論説−私論・公論 - 連合は過労死ゼロの流れに逆行する残業代ゼロ制度への反対を貫くことを求めます

連合は過労死ゼロの流れに逆行する残業代ゼロ制度への反対を貫くことを求めます

2017/7/26 23:25

             全国過労死を考える家族の会代表                                                                                    寺西 笑子


  私たちは、1991年の結成以来、過労死(過労自殺を含む)の労災認定を支援するとともに、過労死の防止のために一貫して取り組んできました。20146月には、多年にわたる私たちの願いが実を結んで、議員立法によって全過労死等防止対策推進法(略称・過労死防止法)が全会一致で成立しました。また、20157月には、「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会」を目指して、過労死等防止対策「大綱」が閣議決定されました。


この法律と大綱によって、国の責任で過労死の調査研究が行われるようになるとともに、過労死防止を目的に毎年11月を中心に全国各地で啓発シンポジウムが開催され、さらに年度を通して中学・高校・大学等で啓発授業が実施されています。そうした場で私たちは過労死被災者の家族として夫や妻、息子や娘の過酷な労働実態を語ってきました。


ところが、安倍内閣は、過労死防止法が成立した4日後には、「日本再興戦略 改訂2014」を閣議決定し、残業代ゼロとも定額ただ働きとも言われる制度(「高度プロフェッショナル制度」、以下「高プロ制」と略称)を創設し裁量労働制を拡大する方針を閣議決定しました。そして昨年9月には、安倍首相のもとに設置された「働き方改革実現会議」で、「時間外労働規制」による36協定の見直しがにわかに言い出しました。その結果、本年3月には、安倍首相と神津連合会長と榊原日本経団会長の間の「政労使合意」にもとづいて「時間外労働規制」を軸とする働き方改革の「実行計画」が発表されました。


昨年10月には、「第1回過労死白書」の公表と時を同じくして、電通の新入社員高橋まつりさんの過労自殺の労災認定が発表され、大きな反響を巻き起こしました。多くの若者が過労とストレスで潰されるまで働かされているなかで、政府が働き方改革を言い出した以上は、過労死防止に不可欠な残業の上限規制が実現するのではないかと期待されました。しかし、結局のところ、「政労使合意」にもとづく「実行計画」は、1日や1週間の残業規制には手をつけず、年間最長960時間、単月100時間、26か月平均80時間という過労死ラインの残業を法律で認める制度設計になっていました。


過労死は、実際には、労災認定された事案に限っても、脳・心臓疾患では月100時間以内の残業でも多発しています。また精神障害では80時間以内の残業でも多発しています。政労使合意の実行計画はこういう現実をまったく無視しています。連合がこれに合意したのは、過労死ゼロの流れに逆行し、働きすぎを助長するもので、私たちはとうてい納得できません。2年以上前から高プロ制の導入と裁量労働制の拡大が国会に上程されまま審議入りしていません。連合はこれについてはこれまで明確に反対してきました。 


なぜダメなのか。高プロ制は成果賃金制度ではなく、あらかじめ決められた額しか支給しない固定賃金制度に変えるものです。年収要件は1075万円以上という「一部の高所得者だけが対象」との印象を持ちますが、いちど成立すると年収要件はどんどん切り下げていくことが可能になり、経団連が要望する年収400万円以上まで適用される対象者が拡大しかねません。


裁量労働制は、実労働時間ではなく見なし労働時間によって時間管理を行う制度で、(国会に上程されている法案では企画業務型裁量労働制の)対象労働者が従来の労働者にとどまらず、「営業(課題解決型)などを行う労働者に拡大されることになっています。年収要件や年齢要件に縛りがなく、低・中所得者でも対象とされ、多数の若者が働かせ放題になるために過労死が多発する可能性があります。


連合はこれらについてはこれまで明確に反対してきました。ところが、連合執行部は、最近になって、ささいな修正要望と引き替えに、唐突に、高プロ制の導入と裁量労働制の拡大までも容認するに姿勢に転じました。報道ではこれが3月に出た「実行計画」と一体化されて、あらたな政労使合意案として、秋の臨時国会に上程されるとも言われています。


連合の修正要望は年間104日の休日を義務づけるとしています。週40時間制と年20日の年次有給休暇および16日の祝日を前提すれば、年間休日日数は140日(労働日数は225日)あるはずです。「高プロ制」のもとでは、労働時間の上限がなくなるのですから、年間104日以上の休日の確保が義務づけられたとしても、365日から104日を引いた261日は、何時間働かせても違法ではないことになります。仮に261日を毎日12時間働くと「労働時間」は年3132時間に達します。実際にはそんなことはほとんど不可能です。それは死ぬほど働くことを意味します。


働き方改革をめぐるこの間の政府レベルの議論は、もっぱら経済界の主導で進められてきました。過労死問題の当事者団体である私たち家族の会は、ヒアリングさえ受けたこともなく、完全に蚊帳の外に置かれてきました。他方、私たちは、高プロ制等に反対する連合主催の集会で挨拶に立って、残業ゼロの流れに逆行する残業代ゼロの労働時間制度に反対する立場を表明してきました。


 今回の連合の唐突な方針転換には傘下の組合からも批判や疑問が噴出していると言われています。森友学園問題、加計学園問題、大臣発言、都議選の結果などによって、安倍内閣の支持率が大きく下がっているもとで、労働時間制度の改悪も頓挫する可能性があります。そういうなかで、連合は安倍内閣を助けてどうするだろうかという見方もあります。


いずれにせよ、私たちは、連合が過労死ラインの残業容認と高プロ制の創設および裁量労働制の拡大を柱とする労働基準法改悪の推進役を買って出ることのないように要望します。連合は、働くものの生命と健康を守るという労働組合の原点にいまこそ立ち戻るべきときではないでしょうか。


 以上、過労死防止を願う家族の立場から申し入れます。                  


                      2017725

  • トラックバック (0)
  • 閲覧 (218)

トラックバック

トラックバックpingアドレス http://hatarakikata.net/modules/column/tb.php/412
コンテンツ
サイドメニュー1
サイドメニュー2

> ご入会申込フォーム

> わかもの労働相談

訪問者記録
今日 : 1534
今月 : 23197
総計 : 2129720

ページトップ