論説−私論・公論 - 山崎慧さん「今なお続く「ロスジェネ」の苦境、貧困連鎖と支援不足の実態」(8/13)

山崎慧さん「今なお続く「ロスジェネ」の苦境、貧困連鎖と支援不足の実態」(8/13)

2019/8/15 9:47

今なお続く「ロスジェネ」の苦境、貧困連鎖と支援不足の実態

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190813-00210874-diamond-bus_all&p=1
2019/8/13(火) 6:01配信 ダイヤモンド・オンライン

今なお続く「ロスジェネ」の苦境、貧困連鎖と支援不足の実態

〔写真〕就職氷河期に社会に出たロスジェネは、非正規雇用・低賃金の待遇が現在も続いている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

就職環境が厳しかったロスジェネ
今でも苦境は続いている

 「失われた世代」を意味する言葉として、ロスジェネがある。ロスジェネの定義はさまざまだが、大学を1995年から2005年に卒業した世代を指すことが多く、2019年時点では、おおむね37歳から47歳に該当する。ロスジェネが大学を卒業したときの大卒求人倍率は1.2〜1.4倍程度で、足もと(2020年3月卒)の1.83倍やピーク時(1991年3月卒)の2.86倍と比べ非常に低い。

 大学卒業時の就職環境が厳しかったことから、ロスジェネの多くは新卒時に非正規雇用への従事を余儀なくされた。就業構造基本調査によると、男性の非正規雇用比率は1994年の8%から2002年に16%へと急上昇した。毎月勤労統計によると、2002年の一般労働者の時給が2739円だったのに対し、パートタイム労働者の時給は1019円と半分以下だ。バブル経済崩壊以降、整理解雇が事実上不可能な日本の労働法制のもとで、ロスジェネは団塊世代より上の世代の雇用を守るための調整弁として使われたように思える。

 ロスジェネの苦境は現在も続いている。賃金構造基本統計によると、男性正社員の月給は2010年の33.9万円から2018年には35.1万円へと上昇しているが、年齢別に見ると、40歳から44歳は37.7万円から36.6万円に、45歳から49歳は41.8万円から40.5万円にそれぞれ低下している。20−64歳のなかで月給が低下している年齢層は40代のみだ。ロスジェネの多くは、厳しい就職環境のもと、新卒時に本来の能力よりも賃金水準の低い企業に勤めざるを得なかった影響が続いているようだ。

 ロスジェネの雇用環境も厳しい。労働力調査によると、非正規雇用比率を年齢別にみると、25−34歳は2010年の25.9%から2018年に25.0.%に低下した一方、35−45歳は27.4%から28.0%に上昇している。ロスジェネは、現在の若年層を中心とした雇用環境の改善からも取り残されている。またロスジェネが役職につく年齢も遅れており、40代男性で職長級以上の役職についていない者の割合は2010年の21%から2018年には25%に上昇している。

国・企業から不利な扱いを受け、
制度上の恩恵からも取り残される

 ロスジェネは、データでは示されていない分野でも不利な扱いを受けていると考えられる。2017年には国会で保育園の待機児童問題が大々的に取り上げられ、保育園の整備が進められるようになった。政府は消費増税対策として幼児教育を2020年度から無償化し、企業では産休・育休の取得が推奨されるようになった。しかしロスジェネの多くは、出産や幼少期の子育てをすでに終えている。

 働き方改革の結果として、企業全体で見れば残業は減少したものの、残業代が支払われない裁量労働制のもと、ロスジェネ管理職は残業が減っていないという話をよく聞く。内閣府は、2019年の経済財政白書で年功序列などの日本型雇用慣行の変革を訴えているが、ロスジェネが40代後半に差しかかるタイミングで「若年時の低賃金を高年時の高賃金で取り返す」モデルを変革すると、彼らの生涯賃金は大きく低下してしまう。こうしてロスジェネは、上の世代や下の世代が享受した制度上の恩恵からも取り残される。

長期無業・非正規労働者を対象とした
支援策の実効性は不透明

 政府はこうした状況を受け、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、ロスジェネの就職を後押しする制度を遅ればせながら打ち出した。正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く労働者や、就業を希望しながら様々な事情により求職活動をしていない長期無業者を対象に、3年間の集中支援で同世代の正規雇用を30 万人増やすことを目指すとしている。

 ただし、その中身を見ると実効性は不透明との印象を受ける。「ハローワークに専門窓口を設置し、キャリアコンサルティング、生活設計面の相談、職業訓練の助言、求人開拓等の各専門担当者のチーム制によるきめ細かな伴走型支援」や「地方自治体の無料職業紹介事業を活用したきめ細かなマッチングの仕組みを横展開」は、有効求人倍率が1.6倍に達した現状では追加的な効果は限定的だろう。

 「大学などのリカレント教育の場を活用した就職相談の機会を提供」は、大学側に求められる対応だが、現状で大学で学び直す余裕がある者は、そもそも支援を必要としているのか疑問だ。「教育訓練、社会人インターンシップの推進、各種助成金の見直し等による企業のインセンティブの強化」は、財政規模次第で効果的な可能性があるが、給与体系を含めた制度設計は困難だろう。

ロスジェネの現在までの経緯やバックグラウンドは多様で、すべての層に恩恵がある制度を構築するのは不可能だ。またロスジェネ問題は、「長期無業・非正規労働者」と「低賃金正規労働者」という、原因は同一だが別個の対処が求められる2つの問題から成り立っている。政府の措置は前者のみを対象にしているが、後者も大きな問題だ。所得に応じた給付金なども検討してみてはどうか。

残された時間は少ない
求められる支援のさらなる充実

 ロスジェネは第二次ベビーブーム世代と重なるが、彼らの苦境により第三次ベビーブームは起こらず、人口動態がいびつになったことは、年金をはじめとしたさまざまな社会問題にも影響を与える可能性がある。今後はロスジェネの高齢化と貧困化が問題になるだろう。

 低賃金の40代の子どもと同居する親が定年退職することで世帯収入が下がる「7040問題」や、高齢の親の年金に依存しながら生活する子どもが社会との接点を失う「8050問題」も指摘されている。ロスジェネから生まれた子どもたちはこれから大学入学を迎えるが、親であるロスジェネの経済状況が是正されなければ、奨学金などを通じた貧困の連鎖が起きる恐れもある。ロスジェネ支援策は、さらなる充実が求められる。

 ※内容は筆者個人の見解で所属組織の見解ではありません。

 (三井住友DSアセットマネジメント ファンドマネージャー 山崎 慧)

 

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