論説−私論・公論 - 声明 過重労働と過労死を助長する「働き方改革」関連法案に反対します

声明 過重労働と過労死を助長する「働き方改革」関連法案に反対します

2018/4/12 13:51
                         2018年4月11日

                                      過労死防止全国センター

                                      代表幹事 川人 博、寺西笑子、森岡孝二

1  安倍政権は、4月6日、「働き方改革」関連法案を閣議決定し、国会に提出しました。政府・与党はこれを今国会の最重要課題と位置づけ、早期の成立を目指すと言われています。法案は、労働基準法など八つの労働法規の改定を一つに束ねた形になっていますが、その柱となっているのは労働時間制度改革です。私たちはこれに対して、過労死(過労自殺を含む。)の防止に取り組む民間団体の立場から、これまで再三にわたって過労死防止の流れに逆行するものとして批判してきましたが、今般、あらためて以下のような理由で法案の審議入りと強行採決に反対を表明します。

第1は、法案の上程と審議入りの前提に関する疑問です。労働時間制度改革は、当初は企画業務型裁量労働制(以下「裁量労働制」)の営業職への拡大、「高度プロフェッショナル制度」(以下「高プロ制」)の創設、時間外労働の上限規制の三つがセットで上程されるものと考えられていました。しかし、裁量労働制の拡大案は、政府が労働時間は一般の労働者より裁量労働制の労働者のほうが短いという、虚偽のデータを前提に提案したことが明らかになり、野党と過労死家族の会などの強い反対で法案から削除されました。

しかし、問題はデータをめぐる疑義だけにとどまりません。報道によれば、裁量労働制をめぐっては昨年1年間で、272事業所が是正勧告や指導を受けています。また、野村不動産で裁量労働制を違法適用されていた男性社員が過労自殺し、労災認定されたと報じられている件では、東京労働局長の不遜で不適切な発言も問題になっています。労働行政をめぐってこうした状況があるもとでは、労働時間制度改革は拙速に事を運ぶことなく、正確な実態把握にもとづいて、働く者の命と健康を守る立場から慎重に進めるべきです。

第2は、高プロ制の危険性です。この制度は、年収1075万円以上の高度な専門業務に従事する労働者を労働時間の規制から外し、無制限に働かせることを可能にするもので、「定額働かせ放題」法案、あるいは「スーパー裁量労働制」法案とも言われています。第一次安倍内閣のときに「残業ただ働き法案」「過労死促進法案」として世論の総反発を受け、2007年1月に国会提出が見送られたホワイトカラー・エグゼンプション法案の焼き直しにほかなりません。現在示されている案では対象は年収の高い労働者に限られていますが、労働者派遣法の例から見て、いったん通ればたちまち対象が広げられることは必定です。厚生労働省の労災補償状況に関する資料によると、専門的・技術的職業従事者と管理的職業従事者を合わせた高度専門業務従事者では、過労死が多発しています。年収が1000万円以上の高賃金労働者は40歳代に多いと考えられますが、この階層は過労死の多い年齢層とぴったり重なっています。

第3は、政府案における時間外労働の上限規制の欺瞞性です。政府案は、36協定による残業の上限を原則として月45時間・年360時間としたうえで、臨時的な特別の事情がある場合は、特別条項付き36協定を締結することによって、単月100時間未満、複数月80時間以内、1年720(別枠の休日労働を含めれば960)時間以内の残業を法律で認めるものとなっています。しかし、厚労省の労災補償データを見ると、近年の脳・心臓疾患の労災認定件数の半数強は月100時間未満の残業で起きています。また、厚労省の調査によれば、特別条項付き36協定の9割は延長の上限を月100時間未満にしており、月平均の延長時間は78時間になっています。それだけに、「100時間未満」の上限設定は、特別条項付き36協定を締結している企業の大部分において、延長時間の引き上げを誘発する恐れが大きいと考えられます。そのために、この法案が成立すると、過労死をかえって多発させることが危惧されます。

第4に、法定労働時間をいっそう形骸化します。政府のいう上限規制は、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超える残業の限度については棚上げしています。政府案によれば、1日15時間の残業も、1週99時間の残業も、合計の残業時間が月100時間未満の範囲内であれば違法ではないということになります。月100時間の残業は、週5日×月4週で換算すると、1日平均5時間の残業を意味します。こういう制度を法律で定めることは、大本の法定労働時間をいっそう掘り崩し、労働時間の直接規制に大穴を開けることに通じています。

労基法による労働時間の規制を強化するには、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を基本として、現行の36協定による時間外労働の限度に関する基準(週15時間、月45時間、年360時間)を労基法に明記して、強制力を持たせることが求められています。その場合、臨時的な特別の事情を理由とする36協定の特別条項は廃止するべきです。

2 2014年6月、「過労死を考える全国家族の会」や「過労死弁護団全国連絡会議」などの熱心な運動が実って、議員立法により過労死等防止対策推進法(略称・過労死防止法)が全会一致で成立し、同年11月に施行されました。同時に、過労死等防止対策推進協議会がスタートし、そこでの意見が取り入れられた過労死防止対策に関する「大綱」が2015年7月に閣議決定され、過労死等の実態の調査研究、過労死防止の啓発、相談体制の整備、民間団体への支援などが行われてきました。

施行から3年経ち、法と大綱の見直し作業が始まっています。当センターから協議会に入っている7人の委員は、同法を過重労働対策法へ拡充すること、パワハラ防止を盛り込むこと、使用者および労働組合の責務を明確化にすること、EU(欧州連合)並みの最低連続11時間以上のインターバル休息規制を導入すること、企業に労働時間の厳格な把握を義務づけることなどを盛り込んだ法と大綱の改定を求めています。私たちはこうした改革こそが「過労死のないまともな働き方」を実現する道だと考え、現在国会に提出されている「働き方改革」関連法案の審議入りと強行採決に強く反対します。    以上                                                                  
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