論説−私論・公論 - 「感情労働者保護」(20190327)学習会の記録

「感情労働者保護」(20190327)学習会の記録

2019/5/15 10:15

 (W)日本と韓国ともに「お客様は神様(王様)」という風潮の中で、働く者に対する「悪質クレーマー」や「暴言」「暴行」「ハラスメント」などが問題になっています。韓国では「感情労働者保護」として法的な規制が進んでいます。この「感情労働者保護」についての学習会で私が話した報告を、岩橋・同センター事務局長が全国センター通信No.239(通巻249号)(2019年5月1日)8頁に的確に要約して紹介していただきました。以下、転載します。


労働組合組織拡大の重要な手がかりにも
公開学習会「韓国における感情労働保護の現状と日本におけるとりくみ」
 
 3月27日、公開学習会「韓国における感情労働保護の現状と日本における取り組み」を開催。講師は脇田滋龍谷大学名誉教授でした。脇田先生の講演は、2月に開催した20周年記念シンポジウムで好評だった「韓国における働くもののいのちと健康を守るとりくみの最近の動向」の報告に次ぐものとなりました(写真)。
 
感情労働とは
 「感情労働」とは、アメリカの社会学者のホックシールドが著書「管理される心-感情が商品になるとき」で定式化した概念で、「感情」を仕事の一要素とするサービス労働の本質的特徴を指摘したものです。ソウル市の感情労働条例では、「顧客応対など業務遂行過程で自身の感情を節制して自身が実際に感じる感情とは異なる特定感情を表現するように業務上、組織上要求される勤務形態」と定式化しています。
 韓国は、世界的に見ても感情労働者問題を最も熱心に取り上げてきました。悪質なクレイマーによる暴言・暴行、セクハラなどが大きな社会問題となり、企業による「お客さまは王様」などの教育・強要があり、コールセンターなど劣悪な労働環境で働く無権利で脆弱な感情労働者の保護の必要が強調されました。感情労働は危険・有害労働=「良質ではない」労働であり対策が必要とされ、補償と予防のための人員増による負担軽減(担当者のローテーション、休息・休暇、手当等)が、協約や法律によって明確化されました。また、感情労働問題をテコにして、サービス業における組織化も進められました。感情労働問題は大きく政治問題化し、「労働尊重社会」実現の焦点となり、「ローソク革命」を経て「労働積弊」の廃止が大統領候補の公約となりました。
 
補償と予防を重視
 また、感情労働による精神疾病について、「業務と関連して顧客などから暴力、又は暴言など精神的衝撃を誘発しかねない事件、又は、これと直接関連したストレスによって発生した適応障害、又はうつ病エピソードを認める」と労災と認められることになりました。予防としては、顧客応対職員に対する保護措置義務を明記。ソウル特別市感情労働従事者の権利保護などに関する条例(2016年1月)、保険業法など「金融5法」を改正して顧客応対職員に対する保護措置義務の新設(2016年3月)、文在寅(ムン・ジェイン)政権の下での「産業安全保健法」改正=感情労働保護規定定(=顧客の暴言等による健康障害予防措置)の追加(2019年3月)などが行われました。
 脇田先生は、「感情労働」について概念、用語の広がりに、日韓で差があるものの、「顧客至上主義」は共通し、消費者、顧客・乗客からの暴言や暴力が多く、類似した社会状況にあると指摘。日本においては、セクハラ・パワハラ対策は広がりつつあるものの、韓国との違いは顧客による暴言・暴行に対する対策の少なさではないかと警告しました。
 
求められる5つの課題
 感情労働保護へのとりくみに求められる課題として6つの課題を提起しました。第1に感情労働問題を広げ、持続的とりくみとすること。理論化・社会化・世論化を図り、政治的な争点に押し上げること。労働界だけでなく、市民団体にも取り上げてもらい、消費者にも理解を広げること。第2に、感情労働者保護を目に見える形で獲得すること。感情労働は労働者の人権、人間としての尊厳にかかわる問題であり、「労働尊重社会」を社会的に提起し、感情労働における被害補償と事前の予防をかちとること。第3に使用者・企業の労働者保護責任の明確化を図ること。企業文化全体の見直しを迫ること。第4に「感情労働者」保護とハラスメント対策の異同を押さえること。第5に日本と韓国における「異常」をしっかり自覚することです。日本と韓国は労働者の権利が世界的に見ても低い「労働法後進国」であり、労働組合を嫌う企業文化があると指摘。長時間・過密労働、過労死・過労自死の頻発、労働組合組織率や労働協約拡張適用率の低さも共通していると指摘しました。
 最後に、ハラスメント対策だけでは不十分だとして、権利保護が難しい「サービス業」での「感情労働」保護の重要性を強調し、労働組合組織拡大の重要な手がかりとしていくことと締めくくりました。   (全国センター岩橋祐治)
 
【関連資料】
□脇田滋「韓国における雇用安全網関連の法令・資料(6) : ソウル特別市感情労働者保護条例・関連資料」2017.09.29. <TD32036265>
https://opac.ryukoku.ac.jp/webopac/TD32036265(龍谷大学・リポジトリ、本文ボタンからダウンロード可能)
□公開学習会 配布資料:関連ニュースなど(試訳)
□公開学習会 配布資料:ソウル市感情労働保護ガイドライン 2017年12月(試訳)
 □[監視統制、崖っぷちの感情労働者]〈連載順序〉(レーバーネット)

 

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