論説−私論・公論 - 朝日新聞 (社説)春闘回答 賃上げの流れ絶やすな (3/18)

朝日新聞 (社説)春闘回答 賃上げの流れ絶やすな (3/18)

2020/3/18 7:59

(社説)春闘回答 賃上げの流れ絶やすな
https://www.asahi.com/articles/DA3S14406558.html?iref=pc_ss_date
朝日新聞 2020年3月18日 5時00分

 春闘での経営側の回答が、低調な出足になっている。景気悪化や新型コロナウイルスの影響で経済の見通しは不透明だが、そういう時こそ、これまでのもうけの蓄えのある企業は積極的に働き手に報いるべきだ。

 労働組合の中央組織である連合の第1回集計結果によると、ベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ率は平均で1・91%と、前年の初回集計を0・25ポイント下回り、7年ぶりに2%を割り込んだ。鉄鋼など製造業を中心に、ベアゼロの回答も相次いでいる。

 日本経済は米中貿易摩擦や消費税率引き上げなどで昨年来弱含み、企業の売上高や経常利益もやや悪化している。企業側の慎重姿勢は、こうした状況を反映したものだろう。

 だが、企業全体でみれば過去数年間、好業績を重ね、利益水準はまだ高く、財務体質もおおむね健全だ。一方で、賃金は上昇が続いたものの勢いは鈍く、労働者側の取り分の割合は低迷している。

 賃上げは景気回復に遅れがちだ。それなのに、景気が揺らぐと真っ先に賃金が抑えられるのでは、働き手への分配はなかなか増えない。経営難の企業は別として、長期的な視点で人材への投資を継続すべきだ。

 連合の集計では、ベア分が明確に分かる回答を平均すると、ベアは昨年同時点の0・62%から0・44%に落ち込んだ。足元の物価上昇率は0・5%を上回っており、ベアではまかない切れていないことになる。消費を支えて経済の好循環を実現するには、程遠い水準だ。

 中でも解せないのは、自動車最大手、トヨタが7年ぶりにベアを見送ったことだ。豊田章男社長は組合への回答に際して「これからの競争の厳しさを考えれば、既に高い水準にある賃金を、引き上げ続けるべきではない」とまで述べている。

 確かに自動車業界は変革期にある。だが、トヨタは好業績を続けており、十分に社員に報いることこそ、競争力を高めることにつながるはずだ。

 この回答は春闘全体に悪影響を与えかねない。連合の神津里季生会長は、近年ベアの額を明らかにしていなかったトヨタが「ベアゼロ」を公表したことに疑問を投げかけ、「この局面でマイナス心理を出すことはあってはならない」と指摘した。

 春闘は今後、中小企業の回答が本格化する。連合の現時点の集計では、中小の回答は定昇込みで2%を上回り、ベアも昨年並みと、大手を上回る傾向にある。中小の賃金の底上げは長年の課題だ。大手との格差縮小のためにも、賃上げの流れを強めていく必要がある。 

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