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論説−私論・公論 - 論説−私論・公論カテゴリのエントリ

 

          兵庫県立大学客員研究員

              大阪損保革新懇世話人 松浦 章

 

322日の参議院・厚生労働委員会で小池晃議員(日本共産党書記局長)が損保ジャパン日本興亜の違法な労働時間制度を取り上げました。同社では、4年目以上の総合系、専門系、技術調査系職員6,000人以上に「企画業務型裁量労働制を導入しています。その規模もさることながら、問題は職種です。本来「企画業務型裁量労働制」の対象外であるはずの、営業や保険金サービス(自動車保険などの損害調査・保険金支払い)の職員に対しても、この制度が広く適用されているのです。

 

厚生労働委員会での質疑は概ね以下のとおりです。

〈小池晃・参議院議員〉

「損保ジャパン日本興亜の人事部資料を見ますと、企画業務型裁量労働制の対象として「営業」とはっきり書かれております。これは明らかに対象外だと思います。実際、労働者へ聞いたところ、支店とか20人から30人程度の支社の一般の営業職にまで企画業務型が導入されている。指針では、これ、対象要件は、支店、支社の場合も、本社の具体的な指示を受けることなく独自に事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業を計画する。もうとてもそんなことできない職場だと思いますよ、この今の支店、支社。これ直ちに調査すべきじゃないですか」

〈山越敬一・労働基準局長〉

「個別の事案に関することについてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。一般論といたしまして、企画業務型裁量労働制の対象業務外に従事されている方の場合には通常の労働時間管理の下で行っていただく必要があるわけでございます。労働基準監督署といたしましては、いずれにいたしましても、法に違反するような事実が確認された場合にはその是正について指導を行ってまいりたいというふうに思います」

〈小池晃・参議院議員〉

「個別企業の問題は答えられないといつも出てくるんですけれども、大臣、 

これ実は、政府は昨年12月に、損保ジャパン日本興亜を『女性が輝く先進

企業』として総理大臣表彰を行っているんですよ。個別企業を表彰しておい

て、問題があると指摘すると個別企業のことは言えないというのは御都合主

義だと私思います」

〈塩崎恭久・厚生労働大臣〉

「個社の問題についてはコメントは差し控えたいと思いますけれども、実際、

企画業務型裁量労働制と銘打っていながら必ずしもその法律の趣旨並びにそ

の定めに合っていないというものについては、当然、不適切な運用でありま

すから、これは労働基準法違反ということを確認された場合には当然しっか

りと指導して、厳しく指導していかなきゃいけないというふうに思います」

 

塩崎厚労大臣はまた、現行労働基準法における「企画業務型裁量労働制」の規定は「(営業は)自社の経営そのものに影響を与えるような先であったり、あるいは事業場でも全体に影響を与えるようなものに限られる」と答弁しました。

そのとおり、厚生労働省労働基準局監督課の通達(厚労省ホームページ「裁量労働制の概要」)を整理すると、次の3要件をすべて満たす業務と言えます。

   会社運営の企画、立案、調査分析の業務

   仕事の進め方を大幅に従業員に任せる業務

   時間配分について上司が具体的な指示をしない業務

したがって、会社をあげて行う企画の内容を考える主体となったり、新しく参入する事業を検討したりするなど、会社の「舵取り」にかかわる仕事がこれに該当すると考えられます。指示を受けて行う単純な事務仕事等は対象とはなりえません。また上司に勤務時間を管理されているような仕事に対しては適用できないことになります。だから、あの「電通」ですら、現行の労働基準法ではハードルが高いと、「営業」職への「企画業務型裁量労働制」導入を断念せざるをえなかったわけです。

 

損保ジャパン日本興亜も規定上は「事業運営上の重要な決定を行う事業場において企画・立案・調査および分析の業務を行う者が、業務遂行において、自らの裁量により手段や時間配分などの決定を行う制度」としています。労働時間管理についても「成果達成に向けて自己の裁量で自由に勤務。・・・自己の裁量により正午までの間で出社時間を自由に決めることが可能」と「自己の裁量」を強調しています。

しかし6,000人もの労働者すべてが「事業運営上の重要な決定を行う事業場において企画・立案・調査および分析の業務」に携わっているのでしょうか。およそ考えられません。また入社4年目の社員と言えば、2627歳です。これらの若い社員が「自己の裁量で自由に勤務」できるものでしょうか。これも少し考えただけでわかることだと思います。

 

問題にすべきは「企画業務型裁量労働制」だけではありません。同社では、裁量労働制の対象にならない入社4年未満などの営業・保険金サービス部門2,000人に「事業場外労働制」を適用しています。この制度は「事業場外で業務に従事した場合、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものと」(労基法第38条の2みなすものです。しかし損保の営業や保険金サービスの仕事は、けっして労働時間の把握が困難なものではありません。営業であれば代理店を訪問することが中心業務です。行き先ははっきりしており連絡も簡単に取れる状況にあります。制度導入自体、労基法違反と言わなければなりません。この制度により、外出する日は、どれだけ働いても1日の労働時間は「みなし労働時間」の8時間しかカウントされないのです。結果、多くの労働者がサービス残業を余儀なくされています。

 

また同社の場合、「管理監督者」の多さも指摘しなければなりません。労働基準法第41条は、いわゆる「管理監督者」について、労働時間、休憩および休日に関する規定の適用の除外を認めています。しかし2008年の厚生労働省の通達で、管理監督者とは「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」を言い、役職名で判断するものではないとされています。つまり課長だから「管理監督者」というわけではないのです。しかし同社は、「経営者と一体的な立場」とは到底考えられない多くの課長クラスをも「管理監督者」とし、一切の残業料を支払っていないのです。

 

これら「管理監督者」「企画業務型裁量労働制」「事業場外労働制」を合計すれば、約18,000人の同社職員のうち、実に6割の労働者が残業料支払いの対象外となっています。もはや相対的に高賃金の労働者には「残業」という概念はないということです。

これこそ、「労働時間概念」を捨て去ろうとする政府・財界の労働法制「改正」を先取りするものだと言わなければなりません。

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兵庫県立大学客員研究員

         大阪損保革新懇世話人  松浦 章

 

 

安倍内閣は、女性の活躍を打ち出しています。「一億総活躍社会」の実現、特に女性が活躍する社会の創出は、政府の経済政策、いわゆる“アベノミクス”が掲げる重要なテーマのひとつです。

 

損保各社でも、「ダイバーシティ」(雇用の多様性)を掲げ、女性が働きやすい諸制度が完備されていることをうたい文句にしています。しかし現実はどうでしょうか。

損保大手3社の従業員構成を見てみます。

  東京海上日動

グローバル、エリア、その他:サポート社員(有期・時給制、2018

に無期化予定)

  損保ジャパン日本興亜

総合系グローバル、総合系エリア、アソシエイト

  三井住友海上

全域社員、地域社員、アソシエイト社員  

その他:スタッフ社員(有期・時給制)

 

その名称は多少異なるものの、ほぼ共通した区分となっています。特徴は、いわゆる「一般職」を「エリア」とか「地域社員」といった名称で、〈転居を伴う転勤のない総合職〉に「格上げ」し、従来の「総合職」の仕事を肩代わりさせていることです。同様に、パート社員については、無期化する、有期であっても処遇を若干引き上げるなどによって従来の「一般職」の仕事を担わせようとしています。もちろんこれは女性だけの問題ではありません。これまでのように正社員だからと長時間・高密度労働を求めるだけでなく、男性が中心の全国型グローバル社員には、「あなたはグローバルだから」とより一層ハードな働き方を要求する事態が生まれているからです。

 

問題は、「エリア」や「アソシエイト」と呼ばれる社員の大半が女性だということです。女性が転居を伴う転勤が困難なことを前提に「エリア」という制度を設け、賃金格差を「合理化」しているのだとすれば、「女性活躍」ではなく低賃金での「女性活用」制度だと言わざるをえません。

 

 損保業界のリーディングカンパニーと言われる東京海上日動の状況を見てみましょう。同社のCSRレポートでは、女性の活躍推進の取り組みとして「短時間勤務制度」や「勤務時間自由選択制度」を設け、育児との両立支援を行っていることを誇らしく語っています。現実に制度そのものは素晴らしいでしょう。では、その制度は本当に生かされているでしょうか。

同社では、「育児をしながら仕事をすることを選んだ皆さんに」と、人事企画部が『ママパパ☆キャリアアップ応援制度ハンドブック』なるものをつくっています。この「ハンドブック」は、「おめでとうございます!体調はいかがでしょうか?」で始まりますが、次のページではいきなり、「育児をしながら働く環境を整備する努力をまずは自ら行いましょう」ときます。そして、「例えば、当社の所定労働時間は9001700であることから、出産休暇・育児休業からの復帰時には、まずは様々な工夫をして9001700の勤務ができないかどうか努力してみる等の取り組みをお願いします」と書かれています。

「すばらしい」同社の「育児時間制度」はいったいどこへ行ったのでしょうか。その前に、労働基準法第67条で定められた11時間の「育児時間の取得」はどうなっているのでしょうか。 

憲法学者の木村草太さん(首都大学東京教授)は、次のように述べています。

「法以外の規範の特徴は、『普遍性を持たない』ことにある。つまり、特殊

集団のための規範だ。・・内部ルールはいくらでも自由に定めてよい、とい

うものではない。あくまでも法に違反しない範囲で定めなければならない。

たとえば、ある会社で、残業手当を払わないという規則があったとしても、

それは労働基準法違反で許されない」(『現代ビジネス』2016116日)

まさに、東京海上日動の現実の姿を指摘した言葉です。

 

さらにこのパンフでは、次のように「職場メンバーへの感謝の気持ちを行動で表す」ことを求めています。

「皆さんを頑張って支えてくれているメンバーの存在を意識してください。

支えてくれているメンバーに感謝の気持ちを持ち、自分ができることは最

大限自分で行いましょう。また、フォローしてくれたメンバーに対して、

困っている時には積極的に手助けするようにしましょう」

しかしそんなことを言われなくても、多くの女性は、「権利だから育児時間を取ります」ではなく、「周りがみんな忙しくしているのに申し訳ない」といった思いで育児時間を使い(帰れる場合は)早く帰っているのです。そこに「感謝の気持ちを行動で」と追い打ちをかける東京海上日動のやり方に女性への思いやりやリスペクトの姿勢を感じることはできません。

 

同社では、産休前に上司との面談が必須で、「保育所のほかにも緊急時に備えて病児保育などの利用を申し込みましたか」、「身内や知り合いで育児を手伝ってもらえる人はいませんか」、などの質問に対しての回答を面接シートへ記入しなければならないそうです。

これこそ、「個人の尊重」をないがしろにし、かつ、自民党改憲草案24条の「家族は、互いに助け合わなければならない」という条文を先取りして、女性に一方的な自助努力を押し付けるものと言わなければなりません。

 

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朝日DIGITAL 2017年3月30日
http://www.asahi.com/articles/DA3S12866970.html  

 3月20日、国連の幸福度調査ランキングが発表された。日本は155カ国中の51位で、先進国最低レベルだ〈1〉。

 確かに日本社会は問題が山積みだ。経済は停滞し、長時間労働は蔓延(まんえん)し、格差は激しく、少子化も著しい。

日本良くするため一つ制度を変えるなら 論壇委員の提案

 さてそこで今回は、思考実験をしてみたい。山積する問題を、まとめて解決する政策を考えてみた。

 その政策とは、時間給の最低賃金を、正社員の給与水準以上にすることだ。なお派遣や委託その他の、いわゆる「非正規」の働き方への対価も同じように引き上げる。

 ただしこれは、「貧困層の救済」が目的ではない。日本社会を縛っている固定観念を変えることが目的だ。

 「正社員より高いなんて」と思うかもしれない。だが仕事内容が同じなら、正社員の方が高い根拠はない。むしろ非正規は、社会保障や雇用安定の恩恵(コスト)がない場合が多いから、そのぶん高くていいという考え方をしてみよう。

 「非正規の方が高い国などない」という意見もあろう。しかし日本型の正社員そのものが独特なのだから、改善の仕方も独自の形で思考実験してみよう。

     *

 では、正社員より高いレベルの最低賃金とは、時給にしてどのくらいか。例えば時給2500円なら、1日8時間月22日働けば月収44万円になる。若年の正社員より高めで、賞与なしでも家族を扶養できる収入だ。もちろん、物価が上がれば金額も上げるようにする。

 では最低賃金を時給2500円にしたら、日本社会はどう変わるか。

 まず正規と非正規の格差は減少する。両者の違いは残るが、それは「安定しているが賃金と自由度の低い働き方」と「不安定だが賃金と自由度の高い働き方」の相違となる。

 次に「正社員の座」にしがみつく必要がなくなる。研修やスキルアップ、社会活動や地域振興のため、一時的に職を離れることが容易になる。転職や人材交流が活発化し、アイデアや意見の多様性が高まる。起業やイノベーションも起きやすくなり、政界やNPOに優秀な人材が入ってくるようになる。

 賃金が上がれば結婚もしやすくなる。男女ともに育児期の一時離職が容易になり、少子化の緩和が期待される。

 過度の長時間労働は減る。2014年に過労死した青年は、「正社員になれて良かった」と限界以上に働いていた〈2〉。「正社員の座」に固執する必要が減れば、こうした悲劇は減少する。また労賃が上がれば、経営者は無駄な労働を減らそうと努めるだろう。

 教育は実質的なものとなる。「××大学卒」の履歴を求めるのは、「正社員の座」を新卒で得ることが重要であるのが一因だ。それに固執する必要がなくなれば、大学名より教育内容の方が問われる度合いが上がるだろう。キャリアアップのために優秀な社会人が多数入ってくれば、大学教育も変わる。最低賃金が上がれば、「ブラックバイト」で奨学金返済に追われる程度も減る。

 これまでの格差是正政策は、財源問題と世論の分断によって後退することが多かった。例えば生活保護の給付水準は、財源論とバッシングを背景に、この4年弱で実質7%も引き下げられた〈3〉。

 だが最低賃金の引き上げに財源は不要である。賃上げで購買力と消費が増えればGDPも伸び、税収も増える。「福祉バラマキ」に批判的な人でも、労働賃金の引き上げなら受け入れやすい。

 もちろんマイナス面はある。まず失業率は「先進国並み」に上がる。省力化と技術革新が進むうえ、最低賃金を払えない企業は退場することになるからだ。とくに飲食や小売りなど、労働生産性が低く低賃金労働に依存している業種は、大幅な業態変更を迫られるだろう。

 しかし今野晴貴らによれば、低賃金労働に依存している業種は「ブラック企業」が多い〈4〉。労働効率の悪い企業を淘汰(とうた)するという意味では、この政策は一種の構造改革でもある。だが一方で起業や人材交流が進むから、飲食や小売りでも革新が起きるかもしれない。

     *

 以上は思考実験である。実施した場合は、過度のインフレや円安を招く懸念もある。当然の話だが、競争や分断がまったくない社会は存在しないだろう。

 だがこの思考実験からは、最低賃金を大幅に引き上げるだけでも、日本社会が大きく変わることがわかる。そしてそのことは、日本社会が労働を湯水のように安価に使い、人間の尊厳を軽んじていることが、停滞と閉塞(へいそく)感の根底にあることを示している。

 「より良い生活」への欲求のないところに成長はない。かつては電化製品が欲しいという欲求でも経済は成長した。だが現代の先進国では、欲求はより高次元になっている。それは「正当に評価されたい」「人権を尊重してほしい」「自由な人生設計をしたい」といった欲求だ。それを「我慢しろ」「仕方ない」と押さえつけて、成長するだろうか。

 あえて言おう。フルタイムで働いても尊厳ある生活ができないレベルの対価で人間の労働が買われている状態は、人権侵害である。人間が尊重されない社会では、経済も成長しない。

 日本はこの25年、「黙々と我慢して働けば成長する」という過去の観念に縛られてきた。だがもはや、そうした固定観念の束縛から逃れるべきだ。

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                      2017年3月28日 

                                             過労死弁護団全国連絡会議幹事長
                         弁護士 川人 博

 1 本日決定される改革内容は、とくに下記の理由から、過労死をなくすことや長時間労働を解消することに実効性があるとは言えず、むしろ、過労死を助長する危険性が大である。
第1に、一か月100時間、平均80時間の時間外労働を事実上容認する内容は、労災認定基準のいわゆる「過労死ライン」の労働を放置することにつながるものである。
  ちなみに、電通は、遺族盒狭美氏との合意書において、繁忙期でも月の法定外労働75時間を上限とする旨を約束しており、今回の政府の計画は、いま時短を進めようとしている各企業の努力にも逆行するものと言わざるを得ない。

 第2に、長時間労働の典型的な業種である建設業、運送業について、長時間労働規制の対象から除外しており、これらの業種でとりわけ過労死が発生する危険性が極めて大である。これまでの過労死事例で、時間外労働が月100時間以上の事案は、建設業、運送業において とくに目立っているが、その要因は、これらの業種が大臣告示の適用除外となっていたからである。
 今後とも(少なくとも5年間は)、適用除外されるということは、危険な職場状況を放置することになる。

 第3に、医師の深刻な過重労働と過労死が社会問題となっているにもかかわらず、5年間にわたり、長時間労働の規制対象から外すということは、医師の命と健康に深刻な影響を与え、かつ、医療事故の原因となる。
応召義務(医師法)は、戦前以来の前近代的な内容であり、医師の過重労働を助長するものとなっており、廃止ないし改正すべき内容であり、この応召義務を理由として、医師の長時間労働を固定化すべきでない。

 第4に、現在国会に上程されている、いわゆる「高度プロ」法案は、労働時間規制の例外を拡大するものであり、いままで以上に多くの労働者を長時間労働に従事させる危険性が大である。

 第5に、深夜交替制勤務の過重性を考慮した労働時間規制の視点が欠落している。
 看護師等に加えて、様々な業種に深夜交替制勤務が導入されている現状において、これらに従事する労働者のいのちと健康を配慮するものとなっていない。

 第6に、公務員労働者の長時間労働規制の視点がなく、緊急の課題となっている教員の長時間労働を規制するための施策が示されていない。国家公務員、地方公務員の長時間労働が、民間の長時間労働を助長している側面も多く、この点での対策が示されていない。

 2 過労死弁護団としては、数多くの過労死の実態を踏まえて、政府、国会に対して、 今後とも意見を述べ、問題提起をおこない、過労死をなくすためのとりくみに力を尽くしたい。                                                                    以上

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                                                                           2017年3月28日

                                     全国過労死を考える家族の会代表世話人 寺西 笑子

 第9回「働き方改革実現会議」で残業時間の上限に関する政労使合意が示されました。それは、「月45時間、年360時間が原則」としながらも、業務の繁忙など特別の場合は、2〜6か月の複数月80時間、単月100時間、年720時間、さらに休日出勤の別枠を入れると年間960時間の残業も可能という、抜け道付きの例外規定を設け、残業時間をさらに規制緩和しようとするものです。1日の規制も1週間の規制もないため、毎日5時間、10時間という残業が続いても違法ではないという恐ろしいことなります。これでは過労死する働き方にお墨付きを与えるようなものです。このような過労死の合法化は許せません。

 そもそも時間外労働の限度に関する基準は、厚生労働省の大臣告示で月45時間、年360時間と定められています。根拠は、残業時間がこれを超えると睡眠時間が確保されなくなり、労働者の健康に支障をきたすことが証明されているからです。それなのに、月80時間から100時間、年960時間という大臣告示の倍以上の危険な働かせ方を政府はなぜ法制化するのでしょうか。これは仕事のために命を投げ出して過労死するほど働けという意味を持つものであり、過労死被災者の遺家族として断じて許せません。

 そのうえ政府は、「高度プロフェッショナル制度の創設」と「企画業務型裁量労働制の拡大」を働き方改革にセットし押し通そうとしています。「高度プロフェッショナル制度」は、一定の年収用件を満たすと「残業代ゼロ」で労働者を無制限に働かせることができる制度であって、過労死を増加させる恐れがあります。「企画業務型裁量労働制の拡大」についても、今でさえ十分にできていない労働時間の適正な把握がますます困難になる恐れがあります。わたしたちは、長時間労働を助長するこうした労基法改定に断固反対するものです。

 わたしたちの大切な家族は、長時間過重労働によりある日突然過労死しました。上司の命令により睡眠もとれないほど会社に尽くしてきたのに、過労死すると職場に緘口令が敷かれ、理由も教えてもらえず謝ってももらえません。遺された家族の悲しみと喪失感は計り知れず、遣りきれない思いでいます。過労死はまじめで責任感が強い人が被災する極めて理不尽なできごとです。何よりも志を半ばにして命を奪われた本人の無念は如何ばかりでしょうか。わたしたちは、過労死の悲劇を繰りかえさないために、過労死防止法を成立させました。成立後、国は「過労死ゼロ」をめざす「大綱」を打ち出しました。それなのに過労死ラインの残業が違法にならない制度を作ることは矛盾しています。わたしたちはどんな内容でも残業時間の上限が法制化されたら一歩前進とは全く思っていません。向かう方向が真逆です。過労死防止法は、これまで多くの命が犠牲になってできた法律であり、全国の過労死遺族の涙と汗の結晶です。

以上、過労死ラインの残業上限設定および長時間労働促進法案に断固反対します

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東京新聞社説 2017年3月15日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017031502000141.html

 長時間労働の抑制に向けて第一歩になりそうだが、ワークライフバランスを実現するには程遠い。残業の上限規制について政労使が大筋合意した。政府目標の「欧州並み」はどうなったのか。

 事実上“青天井”になっている残業時間に、初めて法的な強制力がある歯止めがかけられることになる。安倍晋三首相は「歴史的な大改革だ」と胸をはった。

 月四十五時間を超える残業時間の特例は年六カ月までとし、年間七百二十時間の枠内で「一カ月百時間未満」「二〜六カ月平均八十時間」の上限を、罰則付きで法定化する方針だ。

 連合の要求で当初案の「一カ月最大百時間」よりは若干修正された。しかし、労災認定基準のいわゆる過労死ラインに相当する働き方を、国が容認するものであることに変わりはない。

 そもそも政府の働き方改革は、家庭生活と仕事の両立(ワークライフバランス)を容易にすることが出発点だったはずだ。労働時間についても「欧州並み」の少なさを目指すという目標を掲げていた。ならば過労死根絶は当然のことながら、さらに進んだ対策が求められよう。

 現行は残業規制の対象外となっている建設業や運輸業、企業の研究開発部門などの扱いも決まっていない。抜け穴はなくすべきだ。

 また、管理職も規制から外れているほか、働いた時間とは関係なく一定時間働いたものとみなす裁量労働制や事業場外みなし制の労働者も事実上、対象外となる。十分な権限がない「名ばかり管理職」や、無理やり裁量労働制を適用するケースが増える懸念もある。管理職の要件を明確にするとともに、行政の監督・指導を強化することは実効性を担保する上で不可欠である。

 仕事が終わり、次に働くまでに一定の休息時間を取る「インターバル制度」も企業への努力義務を課すにとどまった。この規制があれば「ほとんどの過労死は防げる」と多くの専門家は指摘する。罰則付きの義務化を検討するべきだ。

 長時間労働の抑制は、育児時間がとれないことによる少子化、介護を理由とする離職、一人で子育てを担うため非正規雇用が多くなるひとり親家庭の貧困など、あらゆる社会問題の解決にもつながる。

 見直し規定も盛り込まれたが、導入から「五年後以降」といわずより速やかに、残業の上限を下げることを検討するべきだろう。
 

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全労働省労働組合オフィシャルサイト
http://www.zenrodo.com/teigen_kenkai/t01_roudouhousei/t01_1703_01.html

2017年3月14日
 全労働省労働組合

政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学大学院教授)は3月9日、「労働基準監督官の人手不足のため事業場に対する十分な監督が困難な状況」を指摘し、労働基準監督業務の民間活用の拡大を検討する作業部会であるタスクフォース(主査・八代尚宏昭和女子大学特命教授)を設置することを決定した。  また、複数のメディアはこの決定に関して、労働基準監督業務(企業への立ち入り業務)の一部を社会保険労務士等の民間事業者に委託する方向が検討されていると報じている。  しかしながら、こうした社会保険労務士等の活用は、以下に掲げる理由から、労働者の権利保障を脅かし、公正な行政運営を損なうことから、行うべきでない。

1 労働関係法令の違反状況等を確認し、その是正を求める労働基準監督業務は、強制力を背景にした関係職場への立ち入り、関係書類(電子データを含む)の閲覧、関係者への尋問等を通じてきめ細かく実態を明らかにしていく作業が不可欠であるが、権限のない社会保険労務士等の調査では実効性の確保が難しく、話を聞くだけで終わってしまうおそれがある。

2 労働基準監督官は、立入調査(臨検監督)の際、労働者の安全確保、権利保障の観点から、即時に権限(安全衛生分野を含めた行政処分や捜査着手)を行使しなければならない場合も少なくない。そのような権限行使が必要であるにもかかわらず、それをしない場合、労働者の安全・権利を十全に確保できないばかりか、労働基準監督官が赴く企業との公平性も担保できない。

3 社会保険労務士等の調査を企業が拒否した場合、後日、監督官による調査を実施することも考えられるが、これでは事前に監督官による調査(臨検監督)を予告したことと同じであり、監督業務の実効性を損ない、有害である。

4 企業の立入調査に赴く際には、当該企業の事前の情報収集が重要であるが、行政システムに蓄積された多様な情報(違反歴を含む)を、契約上の守秘義務しかない社会保険労務士等と共有することは、まったく不適切である。  また、企業は厳格な守秘義務のない社会保険労務士等に対し、センシティブな企業情報を明らかにするとは考えにくく、この点でも監督業務の実効性は乏しい。

5 開業又は開業予定の社労士が企業に赴く際、営業活動(顧問先企業の開拓等)と一体化するおそれがある。この場合、営業活動の相手方である企業を厳しく調査することは期待できず、当該調査は有害である。

6 近時、一部の社会保険労務士は「労働基準監督官対策」を宣伝文句に営業活動を展開しているが、こうした社労士が労働基準監督業務の一部を担うことで著しい利益相反が生じ、有害である。

7 多くの社会保険労務士は、労働・社会保険手続の代行業務や労務管理に関するコンサルティング業務等を通じて重要な社会的役割を果たしている。しかし、そこで求められる専門性は、司法警察権限を含む権限行使を常に念頭に置き、事業主との厳しく対立する関係の中であっても、法令の厳格な運用が求められる労働基準監督官の専門性と大きく異なり、安易な業務の代替は行政運営の変質を招くおそれがある。

政府は今日、「働き方改革」「過労死ゼロ」を掲げながら、必要な法政、施策の検討・実施を急いでいるが、どんなに優れた法制、施策も、それを推進する専門職員が適切に配置されていないなら画餅に過ぎない。  他方、労働基準行政職員は2017年度も43名が削減されており、圧倒的に不足している。こうした中で検討が開始された監督業務の民間委託は、労働基準行政職員を増やさない口実にすらならないばかりか、きわめて有害であることから、高い専門性を備えた労働基準行政職員を直ちに増員すべきである。
   
以 上
 

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 2017年2月2日に愛媛大学で行われた過労死防止啓発授業の講演録(3月3日愛媛新聞)

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「過労死促進改革」にならないよう、今後の関係会議の動きを監視していく必要がある。

                                                                             竹信三恵子

WEBRONZA 2017年02月07日
http://webronza.asahi.com/business/articles/2017020300001.html

 政府が残業時間に初めて罰則付きの上限規制を導入する案を示し、2月1日から「働き方実現会議」で検討が始まった。電通過労自殺事件などで、労働時間の規制強化を求める声が高まる中、これを前進と評価する声もある。だが、これで本当に過労死は減るのか。今後のよりよい改正論議へ向け、その問題点を考えてみよう。

過労死時間まで働かされる?

<写真>
過労自殺で揺れる電通の本社。月最大100時間の残業上限規制は、こうした悲劇をなくせるか

 これまでの日本の残業時間は、事実上、青天井といわれてきた。労働基準法では1日8時間、週40時間という労働時間が決められている。だが、同法36条で、過半数を組織する労組、または過半数の社員の代表と協定(36協定)を結んで労基署に提出すれば、厚労省の指導基準である週15時間、月45時間、年に360時間までは残業が認められ、繁忙期を理由に特別条項を付ければ、これらの規制も超えて働かせることができるからだ。

 人間の生命にかかわる基準が、個別企業の労使間で決められてしまうことに対し批判が盛り上がり、今回の案では、どの企業にも年間720時間(月平均60時間)、忙しい時は1か月最大100時間、前後の月との2カ月間の平均で80時間を超えたときに罰則を課す政府案が示された。

 労働時間に罰則付き上限の枠がはめられたことは、一見、前進のように見える。だが、わが身に引き付けて考えてみると、この基準はかなり怖い。

 厚労省の目安では、病気の発症前1か月か6か月にわたって月当たり45時間程度を超える残業があったときは業務と発症との関連性が強まり、発症前1か月間に100時間程度を超える残業があった場合か、発症前2か月か6か月間にわたって、月あたり80時間程度を超える残業が認められる場合には業務と発症との間の関連性が強いとされている。いわゆる「過労死ライン」だ。

 つまり、今回の上限設定は、下手をすれば働き手を「過労死ライン」すれすれまで働かせていいとするお墨付きにもなりかねない。

 また、新聞報道では「月60時間」との見出しを掲げているものが多いが、これも誤解を招く。

 「月60時間」というと、過労死などの認定基準よりずっと少ないかのように錯覚しがちだ。だがこの数字は、年間720時間を12か月で割ったものにすぎない。月80時間を超える過労死ラインの労働が続いても、年間を通して平均で60時間におさまっているならいい、ということだ。

 「2016年度ブラック企業大賞」で業界賞を受賞した印刷会社「プリントパック」の社員は、今年1月の授賞式あいさつで、長時間労働が体に与える影響を次のように語っている。

 「お客様に喜んでもらえる仕事がしたい、そんな熱い思いがあって、毎日何台印刷できるのかどれだけ美しく印刷できるのか、真剣に考えていました。しかし毎日12時間を超える労働に体は正直に反応しました。内臓に違和感をおぼえるようになり、ついには血便が出ました。それでも感覚がマヒしていた自分ではおかしいということに気づきませんでした。しんどいという感覚すらにぶっていたからです」

 「毎日12時間を超える労働」ということは、残業は1か月で80時間程度。今回の基準は、血便も出るような働き方を招く可能性があるということだ。

 過労死を防ぐには、週、月、年間ごとの規制が必要で、現在の指導基準である週15時間、月45時間、年間360日の上限を法律に盛り込み、ここに罰則をつける必要だ。

そもそも労働時間の把握ができない構造

 ただ、仮にそのような規制が導入されたとしても、各企業に対する労働時間の把握義務がなければ実効性は薄い。いま労働時間は、企業が各社員の月ごとの労働時間数を賃金台帳に記録しておくこととされているが、各社員ごとに毎日の始業・終業時刻を把握・記録する義務は規定されていない。このため、入退館の際にコンピューターを通じて記録が残るようなシステムやタイムカードを導入している企業以外は客観的な労働時間の把握は難しい。まじめに労働時間把握措置をとっている会社ほど罪に問われやすいといったことにもなりかねない。

 加えて、これを監視する役割の労働基準監督官についても、増員しているといいながら、一方で、安全衛生や労災補償などを担当する労働基準行政の技官や事務官の採用はストップしている。このため、増やした監督官をその補充に回さざるを得ず、現場の監督官はさほど増えないという事態も起きている。

 今回の政府案をスピード違反に例えるなら、制限速度45キロの道路で80キロ、100キロ、150キロで飛ばす車を規制するためとして、「80キロ、100キロを超えたら罰金」と立札は立てたものの、監視装置も沿道の警察官も増やさないようなものだ。これでスピード違反を取り締まれるのだろうか。

 規制だけでなく、全企業に罰則付きの客観的な労働時間の把握・記録義務を課し、監督官だけでなく労働行政の担当官全体も増やさなければ、実効性は担保できない。

月80時間、100時間残業は想定ずみ?

 長時間労働が一向に減らない原因としては、割り増し残業代の在り方も挙げられている。基本給と一部の手当に割増率がかける仕組みなため、ボーナスなどの算定基礎から除いてもよい賃金の比率を上げれば残業代は少しですみ、人ひとり新しく雇うより社員を長時間働かせた方が安くなる。

 加えて、恒常的な残業を前提にした固定残業代制度は野放し。さらに、今の国会では、専門的で高収入の働き手は労働時間規制から除外され、代わりに法律ではなく省令による、しかも労基法より大幅にゆるい「健康・福祉確保措置」を要件とした「高度プロフェッショナル制度」が提案されるなど、過労死防止の本気度が問われる仕組みがあちこちに張り巡らされている。

 森岡孝二・関西大学名誉教授は、2016年6月に閣議決定された政府の「ニッポン一億総活躍プラン」や、高度プロフェッショナル制度の「健康管理時間」の上限時間論議などで「月80時間まで」「月100時間まで」が繰り返されてきたことを挙げ、実はこれらの過労死ラインすれすれの残業規制は規定の路線だったのではないかと指摘。「大山鳴動してネズミ一匹」と皮肉っている。
(http://hatarakikata.net/modules/morioka/details.php?bid=340)

 労基法で規定された週40時間労働の基準が、「働き方改革」の名の下、知らぬ間に月80時間・100時間残業の基準へとすり替えられていくおそれはないのか。

 「総活躍」とは、だれもがそうした残業を前提とする働き方で目いっぱい働かされることにならないか。

 「働き方改革」が「過労死促進改革」にならないよう、今後の関係会議の動きを監視していく必要がある。
 

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 2017年2月22日、参議院の「国民生活・経済に関する調査会」が「労働分野の格差の現状と課題」をテーマに開催され、3人の参考人の1人として意見陳述を行いました。他の2人は慶應義塾大学商学部教授の樋口美雄氏と、千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平氏でした。参考人が午後1時から20分ずつ報告した後、川田龍平会長(民進)の進行で、出席議員(22名)から活発な質問があり、午後4時に終了しました。当日の議事録は後日公表される予定ですが、とりあえず参考までに私が用いたパワポ資料(PDF)をここに貼り付けておきます。

プレゼン資料:男は残業・女はパートの日本的働き方と労働所得格差(PDF)

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