論説−私論・公論 - 大阪労働者弁護団「賃金請求権の消滅時効期間を他の債権と同じく直ちに5年とすることを求める声明」(1/10)

大阪労働者弁護団「賃金請求権の消滅時効期間を他の債権と同じく直ちに5年とすることを求める声明」(1/10)

2020/1/10 14:12

2020年1月10日

賃金請求権の消滅時効期間を他の債権と同じく直ちに5年とすることを求める声明

大阪労働者弁護団

代表幹事 森  博行

1.賃金請求権の消滅時効期間については、これまで、民法では1年間とする規定(短期消滅時効)が置かれていたが、その特別法である労働基準法115条において2年間(退職手当については5年間)と定められていたところ、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)により、民法の短期消滅時効の規定は廃止されることとなった。
 このため、改正民法施行後の賃金の消滅時効の在り方について、昨年7月以降、労働政策審議会労働条件分科会(荒木尚志分科会長)において検討が行われていたが、昨年12月27日、同分科会は同日付け報告(以下「分科会報告」という。)をとりまとめ、同日、これを受けて労働政策審議会(鎌田耕一会長)は加藤勝信厚生労働大臣に対し、「賃金等請求権の消滅時効の在り方について」(建議)を行った(※)。

2.分科会報告は、まず、賃金請求権の消滅時効期間について、改正民法における一般債権の消滅時効期間とのバランスから、‐談濃効期間は5年とし、∋効の起算点については、現行の労基法の解釈・運用を踏襲するため、権利を行使することができる時(客観的起算点)とすべきであるとしており、この点については妥当である。

3.いっぽうで、分科会報告が「ただし、賃金請求権について直ちに長期間の消滅時効期間を定めることは、労使の権利関係を不安定化させるおそれがあり、紛争の早期解決・未然防止という賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等も踏まえて慎重に検討する必要がある」として、「当分の間、現行の労基法第109条に規定する記録の保存期間に合わせて3年間の消滅時効期間とすることで、企業の記録保存に係る負担を増加させることなく、未払賃金等に係る一定の労働者保護を図るべきである。」としている点は極めて不当である。
 なぜなら、今回の民法改正においては、賃金請求権以外の債権(例えば医師等の診療報酬債権)についても短期消滅時効が廃止されたのであり、賃金請求権についてのみ「権利関係の不安定化」を理由に一般債権よりも短い消滅時効期間を設けることには合理的な理由がない。
 また、現行労基法115条は、民法174条1号の時効期間(1年)の特則として、労働者保護の観点からこれを延長したものであって、「労使紛争の早期解決・未然防止」を目的としたものではない。
 消滅時効期間について統一的な時効期間を設けた改正民法の趣旨に照らせば、労働者の賃金請求権のみが他の債権よりも不利に扱われるべき合理的な理由はない。また、労基法において、民法の一般原則よりも労働者に明らかに不利となる規定を設けることは労働者保護を趣旨とする労基法の本質と矛盾するものであり、法秩序そのものに重大な混乱をもたらすと言わざるを得ない。

4.以上の理由から、当弁護団は、政府に対し、今年1月に国会への提出が見込まれる労働基準法改正法案については、上記「3」で述べた「当分の間、賃金請求権の消滅時効期間は3年とする」旨の規定は盛り込まず、賃金請求権の消滅時効を改正民法施行と同時に直ちに5年とする内容とするよう強く求めるものである。

以上

※労働政策審議会建議「賃金等請求権の消滅時効の在り方について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08737.html
 

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