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労働環境を悪化させる“ブラック乞客”とは:ドコモ代理店「クソ野郎」騒動に潜む、日本からブラック企業がなくならないそもそもの理由 
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2001/20/news019.html
2020年01月20日 06時00分 公開 [新田 龍,ITmedia]

〔画像〕理不尽な要求をしてくる「ブラック乞客」(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)
「親代表の一括請求の子番号です。つまりクソ野郎」

「いちおしパックをつけてあげてください」

【画像】ドコモ、兼松コミュニケーションズの謝罪文

「親が支払いしてるから、お金に無頓着だと思うから話す価値はあるかと」

 千葉県市川市の携帯電話販売店で新年早々発生した接客トラブルは記憶に新しい方も多いだろう。

 携帯電話の機種変更のため販売店を訪れた男性客は、対応したスタッフから料金プランの見直しを勧められ、数枚の資料を渡された。その中に偶然紛れ込んでいた営業メモには、冒頭の通り当該男性を侮辱するような内容が書かれていたのだ。本件はすぐさまネットで拡散し、ニュース番組でも報道される騒ぎとなった。

 男性は「『親が支払い』というのは実家が自営業のため、父親名義でまとめて支払った方が都合が良いだけの理由であり、顧客情報から勝手に推測して、このような指示を出すなど信じられない」と語っており、ネットで話題になってからようやく、代理店側から謝罪の連絡があったという。

 携帯電話会社は「不適切な内容のメモを、お客さまにお渡ししてしまったことは事実」としたうえで、「当該店舗だけではなく、全店舗に対して、今まで以上に指導徹底し、再発防止に努めてまいります」とコメントしている。

 ちなみに、当該トラブルが発生したのがNTTドコモの販売店であったため、ドコモの体質を非難する声が多く聞かれたが、同キャリア販売店でドコモが直接運営しているところは存在しない。一部、ドコモの100%子会社である「ドコモCS」が運営する店舗はあるが、それ以外は全てフランチャイズ店なのだ。今回問題が起きた「ドコモショップ市川インター店」は、「兼松コミュニケーションズ」の運営によるもので、同社はドコモのみならず、au、ソフトバンク、ワイモバイルの携帯販売店を全国で約420店舗(2019年4月1日現在)運営している古参企業である。

〔画像〕ドコモからのお知らせ
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 全国に販売・サポート網を築くため、携帯キャリア各社は人件費を安く抑えられる代理店を活用する傾向にある。キャリア各社は独自のショップスタッフ教育プログラムを用意し、接客スキルの向上に努めてはいるのだ。ただ、スタッフの採用と普段の育成については各代理店の力量差がどうしても出てしまう。良い雇用条件を提示できる代理店なら能力の高いスタッフを雇える一方で、例えば給料の安い代理店にはレベルの低いスタッフしか集まらない、といったことも起こり得る。結果、今回問題を起こしたようなドコモショップが生まれてしまうわけだ。

■「クソ野郎」暴言の裏に“ブラック乞客”?
来店客にまつわる侮辱メモをやりとりし、それが流出するなどさすがに論外であり、今般の店舗および店員に対して擁護の余地は皆無である。しかしこの問題の背景には、一部のモンスタークレーマーなど悪質客への対応を強いられる接客業スタッフの鬱積したストレスがあるのかもしれないし、「悪質クレーマーも相手にしなければいけない、割に合わない職場だ」といったネガティブイメージが浸透し、結果としてモラル意識の低いスタッフしか採用できない状況に陥っている、という代理店側の事情もあるのかもしれない。これはドコモだけの問題ではない。さまざまな客層を相手にしなければならない携帯販売業界自体、ひいては日本という国で接客業を営むうえで特有の問題なのだ。

 携帯電話販売店に勤務する筆者知人はこう語る。

「今回の件についてはお店側の対応が悪いのは間違いない。しかし私たち販売スタッフもお客さまから心無い言葉を言われたり、怒鳴られたりすることも多いんです。かといって決して言い返すことはできず、こうやって報道されることもない。ストレスフルな環境ですよ」

 仕事柄、ブラック企業問題についてよくコメントを求められる。その中で、頻出する質問ながら回答が難しいのが「これほどブラック企業が社会的な問題になっているのに、なぜ淘汰されることなく生き永らえているのか?」というテーマだ。

 長くなるので詳細はまた別機会に述べるが、「労働法規と労働行政の問題」「日本的雇用慣行の問題」「経営者と従業員の問題」に加えて必ず筆者が挙げる理由の1つが「ブラック乞客」の存在だ(「乞客」とは、ホワイト企業アワードを受賞したシステム開発企業「アクシア」代表の米村歩氏が頻繁に発信している概念で、「理不尽な要求をしてくる悪質顧客」のことを指す)。

〔画像〕理不尽な要求をしてくる「ブラック乞客」(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)
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■「顧客」と「乞客」の違い
「顧客の要求」といえば、「見る目が厳しい日本の消費者の要求水準に合わせようと努力したことで、高品質の製品やサービスが生まれた」と肯定的に捉える向きがある一方で、「サービスや商品に完璧を求め、無限に要求をエスカレートさせるモンスター客やクレーマー対応のためにブラック労働が強化される」と批判的な文脈で捉えられることもある。

 後者については、日本社会における空気感のようなものと密接に関係している。長らく儒教的文化の影響を受けたことも一因かもしれないが、「立場が下の人は上の人の言うことを黙って受け入れるべき」かのごとき無言の社会的圧力があり、それに対して異論を唱えることは和を乱す行為と捉えられてしまう。教育やスポーツ指導の現場で、いまだに体罰やパワハラがニュースになり、職場で相変わらずセクハラやモラハラが横行しているのもその延長線上のことであろう。

 ブラック乞客も同様である。彼らは「金を出してるんだから言うことに従え」「お客さまは神様だろ!?」といった意識が根強く、自らの立場を「上」と見なし、過剰な水準の接客サービスを悪気なく従業員に強いる。結果的に、対抗手段をもたない末端の労働者が給与に見合わない過剰労働を強いられることにつながってしまうのだ。

■「お客さまは神様」の勘違い
ちなみにこの「お客さまは神様」というフレーズは、演歌歌手の三波春夫氏から発せられて有名になった言葉だが、これは悪質クレーマーが呪文のように唱える「金を払った客なんだから、神様扱いしろ」「神様なんだから、徹底的に大切に扱って尽くせ」といった意味では断じてない。氏は生前インタビューでこのフレーズについて問われた際、「歌うときに私は、あたかも神前に祈るように、雑念を払って澄み切った心になる」「演者として、お客さまを神様と捉えて歓ばせることが絶対条件なのだ」というふうに答えている。この場合の「お客さま」はあくまで聴衆のことであり、カスタマーやクライアントを指しているわけではないのだ。

〔画像〕三波春夫オフィシャルサイト お客様は神様です
https://image.itmedia.co.jp/l/im/business/articles/2001/20/l_kt_docomo_04.jpg#_ga=2.245813570.737811998.1579482234-1547005178.1571179941

 相応の対価も払わずに、サービス要求水準ばかり厳しいお客さまは「神様」ではない。高いレベルのサービスを受けて気持ちよくなりたいのであれば、それに見合った金額を支払うお店に行けばよいのだ。また、暴言や恫喝(どうかつ)で相手を無理やり動かそうとするより、「忙しいときはお互いさま」と対等な立場で、相手に敬意を払って接すれば、その敬意はあなたに返ってきて、大切に扱われるに違いないはずだ。客であることをかさに着て威張るブラック乞客は存在自体が“イケてない”のである。そもそも、自分から「お客さまは神様だろうが!」などと言い張る客にロクな者はいない。もし誤解されているようなら、本日より認識を改めて頂くことをお勧めしたい。

■企業間でも問題になる「ブラック乞客」
同じことは、接客業のみならず、企業間の取引についても当てはまる。エン・ジャパンが調査した「中小企業の残業実態」によると、「残業が発生している主な理由」のトップは「取引先からの要望(納期など)にこたえるため」(51%)であった。取引先に残業を強いる。まさにこれも「ブラック乞客」による被害であろう。

〔画像〕残業理由のトップが「取引先の要求」(出所:エン・ジャパン「『中小企業の残業』実態調査」)
https://image.itmedia.co.jp/l/im/business/articles/2001/20/l_kt_docomo_05.jpg#_ga=2.4125430.737811998.1579482234-1547005178.1571179941

 筆者は働き方改革推進による労働環境改善サポートが本業であるが、各地で経営者の皆さまに「日本はもう10年以上前から人口が減少しており、これから若い働き手はますます不足します」「そんな中、『何事も残業でカバーする』というやり方では取り残されますよ」と警鐘を鳴らし続けている。もちろん多くの方は危機感を抱いて行動を起こしていただけるが、中には次のように反論されるケースもある。

「それは分かるけど、実際残業をなくすなんてとてもできないよ! ウチはお客さんからの急な依頼にもすぐ対応することで選ばれているんだから!」

 お気持ちはよく分かる。実際、私自身もブラック企業勤務時代はまさにそのようにして仕事をとってきていたからだ。しかし結果的に疲弊してしまった経験があるからこそ、今は嫌われ役を覚悟してこのようにお返ししている。

「それは『選ばれている』のではなく、『あの会社なら多少理不尽な要求でもやらせられるだろう』となめられてるんですよ。御社がやるべきなのは『残業でカバーする』ことじゃありません。『ブラック乞客を切る』ことと、『品質で選ばれる』ことです」

 ブラック乞客の理不尽な要求を受け入れてしまうと、今度はそれに間に合わせるために自社の従業員に理不尽な長時間労働を強いることになってしまう。すなわち、理不尽が乞客から自社へ伝染してしまうのだ。

■顧客と協議を行い、ブラックな環境が改善したケースも
弊害はそれだけではない。ブラック乞客の要求に従って長時間労働してしまうと、適正な利潤を提供してくれる優良顧客への対応に十分な時間を割けなくなってしまう。そうすると仮に売上は確保できても利益は低下し、労働時間に見合った給与も払えなくなり、大切な従業員のやる気まで削がれてしまうだろう。

 そのためには、自社でできる範囲とできない範囲を明確に切り分け、顧客に説明して納得してもらい、かつ納期や仕様の面で協力してもらうことだ。実際、長時間労働が常態化していた運送業者が荷主と協議をおこない、「配送ルートや集配場所の見直し」「出荷作業に荷主が協力」などを実現した結果、残業が削減できた事例もある。

〔画像〕取引先と協議し、残業を削減した企業も(出所:厚生労働省「労働基準監督署等で把握した働き方改革を阻害する取引環境等の改善事例」)
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 顧客がそれ以上の対応を求めるなら対価を請求すべきであるし、それでも理不尽な要求を押し付けてくるようであれば、無理な要求をしない優良顧客を開拓していくしかない。

 例えば、福岡市早良区の建設資材リース会社「拓新産業」は、不人気で就職希望者が集まらなかったことに危機感を抱き、30年以上前から労働環境改善を続けている。業界的に「残業しない」「休日は仕事を受けない」ことを貫くのは困難であったが、取引先を回って理解を求めた。また、売上の2割を特定の1社に依存する状態だったが、「無理な注文を断れなくなるから」との考えで新規取引先を開拓し、今では約200社から広く薄く仕事を受けるやり方に改めた。同社創業者の藤河次宏氏は、こうした働き方ができるようになったのは「お客さまは神様」という考えを捨てたから、だと語っている。

【参考】福岡の建設資材リース「拓新産業」、社員満足主義で就職希望殺到(産経新聞)
https://www.sankei.com/region/news/170314/rgn1703140027-n1.html

 見かけの売上だけに左右されることなく、相手は理不尽な要求をしてくるブラック乞客なのか、お互いに敬意を払って仕事ができる優良パートナーなのかを見極めて取引したいものである。少なくとも、「取引先に理不尽な要求を突きつける顧客は『ブラック乞客』だ」という認識を世の中に広げていきたい。それが当たり前になれば、利益を産まない無駄な残業も、あり得ないようなクレーマーも消滅していくことだろう。

著者プロフィール・新田龍(にったりょう)

働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役/ブラック企業アナリスト

早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。労働環境改善による企業価値向上のコンサルティングと、ブラック企業/ブラック社員関連のトラブル解決を手掛ける。またTV、新聞など各種メディアでもコメント。著書に「ワタミの失敗〜『善意の会社』がブラック企業と呼ばれた構造」(KADOKAWA)他多数。
ITmedia ビジネスオンライン

 

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【社説】副業の促進策 働く人の保護が優先だ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020011602000151.html
東京新聞 2020年1月16日

 複数の勤め先で働く副業や兼業を政府が促進している。働き方の多様化は時代の流れだろう。だが、忘れてはならないのは健康で安全に働ける労働環境の整備だ。働く人の保護を第一に考えたい。

 仕事中にケガを負ったり病気になった際、医療を受けたり生活費などを補償する支えが労働者災害補償保険法に基づく労災制度だ。

 障害を負えば年金が支給されたり、介護が必要な場合はその費用の補填(ほてん)もある。しかも、財源となる保険料は事業主が負担している。労働者の「もしもの時」を支援する大切なセーフティーネットである。

 厚生労働省は昨年十二月、長時間労働に起因する労災の認定基準について、副業・兼業など複数の勤め先の労働時間を合算する仕組みに改めることを決めた。一月二十日に召集される通常国会に関連法改正案が提出される。

 これまでは合算が認められず、複数の勤め先で長時間労働を余儀なくされていても労災が認定されなかった。改正でより認定される人が増えるに違いない。

 労働者は生身の人間である。どこで働いていたかに関係なく、どれくらいの時間働いたかが健康に大きく影響する。実態を考えれば改正は当然だ。

 政府は二〇一七年に策定した働き方改革実行計画で、副業・兼業の促進を明記した。翌年には厚労省が「モデル就業規則」を、従来は禁止していた副業を認める内容に改定した。

 政府の取り組みが、働く人の命や健康を軽視し、単に働き手を増やしアベノミクスを支えることが狙いだとしたら問題だ。

 そう思わせる課題がある。

 労災は予防が大切だが、そのための労働時間そのものの把握・管理のルールが決まっていない。このままでは労働者ごとの労働時間の管理が十分にできない。停滞している議論を進めてほしい。

 さらに、企業などに雇用されていない個人事業主やフリーランスで働く人も保護の必要性は同じだろう。

 宅配サービス「ウーバーイーツ」の配達員でつくるユニオンや、俳優やダンサーなどでつくる協同組合「日本俳優連合」も個人事業主への適用を要望している。だが、改正案では対象外のままだ。

 どんな仕事でも働く人が能力を発揮するには安心できる職場環境が不可欠である。実態に制度が追いついていないのなら、政府はルールづくりを急ぐべきだ。
 

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長時間労働、外注先へのしわ寄せ、ハラスメント…ブラック企業の「今」
https://wezz-y.com/archives/71936
Wezz-y 2020.01.14 生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。皆さんは「ブラック企業大賞」をご存じでしょうか? ここ数年は毎年ネットニュースなどでも取り上げられるこの賞は、「ブラック企業大賞実行委員会」が主催しているもので、昨年末に第8回ブラック企業大賞2019が決定し発表されました。

 委員会が「ノミネート企業一覧&選考理由」を公表し、その中からWeb投票も考慮の上で、その年の「ブラック企業大賞」が決められます。入賞すると授賞式もあるのですが、もちろん参加した企業は無いようです。

 企業からすれば不名誉なことを「賞」として授与する発想はブラックジョークに思えます。しかし実は「企業一覧と選定理由」には、労働関連の事件や裁判が年ごとにまとめられてあるので、いまどんな問題が増えているのか、また、業種による傾向などのトレンドを掴むことができます。労働者にとっても人を雇う経営者や部下を持つ立場の人にとっても非常に参考になると考えられます。

 これらの内容も踏まえ、筆者が注目したブラック企業の「今」を、労働者目線でお伝えしていきたいと思います。

若い社員が犠牲になる
かつて仕事に起因した自殺といえば、責任の重い立場の人というイメージがありました。しかし最近は入社間もない社員やまだ20代という若い層の自殺が話題になります。

 こうした問題には、長時間労働と上司とのトラブルが付き物です。過労死ラインとなる月80時間の残業、さらに上司との関係に問題を抱えている場合、本人も周囲も注意が必要です。自殺まで追い込まれなくても、精神疾患なども増えているので、公になっていないケースも含めると職場でなんらかの重篤な問題を抱えている人は大変な数だと考えます。

 最近は長時間労働、サービス残業、メンタルヘルスに関する問題などが発覚すると、労働基準監督署からの是正勧告が入るのですが、勧告によって一発で解消する企業は少ないと思われます。労働基準監督署が動くと、全てが解決すると期待してしまう人にも注意を促したいです。

 また、労災認定や是正勧告を公表しない企業もあり、これも問題になっています。

フランチャイズ、業務委託などにしわ寄せがくる
ブラック企業といえば、社員に対する冷遇などが考えられますが、近ごろは、フランチャイズ先、外注先など、他社の社員とブラック企業の問題が増えています。

 例えば、トップが大手企業であっても、フランチャイズ契約で零細企業に業務を任せているケースは多く、また、自社の業務を社員ではなくフリーランスや別の会社に外注するケースも増えています。

 トップは、フランチャイズ契約先や外注先の労災など多くの責任を免れることができると考えており、リスク回避の目的で外注を増やす企業は今後増えていくと思われます。これらの働き方をする場合は、合法的に守られていない自覚を持つ必要があります。

 一方で、フランチャイズの企業が立ち上がったり、フリーランスがユニオンを作るといった動きも出始めています。今後、企業は自社の社員でないからといって好き勝手にできる時代ではなくなる気配はあるものの、まだまだだと思います。

#MeToo運動が話題でもまだまだ起こり得る
世界的に#MeToo運動が注目されている中、「職務上の優越的地位」を利用した性暴力による自殺という事件も起こっています。性暴力やセクハラは、被害者が声を上げられずに過ごしていたり、そのまま退職してしまうケースも非常に多いでしょう。

 声を上げれば、次なるハラスメント、セカンドレイプなど、問題が深刻になるのではないかと不安になるのも当然です。告発にはたいへんな勇気やエネルギーを要するのです。

 ハラスメントはどこにでも起こり得ることだと考え、問題を感じたら早い段階で動く必要があります。

まとめ
いまはインターネットなどで知識や情報収集ができるようになり、従業員を守るための法改正も重ねられ、かつて以上に相談窓口も整備されてきたと思います。でも、多くの方が勘違いされているのが、何かあってから労働基準監督署などしかるべき相談窓口に出向いても、即刻解決はしないということです。

 労働基準監督署は、問題の人物を解雇することも逮捕することもできません。会社の制度を変えたり、異動をさせてくれるわけでもありません。。裁判に持ち込まないと「勝ち」はないと考えるべきです。

 よほどの大企業や大問題でないかぎり、マスコミへのタレこみも簡単には取り合ってもらえないでしょう。そうこうしているうちに、時間が経過し自分がむしばまれてしまっては元も子もないのです。

 いまは1つの企業で定年退職まで勤め上げるのが美徳ではありません。「逃げる」という選択肢があることを常に覚えていてほしいと思います。


川部紀子
ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士)。社会保険労務士。1973年北海道生まれ。大手生命保険会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・ライフプランニングに携わる。その間、父ががんに罹り障害者の母を残し他界。自身もがんの疑いで入院する。母の介護認定を機に27歳にしてバリアフリーマンションを購入。生死とお金に翻弄される20代を過ごし、生きるためのお金と知識の必要性を痛感する。保険以外の知識も広めるべく30歳でFP事務所起業。後に社労士資格も取得し、現在「FP・社労士事務所川部商店」代表。お金に関するキャリアは20年超。個人レクチャー、講演の受講者は3万人を超えた。テレビ、ラジオ等のメディア出演も多数。新刊『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる!お金の貯め方・増やし方』(明日香出版社)が発売中。
twitter:@kawabenoriko
サイト:FP・社労士事務所 川部商店 川部紀子】

 

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すべての公務員労働者が安心して働ける職場の実現を
http://kokkororen.com/news/view.php?id=812

【私たちの主張:私たちの主張】2020-01-15

公務労働者の人権を守り、国民本位の行財政・司法の実現のため

実効あるパワハラ対策を(談話)


2020年1月15日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長  九後 健治

 人事院が昨年3月に設置した「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」は、1月14日に報告をとりまとめ人事院へ提出した。
報告では、パワー・ハラスメント(以下、パワハラ)に対する基本的姿勢について、「パワー・ハラスメントは人権に関わるものとして、職員の利益保護の観点から防止されなければならない」とし、「公務全体の方針としてパワー・ハラスメントを行ってはならないことを規定」すべきとしており、職場の実態や感情をふまえれば大枠では歓迎すべきといえる。

 報告ではパワハラの概念を示しているが、「職務に関する優越的な関係」を背景として行われるものとして「職員が担当する行政サービスの利用者等による言動」「他府省庁の職員による言動」が盛り込まれたことは国公労連の主張を一定反映したものといえる。また、「個別の職場の風土によって許容されるものではなく、〈中略〉職員に精神的又は身体的苦痛を与える言動は、当該職員の能力発揮に悪影響を及ぼすのみならず、職員の勤務環境を害する言動でもあり、パワー・ハラスメントに該当する」として、行政サービス提供の観点からもパワハラが問題であることを明確にしている。また、パワハラの禁止について「高い業績を残したとしても、その過程において部下をパワー・ハラスメントにより追い詰めている者については、高く評価されてはならない」と人事評価制度の問題点にも踏み込んだ記述がなされているとともに、「パワー・ハラスメントが生じにくい勤務体制や職場環境を整備する」必要性にも言及したことは至極当然である。

 他方で、それぞれの問題に十分踏み込んでいない部分があり、それらについて今後具体的な対策が求められる。たとえば、「業務に関する優越的な関係」の例として、同僚又は部下の言動が「(行為者の)協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況下でなされるもの」「集団による行為」があげられているが、業務に関係なく同僚や部下から罵倒されたり、一対一の関係で行われる行為については含まれないこととなる。また、「業務上必要かつ相当な範囲を超える言動」は当該言動を受けた職員の問題行動の有無や内容・程度などをふまえて「総合的に判断されるべき」、としているが、誰が「総合的に判断」するのかによっては、事実のもみ消しなどが行われる可能性も少なくない。
 行政サービス利用者等からの言動も盛り込まれたものの「職員の所属する府省庁の業務の範囲や限度を明らかに超えるもの」と限定的になっているが、そもそも行政サービス利用者は法律や制度、手続内容などへの不満から行為に及ぶのであり、こうした定義は現場実態をふまえたものとはとうてい言えない。また、他府省庁に所属する職員からのパワハラ行為への対処では行為者が所属する他府省庁の長と連携した対応を求めているが、各省庁が持っている権限に差がある中で、それぞれの省庁が対等の立場でパワハラの防止や被害者の救済ができるのかという点では疑問を抱かざるを得ない。

 報告では「国民に質の高い行政サービスを提供するためにも、パワー・ハラスメントを防止する必要性が認められる」としているが、公務職場におけるパワハラの背景には、検討会の報告が「パワー・ハラスメント発生の温床」と指摘している「業務過多や人員不足」をはじめ、短期の評価を処遇に直接反映する人事評価制度、森友・加計疑惑などによって問題が明らかになった内閣人事局のあり方や公文書の隠蔽・改ざん・廃棄などに対する国民の行政不信などがあるのであり、そうした問題の解消こそが求められる。
 国公労連は、行政体制確立をはじめとして国民本位の行財政・司法の確立をめざし引き続き奮闘するとともに、誰もが安心して働ける公務職場の実現のため、指針策定に向け今回の報告や職場実態にもとづく真摯な検討を行うよう人事院に求めるものである。

以 上


【関連情報】
公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会報告

https://www.jinji.go.jp/kenkyukai/pawahara-kentoukai/pawahara_houkokusyo.pdf 

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 副業と労災 過重労働の未然防止が重要だ
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200115-OYT1T50028/
2020/01/15 05:00

 仕事を掛け持ちする人が、安心して働けるような仕組みを整えることが大切である。

 副業を持つ人の労災について検討していた厚生労働省の審議会が、本業と副業の労働時間を合算して労災認定を行う制度の導入を提言した。厚労省は通常国会に労災保険法などの改正案を提出する方針だ。

 現行制度では、残業時間が過労死ラインを超えたかどうかは、1社ごとに判断する。このため、本業と副業を合わせて過労死ラインを超えても、1社ごとの残業時間がラインを超えなければ、基本的に労災とは認められなかった。

 本業と副業の総労働時間で過労死かどうかを判断するのは、実態を踏まえた見直しと言える。

 新たな仕組みでは、それぞれの就業先は、労働基準法上の災害補償責任を負わない。一方、労災の補償額については、事故が発生した就業先のみの賃金ではなく、本業と副業の両方の賃金をベースにして計算することにした。

 企業の労基法上の責任を棚上げする代わりに、補償を手厚くし、労働者側が実質的なメリットを享受できる形にしたのだろう。

 留意すべきは、今回の見直しが、労災が起きてしまった場合の事後的救済の拡充にとどまる点だ。

 副業による過重労働を未然に防ぐことこそ重要だが、そのための対策の検討は遅れている。

 働く人の健康を守るには、就業先の会社が労働時間を適切に管理することが欠かせない。

 厚労省の中では、労働者が副業で働いた労働時間を本業の会社に自己申告し、本業の会社が管理する案が浮上している。

 これに対し、企業側からは「他社での働き方まで、管理・指導するのは現実的ではない」といった意見が出ている。

 副業の会社も本業の労働時間を確認した上で採用するなど、労働者を雇うすべての会社が何らかの形で労働者の時間管理を担う仕組みを考えるべきだろう。

 労働者側からは「本人が職場で副業のことを知られたくないケースがある」との声も聞かれる。プライバシーを重視するなら、過労に陥らぬよう自ら労働時間を管理するしかないのではないか。

 生計を立てるために仕事を掛け持ちせざるをえない人がいることにも注意が必要だ。

 政府は働き方改革の一環として、副業の推進を掲げている。普及を目指す以上、副業による労災を抑止するルール作りの議論を先送りしてはなるまい。

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社説:特定技能制度 選ばれる労働・生活環境に
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/123291
2020/01/14(火) 16:00配信 京都新聞

 外国人労働者の受け入れ拡大に向け、昨年4月に創設された在留資格「特定技能」の取得が広がっていない。

 特定技能の資格で在留する人は昨年11月末で1019人にとどまる。資格の取得は増加傾向にあるが、政府が初年度に見込んだ最大4万7550人にほど遠い。

 国内の人手不足対策として急ごしらえした制度で、内外の準備が整わないままの「見切り発車」だったのは否めない。

 特定技能制度は改正入管難民法で設けられ、働き手確保が厳しい飲食、介護など14業種を対象に、外国人の単純労働を認める在留資格だ。ある程度の技能と日本語能力が必要とするが、これまで専門職に限ってきた受け入れ策の転換といえる。

 ただ、政府は「移民政策ではない」とし、定住化を避けようとする政策の矛盾が、外国人労働者の受け入れ環境整備に影を落としているのではないか。

 出入国在留管理庁によると、昨年末時点で特定技能の取得者が多いのは飲食料品製造業の742人、農業の401人、素形材産業の292人の順だ。

 一昨年12月の法成立からスタートまで4カ月弱しかなく、政府間の覚書締結や送り出し国の手続き整備が遅れた。多くの業種の技能試験が昨秋以降にずれ込み、取得が低調な要因となっている。資格の申請も複雑で、審査に時間がかかり、現在約4700人が申請中という。

 新制度は、技術移転を名目として、これまで単純労働の実質的受け皿となってきた「技能実習生」から多くの移行を見込んでいた。在留3年以上で試験なしに資格変更できるが、思うように進んでいない。

 特定技能のメリットが見えにくいという声が聞かれる。

 実習生の多くが3年で帰国する一方、特定技能は追加試験もなく5年間働ける。だが、期限があり、家族の帯同が許されないのは同じ。延長できる資格もあるが対象は極めて限定的だ。

 新制度で報酬は日本人と同等以上とされ、転職も可能になる。半面、人件費増や人材流出を懸念し、資格変更や受け入れに消極的な企業が少なくない。

 技能実習生は昨年前半だけで4万人近く増えて36万人超に上り、むしろ依存を深めている。現場では違法な長時間労働、低賃金など劣悪な労働環境が問題となっており、実習生たちの失踪が続出している。

 そうした技能実習制度も温存したままであることが、新制度による外国人労働者の環境改善への期待と責任をかすませている。

 多くの国で人手不足が問題になり、国際的な人材獲得競争の時代を迎えている。

 新制度では、好条件の都市部へ吸い寄せられる人材をどうつなぎ止めるかが地方の課題だが、国レベルでも同じだ。働き先に選んでもらうには労働条件に加え、家族の帯同を含め生活者としての権利を守り、共生する仲間として支えることが大切だろう。

 安心して働き、暮らせる制度と環境の整備や監視、支援態勢の抜本的な強化が不可欠だ。
 

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【論説】ギグエコノミー、「燃え尽きライフスタイル」はもうやめよう
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200114-00010000-clc_guard-int
2020/01/14(火) 16:31配信

スマートフォンの画面に表示されたウーバーのアプリ(2017年9月22日撮影、資料写真)

【ガーディアン論説委員】

 10年前、「ウーバーキャブ」という名の配車サービスが米シリコンバレーで始まった。ブランド名を「ウーバー」に改めた同サービスは今や、世界700都市で9000万人が利用し、成功を収めている。株式上場を果たすと、創業者2人は億万長者になった。一方、配車サービスの運転手たちは大きな代償を払った。労働組合によると、英国のウーバー運転手の時給は平均5ポンド(約720円)で、25歳以上の従業員に対する法定最低賃金の8.21ポンド(約1170円)をはるかに下回る。

 英国では全国的に、ギグワーク(不定期に単発の仕事をする労働市場)が目もくらむような速さで成長している。現在、業界規模は2016年の倍以上に拡大し、470万人が働いている。急成長の一因は、新たなテクノロジーだ。人々は携帯電話のアプリを使って、労働力を売っている。ビジネスモデルの核は、次の「ギグ」を探している大勢の「オンデマンド型労働者」に対する、ほぼ即座の依頼に依存するものだ。

 不安定な仕事が標準となりつつあり、その結果、失業統計の数字は英国人の実感よりよく見える。ギグエコノミーの興隆の背景に、就業世帯(就業可能年齢の人が全員就業している世帯)の経済状況の悪化があることは明白だ。就業世帯の58%は、政府が定義する貧困線以下にある。1995年は37%だった。

 オックスフォード大学のアレックス・ウッド博士らが発表した論文によると、英国におけるギグワークの半数は、食事や荷物の配達、配車サービスの運転など、路上で行われているという。

■労働力のオークション

 ギグワークの残り半数は、オンライン上で行われる。Upwork(アップワーク)、Freelancer(フリーランサー)、Fiverr(ファイバー)といったプラットフォーム上で提供される、データ入力やプログラミングなどのデジタルサービスだ。これらのプラットフォームは労働力を売買するオークション会社の役割を果たし、人々はそこでオファーされる仕事に応札する。Upworkを使用している米国人フリーランサーは2017年、2700万ドル(約30億円)の利益を上げた。インドのそれを若干上回る程度だ。世界最大手企業の多くは、より安いコストで仕事を外注するためにこうしたアプリを使用している。

■余暇の商品化

 ギグエコノミーにおいて従業員はもはや、法制度に守られていない。既存の法制度は、現在の労働状況に合っていないからだ。英国には現在、3種類の雇用形態がある。正規雇用、非正規雇用、自営業だ。余剰者解雇手当、育児休業、不当解雇に対する保護といった被雇用者の権利をすべて得られるのは、一つ目の形態のみだ。二つ目の形態では、最低賃金が設けられ、労働組合の権利が守られ、有給休暇取得資格があることになっているはずだ。

 だが、ギグエコノミーの企業は、そこで働く人たちを自営業者だとみなしており、そうではないと主張するグレートブリテン独立労働組合(IWGB)のような労働組合と対立している。ほとんどの場合において、ギグエコノミーで働く労働者は、自分が従業員だと証明している。強制的に自営業を強いられている労働者を判事が守らなくてはならないなど、ばかげている。英国には労働法がある。とはいえ、それが完全に適応されているわけではない。おかげで、ギグ企業は広範な労働力にこれを適用させることなく、個別の申し立てには対抗しつつ、裁判で支払いを勝ち取った労働者だけに応じるということが可能になってしまっている。

 労働者は、基本的な権利を否定されることなく柔軟に就労できるべきだ。雇用の規則が平等に適用され、一貫して施行されてこそ、企業は公平に競争できる。もっと深いレベルで、就労に関して昔から多くの人が目的としていたもの──自由になれるための時間を手に入れること──をギグエコノミーは消し去ってしまっている。代わりに、自分の余暇や所有物を商品化することが良いことであるかのように思うよう誘惑され、強要されている。時間がある? ならばピザを宅配して現金に変えよう。自宅を1週間空ける? ならば貸し出してお金を稼ごう。これでは幸せにはなれない。私たちは、人間関係を大切にしたり、心が豊かになるような娯楽を楽しんだりできるような仕事やキャリアを手にするべきだ。余暇を過ごすことを、商品化できたはずの機会の損失と考えることが、社会的に良いわけはない。このような考え方を拒否しない限り、私たちは人間というより企業のように振る舞うことになるだろう。【翻訳編集】AFPBB News

「ガーディアン」とは:
1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

 

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ソーシャルワーカー養成から「生活保護」が消える 水面下の精神保健福祉士養成課程改革に隠されたシナリオ
https://webronza.asahi.com/national/articles/2020011300001.html?page=1
みわよしこ フリーランスライター 2020年01月14日 論座

 2020年4月から、精神保健福祉士の養成課程における教育内容が改定される見通しだ。改定の方向性は2019年6月に厚労省の検討会で決定されており、現在、同時に改定される社会福祉士養成課程とともに、省令案へのパブリックコメントが募集されている(しめきりはいずれも1月18日)。

 最大の懸念は、両資格の養成課程から科目「低所得者に対する支援と生活保護制度」が消滅することだ。影響を受ける可能性があるのは、低所得となりやすく生活保護を必要とすることの多い精神障害者だけではない。

■実学重視?で廃止される科目

〔写真〕厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京都千代田区

 精神保健福祉士の養成カリキュラムは、精神保健福祉士法に関する省令や施行規則で定められる。現在、改定を控えてパブリックコメントが募集されているのは、「精神保健福祉士法施行規則等の一部を改正する省令(案)」。

 現行課程の科目から「低所得者に対する支援と生活保護」「福祉行財政と福祉計画」が廃止されるほか、医学・精神医学・精神保健福祉の理論に関する科目が減少し、実践にかかわる科目が増加する。大学教育での「実学重視」を思わせる本省令は、2020年2月に公布され、2020年度以後の精神保健福祉士養成に反映される予定である。

 しかし、精神保健福祉士資格を取得するために大学や専門学校で学びはじめる人々の多くは、低所得者が利用できる公的制度について深い知識を持っているわけではない。また、公的福祉に関わる行政や財政についても、ほぼ「素人」であるはずだ。重要な制度や行政の仕組みについて、学校で充分に学べなかった精神保健福祉士に、メンタルヘルスの問題と関連した複雑なソーシャルワークを委ねられるだろうか? 筆者は正直なところ、不安を覚える(具体的な科目変更案は、4ページ表2)。

■生活保護の重要性を厚労省は強調するけれど

 この改定を管掌するのは、厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部 精神・障害保健課だ。筆者の不安を率直にぶつけてみたところ、「科目として、表面上なくなるのは事実ですが、低所得者に対する支援と生活保護制度については今後もしっかりと学んでいただくというのが、われわれの認識です」という回答であった。

 制度としての公的扶助や生活保護制度については、現行の科目「社会保障」で引き続き学ぶ。また、精神障害者が抱えやすい生活困窮・貧困、そして制度上の課題については、新設される科目「精神保健福祉制度論」で学ぶという。「メンタルヘルスを切り口に、いろいろなことを考えていただきたい」という意識で科目を見直し、社会福祉士養成課程との重複も減らしたという。

 このため、現行の科目「福祉行財政と福祉計画」は廃止されることになったということだ。しかし、この科目は社会福祉士養成課程からも廃止されるのである。公的資格を取得してソーシャルワーカーとして公認される人々は、行政や財政について、どこで「しっかり」学べるというのだろうか(社会福祉士養成課程は介護福祉士とともに改定される。そちらのパブコメ募集はこちら)。

 なお、社会福祉士養成課程には、科目「貧困に対する支援」が新設される予定である。しかし、現行の「低所得者に対する支援と生活保護」という科目名の具体性、一個人としての「低所得者」に対する「生活保護」という制度名の狎検垢靴記瓩削ぎ落とされてしまうことは確かだ。

■「活動に参加する学習」の意味するものは?

 今回の改定に関する検討は、厚労省が設置した「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」で行われた。この検討会は、2019年3月の中間報告書において、「『(知識の)獲得としての学習』から『(活動への)参加としての学習』へのパラダイムシフト」を重要視する方針と、実践を重視する方向性を示した。具体的な内容としては、必要な知識の獲得に加えて「現場ですぐに必要となる一般的な技能や相談援助の技術(電話相談、面接体験、記録の書き方など)」「コミュニケーション能力」「対人スキル」が身につくものであるという。

 また、現場で実務に就いている精神保健福祉士が養成機関の講師となったり、当事者活動をする精神障害者らの話を学生が聴いたりする機会を設けることも推奨されている。

 筆者はどうしても、近年の大学改革で声高く叫ばれている「実学重視」や「実務家教員」の導入と共通する地殻変動を感じる。また、故・三浦朱門の「できんやつはできんままで結構、浅学非才の輩はせめて実直な精神を養ってもらう」という発言も連想してしまう。そもそも、高校を卒業して大学に進学し、大学教育の一部として「一般的な技能」「相談援助の技術」「コミュニケーション能力」「対人スキル」を身につけた新人精神保健福祉士に、どのような能力やスキルを期待できるだろうか。筆者の不安は、さらに大きくなる。

■「精神保健福祉士」の役割と立ち位置とは?

精神障害者を「座敷牢」に入れていた1910年代の私宅監置の様子。若い男性が数年来、格子付きの一室に閉じ込められていた=映画「夜明け前」から

 社会福祉士と精神保健福祉士は、いずれもソーシャルワークに関わる資格であるが、日本においては、異なる法律のもとで異なる位置づけが行われている。

 社会福祉士は、1987年に公布された「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づく資格であり、目的は、障害を持つ人々に対する援助とされている。資格取得者の職場の中心は、社会福祉施設など障害を持つ人々に対する直接支援を行う場である。

 精神保健福祉士は、1997年に公布された「精神保健福祉士法」に基づく資格であり、目的は「精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進に寄与すること」である。また業務内容は、社会復帰のための「助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助」と規定されている。語弊を恐れずに言えば、「精神保健の向上」のついでに「精神障害者の福祉の増進」が実現される。現在は社会の中にいない精神障害者を社会に「復帰」させるためには、社会に「適応」できるように「訓練」する必要がある。要請される職務の性格上、資格取得者の職場は、精神科を中心とする医療機関や行政機関が中心となる。

 精神保健福祉士法の「上から目線」風味の根源は、精神障害者の「座敷牢」への閉じ込めを認めた1900年の精神病者監護法から現行の精神保健福祉法(1995年施行)に至る、日本の精神保健福祉にある。現在、「座敷牢」は認められていないが、精神保健福祉法は強制入院の法的根拠となっている。目的は、一貫して「社会防衛」だ。この枠組のもとで、1995年に制度化された精神保健福祉士資格の目的が「社会防衛」となることは、いわば必然である。これは、本人のための福祉を基本とする社会福祉士と、根本的に異なる点である。

■日本の「精神科長期入院」という課題

 1997年に精神保健福祉士制度が発足した背景の一つは、当時、約34万人に達していた精神科入院患者を地域に移行させる必要性であった。

 日本の突出した精神科入院患者数は、1960年代以来、重大な人権侵害として、国内外からの批判にさらされ続けてきている。精神科入院患者は少しずつ減少しているが、2017年もなお約28万人であり、全世界の精神科入院患者の約20%が日本に集中していることになる。

 精神科入院患者の地域移行が進まない理由として挙げられるのは、「地域の理解が進まない」「地域に犲け皿瓩ない」ということである。障害者グループホームの建設が地域の激しい反対に遭う事例は、現在も多い。一般賃貸住宅への入居となると、さらにハードルが高くなる。

 しかし、今回の精神保健福祉士養成課程の改定に危機感を抱くベテラン精神保健福祉士のNさんによれば、精神科入院患者の退院促進と地域移行を阻む最大の要因は、地域の無理解ではなく、福祉と医療の爛ネ瓩量簑蠅任△襦

■「病院の方がマシ」という究極の選択

 Nさん自身は、地域の精神保健福祉の現場で、退院促進、地域移行、そして地域への定着を援助しつづけてきた。しかし、家族の反対によって退院できない事例も多い。

 「自分の家から精神科入院患者が出たというだけで、地域から浮き上がってしまったり、親戚づきあいから孤立してしまったりする家族も多いんです。退院にあたっての理解や支援は、期待できません」(Nさん)

 充分に地域で暮らしていける病状なのに家族の無理解によって退院できない患者がいる一方で、病状は重いけれども家族や支援者の理解によって地域生活を営める患者もいる。Nさんは、同僚と「運だねえ」と嘆息しあうことがあるという。公的制度の役割の一つは、運や当たり外れをなくすことにあるはずだが、その役割が果たされているとは言えない。

〔写真〕医師・看護師・福祉団体職員らとともに在宅の精神障害者の支援策を話し合う精神保健福祉士

 それでも、本人が強く決意して退院し、地域生活を始めたとする。障害基礎年金は、1級でも生活保護費より少ない。生活保護の申請と利用は必須であるはずだ。しかし、生活保護を申請すると、家族に「扶養照会」が行われる。中には、「自分が扶養するので生活保護は不要」と回答し、実際には何の支援も行わない家族もいる。「身内が生活保護受給者」という狠儉瓩鯣鬚韻襪燭瓩澄

 本人は、生活保護が必要なのに利用できず、障害基礎年金での苦しい生活を余儀なくされることになる。すると、「まだ病院の方が生活はラク」ということになる。障害基礎年金から入院費を支払う必要はあるが、高額療養費の限度額にとどまり、ごくわずかな小遣い程度の現金は手元に残る。

■「退院して生活保護」が歓迎されない爛ネ瓩了情

 自治体にとって、「地域で生活保護より病院」という選択が爛肇瓩どうかは微妙なところだ。

 精神科病院に入院すると、年間約500万円の医療費が必要になる。この費用は、国民健康保険・国民年金、または生活保護制度によって支出される。年金の国庫負担率は50%だが、国民健康保険と生活保護の国庫負担率は75%だ。

 全額が生活保護によって賄われるのであれば、入院より地域生活の方が牋他紊り瓩砲覆襪呂困澄2雜遒筝守りなど福祉サービスの費用を含めても、生活保護での地域生活に必要な費用は年間約300万円程度という試算がある。しかし、「地域に移行したら、もう入院することはない」というわけではない。病状の変化によって入院したり地域生活したりすれば、場合によっては入院費用と地域の住居の維持費用が同時に必要になる。

 生活の場が変わるたびに、細やかなケースワークが必要になり、自治体の人件費削減も難しくなる。Nさんは、「結局、社会保障費や医療費を抑制したい国の意向を、みんなで獨崚扠瓩靴△辰討い襪里任呂覆い」と見ている。

■結局、負担を押し付けられるのは地域とあなた

 それでも、精神科長期入院患者は、これから自然に減少していくであろう。数十年にわたって精神科病院に狢變鵜瓩気擦蕕譴毒老いてしまった「社会的入院」患者たちは、自然の流れで寿命を迎えるからだ。

 厚労省も、新規に社会的入院患者を作らない方針で数多くの施策を実施している。特に若年層に対しては、早期に入院して早期に退院させる方向性が強まってきた。長期入院の報酬も削減され、精神科病院にとって爛錺蠅帽腓錣覆き瓩發里箸覆辰拭このため、長期入院化は起こりにくくなった。今後の精神保健福祉は、自然の流れとして、精神障害者が地域で生活していることを前提としたものへシフトしていくだろう。それ自体は、歓迎すべきことだ。

 しかしNさんは、現在でも生活保護や公的扶助制度を知らない精神保健福祉士が多い現状を「国の方針は、市町村に責任を押し付ける方向で一貫しています」と憂慮する。

 たとえば、地域で触法障害者を処遇し、刑務所の福祉施設化を防ぐ方針も打ち出されている。しかし、そのためには専門家が必要だ。増大する人件費は、委託によって抑制することも可能だが、支援の質が下がることの責任は各自治体が負う。

 これらの方向性は、2016年に厚労省が提唱した「『我が事・丸ごと』地域共生社会」という考え方、および同年に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に示されている。困難を抱えた人を地域で支援するには、福祉・介護・医療の分野で続く深刻な人材不足を解消する必要があるはずだ。人材不足の原因は、まず、賃金の低さや劣悪な労働条件にある。改善するには費用が必要だが、もしも「地域力」を高めてボランティアを活用することができれば、費用は増加しない。

 障害者や福祉関係者の中には、「他人事・丸投げ」と揶揄する声もる。「貧」や「困」を抱えた人々は、政府にとって「他人事」である。だから、政府は支援を地域に「丸投げ」するというわけだ。厳しい財政状況の中で、政府からの財政支援も受けられない地方自治体に残される選択肢の一つは、地域の善意や無償の労働力に頼ることである。結果として支援の質が低下したときに責任を問われるのは、充分な「地域力」を確保できない地域だ。

 ともあれ、厚労省の「我が事・まるごと」方針がそのまま実施されれば、地域住民が責任と役割を負うことになる。いずれ、地域住民から「精神障害者は病院か施設に閉じ込めておいてほしい」という声が上がるかもしれない。

 経済的支援とケースワーカーによる人的支援がセットになっている生活保護制度は、精神障害者の地域移行を最も強力に推進できるはずだ。しかし、精神保健福祉士の養成課程からは、生活保護に関する科目が消えようとしている。Nさんは、「結局、生活保護を申請させないようにしたいんでしょうね。情けないです。『ソーシャルワークはするな』と言われている気がします」と嘆息する。

 この動きを押し留めることができなければ、あなたが支援を必要とするとき、利用できない可能性が高くなる。さらに、課せられる見えない狎廼皚瓩眩えるかもしれない。

 

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45歳以上の正社員化は困難…この国の「氷河期世代支援」を問う これで効果があるのだろうか
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69742
小林 美希 2020.01.14 現代イスメディア

■就職氷河期支援の機運の高まり

2019年12月23日に「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_hyogaki_shien/keikau2019/index.html)が関係府省の会議で決定され、氷河期世代への支援の気運が高まってきている。

年末年始にかけては、就職氷河期支援対策室が設置されたおひざ元の内閣府や厚生労働省でも氷河期世代を対象に12月25日から1月10日を締め切りに中途採用が募集されるなど、いよいよ具体的な支援が動き出そうとしている。

政府は就職氷河期を「おおむね1993年卒から2004年卒で、2019年4月現在、大卒でおおむね37〜48歳、高卒で同33〜44歳」と定義しており、同世代の中心層を「35〜44歳の371万人」として集中支援すると表明している。

対象は、非正規になった理由が「正社員の仕事がないから」という50万人と、非労働力人口のうち家事も通学もしていない無業者40万人など100万人。今後3年間で30万人を正社員にすると目標を掲げている。

目玉となるのは、新規事業としてハローワークに専門窓口を設置すること。相談から教育訓練、就職まで切れ目なく支援する。

加えて、就職氷河期世代向けの「短期資格等習得コース(仮)」を創設して、1〜3か月程度の期間で資格を取得。IT、建設、運輸、農業などの業界団体に委託する形で、訓練と職場体験も行い就労につなげ「出口一体型」の訓練を行う。

さらに「民間ノウハウの活用」も“ウリ”になっており、全国16ヵ所の都道府県労働力に「成果連動型」の民間委託事業を実施。民間事業者が2〜3ヵ月の教育訓練や職場実習を行い、訓練にかかる費用10万円を支給する。

就職して6ヵ月辞めずに続いた場合に民間事業者に委託費を50万円を支給。さらに6ヵ月定着した場合は成果報酬として委託費10万円が支給される。年間で1万人を対象とする。
国、都道府県に「就職氷河期世代活躍支援プラットフォーム(会議体)」を設置。そこで、行政、経済団体、業界団体などが支援について企業に周知していく。
先行して実施されている大阪、愛知、福岡、熊本以外に2020年度明け早々に10ヵ所程度でスタート。来年度中に全都道府県での設置を目指している。

■新規の施策は少ない…

2020年1月20日に召集される通常国会では、2019年度の補正予算、2020年度予算が議論される。

国は2020年度だけでも関連予算が約1300億円になるとしており、「行動計画2019」の実行に必要な予算として2019年度補正予算を含め、3年間で650億円を上回る財源が確保されるとしている。

「行動計画2019」の個別支援に関する施策に要する予算措置の概要を見ると、2019年度の補正予算案と20年度の予算案の額が示されている。

そこには、各施策が新規なのか、今までのものが継続されたのか拡充されたのかなども明記されているが、2019年度の補正予算と2020年度予算のなかで、新規で氷河期世代に絞り込んだ施策は意外と少ない。

新規事業で氷河期世代を対象としている就労支援は、「短期資格等習得コース(仮称)」の34億5500万円、「民間事業者のノウハウを活かした不安定就労者の就職支援」の13億500万円など合計すると、約108億円だった(ひきこもり支援は除く)。

予算案には、金額の横に「内数(うちすう)」が示されるものが多い。これは、全世代を支援する予算としてはいくらで、その内、就職氷河期世代の要件に合った人がいれば、その数だけ予算を消化するという意味となる。

たとえば、「教育訓練・職場実習の職業訓練受講給付金」の全体予算は20年度で61億円だが、そのうち就職氷河期世代が短期資格等習得コースを受けて給付金を受ける要件を満たした実績に応じるため現段階で数字の明記はされていない。こうした「内数」が含まれた関連予算が約1300億円というわけなのだ。

ある官僚は「予算をつけてやっています、ということを見せたい時に関連予算をまるめて出して、内数をつけることがある」と明かす。つまり、ある種の誤魔化しなのだ。

「内数」となっている施策を除いた予算案額は、2019年度補正予算で66億円、2020年度予算案で199億円となる。

業界団体を通じて船員や農業、建設、ITの資格を取得して職場体験や就職に結びつけるという「出口一体型」支援にしても、業界団体に委託するのは新たな取り組みとなるが、資格取得を促して就労支援するスキーム自体はもともと若年層やシニア層も対象の既存事業で、そこに就職氷河期世代も含んでいるというだけのもの。全世代に向けての支援を否定こそしないが、政府が強調するほど氷河期世代に特化しているわけではない。

これまでの施策に効果がなかったから氷河期世代が問題になっているのに、その既存の施策が改めて強調されていて、それで効果があるか疑問だ。

■人手不足業界に呼び込みたい?

そして、「行動計画2019」は、既存の施策が寄せ集められており、全体的に人手不足業界に呼び込みたいという意図も透けて見える。

「出口一体型」支援として、業界団体に委託して短期間で資格をとって就職に結びつけるというが、IT、建設、運輸、農業が挙げられている。

さらに、観光業、自動車整備業、建設業、船舶・舶用工業、船員等への新規就労者を増やすことも掲げられているが、いずれも超のつくほど人手不足に陥っている産業だ。

単に数合わせを行っては効果が薄くなってしまう。なぜなら、就職氷河期にも求人はあったが、常に人手不足の状態の業界が多く、早期離職も多かったからだ。

大卒就職率が史上初の6割を下回った2000年3月卒の場合、就職者総数は30万1000人で、うち男子は18万4000人(就職率55.0%)、女子が11万7000人(同57.1%)だった。

男子は「サービス業」(26.7%)、「卸売・小売り・飲食店」(23.9%)、「製造業」(20.8%)の順に多く、女子は「サービス業」(41.5%)、「卸売・小売業、飲食店」(19.3%)、「製造業」(12.7%)が多かった。

大卒就職率が55.1%と過去最低を記録した2003年3月卒も似た傾向で、いわば、これらの業界は不況でも慢性的な人手不足状態と言えるだろう。

リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査」を見ると、やはり不況期でも流通業(卸売・小売り)の求人倍率は大きくは鈍化していなかった。最も低かった00年でも3.19倍あり、全体平均0.99倍を大きく上回っている。

卒業後3年以内離職率を見ると、超就職氷河期だった2000年(36.5%)から04年(36.6%)までにかけて山があり、特に00年は1年目での離職が最も高い15.7%となっている。

求人があって就職できたとしても、もともと離職の高い業界が多く、直近でも卒後3年以内離職率は「小売り」で37.7%、「宿泊業、飲食サービス業」で49.7%、「医療、福祉」は37.8%という水準だ。

つまり人手不足の業界や職種に単に送り込んでも長くは続かず、安定した就労になるとはいいがたい現実があり、注意を払わなければならない。もっと人手が不足している農林水産業は外国人労働者に頼っている現状であるのに、就職氷河期世代の新たな活路として見いだせるのか疑問が残る。

■「45歳以上の正社員化は難しい」

一方で、3年間で正社員を30万人、というのは甘い目標値だろう。もともと転職するには30代はまだ比較的有利なため、今の人手不足の状況からすれば30代後半の非正規雇用159万人(2018年)のなかで、ゆうに達成できるのではないか。

そして政府の示す中心層35〜44歳で考えると問題を見誤る。45〜49歳だけで非正規社員は226万人もいて、氷河期全体の非正規社員は約600万人に上る。多くのキャリアカウンセラーが「正直、45歳以上の正社員化は難しい」と口を揃える状態だ。それを見越してなのか、政府が「集中支援して30万人を正社員にする」という対象に40代後半が入っていないのだ。

東京しごと塾の17年度の就職決定者の実績を年齢階級別に見ても、30〜34歳が41.4%、35〜39歳が25.0%、40〜44歳が33.6%で全体として30代前半が高く、支援対象は44歳までとなっている。支援が最も必要でかつ困難な40代後半を丁寧に支援する必要がある。

そもそも、なぜ就職氷河期世代が取り残されたかといえば、不況のなかで経済界から要請されるまま雇用の規制緩和を行い、非正規雇用を生み出す構造を作ったからであって、雇用を劣化させた国の責任は大きい。

それにもかかわらず、依然として経済界の圧力から、国は雇用の規制緩和を行い続けている。就職氷河期世代の不安定雇用と規制緩和は表裏一体の関係にあり、就職難は規制緩和20年の歴史と重なる。非正規雇用を拡大させる法制度があるということは、バケツの底に穴が空いているところに就職氷河期支援という水を注ぐようなものだ。

この根本的な労働法制の規制緩和を強化していくことなしに、氷河期世代の支援を行っても効果は限定的ではないか。

 

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マタハラで終業式5日前に小学校を去った41歳女性教師 教員志望者減少の背景にある悪しき慣習〈dot.〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200109-00000061-sasahi-soci&p=1
Aera dot.2020/1/12(日) 11:30配信

「お母さんに3時間ちょうだい。学校のものを全部片づけてくるから」

 ある土曜、そう言い残して子どもに留守番をさせ、北野香織さん(仮名、41歳)は都内にある勤め先の小学校に向かった。第3子を妊娠中、おなかの強い張りに耐えながら勤務していたが、産婦人科医から切迫早産(早産しかかる状態)の診断書が出たことで、「もう限界だ」と、産前休業の前倒しを決意。机を整理している間、携帯電話が鳴っても一切出ず、業務引き継ぎの書類を職員室に置いて逃げるようにして学校を去った。

 香織さんは、はじめは東北地方で教員になった。就職氷河期と重なるように、教員の世界でも当時は新卒採用が手控えられ、非正規雇用しかなかった。結婚後は夫が転勤の多い職業だったこともあり、そのまま非正規で働いた。最初は、産休・育休の教員の代替えとしての採用だった。

 非正規雇用といっても、6カ月ごとの雇用契約で「6・6(ろくろく)」教員と呼ばれた。4〜9月、10〜翌年3月の6カ月を区切りに契約を更新する。翌年度の採用が決まっていても、3月30日で雇用契約を終了させて1日の空白期間を作って4月1日から新たに雇用するということが繰り返された。これにより、通年採用より1回当たりの雇用期間が短くなることで賞与が低く抑えられるという仕組みを香織さんは後から知った。

 32歳で第1子を出産。第1子の出産では、「非正規は育休が取れない」と言われ、いったん退職。教員の仕事が好きだった香織さんは、生後7カ月で認可外保育所に子どもを預け、また非正規で職場復帰した。本来、非正規でも一定の要件を満たせば育休を取ることはできるが、「地方公務員の育児休業法」で6カ月ごとの雇用の非正規雇用である「臨時職員」は最初から育休の対象外になっているなど、非正規公務員の状況は厳しい。授乳しながらの勤務を経験したこの時、「2人目を産む時は育休を取ることができる正職員でありたい」と強く思った。

 夫の転勤で東京に引っ越し、教員の職を探すと「明日からでも来てください。今日の午後からでもよかったら来てほしい」と、すぐに正職員としての採用が決まった。第2子、第3子に恵まれて、育休は取れたが、復帰後の育児と仕事の両立は至難の業だった。

 第3子を妊娠中、保育園に通う第2子の体調が悪くても、細かく病状を説明して懇願しないと、法で認められているはずの看護休暇を取らせてもらえない。高熱でも出ない限りはいったん保育園に預け、保育園から子どもの体調が悪いとお迎え要請の電話を学校にしてくれたほうが子どもの看護をしやすいという状況だ。保育園からの電話を取り次ぐことの多い副校長は授業中、「お子さん、お熱ですって」というだけで、香織さんが抜けた後の授業をどうするか助けてくれるわけではなかった。

 そもそも、この小学校で勤務が始まった初日、「ここは、子どもがいる人のくる場所じゃない」と上司からマタハラ発言があった。クラスで何かあればすべて担任の責任。他の教員とチームで解決、協力し合おうという雰囲気はなかった。働いている保護者に連絡をとるため、夜まで残業しながら電話をかける教員が多いが、香織さんには保育園のお迎えがある。やむなく、自宅から保護者に連絡をとるが、子どもが夕飯を食べているすぐ隣で、学校であったトラブルについて保護者に平謝り。そんな時に限って子どもが「ママ、ママ」と話しかけてきたり、ご飯をこぼしたり。きょうだい喧嘩が始まる。ついつい「静かにしなさい!」ときつくなると、子どもが泣いてしまい、収拾がつかなくなる。

 仕事を持ち帰り、子どもに夕飯を食べさせ、風呂に入れ、寝かしつけたらあっという間に夜9時を回る。ここでも、焦っている時に限って子どもはなかなか寝ない。イライラすると、余計に子どもが眠れなくなり、どんどん仕事をする時間が遅くなる。土曜も子どもを保育園に預けて仕事をすると、子どもが疲れて熱を出して出勤できず仕事が溜まる、という完全な悪循環に陥った。香織さんの元気のない様子を心配した教員は悪気なく「田舎に帰って実家に助けてもらって教員を続けたら」とアドバイスするが、帰ったところで非正規の採用しかない。

 校長は毎日授業を監視して回り、気に入らない教員には「授業案」を出すよう求めるパワハラ気質があった。通知表も校長がすべてチェック。所見欄の記入を2〜3回ダメ出しすることは珍しくない。書類作成のやり直しで土日に出勤することが常態化。個人情報保護の関係で、児童の名前が入っているような書類は持ち帰ることができない。平日の夜に残業できない分、香織さんは土日に学校に行って仕事をせざるを得なかった。

 学校は朝8時が始業時間だが、実際には7時40分までの出勤が求められた。同僚はつわりがひどく、授業に間に合う8時15分の時差出勤を要望したが、ほんの15分の遅れも認めてもらえなかった。そして、子どものことで早く帰れば「仕事ができない」という烙印を押される。皆が当たり前のように夜9時過ぎまで職員室に残っている。9時半にセキュリティーで学校の門が閉まるため、9時27分に退勤するというなかで、夕方5時ごろに保育園のお迎えで帰宅するのは肩身の狭い思いをする。

 担任する児童の間で喧嘩やいじめにつながるような問題行動があれば、放課後、保護者と面談が行われる。遅い時間になると内心「保育園のお迎えが……」と気持ちは焦るが、副校長からは「保護者にお迎えに行きたいと言ってはいけない」と禁止された。閉園間際の保育園に滑り込むと、保育室には、わが子がポツンと一人。そのたびに、香織さんの胸は痛んだ。

 保育園の延長保育を使うこともあったが、夜8時15分まで預かってもらえても、預け先の保育園では夕食が出ない。帰宅してからご飯を食べ、風呂に入れ、となるよりは、意を決して5時には職場を出ることにした。そして、「この学校に戻ってつらい思いをしながら働くよりは、異動したほうがいい」と、思うようになった。

 日曜や祝日に行われるお祭りなど地域の行事への参加も避けられない。香織さんが「日曜は保育園が開いていないので預けられない」と上司に告げると、「近所のママ友に預けられないの?」と当然のように出席を求めた。香織さんは「子どもを預けて何かあったら責任が発生してしまうから、安易に友達に預けられない」と反論して事なきを得たが、そんなささいな上司の理解のない言葉に、限界が来た。

 そして冒頭で紹介したように産休の前倒しを決意。あと5日で終業式だという土曜に自分の机を片付けに行ったのだ。そして、異動願いを提出した。香織さんの知る限り、子育て中の教員が異動する場合、近隣の学校になるよう配慮されることが多かったが、育休中に行われた副校長との面談では「そんなの通るわけない」と一蹴された。異動希望の書類には自由記入欄があり、通勤路線や学校の規模の希望を書くことができるが、香織さんは「自由意思を書くな」とまで言われた。

 香織さんの教員仲間のなかには、育休を取りたいと言うと校長から「代替の教員を自分で見つけてくるならいい」と無理難題を押し付けられたり、異動を希望した先の校長から「育休から復帰したばかりの教員はいらない」と言われたりするケースまであるという。

 日本教職員組合が2017年8〜11月に行った「権利行使に関する調査」では、小・中・高校と特別支援学校の教職員に妊娠中の妊娠障害の症状の有無を尋ねており、小学校教職員の半数に症状があった。そのうち約3割が切迫流産(流産しかかる状態)、4人に1人が切迫早産だった(複数回答)。また、正規教職員の約4割が「労働環境が妊娠・出産に影響したと思う」と答えている。妊娠中に妊娠障害があり、休暇の必要があったが利用していない割合は小学校で約2割、出勤時間をずらすなどの「通勤緩和措置」の必要があったが利用していない人は同3割を占めた。さらに、「2015年度以降、育児短時間勤務制度の行使状況」は、該当者のうち、育児短時間勤務で働いたのは小学校でわずか8.4%にとどまった。業務の多さ、人手不足が影響している。

 状況は悪化の一途をたどり、教員のなり手不足が深刻化している。12月23日に発表された、文部科学省「令和元年度 公立学校教員採用選考試験の実施状況」によれば、小学校の採用倍率は2.8倍で、前年度の3.2倍から減少。平成3年度と並ぶ過去最低をつけた。高年齢の教員が大量に退職した影響で採用数が増えており、小学校の採用者数は前年度比1094人増の1万7029人となる一方、受験者数が前年度比3536人減の4万7661人となった。同調査から、10年前の2009年度と2019年度の受験者数を比べると、新規学卒者は1万3410人から1万7371人へと増えている。ところが、既卒者が3万5233人から3万290人に減っており、既卒者の占める割合が72.4%から63.6%に低下している。

 文科省は今回の調査結果で既卒者の受験が減った要因について、民間企業の採用が好転したことで、教員採用試験で不合格になった後で講師を続けながら試験に再チャレンジする層が減っていると分析している。ただ、改めて自分が子どもをもった時を考え、実情と照らし合わせると、とても教員を選択できないと考える人も決して少なくないだろう。教員の世界にもマタハラが起こっている。

 文科省は働き方改革を進めるとしているが小手先の改革では効果はなく、人手不足が解決しないことには状況は好転しない。定年後の再雇用で人材確保を図る現場も多いが、定年前と同じ仕事量と責任で給与は半額というケースが多く、長くは続かない。現場からは、かねて少人数制のクラス編成、副担任をつける、音楽や図工など専門教員の配置などが求められている。教育の質を維持するには、それなりの予算を投じて教員の質を担保しなければならないのではないか。(ジャーナリスト・小林美希)

 

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