラスメントなどのハラスメント 防止 教育プログラムの研究、制度実施をサポートするための専門機関設置や更正プログラム作成と導入を規定するよう求めます。
セクシュアルハラスメントの加害の中には、被害者への執着から加害に結びつくストーキングや加害者側が無自覚に権利侵害を行っているケースもあります。そうした場合、加害行為をやめさせようと加害者に口頭や文書、処分などを講じて指摘・指導 しても、加害者側の自覚につながりにくく、加害が繰り返されるケースがあります。繰り返されるセクシュアルハラスメントに対して、雇用側が処分しあぐねている間に被害は拡大していきます。様々な形態のセクシュアルハラスメントに応じた対策が求められており、対策を講じるための研究を進め、効果的な対応策を広く周知することを求めます。

●性暴力やセクシュアルハラスメントの証拠採取の強化

 セクシュアルハラスメント被害のなかには、 強制性交 ・準強制性交、強制わいせつ罪の事案も含まれていますが、密室で証拠がないことを理由に、経営側が適切な 処分を行わない事例があります。被害者は「訴えても何も変わらない」と泣き寝入りし、加害者が再犯を繰り返す一因です。性暴力やセクシュアルハラスメント被害者の対応は各都道府県の警察などの裁量によって異なっており、証拠を採取できるレイプキットや技術が産婦人科や救急病院などにもあることも広く知られず、十分な証拠採取に至っていない実態があります。これでは被害は減りません。性暴力やセクシュアルハラスメントの証拠採取について、国がレイプキット、専門カウンセラー、セカンドレイプにならない聞き取りができる警察官 ・看護士 ・助産 師の育成 など証拠採取に関する予算などの万全の措置を講じ、配置・配布される場所を 周知 するよう求めます。

●包括的な法規制の整備

 日本では現在、男女雇用機会均等法 など で、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメント、パワーハラスメント が 限定的に規制されていますが、職場におけるハラスメント(いじめ・嫌がらせ)全般を規制する法律がありません。各種ハラスメントは、個々の明確な区分が難しく、複合的な事案として発生することも多いので、法律ごとに監督行政が縦割りにならないよう、相談窓口の設置や予防対策など、総 合的に行うことが求められています。このため、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメント 、ジェンダーハラスメント、家事労働を含めたあらゆる 労働の場で のハラスメント行為 を包括的に禁止する法律を制定することを 改めて 求めます。

 また現状は、セクシュアル ハラスメントを含め、どのような行為がハラスメントにあたるのかについて、法的に明確な基準がありません。このため、労働局は被害者が求めている違法性の認定に踏み込まず、企業内での調査でも 、加害者と被害者の「受け止め方の違い」で処理されたり、「事を荒立てないように」と経営側に都合のよい解釈で扱われたりするケースが後を絶ちません。

 国を挙げてのハラスメントの実態調査の実施や過去の判例などに基づいて、職場におけるハラスメントの種類や判断基準、禁止行為などを明確に禁止する ことを求めます。

 

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「人助けランキング、日本は世界最下位」英機関 日本は冷たい国なのか ホームレス受け入れ拒否問題 
https://news.yahoo.co.jp/byline/iizukamakiko/20191017-00147100/
飯塚真紀子 | 在米ジャーナリスト 2019/10/17(木) 8:13

波紋を呼んだ避難所のホームレス受け入れ拒否。日本は人助けをしない国なのか。(写真:ロイター/アフロ)

 とても悲しい。

 それが、ホームレスが避難所に入ることを拒否されたという日本のニュースを目にした時に感じた思いだ。そして、そんなニュースに寄せられたコメントを見て、もっと悲しくなった。ホームレスは“受け入れ拒否されて当然”と考えているようなコメントが散見されたからだ。

 “助けを必要としているホームレスを受け入れなかった行政“、そして、“行政が受け入れなかったことに賛同している人々が少なからずいること”は、10月に発表されたある調査の結果を裏づけているかのようだ。それは、イギリスのチャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」が世界の国々を対象に、人々のGiving(他者に与えること、寛容度、人助け度)の状況を調査して発表している”World Giving Index”(世界人助け指数)の結果だ。

 2009年から毎年行われているこの調査では、「この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」、「この1ヶ月の間に寄付をしたか」、「この1ヶ月の間にボランティアをしたか」という3つの観点から各国の人々にインタビューを行い、各国の寛容度を採点している。

 CAFは、2009年から2018年まで10年間に渡り、125カ国以上の国々を対象に、130万人以上の人々にインタビューを行った。そして、このほど、この10年間の調査データを集計して出した”World Giving Index 10th edition”を発表、10年間の総合ランキングを紹介している。

人助けでは世界最下位の日本
日本の結果は惨憺たるものだ。総合順位は126カ国中107位と先進国の中では最下位だ。

 ちなみに、1位はアメリカで、2位ミヤンマー、3位ニュージーランド、4位オーストラリア、5位アイルランド、6位カナダ、7位イギリス、8位オランダ、9位スリランカ、10位インドネシアと続いている。

 トップ10の中では、インドネシアがここ数年、順位を上げて評価されている。また、ニュージーランドは、この10年、3つの観点すべてでトップ10入り。反対に、中国は、3つの観点すべてでボトム10入りしており、総合順位は世界最下位である。

*表は左から、赤が総合ランキング、緑が人助けランキング、紫が寄付ランキング、黒がボランティアランキング。出典:World Giving Index 10th edition
注目すべきは、調査した3つの観点の中でも、「見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」という観点で、日本は125位と世界最下位であることだ。この観点でボトム10の国々は下記の表にある通り。その顔ぶれを見ると、ほとんどが、現在またはかつての共産主義国だ。そんな国々よりも日本はランキングが低く、世界最下位なのである。

 この結果をどうみたらいいのか? データが全てとは言えないが、このデータだけに従えば、日本は世界でも最も人助けをしない国ということになりはしないか? 今回の行政のホームレス受け入れ拒否やそれに賛同している人々が少なからずいることを考えると、この結果は日本の冷たさを表しているかのようにも見える。

 ちなみに、日本は、「寄付をしたか」では64位、「ボランティアをしたか」では46位だった。つまり、「見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」で最下位であることが、総合順位を落としているということになる。

*人助けランキングでは125位と世界最下位。出典:World Giving Index 10th edition
受け入れ拒否に賛同する人々の意見を読むと、ホームレスの人々が税金を払っていないからとか、臭いなど衛生上の問題があるからとか、自己責任の問題だからなどをその主な理由にあげている。しかし、そんなことが理由になっていいのだろうか?

 台風19号は、79人の命を奪い、10人の行方不明者を出し、約4500人の人々に避難生活を強いている(10月16日時点)。たくさんの被災者を出したのだ。誰もが自分の命を守らなければならない非常事態だった。そんな中、助けを求めている人がいたら、その人がどんな人であれ、手を差し伸ばすのが人というものではないか。

ソーシャル・キャピタル低下の表れか
東日本大震災の時、世界のメディアは、非常事態の下、日本の人々が結束して助け合う姿勢を賞賛した。地域社会の人々の結びつきの強さに世界の人々は心を打たれた。

 ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)という言葉がある。ソーシャル・キャピタルとは「社会における人々の結束により得られるもの」のことだ。「人々の絆」や「お互い様の文化」、「地域の結束力」により、人が生活の中で得ているもののことだ。ソーシャル・キャピタルが高い国では、人々が信頼し合い、思いやりをかけあい、人々の結束力があり、地域の人々が協力して助け合う活動が活発に行われている。

 日本は、東日本大震災の時の人々の助け合いの姿勢が示すように、ソーシャル・キャピタルが高い国だと評価されていた。近年、格差の拡大により、日本のソーシャル・キャピタルは減少傾向にあるが、ホームレスの受け入れ拒否やそれに賛同する多々の声は、日本のソーシャル・キャピタルのさらなる低下を表しているような気がしてならない。

アメリカでも起きるホームレス差別
アメリカもソーシャル・キャピタルの点では問題を抱えている。貧富の差が大きいし、“人種のるつぼ”でもあるため格差が発生しやすいからだ。

 実際、今回、台東区で起きたようなホームレス差別はアメリカでも起きた。2017年9月、ハリケーン・イルマがフロリダ州を襲った時、ホームレスであるという理由からホームレスの人々を受け入れない避難所が現れたり、また、受け入れても、ホームレスの人々に黄色いリストバンドを巻いて差別し、隔離した避難所も現れたりして問題となった。

 また、ホームレスの人々を受け入れても、彼らにブランケットや食べ物や薬やシャワーなどを与えなかった避難所もある。ホームレスがその理由を市の職員にきくと「税金を払っていないからだ」と言われたという。

 ちなみに、アメリカでは、避難所がその人の経済状況を理由に差別すると、連邦法違反になる可能性がある。連邦法は、連邦災害ゾーンに住む人々を保護しなければならないとしているからだ。

 ホームレス差別が起きる地域がある一方、行政が作った「ホームレス避難シェルタープラン」の下、ハリケーンが襲撃する前に、無料バスを出してホームレスの人々をピックアップし、避難所に連れ行った地域もある。ホームレスの中にはアルコール中毒やドラッグ中毒の者もいるため、避難所では、アルコールやドラッグを禁止にするなどのルールも設けている。また、ペット連れのホームレスは、ペット・フレンドリーな避難所に誘導している。身分証明書(ID)を所持していないホームレスは、別の避難所に誘導している地域もある。

 日本も、地域によって、非常時のホームレスの人々に対する対応は異なるだろう。しかし、いかなる理由があったとしても、避難所は彼らの受け入れを拒否してはならない。行政が、ホームレスのための避難プランを作ることも重要だ。

 日本が人助けをする国として評価される日が来ることを願う。

(参考資料)
World Giving Index 10th edition
Homeless Claim They Were Segregated and Shamed During Irma
命の格差は止められるか(イチロー・カワチ著)


飯塚真紀子
在米ジャーナリスト
大分県生まれ。早稲田大学教育学部英語英文科卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会問題、トレンドなどをテーマに、様々な雑誌に寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲルなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。 

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鳩山元首相、ホームレスの避難所受け入れ拒否に「本性が現れる」…韓国での見聞と重ねる
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191016-00000130-dal-ent
2019/10/16(水) 21:25配信デイリースポーツ

鳩山元首相、ホームレスの避難所受け入れ拒否に「本性が現れる」…韓国での見聞と重ねる
鳩山由紀夫氏
鳩山由紀夫元首相が16日、ツイッターを更新。韓国・釜山にある国立日帝強制動員歴史館を訪れ、戦時中、日本において朝鮮半島出身者が防空壕に入ることを許されなかったことを知ったとツイートした上で、台風19号で被災したホームレス男性が東京都台東区の避難所に受け入れを求めながら拒否されていたことを重ね合わせ、「緊急事態には本性が現れる」と嘆いた。

 鳩山氏は「釜山にある強制動員歴史館で、朝鮮半島から動員されて労働させられていた人々は防空壕に入ることを許されなかったと言う事実を知り、言葉を失った」と投稿。その衝撃を踏まえながら、台風で甚大な被害を受けた日本国内に目を向けた。

 鳩山氏は「今回の台風の際に台東区の避難所にホームレスが断られたと知り、再び唖然とした」とつづり、「日本は和の国の筈なのに、緊急事態には本性が現れるのか」と指摘した。 



鳩山由紀夫
@hatoyamayukio

釜山にある強制動員歴史館で、朝鮮半島から動員されて労働させられていた人々は防空壕に入ることを許されなかったと言う事実を知り、言葉を失った。ところが、今回の台風の際に台東区の避難所にホームレスが断られたと知り、再び唖然とした。日本は和の国の筈なのに、緊急事態には本性が現れるのか。
 

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日本人の賃金が増えない根本理由 「内部留保優先の経営」から脱却せよ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191017-00000028-zdn_mkt-bus_all&p=1
2019/10/17(木) 7:00配信ITmedia ビジネスオンライン

日本人の賃金が増えない根本理由 「内部留保優先の経営」から脱却せよ

給与は増えるどころか、減少し始めている
働く人の給与が一向に増えない。一方で、消費者物価はジワジワと上昇しており、いわゆる「実質賃金」はむしろ減少傾向が鮮明になってきた。未曾有の人手不足だと言われる中で、なぜ人々の給与が増えないのか。あるいは、増えたという実感に乏しいのか。

【画像】厚生労働省発表の「現金給与総額」はいくら?

 厚生労働省が9月20日に発表した「毎月勤労統計調査(確報)」によると、7月の「実質賃金」は前年比1.7%減少と、前年同月を7カ月連続で下回った。名目賃金に当たる「現金給与総額」も37万4609円と前年同月を1.0%下回り2カ月ぶりにマイナスに転じた。9月8日に発表された8月の統計の速報値でも、実質賃金は8カ月連続でマイナスとなり、現金給与総額も2カ月連続で減少した。

 この調査は2019年の初めに発覚した「不正統計」で大きな問題になったもので、統計対象企業の入れ替えなどの影響が大きい。自民党の総裁選挙を前にした18年8月に発表された同年6月分の賃金上昇率が3.3%増(速報値では3.6%増)と公表され、新聞各紙が「21年ぶりの高い伸び率」と報じていたが、結局、対象の入れ替えの影響が大きく、実際には1.3%増だったことが明らかになっている。

 その後、政府は、過去からの時系列の変化を見るには統計数字は不適切だとして、集計対象を共通の事業所だけにした「参考値」を公表してきた。何とか、給与が増えているということを数字で示したかったのだろう。その「共通事業所」の現金給与総額は、政府が数字を公表した17年8月以降、ずっとプラスが続いてきたのだが、ついに7月には、このデータでも0.9%減とマイナスになった。

 どうやら給与は増えるどころか、減少し始めていることが統計数字のあちらこちらで鮮明になってきたのだ。

 安倍晋三首相は12年末の第2次安倍内閣発足以来、「経済の好循環」を繰り返し主張し、円安で過去最高の利益を上げている企業から、「給与増」の形で、従業員などへの恩恵が行くことを求めてきた。「禁じ手」と言われながらも、春闘に向けて経済界のトップらに毎年「賃上げ」を要請し、19年春の春闘まで6年連続でのベースアップを実現させた。18年の春闘では安倍首相が「3%以上の賃上げ」と具体的な目標数値まで示した。

 だが、こうした春闘で賃上げが決まるのは主として大企業だけだ。世の中の大半を占める中小企業の賃金はなかなか上がらない。多くの国民は所得が増えたという実感が乏しいと語る。

増え続ける「内部留保」
大企業にしても儲(もう)かった分に見合った賃上げをしているとは言い難い。

 というのも、企業が社内に溜め込んだ「内部留保」の増加が止まらないのだ。

 財務省が9月2日に発表した法人企業統計によると、18年度の金融業・保険業を除く全産業の「利益剰余金」、いわゆる内部留保は463兆1308億円と、前の年度に比べて3.7%増えた。企業が上げた利益のうち、配当などに回されず、会社内に蓄えられたもので、08年度以降毎年増え続け、7年連続で過去最大となった。

 全産業の経常利益が83兆9177億円と0.4%増に留(とど)まったこともあり、剰余金の伸び率は17年度の9.9%増に比べて小さくなったが、3.7%という増加率は利益の増加率0.4%を大きく上回っており、内部留保優先の経営が続いていることを物語っている。内部留保の463兆円は経常利益(83億円)で言えば、5年半分である。

 では、一方で、どれぐらい企業は「人件費」を増やしたのだろうか。

 法人企業統計で見ると、同年度に企業が生み出した「付加価値額」は314兆4822億円。前の年度に比べて0.9%の増加に留まった。一方で、「人件費」の総額は1.0%増の208兆6088億円で、辛(かろ)うじて付加価値の伸び率を上回った。とはいえ、17年度の人件費の伸び率は16年度に比べて2.3%増えていたのだが、18年度の人件費の増加率は1.0%である。安倍首相が言っていた「3%の賃上げ」には程遠い。この伸び率では、物価が少し上昇すれば、実質賃金はマイナスになってしまう。それが統計数字として現れてマイナス続きになっていると言ってもいいだろう。

 18年度に限って言えば、企業が生み出した付加価値の伸びと同率の伸びを人件費でも実現したことになる。だが、巨額に積み上がった内部留保という過去の蓄積を取り崩したのかと言えば、全くそうではない。前述の通り、むしろ、過去最大に積み上がっているのである。

 企業が生み出した付加価値のうち、どれぐらいを人件費に回したか、を見る指標がある。「労働分配率」といって、付加価値に占める人件費の割合を見たものだ。法人企業統計の年度数値は財務省が毎年9月に発表するので、担当の麻生太郎副総理兼財務相は毎回、記者から質問を受けてきた。昨年、2017年度の時は数値上「人件費」は増えているが、「労働分配率は下がっている」と噛(か)みついていた。法人税率を引き下げることになった際も、それで浮いた企業の利益が内部留保に回るなら意味がない、と苦言を呈していた。

低下し続けてきた「労働分配率」
今年発表した18年度の「労働分配率」は66.3%で、17年度の66.2%からわずかながら上昇した。人件費が大きく増えたと胸を張れる水準ではないのだが、今年は、麻生大臣は静かだった。あまり批判すると、安倍首相が掲げる「経済好循環」の足元を切り崩すことになってしまうからだろうか。

 ちなみに、「国」と「企業」と「家計」を経済の3主体と呼ぶ。18年度で見た場合、誰が最も収入を増やしたのだろうか。法人企業統計で見ると、企業が国に支払った「租税公課」は10兆8295億円。前年度に比べて6.5%増えた。法人税率は下がっているものの、企業業績の好調を背景に、法人税収や消費税収が増えた。実際、国の集計でも、18年度の税収は60兆3564億円となり、バブル期を上回って過去最大となった。

 租税公課は6.5%増、企業に残った内部留保は3.7%増だったのに比べて、人件費の1.0%増というのは、3主体で見た場合、家計への分配が立ち遅れていることを示しているのではないだろうか。

 労働分配率はアベノミクスで企業収益が好転するなかで、ほぼ一貫して低下を続けてきた。株主に分配する「配当」は総じて増加してきたのとは対照的だ。コーポレートガバナンス(企業統治)の強化が進むなかで、年金基金や生命保険会社などの発言力が増し、企業に増配などを求めるようになったことが大きい。

 コーポレートガバナンスの強化に反対する経営者の一部は、増配要求などをする米国のファンドなどが大儲けしているように言うが、実際は、日本国民の年金資産などを運用する基金や保険会社、金融機関を通じて、国民が受け取る年金の財政に寄与している。

 では、一方の労働分配率がなぜ上がらないのか。

 ひとつに働く側の主張が弱まっていることがあるかもしれない。毎年年末に厚生労働省が発表する「労働組合基礎調査」によると、18年6月30日現在の労働組合の組織率は17.0%。労働組合に入らない働き手が増え、加盟率が年々低下しているのだ。物言う株主が増えたように、物言う働き手が増える必要があるのかもしれない。

「付加価値」をいかにして増やしていくか
ただし、「労働分配率」を金科玉条のように考えるのは問題だ。企業収益が落ち込み、もともと生み出す付加価値が減れば、労働分配率は逆に上昇するからだ。リーマンショックの後などはむしろ労働分配率は上がった。だからと言って、働く人たちの給与が増えたわけではない。

 何よりも大事なのは、企業が分配の原資である「付加価値」をどうやって増やしていくか。付加価値を増やして、それを人件費として分配していくことこそ、企業の重要な役割だろう。日本企業は付加価値が低いと言われ続けている。特に、運輸や小売り、外食、宿泊といった産業では、国際的に見て低付加価値産業だと言われ、その結果、低賃金に喘(あえ)ぎ、人手不足に陥っている。どうやって日本企業の付加価値を高めていくのか。この連載で考えていくことにしたい。
(経済ジャーナリスト 磯山 友幸)

ITmedia ビジネスオンライン
 

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企業がためこむ内部留保が「463兆円」で過去最高、課税して国民に還元できないのか
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191017-00000850-zeiricom-bus_all
2019/10/17(木) 9:01配信税理士ドットコム

企業がためこむ内部留保が「463兆円」で過去最高、課税して国民に還元できないのか

〔グラフ〕法人企業統計より、各年度を比較(金融・保険業除く)https://rdsig.yahoo.co.jp/RV=1/RU=aHR0cHM6Ly9oZWFkbGluZXMueWFob28uY28uanAvaGw_YT0yMDE5MTAxNy0wMDAwMDg1MC16ZWlyaWNvbS1idXNfYWxsLnZpZXctMDAw;_ylt=A2RhPZ9PtKddrjsANcEEl.Z7

2018年度の「法人企業統計」(財務省)によると、企業が蓄えた内部留保に当たる「利益剰余金(金融・保険業を除く)」は、前年度比3.7%増の463兆1308 億円でした。利益剰余金の額は、7年連続で過去最高を更新しています。

政府・日銀は、2013年から「量的・質的緩和」によって、マネーを市場にどんどん放出させ、設備投資の増大や賃金上昇による消費の拡大によって景気の回復と2%の物価上昇を目指しました。

しかし、思うようには進まず、消費者物価指数は、「生鮮食品を除く総合」で、年平均(前年比)は、2016年が「▲0.3%」、2017年が「0.5%」、2018年が「0.9%」にとどまっています。

うまく行かなかった原因は、2014年の消費税の増税「5%→8%」、2015年からの円高 、2016年の原油安 があります。この他、原因のひとつに言われているのが、「企業が賃金を上げず、内部留保しているからだ」というものです。そんなことから、内部留保に課税すべきではないかとの議論があります。果たしてこの議論は妥当なのでしょうか。(ライター・メタルスライム)

●内部留保とは?

企業は、商品やサービスを提供して「収益」を得ます。そして、収益を得るために必要となる原価、人件費、賃貸料、水道光熱費などの「費用」を差し引きます。それが企業の「利益」となります。そこから税金を差し引いて、配当した残りが「内部留保」としてストックされます。おおまかな理解はこれで十分です。

会計的には、法人税等が差し引かれて最終的に残ったものが「当期純利益」ですが、そこから株主に配当として配分された残りが「内部留保」となります。損益計算書は単年度の分だけになりますが、それが累積的に溜まったものが、貸借対照表の「利益剰余金」として表示されます。この利益剰余金の日本の全体の額が冒頭で述べた「463兆1308 億円」になります。

●株式配当は増えるけれど、実質賃金は横ばい

これだけ多額の内部留保がありますが、株式配当は2013年以降順調に増えています。一方、物価上昇率を加味した実質賃金は、2013年以降ほぼ横ばいです。つまり、企業は儲かっていて、その利益はしっかり株主には還元されているけれども、従業員の賃金だけは据え置かれ、その分が企業の内部留保として貯まっているということです。物言う株主には利益を還元するけれども、文句を言わない従業員には還元しないという企業の姿勢が伺えます。

本来、内部留保の目的は、将来の損失に備えたり、多額の設備投資に備えたりすることですが、明確な目的もなく漠然とした不安があるので、内部留保として溜め込んでいるというのが実態だと思います。これは極めて問題だということで、内部留保に課税をすれば、それを避けるために、賃金を増やしたり、設備投資したりするのではないかということが議論されているわけです。

●内部留保課税に対する「二重課税」批判

内部留保課税で問題になるのが「二重課税」だという批判です。内部留保に回る利益は既に法人税が引かれた後の残りです。それに更に課税するとなると、二重課税になるからです。個人でたとえるなら、給与から所得税が源泉徴収されて残ったお金でやりくりしながら、余った分を貯金したら、お金を使わないのは経済に良くないということで貯金に対して税金を課すようなものです。

また、内部留保に課税すると、設備投資の原資が減り、借入金に頼らざるを得なくなるため、真剣に設備投資を考えている企業が、積極的に設備投資ができなくなるという懸念があります。

これらのことから、内部留保課税は簡単には導入できないのです。ただ、例外的に日本でも内部留保課税が認められる場合があります。それは、「特定同族会社の留保金課税」というものです。

簡単に説明すると、たとえば、社長が一人(100%株主)で経営している会社があるとして、会社が配当または役員報酬としてお金を会社から社長に移転すると、そこで税金が発生します。これを回避するため、会社に内部留保している場合、課税するというものです。このケースでは、社長と会社は実質的に同一なので租税回避させないために例外的に認められるものです。

留保金課税は、アメリカや韓国でも導入されています。韓国は大手企業の内部留保吐き出しを目的とした留保金課税を期限付きで導入しています 。アメリカは、営利法人に対し、合理的必要性もないのに配当せず留保している場合、租税回避目的として課税しています。

韓国における留保金課税導入の結果としては、配当の増加には回ったものの賃上げには結びつかなかったとされています。韓国の場合、二重課税という点については、政策的なものとして期限を定めて実行していることで批判を回避していると考えられます。

アメリカで留保金課税が認められているのは、法人の性質を実在するものとして考えているからです。配当すると株主に所得が発生するように、内部留保した場合、法人の所得と考えるわけです。また、会社側が事業のために必要であると立証できれば課税されないので、設備投資の減少にも配慮しています。

これに対し、日本の税制は、法人を株主の集合体と考える法人擬制説に近いものになっています。そのため、株主に配当しても完全には課税せず、二重課税の調整として配当控除を認めています。法人税についても法人が支払うということではなく、株主に対する所得税の前取りと考えられています。そのため、日本においては、内部留保に課税することはアメリカと同様には論じられません。

●内部留保に対する課税ではなく、明確な将来ビジョンを示すことが必要

日本において、実質賃金が上昇していないというのは大きな問題です。ただ、その方法論として内部留保に課税するというのは、韓国の例を見てわかるように効果的とは思えません。

そもそも企業が内部留保しているのは、漠然とした不安があるからであり、税金を意識するのであれば、法人税を回避するために、とっくに賃金を引き上げているはずです。内部留保課税で高い税率を掛ければ、おそらく配当は増えるでしょうが、賃金はそれほど上がらないと思います。なぜなら、賃金というのは一度上げると下げるのが非常に難しいからです。景気がいつ後退するかわからない状況で、重い固定費である賃金を企業は簡単には上げません。

このように、企業が賃上げについて消極的というのもありますが、日本の賃金が上がらない原因は、労働者側にもあります。組合が賃上げについて消極的で、従業員が、賃金が安くても会社を辞めないからです。優秀な人材が、給与が安いとして次々と転職する状況であれば、企業はそれを食い止めるため賃金を引き上げ、また、引き抜く企業はそれを上回る賃金を示すよう競争が生まれ賃金が上昇するからです。

ところが、日本では、終身雇用のもと新卒で就職した企業に一生勤務し続けることが良いとされていることもあって、転職市場が発達しておらず、会社に不満があっても従業員は簡単には辞めません。特に大企業の場合、それにあぐらをかいていて、従業員を軽視する傾向にあり、若い人は安月給でこき使われるのが常となっています。これでは、賃金が上昇するはずがありません。

政府が賃金の上昇を真剣に考えるならば、内部留保金課税を考えるよりも、雇用の流動化について生産性の高い分野に人材を送り込めるような仕組みを考え、転職によって賃金が上がっていくような競争原理のある労働市場にすることが求められます。また、企業が安心して賃上げできるように、具体的な景気の動向も含め将来ビジョンをしっかりと示すことが必要なのではないでしょうか。

(税理士ドットコム トピックス)

弁護士ドットコムニュース編集部
 

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40代のリストラ加速。人手不足は大嘘で、超低賃金の単純労働者だけを求める日本社会=今市太郎
https://www.mag2.com/p/money/786868
Money voice 2019年10月15日ニュース

40歳からの早期退職が猛烈に加速するご時世を見ていますと、労働力不足は大ウソで、実際には低賃金で長時間働いてくれる人材や建設関係の労働力、介護にかかわる労働力などが圧倒的に不足しているだけであることがわかります。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)

※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2019年10月7日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。

ほかの会社では通用しない。サラリーマンの「一生働く」は困難に
労働市場に嵐が吹き荒れる
大型台風の通過、皆さまの周辺には大きな被害がありませんでしたでしょうか?

昔から台風の被害というものはそれなりに発生する国であったわけですが、世界の気候が大きく変動してこれだけ次から次へと巨大台風が通過して甚大な被害がもたらされる時代が到来するとは夢にも思いませんでした。

しかし、この国の労働市場労働環境のほうも巨大台風以上に夢にも思わない状況が到来しているようで、この国に暮らしていく我々はここからの人生にこれまでにないような覚悟をもって臨む必要がでてきているようです。

台風一過に読んで楽しいメルマガにはなっていませんが、今回は国内の労働市場の激変についてお送りしてみたいと思います。

とうとう40歳からのリストラも登場
国内企業はこれまで昭和、平成はなんとか終身雇用を維持することができたことから、潜在的に500万人はいるのでは?とされてきた大手企業を中心とした社内失業者たち。

それがいよいよ外部に放逐される時代がやってきたようで、有能な人材以外は会社に残れない時代が鮮明になりつつあります。

東京商工リサーチが大規模な早期退職者募集を行う企業の状況を発表していますが、2019年の上場企業の早期退職や希望退職の対象が9月末時点で既に27社・計1万342人を超えたことを発表しています。

年間1万人を超えたのは6年ぶりということで、リーマン・ショック後の2010年を超える状況となっているようです。

また1,000人規模の早期退職募集を行う企業は今年上半期だけでも3社あり、つい最近ではセブン&アイ・ホールディングスが3,000人規模のリストラを発表しており、雇用情勢はかなり悪化していることがわかります。

いわゆる肩たたきによる退職というものは想像以上に進んでいることを、あらためて実感させられます。

景気の悪い企業では人員削減やむなしという見方も強いわけですが、本邦企業の内部留保額が日本のGDPと同額もしくはそれを上回るほどになっている状況下で、高収益企業でも人員削減が断行されようとしているのは、正直驚き以外の何物でもない状況です。

これまでバブル入社組で過剰に雇用してしまった45歳以上が一斉に人員削減の対象として狙われてきている話は、当メルマガでも何回かご紹介しています。

足元では、とうとう40歳から早期退職のターゲットになりはじめているようで、日本の企業はすでに新卒から20年会社にはいられないところになってきていることがわかります。

すでに雇用した人材を再教育したり配置転換して新たに戦略的に業務につかせることができない企業が続出していることを示唆する状況といえるのでしょう。

これまで企業のリストラや早期退職というのは、それぞれ個別に様々な事情を抱えていたことから一括りのトレンドとして語ることはできなかったわけですが、どうも現実はそうではなくなっている点に非常に危機感を感じます。

企業に足りないケイパビリティは、ジョブローテーションでは補えない時代
これまでの時代はITなどで大きく企業が変化するということになっても、企業内で新たな能力をもった人材を育てるということが多くみられてきました。

しかし、足元の中途採用は、社内に存在しないケイパビリティを補うことが中心になっており、一般企業におけるきわめてコモディティ化している人材のほかの企業への労働移動がかなり難しいことが目立ちはじめています。

たとえば自動車業界であれば、既存の自動車の設計生産の知見をもつ者よりも、IoTやAIといったまったく業界内に存在しなかったようなケイパビリティが求められるわけですから、既存の業界経験というものがほとんど有効に機能しないという現実があるわけです。

またM&Aの加速により同業社に買収されるリスクも非常に高くなってきていますから、これまでのように自社内では際立った知見の存在でも、買収先では必ずしもそうではなくなるという評価激変の可能性が高まりつつあります。

大手企業の40歳からの早期退職などが顕在化するのはこうした企業の環境変化の現れであり、これからはサラリーマンが一生働き続けることがきわめて難しい時代になってきていることを痛感させられます。

これまで正規か非正規かという問題は労働市場でも大きな議論の対象となってきましたが、どうやら問題はそういうレベルではなくなっているようです。

つまり。正規雇用に入ったから一生安心ということは、全くなくなってしまったようです。

私は過去にビジネスコンサルタントをしていた経験から、昨今、クライアントだった方からも転職について相談を受けたり、職務記述書の書き方のアドバイスなどを求められることが多くなっている状況です。

実は、自分のやってきたことを紙にまとめてみますと、本当に特定企業の社内だけで通用することに時間をかけてきた人が多く、転職の難しさというものを感じる次第です。

65才以上でも働きたいと願う国民が多いという、安倍首相の大嘘
安倍首相は「国内の8割が65才を超えて働きたいと願っている」などと、かなり事実を歪めた所信表明演説をしています。

実際の継続労働意向の理由は経済上の理由が6割近くをあげており、決して働きたいから働こうとしているわけではないことが見えてきます。

しかも高齢者が働く場所というのは非常に限られており、仮に労働意欲があったとしても、その意欲に見合う対価が得られ、しかもこれまでの知見が活かせる職業を見つけることは、足元の40代の危機をみても絶望的な状況であることがわかります。

年金受給を遅らせたいがために発言していることはもはや明白ですが、実際の国民は一体ここからどうやって生き延びていくことを考えたらいいのか、途方に暮れる状況です。

結局、低賃金長時間労働力が欠如しているだけで、マクロでの人手不足は大嘘
巷では労働力不足が叫ばれています。

しかし、すでに40歳からの早期退職が猛烈に加速するご時世を見ていますと、人手不足がかなりウソであり、実際には低賃金で長時間、大した保険にも加入しないなかで働いてくれるような人材や、建設関係の労働力、介護にかかわる労働力などが圧倒的に不足しているだけであることがわかります。

そして、サラリーマン経験しかないようなごく一般の人たちが社会に出て働き、それなりの報酬を安定的に確保できる状況はまったく実現できていないことを痛感させられます。

こうした雇用の深刻度については、当時者として直面されている方がもっとも強く感じていることと思いますが、人によってはもはや絶望的な気分になっている方も多いのではないでしょうか。

巷では業務委託契約のUber Eatsが国内でも登場していますが、ややもすれば高齢者が背負子(しょいこ)に店屋物を届ける時代がもうほんのすぐそこまでやってきているようで、Uber Eatsではなく老婆イーツだったなどというシャレにならない光景を目にするのも時間の問題のようです。

そのくらい年金を受給できない高齢者が働く場所というのは見当たらない状況で、やがてコンビニも70才以上のアルバイト従業員が店頭を支えるようになるのも夢ではなさそうです。

FXを事業として成立させる方法はあるのか
このメルマガは社会の歪みを訴えるのが目的ではありませんので、あくまでFXという領域で何か収入の手助けになることができないかと考え始めています。

別にサロンを始めようとも思いませんし、具体的な売買法をシグナルにして配信しようとも思っているわけではありませんが、なんとか食べていかれるようにするにはどうしたらいいのかについては積極的な材料にすべきだと思い始めています。

今のところはサラリーマンの副業的な存在で利益を獲得されることを目指す方でも、将来的にはこれだけで食べていかれないかを真剣に考える方が今後ますます増えていくのではないかと思います。

さすがに億トレーダー養成講座とはいかないと思いますが、サラリーマンと同等もしくはそれよりも多少収入が増えるような取引の考え方といったものについても、これからは積極的に話題としてご提供していきたいと思っております。

微力ながら頑張りますので、引き続きご購読をよろしくお願いいたします。

(続きはご購読ください。初月無料です)
 

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井上伸さん「公務員の削減で災害対応が困難に」

井上伸@雑誌KOKKO
https://twitter.com/inoueshin0/status/1183681290756743169
6:49 PM · Oct 14, 2019

(W)Twitterにupされた、とても的確な問題指摘です。Twitterの字数制限(140字上限)があるので5000字以上の文章を30数回の個別文章に分かれてアップされていたものを読み易くまとめて見ました。井上伸さんのプロフィールは、次の通りです。国公労連の雑誌『KOKKO』編集者(国公労連=日本国家公務員労働組合連合会)。グラフフェチ。福祉国家構想研究会事務局員。山家悠紀夫先生との共著『消費税増税の大ウソ―「財政破綻」論の真実』(大月書店)あり。雑誌『KOKKO』

〈公務員の削減で災害対応が困難に〉

 国土交通省の中で防災の最前線となる地方整備局。地方整備局の職員はこの12年間で4千人以上(18%)も減らされました。この職員の削減によって、いざ災害が起きたとき最前線に立たなければいけない出張所の体制が取れなくなっています。


災害対応には多くの業務があり、まず現場の被害状況を把握した上で関係自治体と連絡を取り災害対応のための業者や資材の手配をする必要があります。ところが職員が削減されていて災害が起こっていないくても普段の業務をこなすのも困難になっているので更に災害対応は困難になっているのです。
また、国家公務員の新規採用者の抑制が行われたときの年齢層の空洞化の影響が大きく、20代の職員が極端に少ないので業務の安定的な継続もままならない状況も広がっていることが、災害対応をより一層困難にしています。
地方整備局の職員数削減だけでなく、気象庁の職員も削減されて気象官署の数も減らされています。阪神淡路大震災の頃は気象台以外にも各地に測候所があったのですが、現在は帯広(北海道)と名瀬(鹿児島県)の2カ所のみで、それ以外は廃止されてしまいました。各都道府県の気象台は現在24時間体制。地方気象台には夜間2人で勤務していますが、来年度以降は夜勤を無くし、天気予報や警報・注意報の発表業務を地元の気象台ではなく地方予報中枢官署(札幌、仙台、本庁、新潟、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、鹿児島、沖縄)でまとめてやる計画が進んでいます
気象庁の職員が減らされ観測体制も縮小させられている一方で、よりきめ細かい気象情報が求められるようになっているため、長時間過密労働が増え心身ともに不調をきたす職員が増えているのが現状です。

〈ブラックアウト下で市民のために奮闘する国家公務員〉

 北海道胆振東部地震において国土交通省の地理院の職員は職員数が少ないため連続する徹夜業務で地図情報を伝え続け、気象庁地震課は現地の被害確認業務、経済産業省の防災、製造、電気などの産業の担当が道内のブラックアウト対策を行いブラックアウト下で一刻も早い発電施設の稼働が求められたわけですが、実際に発電するためには、設備だけでなくさまざまな原料が必要とされます。調達できる近郊の製造業等の稼働状況が確認できなければ、電気が安定して供給できるのか判断はできません。
また今回のブラックアウトでは広範囲の停電で通信網も途絶えましたが24時間体制で対応したのは総務省北海道総合通信局の仲間です。密接に関連するさまざまな産業の被害情報を迅速に確認した公務員の奮闘により、ブラックアウトにおいても市民生活の早期回復が果たされました。
こうした公務員の業務は当人たちにとっては当然のことで、ひけらかすことではないため、市民の「普通の生活」にどれだけ公務員が関わっていたのかを宣伝したりすることないわけですが、公務員の削減が続くなか、災害から国民の安全・安心を守る公務員を増やすことの重要性を発信しくことが必要です。

〈テックフォースでのべ6万人が被災地支援〉

 テックフォースは「緊急災害対策派遣隊」のことで、私も隊員なのですが地方整備局の職員を中心に9,663人(2018年4月時点)が登録されています。大規模な自然災害が発生した場合に派遣され、自治体を支援します。テックフォースの発想が生まれたのは、1995年に発生した阪神淡路大震災のときに大規模な災害だったものですから地元だけの対応では無理で、そのときはまだテックフォースという名前も制度もなかったのですが、全国各地の広域から支援に入ったことにあります。
こうしてテックフォースは2008年4月に創設されて最初に出たのは同年6月に発生した岩手・宮城内陸地震で、それ以降、2018年3月末までに東日本大震災をはじめ81の災害に対し、のべ6万人を超える地方整備局などの職員による被災地支援を実施しています。
東日本大震災のときに救命・救援ルートを確保するために被災7日後に国道を切り開いた「くしの歯作戦」がありましたし、私もテックフォースで現地に4月の第1週に行って、津波で水浸しになっていてご遺体の捜索ができないので、水を抜いて水位を下げてご遺体の捜索ができるようにしました。
排水ポンプ車という自家発電機で電気を起こして水中ポンプを稼働させて水をくみ上げる車が200台近く東北に行って太平洋沿岸でずっと排水していました。テックフォースの隊員は9,663人で、派遣実績はのべ6万2,952人ですから、単純平均で1人6回以上派遣されていることになります。
テックフォースの問題点はいろいろあるのですが、いちばん大きな問題は圧倒的に職員が不足している中で現地に行かなければいけないということです。この間の定員削減により通常業務を行うことも困難になっているのに加えてテックフォースでの派遣というのは職員に大きな負担になっています
私は個人的にはテックフォースは国際救助隊のように、中国で災害があったら日本の災害の専門家として飛行機も持って飛んで行くということをやれば、自衛隊を海外派兵するよりよっぽど国際貢献になると思っています。
災害対応のプロの専門組織を国土交通省としてつくって、年がら年中訓練も研修もして、自分たちがきちんと災害対応のプロになって人に教えたり、自治体の人に研修したりして、普段はそういうことをやりながら、いざ災害時には飛んで行くというシステムをきちんとつくる必要があると思います。
阪神淡路大震災の半年ぐらい前に、洲本測候所が無人になって機械化されていたりして、震度7の発表が遅れました。災害対応の現場から職員がどんどん削減されてしまって、災害のときにもしそこに職員がいたら災害対応ができたのにと思うことはたくさんありますね。

〈災害現場での委託労働者の労働安全衛生〉

 私は東日本大震災のテックフォースのとき委託労働者の方とずっと一緒でした。ポンプ車を24時間ずっと動かす仕事なので過酷な労働条件でした。災害対応にかかわって労働安全衛生がきちんと守られていなかったり事前の訓練がされていない問題があります。
災害対応という危機管理の仕事をするのに委託労働者を使うことが問題で、危機管理の最前線で仕事をする自衛隊や消防や警察に委託労働者がいますか?という問題だと思います。
普段でも危険な仕事をしていてテックフォースで災害現場の最前線に行って仕事をするのは危険に決まっている。そこに委託労働者に仕事をさせるというのは、本来は成り立たないことだと思います。テックフォースにおける災害現場においても労働者の安全という面から見ても公務員を増やすことが急務です

〈国民の安全脅かす定員削減とインフラ設備の老朽化〉

 地方整備局の普段の仕事はインフラ設備の維持・修繕を行っているわけですが、地方整備局の職員は定員削減によって直近の10年余りで4千人以上減らされ、気象庁職員も同じ状況にあります。職員の削減に加えて、国道の維持・修繕費はピークだった1998年の6,560億円が2015年には3,900億円に削減されています。毎年、全国で100件以上の道路陥没が発生していますが、対策は後手に回っています。
高度経済成長期に作られたインフラ設備が設計上の耐用年数である50年を経過する割合が2032年には道路橋(約70万橋)が67%、河川管理施設(約1万施設)が62%、トンネル(約1万本)が56%、湾岸岸壁(約5千施設)が56%にのぼります。
自然災害がなくてもインフラ設備の老朽化によって国民の安全・安心が脅かされているのです。インフラ設備の9割以上は地方自治体が直接は管理していますから、地元建設会社がきちんと維持・修繕をすれば社会保障と同じように地元を潤し地域経済も維持できるようになるはずです。
ところが、インフラ設備の維持・修繕費は削減するし、地方自治体は合併し公務員を削減するしで持続可能な地方経済の循環を奪っていくばかりです。公務員の削減とインフラ設備の維持・修繕費の削減を並行させる今の新自由主義的な行政が根本的に間違っていると思います。
たとえば、「ここに今までなかった高速道路を作ったら、ここの地域経済の活性化になる」と言う。物流が生まれて工場が来るとか「競争力が増す」などと言うのですが、維持管理は競争力が増さないからないがしろにされるわけです。
安倍政権は「国土強靭化」とよく言っていますけど、災害に強い国土をつくろうと思ったら、災害に強い建設業界をつくる必要があるのです。東京に立派な本社ビルがあるスーパーゼネコン5社が「競争力が増す」とされる高速道路などを作って大儲けしていても、彼らはクレーンも持っていないし、ノミの1つも使えないのです。技術力のある建設労働者が全国各地にきちんといなければ、国民の安全・安心を守ることはできません。そして、国土交通省に技術力のある職員が全国各地に必要です。

〈雪害対応で1週間缶詰に〉

 私の職場では月の残業が80時間を超える職員ばかりです。私の職場は交代制勤務ではないので、たとえば夜9時から台風に対応する体制に入ると、大体次の日の朝9時まで仕事することになります。その間、仮眠をとってもいいということにはなっているんですけど台風に対応する体制に入るとパトロールをする必要があって、もし土砂崩れなどが起きたら現地にすぐ調査に行く必要があるので実際には全然仮眠は取れないのですが、それが終わっても自分の有給休暇を使うなら帰ってもいいよとなるので、長時間労働になるのは当たり前です。
北陸豪雨の対応で、警察や自衛隊はきちんと交代要員がいるのに、国土交通省の職員は30数時間も交代要員もなく仕事を続けて「死ぬかと思いました」と局長交渉で発言した職員がいましたが酷い実態です。
私は2014年に甲府に百何十年ぶりに降ったという雪害の対応で1週間出張所に缶詰になったことがあります。最前線の現場である出張所の職員は自治体や地元の業者の方とのつながりがいちばんあるので、「これをやってください」「あれをやってください」と対応をお願いする必要がありますしいろいろなところから24時間電話がかかりっぱなしになるので出張所の職員がいなければスムーズに雪害対応ができないのです。一緒に雪かきをしていた自衛隊は8時間経ったらきちんと交代するのですが、私たちはそもそも交代要員がいないのでずっと対応せざるを得ないのです。
公務員が削減されて通常の仕事だけで多忙になってくると、公務員がルンペン化すると言うか、流れに身を任せるだけで自分で物事を全く考えなくなってくる側面もあると思います。「なんでこんなことをやらせるのですか」「必要ないじゃないですか」という一言も時間を使うことになるから
「はい、わかりました」と対応してしまう。上から言われたことに逆らったらそれだけ時間も取られるし面倒くさいので、とにかく流れに任せてやった方が楽だというので上意下達で物事が進んでいくシステムになってしまっていると思います。
ある意味、政府が定員削減をするのはそういう側面もあると思います。上から言われたことに全部従う職員にするには仕事に埋没させるのがいちばんで、仕事に埋没させるには余裕を与えないように職員を減らす。
そうすると、霞が関本省の言うことは絶対であり、国会の言うことは絶対であり、首相の言うことは絶対であるという世界が出来上がってしまうのではないかと危惧しています。私たち公務員は国民に雇われているので、国民に必要だと思ってもらう公務員でなければいけません
昔、職場の先輩に「地方自治体の職員がそこに住んでいる住民のことを考えていなかったら、その職員は住民にとって悪でしかない。同じように国民のことを考えない国家公務員は悪でしかない。存在すら許されないんだ」と言われました。
いまこそこの言葉をかみしめて公務員の労働組合は運動をすすめる必要があると思います。常時も災害時も国民の安全・安心を守るために私たち公務員は仕事をする必要があるので、職員を増やして体制を拡充することが不可欠だと発信していきたいと思っています。

 

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2019年10月12日
「パワハラ対策法制化」の到達と課題
弁護士の笹山尚人です。

http://blog.livedoor.jp/tokyolaw/archives/1075977130.html

2019年6月に厚生労働省が発表した「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、全国の労働局に寄せられた「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は、82,797件。前年度比で1万件以上も増加する急激な増加です。
このように、増え続ける職場の世界における「いじめ・嫌がらせ」、「ハラスメント」について、対処の必要性が叫ばれて久しい状況です。

そんな中、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」が、2019年5月29日、国会で可決され、成立しました。この法律は、「パワーハラスメント法制化」とか、「パワハラ防止措置義務化」とか呼ばれることがあります。この法案自体が、いくつかの法律の改正や新設をセットにしたもので、その中に、労働施策総合推進法の改正案が含まれており、その改正案の中に、「パワハラ防止のための措置義務」と呼ばれるに値する内容が含まれているからです。以下、この改正労働施策総合推進法のことを、「パワハラ措置義務法」と呼びます。

パワハラ措置義務法については、今後厚労省が指針を定め、大企業では2020年4月に施行される見通し(中小企業は2022年4月以降)、とされています。厚労省の労働政策審議会では、去る9月18日に開かれた労働条件分科会で、この指針に関する討議が開始されました。

他方、世界を見ると、6月21日、ILO総会は、「仕事の世界における暴力と嫌がらせの撤廃に関する条約」を採択しました。

そこでここでは、これらの内容を概観し、その問題点や活用について、若干の考察を試みたいと思います。

パワハラ措置義務法の内容

パワーハラスメントの防止措置義務の法制化は、これまで事業主に義務付けられてはいなかった、「職場のパワーハラメントを防止するための対応策」をとることが義務付けられます。

詳細に見ていくと、この法律は、対応策をとることの対象となる現象を、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」とします(労働施策総合推進法三十条の二)。

このパワハラ措置義務法30条の2が示す、3つの要素、すなわち、

/場において行われる優越的な関係を背景とした言動
業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
その雇用する労働者の就業環境が害される

が整う現象のことを、「パワハラの定義」ととらえる考え方が多く見られます。この考え方の問題点については後述します(➡「パワハラの定義が示されたと言えるか」)。

事業主は、この現象に対して、「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」とされているのです。
また事業主は、厚労大臣が定める指針に基づき、「研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。」「自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない」、とされます。
こうした事業主がとらなければならない措置の義務化をさして、「措置義務」と呼んでいるのです。

また、事業主は、労働者がハラスメント申告をしたこと等を理由に、当該労働者を不利益に取り扱うことが禁止されます。また、労働者には、都道府県労働局長による指導ほか、調停の付託による解決などの行政機関での紛争解決の手段が設けられます。

こうした事業主の義務や不利益取り扱い禁止については、セクハラ、マタハラについても同様に定めれています。

ILO条約の内容

一方、ILO条約のほうは、「仕事の世界における暴力と嫌がらせ」の定義として、「一回限りの出来事か繰り返されるものかを問わず、心身に対する危害あるいは性的・経済的に危害を与えることを目的とするか、そのような危害に帰する、あるいは帰する可能性が高い、一連の許容できない行動様式及び行為またはその脅威(性差に基づく暴力と嫌がらせを含む)」と定めています。

そして、労働者には、暴力と嫌がらせから自由な仕事の世界への権利を認め、批准国に対して、法や政策などを通じて仕事の世界における暴力と嫌がらせの撤廃に向けた包摂的で性差に対応した総合的な取り組みを行うことを求めています。

対象となる「労働者」には、従業員に加え、契約上の地位に関わりない全ての労働者、インターンや見習い実習生などの研修生や元従業員、ボランティア、求職者も含みます。

「仕事の世界」には職場だけでなく、職場関連の旅行などのイベントや社交の場、食事や休憩の場、使用者の支給する住まいを含み、妥当な場合には通勤途上も含みます。

また、加害者・被害者には国内法に従い、顧客や患者、一般の公衆なども含むものとしています。

そのうえで、求められる行動の種類として、「仕事の世界における暴力と嫌がらせを禁止する法規の制定」や「適切な予防措置の行使」、「救済を受ける機会の確保や手引き・研修の提供」、「啓発キャンペーンの実施」などに関する規定が盛り込まれています。

ILO条約とパワハラ防止措置義務法との落差

こうしてみると、ILO条約とパワハラ措置義務法との落差が大きいことがわかります。

ILO条約では、「仕事の世界における暴力と嫌がらせ」の定義があり、パワハラ措置義務法は、パワハラの判断要素となる考え方が示されています。ですが両者を比べた時、後者の概念が狭いことがわかります。

また、ILO条約では、「仕事の世界における暴力と嫌がらせ」が禁止されるべきものとの考え方が示されていますが、パワハラ措置義務法には、パワーハラスメントを禁止する旨の明確な規定はありません。

また、ILO条約では、被害者の範囲や、「仕事の世界」と呼ばれる問題発生の場所について、相当広範なものが含まれることが明記されていますが、パワハラ措置義務法には、そのような規制の明記はありません。この点については、国会での附帯決議に基づき、今後の指針策定の議論にゆだねられることになっています。

こうしてみると、今回のパワハラ措置義務法は、ILO条約に比べると、内容的に乏しいものであることがわかります。

パワハラの定義が示されたと言えるか

この落差からわかるように、今回のパワハラ措置義務法には様々な問題点があると私は考えます。
その第一点として特に、「パワハラの定義」問題について、検討しておきたいと思います。

既述のとおり労働施策総合推進法30条の2では、措置義務の対象となる現象が成立するための3つの要素が示されています。この現象をもって「パワーハラスメントの定義」が与えられたと捉える見解を見受けますが、私はそれは誤りではないか、と考えています。

そう考える理由の第一は、まず、法形式の問題があることです。

法律で定義規定を設ける場合は、通常、「定義」を定める条文があり、その定義された事項について、こういうことができるとか、こうしなければならないとか、こうした場合はこのような対処をするとか、そのように規律がされていきます。
例えば、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」、いわゆるパートタイム労働法では、「短時間労働者」、すなわちパートタイム労働者の定義について、次のように定めています。

(定義)
第二条 この法律において「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。

ちなみに豆知識ですが、2018年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」では、パートタイム労働法は、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」と名称を変えることとなり、パートタイム労働者のほか、有期雇用の労働者についての決まりをも定める法律となります。この新法では、有期雇用労働者や、短時間・有期雇用労働者についての定義規定も定められており、それは上記の第二条に、2項、3項を追加すると言うことで、次のとおり定められました。

2 この法律において「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいう。
3 この法律において「短時間・有期雇用労働者」とは、短時間労働者及び有期雇用労働者をいう。

この「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」は、大企業では、2020年4月から、中小企業でも2021年4月から施行されます。

このように、法律で何かが定義されるということは、定義規定の存在をもって定義されるのが通常なのです。
既述のILO条約でも、「暴力とハラスメント」について、第一条で、「定義」としてその内容が定められています。

ところが、パワハラについて定めた労働施策総合推進法は、このような定義規定をパワハラについて設けたわけではありません。企業の措置義務を定めるくだりで、その対象行為にあたる3つの要素を述べたものです。

まずもってこの形式面の違いから、パワハラの定義がなされたと考えるのは問題ではないかと考えます。

しかし、それよりも、実質的な理由があります。それが第二の理由です。

この3要素をもってパワーハラスメントの成否を判断するということになれば、例えば、業務上の指導の範疇であればパワーハラスメントが成立しないということに結局行きついてしまい、パワーハラスメントの範疇を著しく限定してしまうのではないか、という危惧があることです。


この点、指導ではあっても適正な指導でなければパワハラが成立するのだという反論もありましょうが、なにが適切な指導で、そうでないかの判断は簡単ではありません。これまでの実務での事例でも、被害者の心を傷つける言葉が、「指導として相当な範囲を逸脱したとまでは言えない」といった言い方で、結果としてパワハラではないとして見逃されてしまう例をしばしば見受けます。このような実態を無視すべきではないと考えます。
また裁判例の中には、労災の成否の判断で、「業務指導の範囲内で強い叱責を受けた」として上司とのトラブルとの心理的負荷が存在したと認定して、結果として労災を認めた事例もあります(国・さいたま労基署長(ビジュアルビジョン)事件(東京地裁平30.5.25判決、労働判例1190号 23頁)。ここからすれば、適切な指導だったとしても、人格権を侵害してしまう事例もあり得る、ということになるのではないでしょうか。


パワハラの成否は、適正な言動であったかどうかではなく、特定の人物や職場やその周辺にいる人たちに向けた攻撃的言動があったかどうか、そしてその言動によって攻撃された者の人格・尊厳が傷を負ったか否かで判断すべきことです。

法律が示した3要素の現象は、パワハラが成立する典型的な場面の一つを指している例示にすぎず、パワハラそのものはこの現象に限らず存在し得る、ということに注意すべきです。そして、本来は、こうしたことについてまで、ハラスメントととらえ、かつ、事業主が法的対処の義務を負うべきものと考えるべきです。
以下、労働施策総合推進法三十条の二が示した3要素が示すパワハラのことを、「典型パワハラ」と呼ぶことにします。

パワハラ防止措置義務法の問題点

以上を前提に、パワハラ措置義務法の問題性を検討すると、まず、典型パワハラの成立する範囲が狭いことの当然の帰結といえますが、典型パワハラに当たらない現象についてどのように対応するのかの問題が発生します。

例えば、就職活動中の学生に対して行われた言動の場合、典型パワハラには、その雇用する労働者の就業環境が害されるという要素が成立しにくいですから、該当しないと考えられる場合が多いでしょう。しかし参議院の付帯決議は、こうした場合についても「雇用管理上の配慮が求められる」としています。これはどのように整理できるのでしょうか。

また、パワーハラスメントを違法だと宣言しなかったことにより、行政当局は相談を受けても、違法か合法かの判断ができず、適正な指導を行うのに限界があると考えられます。

さらに、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメント等、ハラスメントを細かく切り分けることで、複合的な事案やいずれであるか判定しにくい事案などについての救済を困難にします。

そして、防止措置義務の内容となると考えられる相談窓口の設置については、すでにセクハラ、マタハラで義務化されていますが、この窓口が問題の解決に貢献したと考えられる実例は乏しいと考えられ、その意味では措置義務自体の実効性が乏しいのではないかと考えられます。

ざっと思いつくだけでこうした問題があるわけですが、それについては対応検討はこれからの課題になっています。

成立した法律の活用

かといって、私は、成立したパワハラ措置義務法を使うなというつもりは全くありません。問題点は踏まえつつ、むしろ積極的に活用すべきと考えています。

なぜなら、まず何よりも、これまでパワーハラスメントについて、なんら法的手当が存在しなかったことについて、とにもかくにも手当をしなければならないという法律ができたということ自体が大きな前進だからです。
また、法の制定が、社会におけるハラスメント問題についての問題意識を広範に共有する機運を作る契機になるからです。

ハラスメント防止の措置とは、結局、現在、雇用機会均等法や育児介護休業法において、セクハラ、マタハラに対して定められている、ハラスメントに関する就業規則等の規程類の整備や周知、相談窓口の設置、被害発生の場合の迅速な対応措置とその整備といったことになると思われます。
こうした対応については、パワハラも含め、既に実行している事業体も少なくありません。その意味では、法の施行を待たず、今からこの整備を始めても、一向にかまわないのです。

そこで、大企業であれ、中小企業であれ、措置義務体制を整え、それらが適正に運用されているかをチェックし、問題点の改善に取り組むことを、今から始めていけばよいと考えます。
こうした取り組みの広がりこそが、社会における問題意識の共有につながっていくと思うのです。

また、法律家や労働運動に関わる者は、「典型パワハラ=パワハラではない」との観点をもって、典型パワハラに当たらない場合であっても、パワハラと捉えられる違法現象があること、そうした現象を含め、措置義務を果たすことが必要になるといった運用や提言に取り組むべきと考えます。

措置義務の具体的内容を定める指針についての労働政策審議会の議論が始まりました。
現在示されている指針の骨子は、まだ具体的内容が示されておらず、具体化は今後の議論の課題になります。
この指針が充実した内容となるか否かは極めて重要です。私たちは、指針策定の議論に参加をしていき、被害者にとって一つでも多く使い勝手のよい指針となるように尽力をすべきと思われます。

ハラスメント被害者が望むこと

以上の取り組みが行われ、また、パワハラ措置義務法の具体的運用が始まれば、指摘したような問題点があるのかないのか、改めてこの法律がこのままで良いのか、ILO条約との関係をどう考えるかといった議論も、より深化し、具体化していくと思われます。

私は、問題ある法律は問題を解消するように改正すべきだし、我が国は、ILO条約に批准して、この条約の求める内容に即した法整備を行っていくべきと考えます。

こうした議論をする際、忘れないようにしたいのは、「ハラスメント被害者が望むこと」を、いつも念頭におくことです。

今まで私は、ハラスメント被害に遭ったみなさんの相談に対応してきましたが、その中で、被害者のみなさんが望むことについては、以下のものが多いと感じています。

「現在進行しているハラスメントを直ちに止めてほしい」
「起こしたハラスメントが間違いだったとはっきり認め、謝罪してほしい」
「二度とハラスメントを起こさないでほしい」。

ハラスメントに関する法律はなぜつくられるのでしょうか。
それは、ハラスメントが被害者の心と体を傷つけ、社会と隔絶させ、最悪の場合、死をもたらす恐ろしい現象であり、そうした被害者をなくし、救う必要があるからではないでしょうか。
ハラスメント被害者が望むことは、この法律制定の核心に位置付く、切なる願いだと思います。

この被害者の望むことを忘れるとき、「この程度のことで」とか、「上司が部下を叱責しにくくなる」とか、「被害者が被害を受けたと言えばなんでもハラスメントになるのはたまらない」といった種類の議論にのみ込まれて、法は加害が免罪されるばかりの見せ掛けだけの制度に陥ってしまう、と思うのです。

諸外国の法にみるハラスメント対策

被害者が望むことに寄り添いながら、ハラスメント規制の法制度を検討する際、諸外国の先進的な例は参考になります。

ベルギーの「労働における暴力、ハラスメント法」では、ハラスメントに関する企業の義務が定められるとともに、被害者の権利として、「ハラスメントの停止、謝罪、損害賠償、使用者に対して解決を請求する権利、保護や原状回復措置、相談支援、治療・ケアを求める権利、仕事を休む権利、労災のために使用者に協力を求める権利」を定めています。

また、イギリスでもイギリス平等法でハラスメントは定義がなされ、顧客や取引先からのものであっても禁止されることが定められています。

こうした例にならいながら、我が国でも、法整備を進めていく必要があり、それが今後の課題と考えます。

労働組合への期待

これまで述べてきたような取り組みを推進するのは、社会全体の責任ですが、とりわけ当事者である労働者、その団結体である労働組合の役割は重要です。

労働者は、労働安全衛生委員会などの機関の中での議論をしてもいいですし、もっとざっくばらんに使用者と話をしても良いと思います。
労働組合には、率先してこの取り組みについて協議を始め、使用者に問題提起し、団体交渉をはじめとする協議の場を設け、協議を進めていくことを期待します。

出版計画
なお、今回の法の制定に合わせ、ハラスメントに対する考え方や、実践的対処について解説する書籍を、大和田幹太・滋賀大学名誉教授を中心として、何人かの弁護士や労働組合の活動家のみなさんと共同執筆する内容で発表することを、計画しています。
お楽しみに!

以 上 

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