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毎日新聞2016年4月16日
http://mainichi.jp/articles/20160416/ddm/005/070/020000c
 
 局地的に激しい揺れを伴う内陸直下型地震の怖さを改めて示した。

 14日夜、熊本県を中心とする地域を襲った地震は、東日本大震災以来の震度7を記録した。自然エネルギーのすさまじさは、多くの人を震え上がらせた。多数の死傷者が出ている。関係機関は、被災者の救援と安全な避難先の確保にまず全力をあげてもらいたい。

 気象庁は、この地震を「2016年熊本地震」と命名した。

 気象庁が観測を始めて以来、九州で震度7を記録したのは初めてだ。強い揺れは、九州全域から四国にまで広がった。

 震源の近くには、二つの断層帯がある。地震が内陸部の浅い場所で発生したため、震動が地表にそのまま伝わりやすく、地震の規模の割には激しい揺れになったとみられる。

 複雑な地下構造のため、大きな余震も続く。直下型地震への警戒は怠れない。そのことを再認識したい。

 運転中の川内(せんだい)原発(鹿児島県)と、停止中の玄海原発(佐賀県)に異常はなかったという。新規制基準では、活断層の真上に原発の重要施設を建設することは禁じられている。

 とはいえ、未知の活断層もある。活断層は、日本列島に2000以上走っている。いつ、どこで直下型地震が起きてもおかしくない。

 こういう地震列島の中で原発を維持していくリスクを改めて考えた人も多かっただろう。

 今も避難生活を余儀なくされている人が大勢いる。熊本市や益城町(ましきまち)などでは、停電や断水が続く地域がある。被災者の支援と、ライフラインの復旧に万全を期してほしい。

 停電などで必要な医療体制が確保できず入院患者を避難させる病院が出ている。激しい揺れによる精神的なダメージは、病状を悪化させる危険がある。病人や高齢者ら災害弱者への目配りは特に欠かせない。

 余震による2次被害も要注意だ。地震で地盤が緩んだり、建物がもろくなっていたりする可能性がある。雨が降れば土砂崩れも起きる。危険な場所に近づくのは避けるべきだ。

 熊本城の石垣の崩落や高速道路の陥没など、地震の深い爪痕が残る。九州新幹線も大きな被害を受けた。地震の際、6両編成の回送列車が非常停止措置をとったものの脱線し、本線をふさいだ。運休が続く。

 新幹線で全車輪の脱線は初めてだ。運輸安全委員会は、鉄道事故調査官を派遣した。高速で大勢の人を運ぶ新幹線で、ひとたび事故が起きれば大変なことになる。原因の解明を尽くし、対策に生かしてほしい。

 東日本大震災後、地震活動は活発化している。耐震化、防火対策など各自が減災を心がけ

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 http://mainichi.jp/opinion/news/20150920k0000m070117000c.html

毎日新聞 2015年09月20日 02時30分

  ◇国民が監視を強めよう
 
 戦後70年かけて慎重に積み上げられてきた安全保障政策が、抜本的に変わる。

 集団的自衛権の行使を容認し、自衛隊の海外での活動を飛躍的に拡大する安全保障関連法が、国会が大混乱する中で成立した。

 半年のうちに関連法が施行され、新法制のもとで現実に自衛隊が海外に派遣されることになれば、国のかたちは大きく変容するだろう。

 安保関連法の成立は、多くのものを傷めた。

 まず、平和国家の根幹である憲法9条は変質し、海外で武力行使をしないとの制約が緩められた。

 ◇「総合的判断」の危うさ

 そして、憲法は国民が国家権力を縛るものだという立憲主義の理念が傷ついた。憲法や法律の解釈がむやみに変わらないという法体系の安定性に疑問符がついた。

 民主主義を踏みにじるような安倍政権の強引な政治手法が、国会と民意との乖離(かいり)を広げ、政治不信を深刻化させたことも残念だ。

 しかし、この新法制は、成立すればそれで終わり、というものではない。国民が監視を続けることが、法律の性質上も重要であり、有効だ。

 新法制は、集団的自衛権の行使や他国軍への後方支援を世界中で可能にするが、どういう場合に自衛隊の活動を認めるかの判断基準があいまいだ。政府の裁量の範囲が大きい。

 集団的自衛権を行使するには、我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」などの新3要件を満たす必要がある。

 字面だけ読めば一見、歯止めが利いているように見えるが、何が明白な危険にあたるかは政府の判断にゆだねられる。

 国会審議でも基準は明確にならず、政府は最後には「総合的に判断する」というばかりだった。

 政府は「自分たちがきちんと判断するから、国民は政府を信頼して任せてほしい」と言いたいのだろう。

 だが、あいまいな基準は政府の拡大解釈を可能にする。法律の運用次第で、米国の要請に応じる形で日本の安全に直接関係のない戦争にも関わることになりかねない。そんなリスクを受け入れるわけにいかない。

 もちろん、集団的自衛権の行使も重要影響事態での後方支援も、原則として国会の事前承認が必要だ。だが、緊急の場合は事後承認でいいことになっている。自民党「1強多弱」の国会では、国会の承認がどこまで歯止めになるかも疑問が残る。

 ここで、やはり大きな力になるのは、国民の声だ。国民がこの問題に関心を持ち続け、政府の判断を監視する。政府が誤った判断をしそうになれば、おかしいと声を上げ、法律を現実に発動させない。そういう国民の意思表示が、重要な歯止めの役割を果たすだろう。

 新法制のもと、安倍晋三首相はどんな国を目指そうとしているのか。

 首相は、法整備によって日米同盟が強化され「抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性はいっそうなくなっていく」という。

 ◇普通の市民が動き出す

 自衛隊と米軍の一体化をさらに進め、自衛隊が米軍の戦いを世界規模で支援する。日本が米国の負担を肩代わりすることで、米国のアジア重視の政策を支え、中国への抑止力を強化するということだろう。

 そこには、首相の宿願も影響しているように見える。首相は、日本が集団的自衛権を行使できる国になることで、祖父の岸信介元首相が改定した日米安保条約の双務性を高め、憲法改正につなげたい、と考えてきた。日本を軍事的に「普通の国」に近づけようということだ。

 こうした首相の外交・安全保障政策は、軍事面に偏り過ぎているのではないか。

 対中抑止を目指した日米同盟の強化は、かえって地域の緊張を高めかねない。だが、首相にはそういう目配りはほとんどない。外交努力は当然の前提と口では言うが、その割には、中国、韓国などとの関係改善の努力は物足りない。抑止力が高まったとして、対中外交で柔軟性を失うことがあってはならない。

 野党にも注文をしておきたい。

 民主党が、今国会で領域警備法案しか対案を出さなかったのは、国会戦術としてはあり得ても、野党第1党として十分だったとは言えない。来年夏には参院選がある。安全保障政策について全体像を示せるよう、党内議論を詰めてもらいたい。

 新法制の成立で私たちが失ったものもあるが、希望も見えた。

 多くの人が安全保障や日本の国のあり方を切実な問題として考えるようになったことだ。

 憲法学者、法曹界、労働組合、市民団体だけでなく、これまで政治への関心が低いと見られていた若者や母親ら普通の市民が、ネットなどを使って個人の意思で声を上げ、デモや集会に参加した。これらの行動は決して無駄に終わることはない。

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http://www.asahi.com/paper/editorial.html#20150920
朝日新聞 2015年9月21日(月)
 
 自衛隊に対する憲法の縛りをゆるめ、時の政権の判断による海外での武力行使に道を開く。

 それが、新たな安全保障法制の核心といっていい。

 政権が常に正しい判断をする保証がないことは、先の大戦の重い教訓だ。政権の判断を監視する目が機能するかどうかが、従来以上に大切になる。

 国家安全保障会議(日本版NSC)、特定秘密保護法、そして今回の安保法制――。安倍政権がめざしてきたのは、安全保障をめぐる判断の権限を首相官邸を中心に一元化することだ。

 刻々と変化する国際情勢について、政権が情報を集め、的確に分析し、過ちなき決断ができる。そんな前提の仕組みだ。

 問題は、その判断の是非を、だれがチェックするのかだ。

 やはり国権の最高機関である国会の責任は大きい。

 今の国会は自民、公明の与党の数の力が圧倒的だ。「違憲」法制の歯止め役は果たせなかった。野党が求めた、自衛隊海外派遣の「例外なき国会の事前承認」も盛り込まれず、特定秘密保護法の壁も立ちふさがる。

 しかし、厳しい監視が欠かせない論点は数多い。

 法制を政権がどう運用し、自衛隊の活動はどう広がるのか。専守防衛が変質しないか。軍事に偏らない外交・安全保障の努力は。強大な同盟国・米国に引きずられないか。文民統制は機能するか。自衛隊の活動拡大で防衛費が膨らまないか……。

 安保政策は本来、幅広い国民の支持の基盤のうえに、与野党を超えた合意に基づき継続的に運用されることが望ましい。

 だが今回の安保法制審議は、政治に対する国民の基本的な信頼を傷つけた。法制がこのまま続く限り、結局は、安保政策の安定的な継続性は望み得ない。

 「違憲」の法制については、継続性より正しい軌道に戻すことを優先すべきだ。法制に反対した野党には、政権交代が実現すれば、法制を是正する意思を明確にしてもらいたい。

 野党には、もう一つの選択肢を国民に示すことも求めたい。

 日本のあるべき将来像や国際貢献策は何か、具体的に示すこと。そしてその実現のために、自公政権に代わり得る民意の受け皿を形にすることだ。

 法制に対する国民の監視が大切なことは言うまでもない。国会の行方を左右するのも、選挙を通じて示される国民の意思である。判断材料を提供するメディアの役割も重い。

 安保法制の成立は、議論の終わりを意味しない。これからの不断の監視の始まりである。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015091902000158.html
2015年9月19日

 新しい安全保障法制により、日本はこれまでの平和国家とは違う道に踏み出す。この流れを止めるには投票で民意を示すしかない。さあ、選挙に行こう。

 自衛隊が他国同士の戦争に参戦する集団的自衛権を行使できるようになり、これまでの「専守防衛」政策とは異なる道を歩みだす。これが新しい安保法制の本質だ。

 戦争放棄の日本国憲法に違反すると、憲法学者らが相次いで指摘し、国会周辺や全国各地で多くの国民が反対を訴えたが、与党議員が耳を傾けることはなかった。戦後七十年の節目の年に印(しる)された、憲政史上に残る汚点である。

◆公約集の後ろの方に

 安倍晋三首相が新しい安保法制推進の正当性を裏付けるものとして持ち出したのが選挙結果だ。

 首相は国会で「さきの総選挙では、昨年七月一日の閣議決定に基づき、平和安全法制の速やかな整備を明確に公約として掲げた。総選挙での主要な論点の一つであり、国民の皆さまから強い支持をいただいた」と答弁している。

 確かに、昨年十二月の衆院選で有権者は自民、公明両党に三分の二以上の議席を与え、自民党総裁たる安倍首相に政権を引き続き託したことは事実、ではある。

 とはいえ「アベノミクス解散」と名付け、経済政策を最大の争点として国民に信を問うたのも、ほかならぬ安倍首相自身である。

 首相が言うように、安保政策も主要争点ではあったが、自民党が衆院選公約として発表した「重点政策集2014」で安保政策は二十六ページ中二十四ページ、全二百九十六項目中二百七十一番目という扱いで、経済政策とは雲泥の差だ。

 「集団的自衛権の行使」という文言すらない。これでは憲法違反と指摘される新しい安保法制を、国民が積極的に信任したとはいいがたいのではないか。

◆「奴隷」にはならない

 もっとも、人民が自由なのは議員を選挙する間だけで、議員が選ばれるやいなや人民は奴隷となる、と議会制民主主義の欠陥を指摘したのは十八世紀のフランスの哲学者ルソーである。

 政党や候補者は選挙期間中、支持を集めるために甘言を弄(ろう)するが、選挙が終わった途端、民意を無視して暴走を始めるのは、議会制民主主義の宿痾(しゅくあ)なのだろうか。

 しかし、二十一世紀を生きる私たちは、奴隷となることを拒否する。政権が、やむにやまれず発せられる街頭の叫びを受け止めようとしないのなら、選挙で民意を突き付けるしかあるまい。

 選挙は有権者にとって政治家や政策を選択する最大の機会だ。誤った選択をしないよう正しい情報を集め、熟慮の上で投票先を決めることは当然だ。同時に、低投票率を克服することが重要である。

 安倍政権が進める新しい安保法制について、報道各社の世論調査によると半数以上が依然「反対」「違憲」と答えている。

 そう考える人たちが実際に選挙に行き、民意が正しく反映されていれば、政権側が集団的自衛権の行使に道を開き、違憲と指摘される安保法制を強引に進めることはなかっただろう。

 昨年の衆院選で全有権者数に占める自民党の得票数、いわゆる絶対得票率は小選挙区で24・4%、比例代表では16・9%にしかすぎない。これが選挙だと言われればそれまでだが、全有権者の二割程度しか支持していないにもかかわらず、半数以上の議席を得て、強権をふるわれてはかなわない。無関心や棄権をなくして民意を実際の投票に反映することが、政治を正しい方向に導く。

 幸い、国会周辺で、全国各地で安倍政権の政策に異議を唱えた多くの人たちがいる。その新しい動きが来年夏の参院選、次の衆院選へとつながることを期待したい。

 まずは自分が声を上げ、共感の輪を広げる。そして多くの人に投票所に足を運んでもらえるようになれば、政治が誤った方向に進むことを防げるのではないか。

 来年の参院選から、選挙権年齢が二十歳以上から十八歳以上に引き下げられる。若い世代には、自らの思いをぜひ一票に託してほしい。それが自分たちの未来を方向づけることになるからだ。

◆民意の受け皿つくれ

 野党にも注文がある。安保法制反対の共闘で培った信頼関係を発展させて、来年の参院選では安倍自民党政治とは異なる現実的な選択肢を示してほしいのだ。

 基本理念・政策が一致すれば新党を結成して有権者に問えばよい。そこに至らなくても、比例代表での統一名簿方式や選挙区での共同推薦方式など方法はある。

 野党が党利党略を優先させて、選挙にバラバラで臨むことになれば、民意は受け皿を失い、拡散する。そうなれば自民、公明の与党が漁夫の利を得るだけである。
 

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http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=343495&nwIW=1&nwVt=knd
高知新聞 2015年09月02日

 未成年の高校生が、大人から労働搾取をされるとは嘆かわしい。

 アルバイト先で過酷な仕事を強いられたり、不当な扱いを受けたりする、いわゆる「ブラックバイト」に悩む高校生が労働組合「首都圏高校生ユニオン」を結成した。高校生だけの労組は全国で初めてという。

 「進路のためアルバイトを辞めたいのに辞めさせてもらえない」「賃金計算が15分単位の切り捨て」「コンビニでおでん販売のノルマを課せられ、300個を自分で購入した」―。

 関係者によると、高校生からはそんなSOSが相次いでいるという。

 ブラックバイトは、社員に長時間労働などを課す「ブラック企業」とともに大きな社会問題になっている。昨年から大学生による労組の結成が相次いでいたが、高校生の結成は事態の深刻さを物語っているといえよう。

 背景を探っていくと、現代社会が抱える問題が浮き彫りになる。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、1993年に1世帯当たり657万5千円あった年間平均所得は、2013年には528万9千円と2割近くも減少している。

 親の経済事情が年々厳しくなり、アルバイトで学費や生活費を稼がざるを得ない学生の増加が見て取れる。このため、ブラックバイトでも簡単に辞められず、問題も表面化しにくいと、専門家は指摘する。

 労組を立ち上げた高校生も、家の生活費を助けるために働いたり、昼間はアルバイトをして夜に定時制高校に通ったりしている。高校生は大学生以上に法律知識に乏しく、交渉力もないため、犠牲になりやすい。

 こうした純真な若者を、事業者が己の利益のために不当に働かすことは許されない。事業者側の早急な是正を求めたい。

 ブラックバイトが深刻化する一因には近年の労働市場の変化もあろう。

 正規雇用が減り、非正規労働者が増えたことで、管理業務やノルマ達成なども非正規が担うようになった。これが低賃金で正規並みの労働を課す「ブラック」を加速させている。
 若い世代に理不尽な労働を強いることは、勤労の意欲をそぎ、将来の社会の活力低下にもつながりかねない。国も近く実態調査に入るというが、コンビニや飲食店などの業界団体も対応を急ぐべきだろう。

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                                                                          松浦 章

政府は「ゆう活」(ゆうやけ時間活動推進)と称する「朝型勤務」の推進を企業や自治体に呼びかけています。その趣旨は、「働き方改革の一環として、明るい時間が長い夏の間は、朝早くから働き始め、夕方には家族などと過ごせるよう、夏の生活スタイルを変革する」(厚生労働省ホームページ)というものです。

私のかかわる損害保険業界でも、最大手の損保ジャパン日本興亜が、夏季クールビズの実施期間(7月1日〜10月31日)に合わせ、2万7000人の社員を対象に「朝型勤務」を推奨しています。「大手金融機関による朝型勤務の本格実施は、同社が初めて」(産経6月7日)といいます。

損保ジャパン日本興亜は、その目的について、「午後7時までに退社することを前提に出社時間を午前8時前にするなど、夜型の残業体質から朝型の勤務にシフトすることにより、心身の健康を確保するとともに効率的な働き方を実践することを目的として実施するものです」と述べています。たしかに、同社自身が認めているように、長時間労働が蔓延する労働実態を考えると、社員の「心身の健康を確保する」という趣旨に異論はありません。しかし、単純に「朝型の勤務にシフトする」ことではたして長時間労働がなくなるのでしょうか。

同社のある中堅社員は、朝7時に出社し、可能な限り午後7時前には退社しているといいます。彼は、午後7時前の退社にこだわる理由について、「もし朝7時から午後7時まで勤務すれば1日の半分会社にいたことになる。それだけは避けたいんです」といいました。聞いてなるほどと思いました。同社は、さらっと「午後7時までに退社することを前提に」と述べていますが、通常勤務での定時は5時ですから、それが「朝型勤務」になれば、退社時間は本来(建前であったとしても)その前の午後4時や3時でなければなりません。それが午後7時だというのですから、これでは長時間労働の解消にはつながらないことになります。

彼には「企画業務型裁量労働制」が適用されていますから、定額のみなし労働時間手当は支払われるものの、労働時間に見合った賃金が支払われるわけではありません。同社では、本来裁量労働制の対象外であるはずの営業や保険金サービス(損害調査)の業務も含め、6374名に「企画業務型裁量労働制」が適用されています(2014年9月末現在、同社資料から)。そこに、2172名の「事業場外労働制」適用者、約3000名と考えられる「管理監督者」を加えると、かなりの労働者が残業料支払いの対象外となっています。もはや相対的に高賃金の労働者には「残業」という概念はないのです。

同社の「2015年度ワークスタイルイノベーションの取り組み」という通達では、「朝型勤務」の実施にあたって、「一人ひとりが時間当たりの生産性を高めることを意識し、時間を最大限に有効活用できる働き方への変革に取り組んでください」と指示しています。そうでなければ「『企業価値の継続的な向上』を実現することは困難です」ともいっています。どうやらこれこそが真の目的のようです。

損保ジャパン日本興亜は、昨年9月に合併し日本で最大の損保会社となりましたが、この間3回にわたって希望退職者の募集を行ってきました。「やめろ」とは絶対いいません。ただ、「この会社であなたの働いてもらうところはありません」というのです。これほど、長年働いてきた従業員の誇りを奪う言葉はありません。同社は3年間で4,700人の人員削減を予定しています。

いうまでもなく、長時間労働の原因は過大な仕事量と慢性的な人員不足です。そこにメスを入れないばかりか、さらなる効率化と生産性向上をもくろむものである以上、「朝型勤務」がもたらすものは、早朝から深夜までの際限なき長時間労働ではないでしょうか。なにしろ、残業可能時間はたっぷりあるのです。

今から129年前、1886年5月1日に、シカゴを中心に8時間労働制要求の統一ストライキが行われました(いわゆる第1回メーデー)。その際のスローガンは、「第1の8時間は仕事のために、第2の8時間は休息のために、そして残りの8時間は、おれたちの好きなことのために」でした。それから考えると、1日の半分の時間が会社生活となりかねない損保の「ゆう活」とは、なんと前近代的な「国民運動」(厚労省)なのでしょう。
 

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 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-07-09/2015070901_05_1.html
しんぶん赤旗 2015年7月9日

 労働者をそれ以下の賃金では働かせてはいけないと法律で決まっている最低賃金を今年いくらにするかの検討が、厚生労働省の最低賃金審査会(最賃審)で始まっています。月末をメドに地域ごとの「目安」を決定します。現在の最低賃金は全国平均して時給780円で、1日8時間で月22日間働いても13万7280円にしかならない低賃金です。異常な長時間労働や「働く貧困層」といわれるワーキングプアを解消するためにも、最低賃金を大幅に引き上げ、人間らしく暮らしていける賃金を実現することが不可欠です。

下がり続ける実質賃金

 厚労省が全国の労働者の賃金や労働時間を調査している毎月勤労統計調査で、物価上昇を差し引いた実質賃金が4月の速報値では約2年ぶりに前年同月比でプラスと発表されたのに、その後の確報値では一転マイナスに修正され、6月末発表された5月の速報値でも0・1%の減少とマイナスを続けたことが話題になりました。

 実質賃金の落ち込みは、なんと25カ月連続です。4月の速報値がプラスだったのに確報値でマイナスになったのは、パートタイムなど非正規の労働者の賃金が低かったためです。春闘などでの賃金の引き上げが消費者物価の上昇や消費税の増税に追いつかず、労働者の生活悪化が進んでいることを浮き彫りにしています。

 厚労省が最近発表した「国民生活基礎調査」でも、生活が「苦しい」という人が62・4%と過去最高になったことが明らかになりました。「アベノミクス」(安倍晋三政権の経済政策)のもとで大企業はもうけを増やし、大資産家は株高などでうるおっても、多くの国民は生活悪化で苦しんでいます。最低賃金を引き上げることは、労働者全体の賃金を底上げし、暮らしを立て直すうえで政府がやらなければならない最優先課題です。

 最低賃金法は、「賃金の低廉な労働者」に「最低額」を保障し、労働者の生活の安定や労働力の質的向上などを図るとともに、「国民経済の健全な発展に寄与する」ことをうたっています。最低賃金の基準は労働者の「生計費」などを考慮して決めるとしています。実質賃金が長期にわたって減り続け、労働者の生活悪化が進んでいる現状を打開するには、最低賃金の大幅引き上げが不可欠です。

 安倍政権は、近年の最低賃金引き上げで、全国的に生活保護基準より最低賃金が上回ったと宣伝しています。しかし、最低賃金の算定は残業込みの平均実労働時間を長めに計算しているなど問題が指摘されています。生活保護基準が年々引き下げられていることからも、生活実態を無視した宣伝です。

全国1000円以上に

 重大なのは、最低賃金の「目安」には都道府県ごとにAからDのランク付けがされており、実際の最低賃金額は各都道府県で決めるため、東京など5県が時給800円台でも、最低の沖縄の677円など600円台が17県もあり、地域格差が深刻なことです。おなじAでも東京が888円で隣の千葉が798円というのは異常です。

 全国一律で1000円以上にというのは、当然過ぎる要求です。地方での賃金引き上げは地域経済の是正にもなります。地域格差をなくし最低賃金を抜本改正するため、運動を強めることが急務です。
 

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 労働者派遣法大改悪法案は本日、衆議院厚生労働委員会での採決強行につづき、本会議に緊急上程され可決、参議院に送付された。派遣労働者や労働組合等の強い反対の声を押し切り、採決が強行されたことにまず強く抗議する。

 第一に指摘すべきは、審議状況からはとうてい採決する状況になかったということである。同法案は、いわゆる10・1ペーパー問題の発覚などで委員会での審議入り冒頭から委員長職権による開催という状況に陥り、答弁の不十分さや漏れた年金情報問題などもあってたびたび審議中断になるなど、不正常な委員会運営がつづいた。法案の中身からみても落ち着いた審議時間は確保されていない。本日の採決は議会運営の点からも許されるものではない。

 第二に指摘すべきは、短時間の審議のなかでも法案の重大な問題点が明らかになり、徹底審議が求められていたということである。派遣期間の制限が事実上撤廃されることで正規・直接雇用から労働者派遣への置き換えが大々的にすすみかねないこと、つまり、正社員ゼロ・生涯ハケン法案にほかならないことや、労働契約みなし制度の10月発動を防ぎ、期間制限違反等の違法企業を免罪する黒いねらいなどが明らかにされた。低賃金の使い捨て労働をあたり前にする雇用のあり方の大改悪にほかならず、徹底審議のうえで廃案にすべきものである。

 第三は、採決強行に際して、与党と維新の党利党略の取引でさらなる改悪の上塗りがされたことである。つまり、修正した「同一労働同一賃金」法案がなんの審議もなく、自公と維新の賛成で可決されたが、同法案は、もともと民主・維新・生活の三党提出だった。それを維新と自公が勝手に修正し、「正規労働者」を「通常の労働者」に書き替え、“均等”にくわえ“均衡”処遇を書き込むなどした修正案で採決された。そのため、原案でも実効性が薄かったものが完全な骨抜きとなり、かえって差別・区別に免罪符を与えかねないものとなった。このようなことが採決のどさくさにやられたことは大問題であり、派遣労働者のことを完全に脇に置くものとして批判されねばならない。

 第四は、衆院段階で強行を許したとはいえ、批判の世論と運動がひろがり、衆院段階の採決が大幅に遅れたこと、戦争法案の対峙も考えれば、廃案が可能な情勢がうまれてきていることである。とくに、同法案の場合には9月施行とされており、成立後に労政審等で政令を通す必要があること等を考えれば残された時間はわずかしかない。周知期間からいえば本来時間切れのはずである。

 全労連は、戦争法案許さない国民的な課題などとも結んで、派遣労働者や労働組合などとの共同をいっそう強化しながら、廃案を求めてたたかいをさらに力を集中して強化していく。

                    2015年6月19日

                                   全国労働組合総連合 

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http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-06-12/2015061201_05_1.html
しんぶん赤旗 2015年6月12日

 安倍晋三政権が「戦争法案」とともに今国会で成立を狙っている労働者派遣法改悪案について、自民、公明の与党が維新を巻き込んで、きょうの衆院厚生労働委員会で採決を強行しようとしています。労働者派遣法改悪案は「正社員ゼロ」「生涯ハケン」を押し付ける悪法で、審議をすればするほど問題点が明らかになっています。しかも厚生労働行政をめぐっては年金情報流出問題が発覚し、その問題の優先的な解明が求められています。法案に対する反対の声や年金問題での早急な対応を求める世論を無視した採決の強行は、絶対に許すことができません。

人さえかえれば無期限に

 労働者派遣法改悪案は、専門的な26業務を除いて原則1年、最長3年となっている、企業が派遣労働者を受け入れることができる現在の期間制限をなくし、働き手さえかえれば、無期限で派遣労働者を受け入れることができるようにする法案です。改悪法案の国会提出は3回目ですが、これまで立て続けに廃案になった法案をそのまま出し続けること自体、国会審議を軽視したものです。

 今国会での改悪法案の審議は5月半ばに始まったばかりですが、短い期間にも法案の問題点が浮き彫りになっています。派遣労働者の受け入れ期間が制限されていれば、企業は期限が来てもその業務を続けたい場合は、派遣労働者に直接雇用を申し出なければなりません。ところが期間制限がなくなれば、企業は労働組合の意見を聞くだけで、人を入れ替えたり部署をかえたりして派遣労働者を使い続けることができます。まさに派遣労働者から直接雇用や正社員への道を奪うものです。

 今回の改悪法案の提出に当たって政府は、条文に派遣は「臨時的一時的なもの」であるとの原則を「考慮する」などを盛り込みました。しかし派遣の期間制限をなくし正社員への道を奪っておいて、「考慮する」だけではなんの歯止めにもなりません。派遣労働者にとっても正社員にとっても、改悪法案は百害あって一利なしです。

 しかも法案審議のなかでは、企業が派遣労働受け入れ期間に違反した場合は派遣労働者に労働契約を申し入れたものと「みなす」規定が今年10月から実施予定になっているのに、改悪法案がその前の9月から施行されれば、その意味がなくなることも重大問題として浮上しました。文字通り違法企業が大歓迎するこうした改悪を、厚労省が改悪法案の成立を急ぐ理由として一部の党に説明していたことも明らかになりました。まさに派遣労働者を守るどころか企業の利益優先の厚労省の姿勢が、きびしく問われるのは当然です。

別の法案では解決しない

 改悪法案では現在は派遣の期間制限がない26業務の指定も廃止されるため、専門的な派遣労働者が大量に解雇されるのではないかという不安が広がっています。こうした不安に応えるためにも正社員化を進め、「正社員が当たり前」の働き方を確立すべきです。

 自民、公明が維新と合意した「同一労働同一賃金推進法案」を修正の上成立させるというのは、派遣法改悪の問題点を何一つ解決するものではありません。いま重要なのは派遣法改悪について徹底審議し、改悪法案は国民が望む通り、今国会でも廃案にすることです。

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http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-05-01/2015050101_05_1.html
しんぶん赤旗 2015年5月1日

 きょうは第86回メーデーです。安倍晋三政権は、「戦争立法」と改憲、沖縄の米軍新基地建設、労働法制大改悪、消費税大増税と社会保障改悪、環太平洋連携協定(TPP)交渉推進、原発再稼働などの暴走を加速しています。どの問題でも国民世論は反対が賛成を上回り、共同したたたかいが広がっています。労働者・国民の団結と国際連帯の日であるメーデーを、安倍政権打倒の総決起の日とし、国民的共同をさらに広げる一大跳躍台にしていきましょう。

戦後70年の年の攻防

 今年は第2次世界大戦終結から70年です。憲法9条破壊の「戦争する国」づくりをすすめる安倍政権は、歴史を偽造し侵略戦争を美化するなど、戦後の世界秩序に挑戦する「極右政権」というべき姿勢を強めています。心ある保守の人たちや、アジア諸国からだけでなく欧米諸国からも、厳しい批判が上がっているのは当然です。

 安倍政権が掲げる「世界で一番企業が活躍しやすい国」も、戦後日本の雇用と労働のルールを根本から破壊することが狙いです。

 労働者派遣法改悪案は、派遣労働をあくまで特殊・例外的働き方としていた「常用雇用代替禁止」「臨時的・一時的業務に限定」という大原則を投げ捨て、「生涯ハケン」「正社員ゼロ」社会への道を開くものです。「残業代ゼロ」法案は、いまでさえ「三六協定」という抜け道のある労働時間規制を、まったく取り払うものです。

 法的保護と集団的労使関係によってはじめて「労使対等」の立場に立てるとする戦後労働法制=近代労働法の基本思想を否定し、労働者を「裸」で資本の前に立たせる攻撃です。働くルールの破壊策動に対して、労働組合のナショナルセンターの違いをこえた幅広い共同行動がすすんでいます。

 辺野古新基地建設反対の「オール沖縄」の力で圧勝した沖縄県の翁長雄志知事は、県民の強い意思をオバマ米大統領に伝えるよう安倍首相に要求し、新基地建設に固執する首相を批判しています。

 生活と権利、平和と民主主義を脅かし、戦後70年間の日本のあり方に根本から挑戦する暴走政治にたいし、さまざまな課題で始まった「一点共闘」は、保守と革新の垣根や過去のいきさつを乗り越え、「安倍政権打倒」の一点で、大きく合流しようとしています。

 これらのたたかいは、アジアと世界に日本の理性と良識を示し、国際的連帯も広げています。

 ニューヨークでは、630万人余の「核兵器全面禁止のアピール」署名を携えた約1000人の日本代表団が、核不拡散条約(NPT)再検討会議にあわせて行動し、被爆70年にあたっての日本国民の決意を世界に示しています。

政権打倒へ共同さらに

 今年も「1・26国会前総がかり行動」、「3・8反原発統一行動」、「3・22安倍政権NO!大行動」、「4・27ガイドライン改定反対総がかり行動」など、これまでにない枠組みの共同行動が生まれています。「5・3憲法集会」も、新しい枠組み・プログラム・会場(横浜市の臨港パーク)で、参加規模も拡大して開かれます。

 メーデーを成功させ、戦後70年の節目の年を、歴史に背く反動的逆流を打ち破り、労働者・国民が主人公となる新しい日本への転機の年にしようではありませんか。

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