論説−私論・公論 - 佐々木亮弁護士「吉本芸人に労組結成のすすめ」 (8/15)

佐々木亮弁護士「吉本芸人に労組結成のすすめ」 (8/15)

2019/8/15 22:12

吉本芸人に労組結成のすすめ 佐々木亮弁護士の直
https://digital.asahi.com/articles/ASM823VKXM82ULFA00Z.html?rm=318
有料記事 インサイド吉本問題
アサヒデジタル 聞き手・吉田貴司 2019年8月15日19時30分

〔写真・図版〕芸人による労働組合の必要性について話す佐々木亮弁護士=東京都千代田区

 雨上がり決死隊の宮迫博之さん、ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんら吉本興業所属の芸人が、振り込め詐欺グループなどの集まりに出席して金銭を受け取った問題は、「芸人の働き方」が抱える不透明さも浮かび上がらせました。労働法が専門の佐々木亮弁護士は「芸人も労働組合をつくるべきだ」と主張しています。佐々木弁護士にその理由を語ってもらいました。

「全員クビ」はパワハラ

 ――労働法の専門家として、一連の問題をどうみていますか。

 吉本興業と所属芸人の関係は一般的な会社と社員の関係と全く同じとはいえません。しかし実態として、特に若手の所属芸人の働き方は多くの部分を吉本興業の指示に頼っており、労働者の権利が適用される可能性はあると思います。

ログイン前の続き そうみると「労働問題」だらけです。社長の「全員クビにする」という発言は明確なパワハラに該当します。「契約解除する」は解雇の通告にあたりますが、そんなに簡単に解雇はできません。不当解雇ではないかという疑問が残ります。ギャラの不透明な配分は賃金の問題です。適正な契約書を作っていないという仕事の入り口の問題もあります。

 合宿に参加する研修生から「死亡しても責任は一切負いません」とする規約に承諾する誓約書を得ていたという報道もありました。研修生に労働者性があるかという論点はあるものの、芸人は体を張ることもあります。けがをしたときの労災の問題も考える必要があると思います。

派遣労働者に近い立場

 ――とはいえ、若手芸人が所属事務所に主張するのには勇気がいりそうです。

 日本の芸能界は、事務所の力が圧倒的に強く、バランスが悪いと思います。あるテレビ番組に出演したとき、吉本ではない事務所に所属する芸人さんと話していると「うちの業界もブラックですよね。僕だって、出ている番組でいくらもらっているかわからないんです」と話していました。番組の司会者を務めるほどの実力者でしたが、そんな人でも自身のギャラについてわからないというので、びっくりしました。本人、契約する事務所、労務を提供する相手のテレビ局といった三面関係があるので、派遣労働者に近い立場とも言えるかもしれません。

おかしな契約、無効に

 ――吉本興業が契約書を作っていないことも問題視されました。

 そもそもなぜ契約書を作るかというと、お互いの合意事項を前もってはっきりとさせておくためです。今回起きたような問題でも、事前に「反社会的勢力とのつながりがあるところに営業した場合」の処分を明記しておけば、事務所側のリスク管理にも役立ちます。

 契約を結んでも、やはり事務所側が強いということはあります。ひどい内容の契約書を結ばされた芸能界の人からの相談を受けたこともあります。内容がおかしすぎる契約は後から無効にすることもできます。

労組あれば違った処分も

 ――芸人が労働組合をつくる必要性を発信されていますね。

 労働組合法による労働者の定義は「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」です。芸能人がこの法律上の労働者であることは間違いないと思います。労働組合は、使用者の力が労働者より圧倒的に強いからこそ、労働者に団結権を保障して対等の状態にしようとするものです。近代国家として当然のシステムです。

 今回は、反社会的勢力との関係がある営業だったことが問題になりました。しかし、芸人たちがわかっていて営業したのか、行ってから反社会勢力と気づいたが営業せざるを得なかったのか、全く知らずに営業後に知ったのか、それによって情状が全く違います。それにもかかわらず、吉本興業は言い分を一切聞き入れず、関与した人たちは全員一律謹慎としました。労働組合があれば会社側もその存在を意識せざるを得ず、違った処分になった可能性はあると思います。

 プロ野球には、日本プロ野球選手会という労働組合があります。最近では巨人の山口俊投手が減俸処分と契約の見直しを受けたときに、選手会が不当労働行為救済を東京都労働委員会に申し立てました。労働組合があれば、会社側の行為に反発できるバネになりますが、芸能界には労働組合がないので、何も起きないのです。

事務所横断の組織に

 ――労働組合さえ作れば、問題は解決するのでしょうか。

 芸人自身、しかもそれなりに力のある方が声をあげて作らなければいけないと思います。例えば、ギャラの配分一つを取ってもマネジャーの給料もありますし、「どれくらいの配分がいいのか」は当事者しかわからない慣習で決まる部分もあると思います。そうしたものに影響を与えるには、それなりに力を持った人たちの発言力が欠かせません。

 またプロ野球の選手会のように、事務所を横断的に結ぶ労働組合にするべきだと思います。条件の改善を求める局面では、別の事務所の人が交渉をした方が言うべきことが言えるものです。

 最近は芸人がギャラの問題をツイッターで発信することもあります。でも、それだけでは一瞬の燃え上がりで終わってしまう。きちんと持続的に芸人の地位を改善していくには、集団で動くべきだと思います。

 現実を見て辞める人が多くなれば芸人という文化も廃れてしまいます。芸人のプライドのためにも労働組合を作った方がいいと思います。(聞き手・吉田貴司)
 

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