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【社説】働く人を守る 労働組合を活用したい
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019112102000145.html
東京新聞 2019年11月21日

 労働条件の改善を求め働く人たち自らが労働組合を結成する動きが目立つ。働き方が多様化する時代、労働者の権利や健康をどう守るのかが大きな課題になっている。もっと労組を活用していい。
17%。最近の労働組合の推定組織率だ。換言すれば八割以上の職場に労組がないことになる。
 経営側に対峙(たいじ)する労働者の「盾」のような存在と言うには心もとない数字だ。
 一方、注目すべき動きがある。
 米配車大手ウーバー・テクノロジーズが日本で展開する「ウーバーイーツ」の配達員が十月、労組を結成した。
 配達員たちは雇用されている従業員ではなく「個人事業主」だ。個人事業主は法的には「労働者」ではないため労災や雇用保険、最低賃金などの規定が適用されない。配達員たちは特に事故時の十分な補償を求めている。
 まだある。東京電力の関連企業で各家庭の電気メーターの交換業務を請け負う人たちが昨年十二月に労組を結成した。請負契約打ち切り問題で団体交渉を求めている。請負で働く人も個人事業主だ。
 個人事業主でも労組は結成できる。それは労働組合法が失業者も含め雇用されていなくても広く労働者と認めているからだ。プロ野球の選手らが労組をつくり球団と交渉する例もある。
 個人事業主だが、実態は取引先から指示を受けるなど事実上労使関係にある働き方をしている人もいる。雇用形態に関係なく働く側は企業より立場は弱い。幅広く働く環境を改善せねばならない。
 労働運動は下火となったが、団体交渉などで企業と交渉できる労組の役割は今も小さくない。
 雇用される従業員でも今後は兼業や副業に挑戦する人や、フリーランス、外国人労働者も増える。どんな働き方をしても頼れる労組の存在はさらに重要になる。
 十一月に発足三十年を迎える連合もこの課題に直面している。
 今後は、こうした多様な働き方への支援に乗り出す。労組を結成できない人の連合加盟も認めるという。日本最大の労組の中央組織として当然の対応だ。
 連合は大企業で働く組合員が中心で「正社員クラブ」ともやゆされてきた。パートなど非正規労働者への対応が後手に回ってきたことは否めない。同じ轍(てつ)を踏むべきではない。
 「働き方改革」は労組のあり方の再考や意識改革も迫っていると自覚してほしい。 

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民主法律協会 パワーハラスメント防止指針素案に反対し抜本的修正を求める声明
http://www.minpokyo.org/information/2019/11/6668/


パワーハラスメント防止指針素案に反対し抜本的修正を求める声明

2019年11月18日

 1 2019年5月29日にパワーハラスメント(以下「パワハラ」という)について事業主に防止対策を義務付ける改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)が成立した。来年6月1日の施行に向けて,現在,厚生労働省労働政策審議会雇用環境・均等分科会(以下「労政審」という)において,パワハラに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の策定が議論されており,本年10月21日には指針の素案(以下「素案」という)が示された。
 しかし,以下に述べるとおり,素案は実効的なパワハラ防止にはならず,かえって使用者の弁解を許し,被害者へのバッシングを強める危険のある内容となっており,パワハラの防止や被害者の救済に逆行する重大な問題点がある。

 2 第一に,素案はパワハラを極めて狭く定義している。
 まず,素案は,パワハラに該当する「優越的な関係を背景とした言動」の「優越的」について「抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係」とする。しかし,これは大きな力関係の差を必要とする定義であり,極めて狭い。言動について被害者が反論等していた場合には,「抵抗または拒絶できない関係ではなかった」という使用者からの言い訳を誘発することになりかねない。
 素案では,「職務上の地位が上位の者による言動」が挙げられているが,ハラスメントは,職位や職種・雇用形態の違い等の職務上の地位に限らず,能力や資格,実績・成績などの個人的能力,容姿や性格,性別,性的指向など,あらゆる要因により発生し得るのであり,これらを広く含む定義とすべきである。また「同僚又は部下による言動」については,言動を行う者が業務上の知識や豊富な経験を有している場合や,集団的な行為でこれに抵抗または拒絶することが困難な場合に限ってパワハラとされているが,前記のとおりあらゆる要因によりパワハラが発生しうることから,上記限定は付すべきではない。素案のパワハラの定義は,パワハラ防止法成立前に出された「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議 ワーキング・グループ」報告(2012年1月30日)や提言(同年3月15日)からも大きく後退している。
 また素案は,対象の「職場」を事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所に限定している。 しかし職場の延長ともいえる,例えば懇親会の場においてもハラスメント被害は発生するのであるから,これらも含めるものと定義すべきである。
 さらに素案は,パワハラに該当する「就業環境を害する」言動について,「平均的な労働者の感じ方」を基準とすることが適当としており,「労働者の主観」にも配慮することが適当とした参議院附帯決議(全会一致)が何ら反映されていない。この点でもパワハラの定義は狭すぎるというべきである。

 3 第二に,パワハラに「該当しない例」が極めて不適当な内容となっている。
 素案では,6つの行為類型ごとにパワハラに「該当する例」,「該当しない例」が記載されている。「該当する例」は「殴打,足蹴りを行うこと」等,刑事罰に該当し当然禁止されるべき行為を挙げているにすぎない。
 一方,「該当しない例」はいずれも使用者のよくある弁解を挙げたものであり,極めて不適当である。前記2で述べたとおり,そもそもパワハラは各職場における個別具体的な人間関係等を前提にあらゆる要因から発生しうるものであり,一般化はし難く個別具体的なものであって,ある場合にはパワハラにならなくてもある場合にはパワハラになる場合は大いにありうる。そのことを捨象して「該当しない例」を指針で一般的に例示すること自体,妥当ではない。
 例えば,素案では,精神的な攻撃に該当しない例として「遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が見られ,再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意をすること」や「重大な問題行動を行った労働者に対して,強く注意すること」が挙げられている。しかし,多くのパワハラ事案で,使用者は「労働者の方に問題があったので指導したにすぎない」と弁解している。仮に労働者に何らかの問題があったとしても,人格を否定したり,社会的に不相当な言動は当然に違法な行為であり,上記記載は労働者に問題があればパワハラには該当しないかのような誤解を与える。また労働者に問題があったとしてパワハラ被害者をバッシングし,二次被害を与える傾向を助長することにもつながり,害悪ですらある。
 また,過小な要求に該当しない一例として,「経営上の理由により,一時的に,能力に見合わない簡易な業務に就かせること」が挙げられている。しかし,いわゆる「追い出し部屋」など,広い人事権を背景に労働者に簡単な作業をさせて退職に追い込もうとする使用者は,表向きは「経営上の理由による一時的な措置」と主張するものであり,素案はこのような使用者の常套句を正当化することになりかねない。
 他の例も,個別具体的な職場や人間関係等の状況によってはパワハラに該当する可能性があるものを含めて一般的に「該当しない例」とされており,誤解を招きかねない。
 本素案の「該当しない例」の記載は,すべて削除すべきである。

 4 パワハラ防止法は,深刻な社会問題となっているパワハラを防止し,被害者を救済するために成立した法律である。したがって,本来であれば,パワハラとして明確なものを例としてあげるのでは不十分であり,できる限り被害発生防止のため労働者の人格権を侵害するような行為をハラスメントとして捉える啓発こそが求められている。にもかかわらず,上記のように対象となるパワハラの範囲を極めて狭く捉え,使用者の弁解を正当化しかねない「該当しない例」を示した素案が指針として策定されてしまえば,同法の目的は絵に描いた餅となり,パワハラを防止する実効性がないばかりか,被害者へのバッシングを助長するおそれさえある。
 国際的にみても,2019年6月に行われたILO総会で,あらゆる形態のハラスメントを包括的に禁止する内容の条約が採択されたが,同条約は被害者保護の視点から,ハラスメントを「身体的、精神的、性的、経済的損害を引き起こす許容できない行為や慣行,その脅威」と幅広く定義し,国には、暴力やハラスメントを法律で禁じることを義務付け、被害者を救済する措置を求め、事業者には、被害防止へ職場で適切な措置を取ることや内部通報者らが報復を受けることのないよう防止策も必要で,必要に応じて制裁を設けると規定している。日本のようにハラスメント行為そのものの禁止規定や罰則を持たない国は少数派である。
 民主法律協会は,パワハラ防止や被害救済の理念からかけ離れ,国際的にも問題視されるおそれがある指針素案に強く反対するとともに,真のパワハラ被害の救済と根絶の観点から抜本的な修正を求める。少なくとも「問題とならない例」については全て削除するべきである。また,かかる重大な問題のある素案について,十分な議論もしないまま,次回11月20日に予定されている労政審で指針としてとりまとめることには,断固として反対する。

2019年11月18日
 民主法律協会
 会長 萬井隆令

 

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社説 特定技能制度 待遇や人権尊重がカギに
https://kumanichi.com/column/syasetsu/1261010/
熊本日日新聞 2019年11月18日 07:24

 4月に外国人労働者受け入れのための新たな在留資格「特定技能」の制度がスタートし、7カ月余りが過ぎた。出入国在留管理庁の発表によると、今月8日時点で新資格を得た外国人は895人。国籍はベトナム、インドネシア、フィリピン、タイなど。本年度に最大4万7550人とした政府の見込みからすると、かなりのスローペースにとどまっている。
特定技能は介護、建設、外食、宿泊、ビルクリーニング、農業など14業種に限って、外国人の就労を認める在留資格だ。技能移転を建前とした「技能実習」や留学生アルバイトと異なり、初めて本格的に単純労働に門戸を開いた。
資格を得るには、日本語と技能の試験に合格し、就職先と雇用契約を結ぶ必要がある。3年間の技能実習を終えた人は、試験が免除される。通算5年まで働くことができ、技能実習とは違って同業種ならば転職も認められる。このため賃金の高い大都市へ就労者が集中していくのでは、という懸念も出されている。
大慌てのスタート
国内の経済活動の中核を担う生産年齢人口(15〜64歳)は2017年10月時点で7596万人と、1995年のピークに比べ約13%も減少した。少子化が進み、日本経済は外国人労働者なしでは立ちゆかなくなっている。
導入から7カ月を過ぎても特定技能の受け入れが軌道に乗らない理由の一つに、資格取得のための試験が国内外でうまく実施できていないことがある。14業種のうち実施されたのは、介護、宿泊、外食など6業種だけ。日本と送り出し各国の2国間で、労働者保護などの細かな手続きや制度の擦り合わせが完全にできておらず、国によっては試験実施や雇用契約がまだ結べないという事情がある。昨年末の法改正から3カ月余りでの制度始動を急いだ日本に対し、各国の対応が追い付いていない。拙速にならないように、それぞれの国の事情や要望を踏まえてきちんと態勢を整えるべきだ。
将来の「試金石」に
日本だけでなく、中国、韓国などを含むアジア各国は、すでに労働力の獲得競争に入ったと言われている。特定技能制度はその中で、今後の日本が外国人労働者を引きつけていくことができるかの試金石になるはずだ。
国内にはすでに36万7700人(今年6月現在)の技能実習生がいるが、待遇や労働条件をめぐってさまざまなトラブルが指摘されてきた。実習者の多くが低賃金で働き、長時間労働や賃金不払いが問題化。中には肉親の死去時に一時帰国を望んでも雇用主に認められなかったというケースもある。外国人を単に「安価な労働力」とみなす意識があるとすれば、認識を改めなければならない。日本はもはや外国人に「来てもらっている」という局面に入っている。
特定技能制度では省令で、外国人労働者の賃金を「日本人と同等以上にする」と定めた。本人らが一時帰国を望む際にも「休暇を取らせる」とし、最終的に帰国費用がない場合は雇用主が負担することとした。外国人労働者の招致には、これら労働条件や待遇がカギになる。安全で快適な労働環境を確保し、人権を尊重していくためにも、雇用主は基準をしっかり順守してもらいたい。当局も指導を徹底してほしい。
共生社会に向けて
政府は今後5年間で最大34万5150人の特定技能受け入れを見込んでいる。海外の例から、外国人労働者の本格的な移入は、将来的に定住化につながるという指摘もある。ゆくゆくは日本人の雇用や賃金水準にも影響するだろう。諸外国を先例として、移民労働者との間であつれきが生じないよう長期的な目配りが必要だ。共生に向けた覚悟も問われる。
 

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どの国でも働ける!ウーバーイーツの本当の“衝撃”
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191118-00058258-jbpressz-bus_all&p=3
2019/11/18(月) 6:00配信 JBpress

どの国でも働ける!ウーバーイーツの本当の“衝撃”
ウーバーイーツの配達員。2019年6月8日、英国ロンドンで撮影(写真:ロイター/アフロ)

 (加谷 珪一:経済評論家)

 配達員による労働組合結成や商品投げ捨て事件など、このところウーバーイーツ(UberEATS)がメディアに取り上げられるケースが増えている。これだけ話題になるということは、ウーバーが急速に社会に普及していることの裏返しといってもよいだろう。

【写真を見る】受け取りを拒否したら、ウーバーイーツの配達員に捨てられた食事。

 同社の配達員に代表される、いわゆる「ギグエコノミー」(ネットを通じて単発の仕事を受注する働き方)は、労働に対する価値観を一変させるとも言われているが、一方で、低賃金の温床になる可能性も指摘されている。今後、拡大が予想されるギグエコノミーについて私たちはどう対処すればよいのだろうか。

■ 配達員が労働組合を結成

 飲食店の宅配代行サービスを手がけるウーバーイーツの配達員らが2019年10月3日、労働組合「ウーバーイーツユニオン」を結成した。

 ウーバーイーツの配達員は、会社と雇用契約を結んでおらず、法律上は社員という扱いにはならない。最低賃金や労災などについて定めている労働法制はあくまで労働者を保護するものであり、個人事業主は経営者という扱いなので法律の対象外となる。ウーバーの配達員も、実態は従業員に近いのだが、法律上は個人事業主であることから、ケガをした場合などでも労災保険は適用されない。

 ウーバー側もこうした問題について十分認識しており、配達中の事故でケガをした場合には25万円を上限に治療費を支払う制度をスタートしているが、十分とは言えない。新しく結成された組合では、配達員への補償拡大や報酬の透明化などをウーバーに求めていくという。

 “会社に完全にコントロールされた労働者”と“個人事業主”の違いが際立ってしまったのが、10月に発生した商品投げ捨て事件だろう。

 ある利用者がウーバーイーツで商品を頼んだところ、予定時間から30分も遅れた上に、スープがこぼれていた状態で到着したという。利用者が受け取りを拒否したところ「本部に確認します」と言ったまま配達員は戻らず、マンションの共有部に料理が袋ごと投げ捨てられていた(下のツイートを参照)。

 Uber Eats頼んだら、配送30分ぐらい遅れたうえに、スープこぼされてグチャグチャになってたから受取拒否したら、マンション共有部分に投げ捨てられてた。かなりありえないんだけど、サポートに連絡したら、個人事業主だから関与できない、勝手に警察に連絡しろの一点張り。ありえない…。@UberEats_JP pic.twitter.com/MxqpA46x3t

― Junya ISHINO/石野純也 (@june_ya) 2019年10月5日 ウーバーのサポートセンターに連絡したところ、配達員は個人事業主なので、(配達員が行った投げ捨て行為について)ウーバーは関与できない」「警察に連絡してほしい」と言われたそうである。この話がツイッターで拡散し、ネットではちょっとした騒動になった。

■ 同様のケースはずっと昔からあった

 法律上、配達員は個人事業主なので、配達員が行った不法行為(あるいはそれに近い行為)については、確かにウーバーが直接、責任を追うわけではない。ただサービス提供者として、そうした配達員の行為について調査したり、その状況を利用者に説明するといった対応はあってもよいだろう。

 この話題は、ウーバーイーツという外国発の新しいITサービスであったことから、世間の注目を集めたが、個人事業主がサービスを提供することによる問題というのは以前から存在しており、ウーバーに限ったことではない。

 代表的な例はバイク便だろう。かつて一部のバイク便の会社は、配達員を従業員ではなく個人事業主として扱っており、「配達員が起こしたトラブルについては責任を負わない」としていた。だが利用者からの批判などを受けて、厚労省が指導に乗り出し、最終的には労働者という位置付けで処遇されることになった。

タクシー業界でも似たようなケースがあった。タクシーの運転手はれっきとした従業員だが、一部のブラックなタクシー会社は、個人事業主に近い完全歩合制の賃金を導入し、最低レベルの賃金すら払わないケースがあった。このため運転手が近距離の乗客に暴言を吐いたり、乗車拒否をするといった事例が相次ぎ、一時は社会問題にもなった。最終的には業界全体で適正化が進み、運転手の労働環境はかなり改善してきている。

 つまり、ウーバーイーツのようなトラブルは昔からよくある話であり、もしこのサービスが社会に広く普及することになれば、ほぼ確実に労働法制に準じた対応が求められ、配達員の環境も改善していくはずである。

 一部にはウーバーのようなシェアリングエコノミーの到来で、奴隷労働が横行すると危惧する人がいるが、少なくとも先進国の法体型において、奴隷労働が広範囲に放置されるとは考えにくい。

■ 労働に対する価値観を根本的に変える可能性も

 むしろ筆者は、ウーバーに代表されるギグエコノミーが社会に普及した場合、グローバルレベルでの働き方や人の移動が激変すると見ており、むしろその影響が大きいのではないかとみている。

 ウーバーの配達員の仕事というのは、スマホ一つあればすぐに従事することができる。ラクな仕事ではないものの、しっかり働けば1日に1万円以上は稼げるので、この仕事があれば、最低限の生活は維持できる。

 確かに現時点のウーバーにはいろいろな問題があるかもしれないが、さすがにウーバーのような企業が、配達員に対して1円も払わないといった不法行為は行わないだろう。見たことも聞いたこともない会社で同じような仕事をすることに比べたら、配達員の精神的負担は軽いはずだ。

 しかもウーバーはグローバル企業なので、まったく同一のサービスを全世界で展開している。通常、いきなり他国に行ってまともな仕事を見つけることはほぼ不可能だが、ウーバーのような会社の場合、どの国に行っても、すぐに仕事に従事できる(当然、ビザを保有していることが大前提だが)。

外国人を事実上の奴隷労働に従事させる悪徳企業は各国に存在しており、日本もその例外ではない(外国人研修制度や技能実習制度という名の下に、事実上身柄を拘束し、劣悪な環境で働かせるという犯罪行為が日本でも平然と行われている)。外国で単純な仕事を見つけようとしている労働者にとっては、常に危険と隣り合わせというのが現実である。

 そうした中で、賃金があまり高くないとはいえ、グローバルなシェアリングエコノミー企業が、全世界で一定水準の労働環境を提供できるというのは従来にはなかった現象である。

 このような企業が増えてくれば、単純労働に対する価値観も大きく変わる可能性があるだろう。実際、都内で見かけるウーバーイーツの配達員の中には、外国人と思われる人も珍しくない。

 労働法制というのは、雇用形態や個別の経営環境、経営者の所事情など一切関係なく、あらゆる企業が遵守すべきものであり、それが実現できなければ先進国とは言えない。ウーバーの体制に問題があるのなら、常に改善を求めていくべきだし、こうした対応は、ウーバーのような新しいシェアリングエコノミー企業のみならず、すべての企業を対象にする必要があるだろう。

 むしろウーバーのようなグローバル企業が全世界で同一の労働環境を提供している方が、問題点を指摘しやすく、是正を求めることも容易である。ギグエコノミーを一方的に問題視するのではなく、こうしたプラスの面を評価した方がずっと合理的であり、最終的には労働者の利益にもつながるはずだ。

加谷 珪一

 

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教員の長時間是正に、変形労働時間制の導入は不要です 〜国会参考人意見陳述を踏まえて〜
https://news.yahoo.co.jp/byline/shimasakichikara/20191117-00151198/
嶋崎量 | 弁護士(日本労働弁護団常任幹事) 2019/11/17(日) 0:15

心からの笑顔で授業できる教員を増やさねばならない(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)
危機的な国会審議状況

現在、国会で教員の「働き方改革」に関連し、給特法の改正案が審議されている。
この記事を執筆した時点では、衆議院の文部科学委員会において、野党会派(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、日本共産党)の反対にも関わらず、自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決されてしまった。

NEWS WEB 「教員の働き方改革 改正案 衆院委員会で可決」2019年11月15日 19時00分

筆者も、この法案が審議された衆議院の文部科学委員会において、参考人として反対の立場で意見陳述をさせていただいたが、拙速且つ不十分な審議経過には、正直いって驚きを隠せない。
これから、衆議院本会議、参議院での審議が残されているが、このままでは法案の問題手すら明らかにならずあっさり成立してしまうのではないかと、強い危機感もある。

そもそも、この法案の全体像は、以下の通りである。
画像
法案の重要部分である、一年単位の変形労働時間制導入については、私も既に下記記事を書いている。
【筆者執筆・Yahoo!ニュース個人記事】
公立学校教員への1年単位の変形労働時間制導入は社会にとっても有害無益

この法案では、政府は法案提出の前提として、以下の認識の下で法改正に着手していることは重要だ。

○ 我が国の教師の業務は長時間化しており、近年の実態は極めて深刻。
○ 持続可能な学校教育の中で教育成果を維持し、向上させるためには、教師のこれまでの働き方を見直し、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようにすることが急務。
(法律案概要より)

要するに、「教師の業務は長時間」「実態は極めて深刻」であり、教育の質を維持するため「教師のこれまでの働き方を見直」すことが「急務」であるとの認識を示しているのだ。
この点には、この法案に対して賛成・反対の立場を超えて異論はなく、ここは争点ではないのだ。

争点を見誤るべきではない

本来、国会で争点とされるべきは、その「急務」であるとの認識の下、本法案がその対策となり得るものなのかだ。
その点が国会で審議されるべきなのだが、私が把握する限り、到底その点が審議尽くされたとは思えない。
参考人への質疑でも、深刻な長時間労働の実態、教育の質を維持する工夫、抽象的な教員の働き方飲み直しなどばかりが議論されていた。
本来議論されるべきは、一年単位の変形労働時間制導入が、その対策たり得るのかであるが、そこは議論が深まっていないように思う。

先行配信した記事でも触れたが、そもそも休日まとめ取りに変形労働時間制導入など不要だ。
そもそも、休日のまとめ取りを実現したいのであれば、地方公共団体が休日まとめ取りが可能になる条例を設ければ足りる。国がそれを推奨したいのであれば、法律で、地方自治体が条例でこれを可能にすることを定めればよい。
地方公務員である教員の労働条件は、勤務条件条例主義により、基本的には条例で決められる。だから、単純に条例で「8月に連続した特別休暇を与する」と定めれば、狙いである「休日まとめ取り」は可能なのだ。
わざわざ労働基準法の一年単位の変形労働時間制を持ち出す必要がないのだ。

なお、衆議院文部科学委員会では、岐阜市教育委員会教育長の早川三根夫氏から、岐阜市における夏期休業中に16日間連続の学校閉庁日を実施してている実例が報告されている(ただし、有給休暇等の既存休暇のまとめ取りによるもののようだ)。
現行制度上でも、休日まとめ取りは可能なのは、この岐阜市の例からも明らかなのだ。

しかも、既に先行配信した記事で触れたとおり、この一年単位の変形労働時間制導入時に、対象となる教員の意見を反映する手続きでもあり重要な労基法上の要件である労使協定が除外されているという点でも大問題だ。
なお、勤務条件条例主義とはいえ、実は地方公務員についても、法令条例に抵触しない限り、職員団体と当局の書面協定の締結が認められてる(地公法55条9項)。だから、万が一にも変形労働時間制を導入するなら、せめて書面協定が必須要件となるような法整備が歯止めとしては不可欠だ。

変形労働時間制は、1日単位・1週間単位の労働時間規制の「枠」を取り払う、危険な、例外的な制度だ。
だからこそ、労働基準法には、対象者や対象の労働時間などを詳細に定めた労使協定を定めて、監督機関である所轄の労働基準監督署への届出を義務づけている。また、恒常的な長時間労働の職場では導入できないともされている。そうった、厳格な縛りもなく変形労働時間制を導入するなど、許されないことだ。

実は、変形労働時間制は、多くの職場で既に導入され、労働「時間」削減ではなく、「残業代」削減、残業代不払いの「脱法」手段として悪用されている。
ただ、給特法のある教員の場合、現在も残業代がゼロであって、残業代削減のため導入メリットはない。それなのに、あえて導入をする狙いは、繁忙期の残業時間を減らし、みせかけの残業時間を削減することにあるとしか考えられない。
その本音を隠し、見栄えの良い「休日まとめ取り」が可能となるのだというデマを流し、労基法を歪める改正を通そうとするのでは、政府の対応はあまりに無責任だ。

日本労働弁護団が緊急集会を開催!

私が所属する日本労働弁護団では、なんとしても国会でこの法案について充実した審議を尽くしてもらいたいと、緊急集会を企画した。

◇日時 2019年11月24日(日)10:30〜(10:00開場)
◇場所 連合会館2階
(詳しくはこちらをご覧ください)

当日は、日本労働弁護団からのご報告に加えて、Yahoo!ニュース個人でもおなじみ、教員の働き方改革問題をリードしてきた内田良氏(名古屋大学准教授)、現職教員でこの間の署名活動など精力的に取り組んでこられた斉藤ひでみ氏(近時公表された実名は西村氏)、参議院文部科学委員会参考人で意見陳述された工藤祥子氏(教員の夫を過労死で亡くされた過労死遺族であり、ご自身も元教員。神奈川過労死等を考える家族の会代表)、教員を目指す学生さん、教員労働組合の方などから、ご報告をいただく予定である。
ぜひ、ご参加ください。

嶋崎量
弁護士(日本労働弁護団常任幹事)
1975年生まれ。神奈川総合法律事務所所属、ブラック企業対策プロジェクト事務局長、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、反貧困ネットワーク神奈川幹事など。主に働く人や労働組合の権利を守るために活動している。著書に「5年たったら正社員!?−無期転換のためのワークルール」(旬報社)、共著に「裁量労働制はなぜ危険か−『働き方改革』の闇」(岩波ブックレット)、「ブラック企業のない社会へ」(岩波ブックレット)、「ドキュメント ブラック企業」(ちくま文庫)、「企業の募集要項、見ていますか?−こんな記載には要注意!−」(ブラック企業対策プロジェクト)など。
 

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<社説>教員の長時間労働 業務内容の抜本見直しを
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1026841.html
琉球新報 2019年11月17日 06:01
県立の中学、高校、特別支援学校の教職員を対象にした2018年度の勤務実態調査で、厚生労働省が過労死の目安とする月80時間の残業時間を上回った教員が、延べ3078人にも上った。このうち月100時間を超えたのは延べ1314人を占める。

 教員の生命や心身の健康を脅かす長時間労働は、直ちに解消しなければならない。
小学校を含めた県内教職員の17年度の病気休職者数は前年度比11人増の424人で、在職者に占める割合は2・8%と全国の0・85%より約2ポイントも高い。業務負担と疾患発生との関連が考えられる。
教員は、児童生徒と直接向き合い、必要な知識を身に付けさせ、豊かな人間性を育成する立場にある。日々の業務をこなすだけで疲労困憊(こんぱい)していく職場環境では、子どもたちのためにもならない。
働き方改革関連法の4月施行によって、民間企業では時間外労働は原則月45時間、年間360時間以内を守らなければならなくなった。現在は大企業だけだが、来年4月から中小企業にも適用される。
文部科学省は今年1月、働き方関連法に沿う形で、公立校の教員の残業時間を1カ月45時間を超えないようにするという指針を出した。
民間企業で月45時間が上限となる中で、教員の働き方にも同じ条件が求められるのは当然だ。ただ、文科省の残業上限の指針に罰則はない。「臨時的な特別の事情」の場合は月100時間を超えない範囲で延長できるともしており、実効性に疑問がある。
そもそも公立校の教員に時間外手当は支給されていない。教職員給与特別措置法(給特法)によって基本給に一律4%の手当が上乗せされているだけだ。まずはサービス残業の温床となる給特法を改め、労働基準法の働き方のルールを教員にも適用することの検討が必要だ。
県教育庁の勤務実態調査の残業理由を見ると、最も多いのが部活動指導で、授業準備、事務・報告書作成、学校行事、学習指導、成績処理が続く。早朝や放課後、土日に行われる講座の残業は調査の対象外となっており、現場から「実態はもっと深刻」と指摘されている。
子どもたちの学習や育成に関わる広範な業務は、簡単に削減や合理化をするわけにはいかない重責だ。個人情報保護の関係で、家に持ち帰れない業務もある。現状の半分以下に残業を削るといっても、簡単なことではない。
教師の負担軽減を図り、ゆとりある働きやすい職場環境を実現するには、教員定数の増員が根本的な対策だ。ただし、そのためには財源の裏付けが必要になる。
増員が無理なら、教員の業務内容を抜本的に見直すしかない。最も負担が重い部活動指導などの在り方にメスを入れるべきだ。業務の見直しに向けては保護者や地域の理解と協力が不可欠となる。
 

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古賀茂明「安倍政権の働き方改革に騙されるな」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191111-00000030-sasahi-pol&p=1
〈週刊朝日〉2019/11/12(火) 7:00 配信AERA dot.

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談...


 中小企業で働く私の知人(Aさん)は、これまで毎日のように1時間強の残業をしていた。入社したときから続けていたので、特に疑問も持たずに過ごしてきたが、昨年、「働き方改革」という言葉と残業規制強化の話をテレビで見て、「私がいつもしているのは『残業』で、お金を払ってもらうべきなんだ」と初めて気づいた。それまでは、1時間程度の自主的な「居残り作業」はタダ働きで当たり前だと思っていたそうだ。

 Aさんは会社に残業代を請求したが全く相手にされず、職場は気まずい雰囲気になったという。その後、インターネットで知った誰でも加盟できる労働組合に参加して支援を受けたところ、過去2年分の残業代として約50万円強の支払いを受けた。「50万ですよ!」とAさんは喜んでいた。

 この話にあるように1時間程度の残業だとタダ働きになっている職場はたくさんあるが、サービス残業は労働基準法違反の犯罪だということが認識されていないケースは多いという。

 そこで思い出すのが、貸金業者に対する「過払い金」返還訴訟だ。法定の上限利率を超える高金利で借金して支払った利息のうち、上限利率を超える分は払い戻しを受けられるということを知らない人が大半だったが、弁護士事務所のテレビコマーシャルなどもあり、一気に認知度が高まった。

 残業を残業と認識すらしなかったAさんが権利意識に目覚めたのは、「働き方改革」の効果だと言っても良いだろう。

 今年4月に施行された改正労基法による残業時間の上限規制は、実は中小企業には適用されていない。来年4月から適用されるのだが、今後、中小企業労働者の関心が高まり、その結果、「過払い金」ならぬ「未払い残業代」請求訴訟が頻発するかもしれない。

 しかし、その労働者の権利行使を制限する法律がある。それは、労働者の賃金債権(賃金を払えと請求する権利)に2年間の消滅時効を定める労働基準法だ。実は、債権の時効を定める「民法」が存在するが、そこでは、一般債権の消滅時効は10年とされる一方、賃金債権は特例として1年とされていた。これでは短すぎるので、労働者保護のための労基法では、それを2年に延ばすという特則を置いている。

 ところが、一昨年民法が改正され、債権は請求可能となったときから10年または請求可能と債権者が知ったときから5年で消滅することになった。それに従えば、賃金債権の時効は5年だと解釈できる。この改正法の施行は来年4月だ。

 賃金債権については労基法が優先適用されるので、今のままなら2年。これでは、労働者の賃金債権が他の一般債権よりも保護が弱いという不当なことが起きる。そこで、労基法を改正して最低でも5年に延ばすことが必要になる。連合などもこれを求めている。

 しかし、この延長に経営者側が大反対した。現在は、3年まで延ばす案が有力である。さらに、有給休暇の取得権については、延長を全く認めず2年のままとする方向だ。延長反対の理由は、「中小企業が大変で可哀そうだ」という、「弱者保護」。しかし、それは建前に過ぎない。企業の利益優先で、一番の弱者である労働者の権利を無視しているのだ。

 この議論の経過を見れば、アベノミクスの看板政策「働き方改革」も結局はただの人気取り政策だったことがよくわかる。労働者は騙されないように気を付けなければならない。

※週刊朝日  2019年11月22日号

 

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過労死ラインを超える「共働き育児」のリアル
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191112-00313404-toyo-bus_all&p=4
2019/11/12(火) 7:43 配信 東洋経済オンライン

〔写真〕とある共働き家庭の「慌ただしい1日」をお届けします(写真:monzenmachi/iStock)

働く女性、働きながら家事育児を担う女性が増え、共働き世帯は全体の6割を超える日本。ただ、女性が家事をする時間量は平日・土日ともに4時間を超えるのに対し、成人男性の家事時間量は平日が54分、土日が約1時間半。今なお家事育児における女性の負荷は高い。
『働く人のための感情資本論ーパワハラ・メンタルヘルス・ライフハックの社会学ー』から抜粋・再構成し、共働き家庭の日常を切り取ってみた。めまぐるしい子育ての情景が浮かび上がってくる。

 とある共働き家庭のワーキングマザーであるAさん。総合職で責任もやりがいもある仕事についており、小学生と保育園児の2人の子どもがいる。上場企業に勤める夫は、家事も育児もわが事として引き受ける男性。出産にも立ち会い、1人目のときも2人目のときも育児休業を取得した。妻の2人目の育児休業が明ける際には、時短勤務まで取得している。

■保育園の「お迎え当番」の日を再現してみた

 お迎えの時間は動かせないデッドラインゆえ、その日も1日集中して仕事をして終業時間を迎えたが、やり残した仕事が気になりつつ、下の子を保育園でピックアップ。

 帰宅すると、そろそろ上の子も習い事から帰ってくる時間。上の子は学童には通っていないから、下校時刻から習い事までの時間は近くに住む母にみてもらっている。

 Aさんが適当に子どもたちの相手をしながら夕食を作っていると、恒例の兄弟げんかのゴングが鳴る。「あぁ、またか」と嘆息しつつ、火加減も気になりながら双方の言い分を聞いてなだめていると、案の定鍋が吹きこぼれ、慌ててキッチンに戻って後始末。

 さて、食事となったはいいけれど、「そういえば、ノートがなくなった。明日までの宿題ができない」と言い出す小学生。事前に言ってくれたなら、帰りにいくらでも立ち寄れるお店はあったのに。

 この時間からだと開いている店が限られるうえ、その店に指定のノートがあるか定かでない。でも、行くしかないのだ、下の子を連れて。下の子はまだ小さくて留守番はさせられない。とはいえ、連れて行くと、「おやつを買ってほしい」などと言い出すことが予想される。

 1日の仕事と夕食づくりを終えた身には、保育園児が駄々をこねるのをやり過ごすための体力と気力が残っていない。それに、今から出かけると入浴時間も就寝時間も後ろ倒しになる。やはり、夫に帰り道に買ってきてもらうことにしよう。

 夫に連絡をし、子どもたちの明日の予定を考えながらキッチンに戻ってヤカンを確認すると、今朝沸かしたはずの麦茶は真水だった。注ぎ口から出てくる透明な液体を見て一瞬固まりながら、そういえば今朝夫がお茶を沸かそうとしているときに、トイレット・トレーニング中の下の子が手洗いから彼を呼び、彼はその対応に追われていたことを思い出す。

 そうか、だから夫はティーバッグを入れないまま、入れたつもりで沸騰だけさせてしまったのだろう。気持ちはわかる。わかるし、仕方ない。だが、明日は子どもたち2人ともに必ず水筒を持たせねばならない日。冷蔵庫に冷えた麦茶は、残り少ない。

 軽いいら立ちと落胆を覚えつつ、麦茶を沸かし直す。今から沸かしても明朝までに冷えないかもしれないから、念のため、冷たいお茶のペットボトルも買ってきてもらおう。再び夫に連絡する。

■職場でも家庭でも、働き続ける

 帰宅した夫と子どもたちが入浴している間に、Aさんは食器洗浄機をセットし、洗濯物を仕分け、保育園の行事予定表を確認する。夕食までの時間に子どもたちが引っ張り出してきたおもちゃを軽く片付け、ホッとしようかと思ったそのとき、入浴を済ませた子どもたちが出てきたので、体にローションを塗ったり髪を乾かしたりする作業に移る。

 その作業だが、下の子が「これじゃない、あっちがいい」と言って、Aさんがあらかじめ用意したパジャマを着るのを拒み、仕方がないので希望のパジャマを取りに行っている隙に、今しがた片付けたばかりのおもちゃをまた引っ張り出そうとするのをいさめたり制止したりしながら進めなくてはならない。

 そして、そうやって着せたパジャマも、就寝前の歯磨きで前面が濡れてしまい、結局もとのパジャマを着せるほかなくなり、そのことが気に入らない小さな人は大泣きする。「泣きたいのは母です」と思っていると、夫がうまい具合に気をそらせて機嫌を直してくれた。

 平日、Aさんは持ち帰った仕事の資料とスキルアップのための専門書が気になり、それらに目を通したい思いを抱えつつ、結局その夜読んだのは上の子の宿題に関わる参考書や保護者向けの解説書と、下の子が読んでとせがんだ数冊の絵本であった。

 セカンド・シフトに疲れて能率が上がらないため、Aさんは目覚ましを明朝4時にセットして眠りについた。明け方、家族が起きてくるまでの2、3時間が、彼女の「残業」タイムである。全自動洗濯機とお掃除ロボットのスイッチを入れ、目覚めのコーヒーを淹れて、昨晩持ち帰った仕事をする。この「残業」はタイムカードには表示されない。

 このようにワーキング・マザーは、自らの職業上の仕事(ファースト・シフト)が終わった後に、家庭でこまごまとした仕事(セカンド・シフト)を同時並行で多数こなす。予定どおりにいかないことを織り込み済みで一応の予定を立て、臨機応変のリスケジュールを繰り返している。そのさまは千手観音がすべての手を使ってジャグリングを回し続けるイメージに近い。

 働く母親たちはジャグリングを回し続けられるように細心の注意を払っているが、子どもたちは天真爛漫に、たやすくそれを落としに来る。簡単な料理を作るにも、その都度作業の中断が入る。沸いていない麦茶の例でもみたように、作業を中断したことでうっかりミスや失敗につながる。

 ここには母親たちの嘆息やいら立ち、徒労感、諦め、泣きたい気分や投げ出したくなる気持ちなどがついて回る。育児しながらの家事・家事しながらの育児は、高度な感情労働である。

■昼夜問わず働くママたちに「過労死」の懸念も

 Aさんの1日の総「労働時間」をざっと算定してみる。午前9時から18時までの第1の勤務、そこから第2の勤務を経て子どもたちを寝かしつける22〜23時ごろまで、そして翌朝の4〜6時半頃までを「残業時間」とすると、計14〜16時間ほどになる。過労死の労災認定基準である「1日4時間の超過勤務・12時間労働」を優に超えている。

 Aさんの睡眠時間は平均して4〜5時間だという。最近どことなく体調がすぐれない日が多く、慢性的な頭痛や婦人科系の不調に悩むようになっている。ワークもライフもどちらも充実させたい、そのための努力も惜しまないワーキング・マザーは多いが、今後10年ほどの間に、ワーキング・マザーの「過労死」が顕在化するのではないかと考える。

 仕事と家事と子育ての3つが掛け合わさったとき、その負担は一つひとつを遂行する時の何倍にも膨れあがる。ワーク・ライフ・バランスや「女性活躍」を掲げるのであれば、家に帰った時にくつろげる時間と空間を、誰がいつどのようにして整えるのかについて議論を深める必要があるだろう。

 仕事も生活もバランスよくと言うのは易しいが、それを実現するにはいくつものハードルがある。ワーキング・マザーの「長時間労働」と心身の健康問題は、文化や社会、法、政策、すべての面から考えるべきテーマである。ワークもライフも充実させた結果、疲弊して心身の健康を害することのないような生き方と働き方について模索する時期にきている。

山田 陽子 :広島国際学院大学准教授

 

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公立学校教員への1年単位の変形労働時間制導入に反対する緊急声明を発表しました

2019/11/7

本日11月7日、公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制を適用できるようにすることを含む「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)の改正案が審議入りしました。
本改正案は教員の長時間労働を是正するものではなくかえって弊害が大きいものであるため、緊急で以下の声明を発表しました。
どうぞご一読ください。
【191107公立学校教員への1年単位の変形労働時間制導入に反対する緊急声明】


公立学校教員への1年単位の変形労働時間制導入に反対する緊急声明

2019年11月7日
日本労働弁護団
幹事長 棗 一郎

1 政府は2019年10月18日、公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制(以下、「本制度」)を適用できるようにすることを含む「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)の改正案を閣議決定し、本臨時国会での審議・成立を予定している。

教員の深刻な長時間労働は周知のとおりであるが、本改正案は夏休み等の長期休業期間において、「学校における働き方改革を推進するための総合的な方策の一環として」「夏休み中の休日のまとめ取りのように集中して休日を確保すること等が可能となるよう」にすることが目的であるという(法律案概要)。これによれば、授業期間を繁忙期として所定労働時間を増やし、長期休業期間を閑散期として所定労働時間を減らすことが可能となる。

2 しかし、本制度は、現在も多くの職場で労働時間規制を緩和して残業代を削減しようとする使用者の手法として利用されているものであり、総量としての労働時間を削減する効果などない。

そもそも公立学校の教員については、給特法において給料月額4%に相当する教職調整額を支給する(同法3条1項)代わりに、時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しないとされており(同法3条2項)、いわゆる超勤4項目(々山絢遜等、学校行事、職員会議、と鷯鏈匈嘉)を除いては時間外労働を命じることはできない建前になっている(同法6条)。

しかし、現実には部活動指導等にみられる恒常的な時間外労働が常態化しているにもかかわらず、これらは教員の「自発性」による業務遂行であるとして「労働」と取り扱われていない。これが、使用者による労働時間管理の意識を鈍磨させ、教員に過大な業務を命じることにつながり、長時間労働が蔓延する元凶となっているのである。

1年単位の変形労働時間制を新たに導入し繁忙期における所定労働時間を増やした場合、労働時間そのものは減らないものの、「時間外労働」とされる部分は減少することになる。しかし、これでは違法な現状の一部を追認するだけであり、政府が本来やるべきことは、給特法及びそれに基づく現状の抜本的な見直しと改善である。

また、そもそも本制度は、本来は恒常的な時間外労働がない事業所で適用されることを前提とした制度である(平6.1.4基発1号「労働基準法の一部改正の施行について」)。教員は夏季休暇中においても研修や部活動等に忙しく、時間外労働が生じているという調査結果もあるところ、かかる教員に本制度を導入することは本制度の趣旨に反するものである。仮に繁閑期を区別することができるとしても、繁忙期の長時間労働がなくなるわけではなく、むしろ繁忙期である授業期間の所定労働時間が増えることでこれまでよりも授業期間の労働時間が増大することは確実である。閑散期に休むことができれば繁忙期にいくら働いても良いというものではない。本制度導入により、過労死等のリスクは一層高まるものといえる。

3 他方、現在の法制度においても、条例に基づいて週休日の振替の期間を長期休業期間にかからしめたり、一定期間の学校閉庁日を設定するなどして休日のまとめ取りをすることは可能であり、そのように取り組んでいる自治体も多数存在し、文科省もこれを推進している(令1.6.28元文科初第393号)。したがって、上記立法目的との関係では本制度の導入は不要である。

4 そもそも、労基法上の1年単位の変形労働時間制は、労働時間規制を大きく緩和するものであり労働者に与える影響が大きいため、当事者である労働者の意見を反映させるべく過半数代表者等との労使協定の締結を要件としている。しかし、本改正案では労使協定ではなく条例により定めることとなっており、労働者である教員の意向にかかわらず一方的に所定労働時間を割り振りすることが可能となる。労働条件の最低基準を定める労基法が労働者の健康を確保するために労働時間を規制していること、及び前述した労使協定を要件としている趣旨に鑑みれば、労使協定を要件としない本制度の導入は労基法に反するものであり、絶対に認めてはならない。このような労基法の規制を緩和した制度導入を許すことは、労働時間規制全体にとっても大きな後退となり、今後他の公務労働者・民間労働者に波及するおそれもある。

5 本制度導入の方針が示された中央教育審議会の答申(平成31年1月25日)に至るまでの本制度に関する議論は全く不十分なものであった。かかる拙速な方法で上記のとおり弊害だらけの本制度を導入することによって真の教員の働き方改革を妨げてはならない。
いうまでもなく、教員の長時間労働の是正は、教員の労働環境の問題であるだけでなく、教育の質を確保するためにも重要であり、社会全体にとって喫緊の課題である。政府は、教員の長時間労働是正のために本来必要である、教員の業務負担軽減や教員の人員(とりわけ正規教員)の増員に真剣に取り組むべきである。

以上のとおり、日本労働弁護団は、教員の長時間労働を放置し、むしろ悪化させる本制度導入には断固として反対する。むしろ政府がやるべきは、労働組合等の労働団体に寄せられる現場の教員はもちろん、多くの市民の声に対して耳を傾け、給特法によって業務遂行を「労働」とは認めていない現状の抜本的な見直しと改善である。

以 上

 

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イ・ナムシン「配達ライダーは労働者だ」
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=161343
2019/11/07 毎日労働News コラム

(W) 日本でもウーバー・イーツにユニオンが結成されましたが、韓国では以前からバイク便など個人請負形式の働き方が広がっていました。特殊形態勤労従事者(特殊雇用)と呼ばれ、その保護が問題になっていました。この5月に「ライダーユニオン」が結成され、労働者としての権利主張の取り組みが広がっています。そして、その一環としての申請を受けたソウル北部労働庁(日本の労基署に該当)が「労働者性」を認める判断をしました。その意味について、イ・ナムシン前・韓国非正規労働センター長が「コラム」を毎日労働Newsに掲載されました。日本とも酷似した問題です。急いで試訳してみました。〔訳文責: 脇田滋)


(試訳) 配達ライダーは労働者だ
イ・ナムシン韓国非正規労働センター常任活動家

 プラットホーム労働と特殊雇用、非正規職問題が社会的話題に浮び上がっている時、雇用労働部が重要な行政判断をした。労働部ソウル北部支庁が個人事業者として業務委託契約を結んで働く配達アプリ「YOGIYO」配達員が、去る8月、提起した申請に対する結果を先月28日通知して、配達員を労働者と認定したのである。労働部が、配達アプリを通じて働く配達員を労働者と認定したのは初めてである。当事者として持続的に問題提起をしたライダーユニオンは「YOGIYOの偽装請負が確認された」として、プラットホーム業者全般の偽装請負根絶運動に出るとも表明した。

 ライダーをはじめとするプラットホーム労働は、特殊雇用の非正規職問題と直結している。特殊雇用は、実際の労働者や労働者に近く、働いているのにもかかわらず、法的身分は個人事業者となっていて、勤労基準法や社会安全網の恩恵を受けることができない。自営業者と偽装された労働者であるとして偽装自営業者と呼ばれることになる。基本給もなく、事故が起きても本人が責任を負わなければならない。ライダーは、最も急速に増えている代表的な特殊雇用の非正規職職群である。

 注文代行プラットホームと配達代行プラットホームは、使用者責任回避が容易なように形成された代表的な産業構造である。ライダーに事故がおきた時、責任所在が不明である。食物を注文した消費者も、飲食店社長も責任を負わない。配達の民族やYOGIYOなど注文代行業者は、注文を仲介しただけであるのでやはり責任を負わない。ライダーが実質的に所属している配達代行業者も「飲食店ンとライダーの間を仲介しただけ」という理由で責任がないと主張する。皆責任を回避するのに丁度良い構造の下でライダーだけが犠牲の羊になってしまう。一言で言えば、憲法が保障する労働権と常識的水準の労働人権も侵害される死角地帯にライダーが今まで放置されてきたのである。

 特に、配達代行業者はライダーに対する出退勤管理罰金と懲戒、強制配車、休息など具体的な指揮・監督をしていて、使用者責任を負うのが当然である。今のように、使用者責任は放り出したままライダーを一方的に配達市場の危険な構造に追いやるのは当事者と家族はもちろん社会的にも大きな問題になるほかはない。配達代行プラットホーム企業らが法的にも堂々として初めてライダーもより良い条件でやり甲斐をもって働くことができる。

 何よりライダー権益向上と処遇改善のためには法的に労働者と認定されることが前提にならなければならない。問題は、ライダーのようなプラットホーム労働のように産業形態がネットワーク化されていて、直接的な従属契約よりは経済的従属関係で再編される状況では、既存の「労働者(勤労者)」概念が拡大する側に修正・補完されて初めてライダーも労働者として合法的な保護を受けることができる。

 まず一つ強調して労働部に希望する。労働部は今回の判断が申請を提起した配達員にだけ適用されるというが、これは誤っている。YOGIYOだけでなく、ベミンライダーズ・ペミンコネクト・クパンイーツなどの配達員も概して勤務形態が類似している。申請の有無と関係なく、配達員は個人事業者でなく労働者(勤労者)である。特殊雇用の非正規職職種の労働者性認定可否に関連する目を隠してアウンすること形態はもう終わらせなければならない。最近、「タダ」不法派遣論議が熱くなっているだけに、このときに使用者責任を私は知らないといったプラットホーム企業等の偽装請負形態を根絶しなければならない。

 国会も立法をこれ以上先送りしてはならない最近、スペイン、マドリード裁判所ではライダーを労働者と判決したりもしたし、アメリカ、カリフォルニア州議会でプラットホーム労働者を保護する法案が通過されることもあった。すでに、しばらく遅れたがわが国も急いでライダーを労働者と認定して勤労基準法でまず保護する必要がある。そうだから今回の労働部のYOGIYO配達員に対する労働者認定判断は重要な試金石である。

 今は配達時代である。ピザ・チキン・ジャージャー麺・ハンバーガー・トッポッキ・コーヒー・デザートなど、食物と化粧品・コンビニ用品など、多様な商品が家まで配達される。数十万ライダーが労働者として安全に働くことができる時、わが国社会の幸福指数も上がることができ、ライダーが会う顧客にもその幸福気勢が伝えられることができる。今こそ、ライダーを含む特殊雇用非正規労働者たちも憲法が保障した労働三権を享受できるように労働者性(勤労者性)を認められてるのが当然である。配達ライダーは労働者である。

韓国非正規労働センター常任活動家(namsin1964@daum.net)
イ・ナムシン
 

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