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 その12 関西電力課長の過労自殺をめぐって

 

 2016年4月20日、関西電力の技術畑の課長、40代のAさんが出張先の東京のホテルで自殺を遂げた。どの方面からの申請だったのかわからないが、この事件について敦賀労働基準監督署はおよそ半年後、これを過労自殺と労災認定している。Aさんの死がマスメディアに報道されるのは、この労災認定後のことである。

 Aさんは関電高浜原発1,2号機の再稼働に関する原子力規制委員会の審査対応の業務に携わっていた。この審査は3項の流れからなる。

a、2015年3月17日申請の「新規制基準にかかる審査」⇒16年4月20日に「合格」
b、15年7月3日申請の「工事計画の審査」⇒16年6月10日に「認可」
c、15年4月30日申請の「老朽原発に特化した審査」⇒16年6月20日に「認可」

 すべての審査期限は16年7月7日である。この期限までに合格・認可が果たされなければ、とくに審査のきびしい40年以上の老朽原発1,2号機は、廃炉の可能性がきわめて高かった。

 1,2号機の再稼働は関電の「社運に関わる」悲願であった。それゆえ規制委員会との折衝にあたる担当者には、なんとしても期限までに認可をとれという、本店・事業本部からのきわめてつよいプレッシャーがかかっていたことは想像に難くない。Aさんの仕事の細部については総じて具体的な情報が伏せられていて、なおわからないことも多いけれど、工事関係の課長であるAさんは、主として上のb、設備の詳細設計をまとめる工事計画認可申請を担当していた。規制委員会に提出した資料はあわせて数万ページ(読売新聞2016.10.21によれば8万7000ページともいう)におよび、しかも提出するたびに規制委から膨大な質問や手直しの要請が出される。コピーなどの補助作業には事務担当者が配置されているとはいえ、技術に関わる処理は結局、専門知識のあるAさんに集中していた。社内の調整の会議も数多く、Aさん一人のことではないにせよ、15年3月の安全審査申請から16年6月の認可まで事務レベルの会合は233回に及んだという。16年1月から4月まででも100回を超えた。Aさんは3月から東京に出張して資料作成や規制委員会との折衝に携わったが、むろん東京と大阪、福井との行き来も頻繁であった。

 過酷な業務である。労働時間はとくに16年1月から急増した。推定するところ2月の残業は約200時間、3月〜4月の残業は約100時間前後になる。当然「もちかえり残業」も普通であった。ここにさらに2つの事情が重なる。課長のAさんは管理職とみなされ、三六協定は適用されない。そのうえ、厚労省労働基準局長は2013年、原発再稼働に向けた審査対応業務にかぎっては労基法上の残業時間制限の適用を外すという通達を発していた。これは2013年時点の九州電力の求めに応じ九電の原発再稼働審査対応に適用されるものだったが、いつしか「ほかにもあてはまる」として他社をふくむ14基についてもOKとされていたのである。

 Aさんが自死したのは、「新規制基準にかかる審査」に「合格」したその日、16年4月20日である。労災と認定されたのはあまりにも当然であろう。 そして彼の死後1ヶ月の5月末、関電は工事計画の補正書類を規制委に提出し、6月20日、再稼働・老朽原発の運転延長の認可を受けている。1号機は34年11月まで、2号機は35年11月までの稼働認可であった。

 この過労自殺について注目すべきことは、関西電力という企業が徹底して具体的な説明を拒んできたことであろう。労災認定以前からこの事件に関心を寄せてきた福井新聞の最初のまとまった記事(2016.10.20)などによれば、関電はAさんの自殺について「ご遺族やご家族への影響などを考慮し、回答を差し控え」た。また岩根茂樹社長は、10月28日の決算会見で、この件については(Aさんの業務に)忙しいという状況があったのは事実だが、「遺族に配慮し、(労災の被害者が)当社社員であるかどうかもふくめて(以前から)回答を控えている」と「説明」した。そして、当時の職場環境に関しては、他部署からの応援や産業医による指導など「状況に応じて適宜適切な対策を踏まえ、持続可能な環境をつくってきたつもりだ・・・」と無意味な弁解をつけくわえる。Aさんの忙しさはわかっていながら「遺族に配慮し」「社員であるかどうかもふくめて回答を控えている」だって? それはほとんど了解を超える、滑稽で混乱した「説明」である。

 審査の過密スケジュールに一半の責任ある原子力規制委員会はといえば、この件について「詳細な事実関係を把握していない」。規制委員会の問い合わせに関電が「社内のことなので何も答えない」と開き直ったからだ。その後も、関電広報室は朝日新聞の記者の質問に答えて、(Aさんの自殺については)「プライヴァシーの問題もあるので回答を控えている」という。Aさん個人の労働体験、遺族の方々のありようなど、この事件では周辺の事情はいっさい明らかにならないけれど、遺族は、労災補償があれば、Aさんが関電社員だったことも、過重労働の果ての死だったこともすべて忘れ去られることを本当に望んでいるのだろうか? 「プライヴァシーを尊重」して、というのはときに、重い責任を逃れ、社会化すべき問題を隠蔽しようとする者の言いぐさにほかならない。

 関電は地域社会でも、少なくとも暗黙の箝口令を敷いているかにみえる。『しんぶん赤旗』の記者が、関電の従業員約500人が自宅や社宅を構えて住むという福井県最西端の高浜町を尋ね、インタビューを試みている。たとえ『しんぶん赤旗』でなくても同じであろう−−平均的な反応は、Aさんの過労自殺について、「この件は話せない」であった。しかし人によっては「みんなはよから(4月20日の死の頃から)知っている。黙っているのは関電の夫や子の昇進に影響するから、誰が話をしていたかは会社に伝わる・・・」と語気を荒げたりもする。また、関電は、これまでは全社員が社内ウェブサイトで在職死亡を閲覧できたけれど、いまは役職者や一部管理職のサイトでしかこれを見られないという。「これまでは葬儀も一緒で職場の大勢で手伝いました。それがいま、自殺した人は社員であるかも明らかにしなくなった」とつぶやく労働者もいた。

 従業員はもとより、原発再稼働に生活を託す住民も数多いであろうこの町の、これが自然な空気であろう。Aさんの死はこうして、やがて語られることもなく埋もれてゆくのだろうか。

 関電の若狭地域の原発に関しては、福井地裁(樋口英明裁判長)が、大飯原発3,4号機について1014年5月に、さらに高浜3,4号機について2015年4月に、いずれも再稼働差し止め禁止の判決を下している。これらの画期的な司法判断は、一部「識者」の批判はまぬかれなかったとはいえ、福島の事故に衝撃を受けた広範な人びとから熱い支持が寄せられた。いずれにせよ原発再稼働は、意見の対立を避けられない深刻な問題である。そんななか「社運をかけて」再稼働に突き進む関電は、原子力規制委員会の審査対応の激務に斃れた社員の過労自殺が、この経営選択にとってわずかでもマイナスになりかねないと案じ、事件の隠蔽をはかったということができる。

 Aさんの過労自殺が労災認定された同じ2016年10月、電通の女性社員、24歳の高橋まつりさんの、前年12月クリスマスの日の自死が労災認定されている。この過労自殺には遺族の母と弁護士がはじめから主体的に関わっており、労災認定も記者会見で明らかにされたものであった。その告発の主体性、91年に続いてまた過労自殺を出した電通の過酷な働かせかたへの社会的批判、それにおそらくは安倍政権が「働き方改革」の真摯さの証拠を示そうとするポーズが相まって、その後の政府の対応は電通にきびしく、またスピーディであった。電通は労働局の立ち入り調査、責任者の刑事告発、社長の引責辞任に追い込まれた。さらに電通は17年1月には、遺族への謝罪と慰謝料などの支払いのほか「再発防止措置」をふくむ合意書を、遺族・弁護士側と交わすことを余儀なくされている。その「措置」には、きわめて具体的な「長時間労働・深夜労働の改革」、「健康管理体制の強化」、「社員教育・啓発」が盛りこまれた。再発防止措置の実施状況について会社は毎年12月に遺族側に報告しなければならない。労働時間などに関する労務管理に遺族側が関与する、それは異例の画期的な対策であった。

 このような政治と社会の動向は、隠蔽体質の関電にもさすがにある影響を及ぼしたかにみえる。2017年1月15日、福井労働局敦賀労働基準監督署は、関電の岩根社長を出頭させ、すべての管理職の労働時間を適切に把握するよう求める指導票を交付した。これも異例のこととされる。関電は今や過去2年間の全管理者の残業時間や持ち帰り残業時間を調べ、労基署に報告しなければならない。労基署にはAさんについて持ち帰り残業の時間は把握できなかったことへの反省があったものと推測される。

 これを受けて関電は1月17日、「働き方改革・健康経営委員会」なるものを立ち上げる。「適正な労働時間の管理に努め、会社と従業員のさらなる成長につなげる取り組み」をするという。関電は、16年12月20日に天満労基署から本店の従業員6人への残業割増賃金未払いの是正勧告を受けていたことも明らかにした。17年1月20日には、上の委員会の初会合が開かれた。委員長は岩根社長である。労働時間の適正な把握と長時間労働の削減を幹部に指示した。1月中に再発防止策をつくり、労基署に報告するという。

 電通と違ってこの委員会は非公開であった。会社の内外で社員の過労自殺を社会問題化しないという関電の隠蔽体質はそのままである。情報は乏しく、Aさんの過労自殺を語るこの文章の内容も報道のかぎりを超えていない。だが、過労死防止にとって大きな成果を残した高橋まつりさんの受難にくらべて、原発再稼働への審査対応という社会的な意味をもつ仕事に斃れた中年男性Aさんの自死はあまりにひっそりとしすぎている。もっと多くを知りたいという思いに駆られる−−たとえば、Aさんはどのような経歴と人柄だったのか? Aさんの自死は「工事計画」の「認可」以前のことであるが、彼が主に担当していたという規制委への対応業務はどの程度終わっていたのか? これからが本番だったのか? その仕事での最大の心労はなんだったのか? 沈黙する遺族たちは本当のところAさんの死を、そして関電の対応をどのように受け止めているのか? そして技術者としてのAさんが、そもそも高浜原発1,2号機の再稼働という経営政策にある疑問をもつことはなかったのだろうか?

 過剰な推測は避けたいけれども、Aさんはおそらく、原発再稼働の社会的な当否を問うゆとりもなく、多分エリート技術者の矜持をもって、会社と社員の期待を背負う困難な激務と格闘し、その途上、あまりの心身の疲弊に斃れたのだ。哀悼の思いを表したい。 (2017年2月16日)

【資料とした報道一覧】
・福井新聞2016.10.20/10.21/10.29/11.3/2017.1.16/1.18/1.21 
・朝日新聞2016.10.8/10.14/10.15/10.19/10.20/10.26/10.27-28/11.7/11.8/
     12.25/12.28 /2017.1.16/1.30 
・読売新聞2016.10.21
・しんぶん赤旗2016.10.22/11.20
*関電関係は福井新聞、電通関係は朝日新聞を主資料としている。

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              大阪損保革新懇世話人、
              兵庫県立大学客員研究員、 松浦 章
 
電通事件での同社幹部社員の書類送検と社長の引責辞任は、違法な労働実態を会社が把握しながら、それが常態化していた場合、もはや知らぬ存ぜぬは通用しないことを明らかにしました。しかし、現実には電通のように法違反残業が蔓延しながらも、あるいは会社自身がそれを推進しながらも、現場の労働者の自己責任として放置している例が少なくないと思われます。
 
筆者がかかわる損害保険業界の実態を取り上げてみます。損保業界は2010年から金融持ち株会社のもとに経営統合され、三メガ損保グループがマーケットシェアの90%を占めるという、先進国にはまれな寡占体制となっています。MS&ADインシュアランスホールディングス(三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保)、東京海上ホールディングス(東京海上日動、日新火災)、SOMPOホールディングス(損保ジャパン日本興亜)の三グループです。これらの大手損保会社には共通して「みなし労働時間制」が導入されており、長時間労働とサービス残業の隠れ蓑となっています。

「みなし労働時間制」とは、実際の実労働時間にかかわらず、あらかじめ労使で決めた「所定の労働時間」を労働したものとみなして定額の賃金を支払う制度で、「企画業務型裁量労働制」、「専門業務型裁量労働制」、および「事業場外労働制」がこれにあたります。損保各社では企業が一定額の「みなし労働時間手当」を労働者に支払うことによって、残業料支払い義務を免れています。
 
その中の一社、三井住友海上を例にあげてみましょう。同社は、2013年度から、転居を伴う転勤のない「地域社員」(主に女性)にも「みなし労働時間制」を導入しました。営業・損害サービス部門全員に適用したのが「事業場外労働制」です。この制度は「事業場外で業務に従事した場合、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものと」(労基法第38条の2)みなすものです。事務所外で勤務した時間は労働時間の算定が困難とされ、事務所内外での業務が混在する日はどれだけ働いても1日の労働時間は「みなし労働時間」勤務したものとされます。たとえば朝9時に出社、すぐに外出し、夕方17時に帰社、その後4時間デスクワークを行い21時に退社したとします。この場合、昼休みの1時間を除いた実労働時間は11時間ですが、同社のみなし労働時間である8時間33分働いたものと「みなされる」のです。
 
ここには根本的な問題があります。損保の営業や損害サービスの仕事は、けっして労働時間の把握が困難なものではありません。営業であれば代理店や得意先の会社などを訪問することが中心業務ですし、損害サービスの場合は被害者宅や事故現場、病院等が主な外出先となります。いずれも行き先ははっきりしており連絡も簡単に取れる状況にあります。また出先での業務終了後は原則帰社し、デスクワークを行って1日の仕事を終えるというのが一般的です。こうした損保の対外業務がおよそ該当するとは考えられません。

さらに大きな問題は、ほとんど外出することのない、すなわち、そもそも「事業場外労働制」そのものの対象とはなりえない職場の労働者にまで、この制度が適用されていることです。同社では、労働者自身が自らのパソコンで「事業場外労働制」を選択することで、労働時間管理を外れ「みなし労働時間制」が適用されることとなります。つまり、労働者が与えられた仕事をこなすために「三六協定」(時間外労働の延長に関する労使協定)を超える残業を余儀なくされたとしても、「みなし労働時間制」を自ら選択する、つまり「勤務時間入力を行わない」ことで「三六協定」をクリアし「合法」になってしまうという仕組みです。
 
ある労働者は、外出することがない自らの職場で「事業場外労働制」が適用されることはおかしいと、通常の労働時間管理を選択しています。ところが膨大な仕事量のために恒常的な残業が続き年間の「三六協定」時間を超えてしまいそうになりました。すると、上司から「早朝出勤はするな、18時には帰りなさい」との指示が出されたとのことです。では「事業場外労働制」を選択している他の労働者たちに対してはどうなのか。そういった指示はありません。彼女たちはいくらでも「合法」的に残業ができるからです。もちろんみんな喜んで長時間働いているわけではありません。

問題の根本に、職場の人員をはるかに超える膨大な仕事量と、それを違法な労働時間制度でこなそうとする会社姿勢があることは言うまでもありません。しかし労働現場でこの状況に直面している労働者にとって事はそう単純ではありません。ともすれば「おかしいことをおかしい」と主張する労働者がわがままだとみなされてしまいかねないからです。現実に「なんであの人だけ」といった声があり、毎日悩みながら職場を後にしていると言います。しかし一方で「あなたが正しい。私もそうします」と共感してくれる労働者も生まれているとのことです。

許せないのは、法違反労働を行う責任を労働者に転嫁し、労働者を分断する会社のやり方の巧妙さです。森岡孝二氏がASU-NETのコラム(「電通事件の根深さを示す『もぐり残業』の是正措置と公表制度」2016/12/31)で指摘していますが、電通の書類送検は、業務による過労とストレスで高橋さんを死に追いやった電通の責任を直接に問うものではありません。直接の容疑は、電通が社員に「三六協定」で定めた限度時間を超えて残業させ、それが常態化していることの違法性を問うものでした。

それでは、三井住友海上の場合どうでしょうか。本来「事業場外労働制」の対象とならない業務にこの制度を導入する。しかも、外出することがほとんどない職場にもこの制度を適用する。そして「三六協定」を超える「違法」残業の抜け道として制度を活用する。さらにその「違法」残業を労働者の自己責任とする。まさに三重四重の法違反労働と言わなければなりません。もちろんその結果生まれるのは長時間労働とサービス残業の常態化です。こうした状況を会社自体、あるいは幹部社員が知らないはずはありません。そうであれば、電通や三菱電機と同じように刑事責任が問われなければならないでしょう。

森岡孝二氏は前述のコラムで次のように述べています。
 
「今回の電通の事件は、長時間残業の削減と過労死の防止のためには、労基 法を改正して残業の上限を法的に規制するだけでは十分ではないことを示唆しています。規制逃れの『もぐり残業』をなくすためには、労働時間の適正把握に関する指導監督の強化と、違反企業に対する罰金と懲役の両面にわたる罰則強化とが必要です。現行の6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金ではあまりに軽すぎます」
 
損保大手三社は、大学生の就職人気ランキングでいずれもベスト10に入っています。「働きやすい会社」ランキングに選ばれることすらあります。長時間労働や過労死をなくすためには、こうした名だたる大企業のブラック化の現状を明らかにすることも必要ではないでしょうか。
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アピール 「 関西電力(株)で働く従業員の自殺に伴う労災認定について」

2016年10月末日
電力労働運動近畿センター

まずは過労死自殺された方へ心から哀悼の意を表します。またご遺族の心痛の思いを共有させて頂きます。そして私たち関西電力職場に係るものとして過労自殺を生み出す経営施策に対し強く抗議の意を表します。

過労自殺を招くまでの過重労働を課したことは重大な労働法の違反があると指摘せざるを得ません。それは新聞報道によれば「時間外制限除外規定」外とのことですが、実態として再稼働に向けた仕事は、関西電力内部では共通する問題意識の仕事と位置付けられ、重視されているのは言うまでもありません。

この過労自殺の背景には、厚労省・規制委員会・関西電力の三位一体となった原発再稼働ありきの方針があることを指摘せざるを得ません。過労自殺を生み出すこのようなありようが関西電力職場を暗くしていくことになり、全ての職場に不安と喪失の連鎖の懸念など重大な結果を招くことになりかねないと強く警鐘を発します。

関西電力職場で働く皆さまがこのようなことが起こらないように、今一度、立ち止まって職場の状況について総点検されることを提起します。原子力関係職場だけではなくすべての職場における仕事上の繁忙感は大きく「なんとかしてくれ」との声も多数寄せられています。エネルギー産業で働く皆さんが気持ちよく安全で安心できる職場環境で、楽しく働くことが出来るように私共も奮闘したいと考えています。

今一度、皆さまの職場が不法な職場環境になっていないかどうか、周囲を見回して私どもに伝えていただくことも歓迎いたします。
  
  このような惨事が二度と生じないようともに手を携えてより良い職場環境としていきましょう。
                               以 上

【連絡先】電力労働運動近畿センター
☎06-4797-4414 fax06-4797-4415 メールden-kinki3@cwo.zaq.ne.jp

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2016年07月22日 (金) 
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/249739.html?utm_int=detail_contents_news-link_001&utm_int=detail_contents_news-link_001

働き過ぎ、ニッポン!

先進国で最悪レベルと言われるのが、日本人の長時間労働です。
その長時間労働を減らすために、最も必要とされる対策に政府が、ようやく取り組むことになりました。
事実上無制限となっている残業時間に、ハッキリと上限を決めて制限する、という対策です。
厚生労働省が、近く、有識者による検討会議をスタートさせる予定です。
実現すれば日本の労働時間法制の大きな転換となります。

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【 何が問題か? 】
そもそも、日本ではなぜ、長時間労働に歯止めがかからないのでしょうか?
どこに問題があるんでしょうか?
そして、労働時間に上限を決めるとなると、その水準や、対象となる業種をめぐって、利害が複雑に絡み合うことが予想されます。調整は大変な作業になると思います。
そして、長時間労働の是正がうまくいくかどうかは残業を前提としない仕事のあり方や、賃金の水準など、今後の働き方改革全体を左右する、重要な課題となるとみられます。

【 長時間労働の実態 】
まず、長時間労働の実態を見てみます。

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日本は、欧米諸国と比べて、長時間、働いている人の割合が多くなっています。
例えば、週に49時間以上、働いている人の割合は、日本は、21点7%にのぼります。
それに対して、アメリカは、16点4%、イギリスは、12点3%。
フランスやドイツは、10%余りですから、日本は、長時間労働者の割合が、フランスやドイツの、ほぼ倍にのぼる、ということになります。

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こうした長時間労働の結果、何が起きているかと言いますと、過労死、つまり働き過ぎて死んでしまうという、あまりにも過酷な問題です。
2015年度、過労死とされた人は、96人。
前年よりも減っていますが、これは、労災認定で過労死と認定された人の数で、遺族が、過労死の労災請求をした人の数は、283人にのぼっていて、前年より大きく増えているのが現状です。

【 なぜ、長時間労働になるのか? 】
そもそも、なぜ、長時間労働に歯止めがかからないのでしょうか?
どこに問題があるんでしょうか?

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まず、踏まえておきたいのは、労働時間はチャンと法律で決められていて、上限も決められているということです。
労働基準法によって、労働時間は、一日8時間、週40時間までと決められています。
そして、これを“超えて働かせてはならない”と明記されています。
これを「法定労働時間」といいます。

つまり、一日8時間まで、週40時間までが、労働時間の上限であって、これを超える残業は、実は禁止されているわけです。
しかし、これだけでは、なかなか現場がまわらない、ということもあって労使が合意すれば、これを超えて残業が可能になる仕組みになっています。これが、いわゆる「36協定」と呼ばれるものです。
労働基準法第36条に規定されているために、こう呼ばれます。
会社側が、労働組合との間で、この36協定を結べば、残業が可能になります。

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36協定を結んだ場合、許される残業の範囲は、月45時間、年間360時間まで、という基準があるんですが、これには、強制力がありません。
このため、特別な事情がある時には、労使が、さらに「特別条項付」36協定というものを結べば、この範囲を超えて、さらに長時間の残業が可能になります。

つまり、本来、法律は、労働時間の上限を決めているんですが、労使が36協定さえ結べば、事実上、残業がいくらでも可能になる、という現状になっているわけです。
厚生労働省の調査では、企業の半数以上で、この36協定が結ばれていて、特に大企業では9割以上にのぼっています。

【 上限規制 検討へ 】
このように、労働時間の規制が曖昧になっていることが、先進国の中で、突出して多い労働時間、そして、過労死などの背景になっていると見られているわけです。

そこで、ようやく政府が検討することになったのが残業時間に、明確な上限を決める、という対策です。
まず、今年春まとめられた一億総活躍プランの中で、「労使で合意すれば、上限なく時間外労働が認められる、いわゆる36協定の在り方について、再検討を開始する」と明記しました。
そして、これを踏まえて、間もなくまとまる、新たな経済対策の中の、働き方改革として、残業時間に上限を設けることを検討することにしたわけです。
近く、厚生労働省が、専門家による検討会議を発足させる方針です。

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【 課題と論点 】
しかし、いざ、残業に上限を設ける、となると、難しい論点がいくつも出てきます。
たとえば、〇超箸両絽造鬚匹Δい水準にするのか?
⇒諭垢紛罰Δある中で、どういう範囲までが適用になるのか?
そして、H蛎Г覆匹龍制力をどうするか、です。

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まず、,両絽造箸覆觧間を、どういう水準にするのか?
まず考えられるのは、先ほど触れましたように、36協定の本来の基準である、残業・月45時間まで。
これに強制力を持たせて、法的な上限にする、ということがまず、考えられると思います。

一方、こうした規制に慎重な経済界などからは、別の声も聞かれます。
それは、残業・月80時間を上限にしてはどうか、というものです。
というのは、過労死の労災認定では、残業・月80時間というのが、一つの判断基準となっていまして、俗に「過労死ライン」などと呼ばれているためです。

残業・月45時間と、残業・月80時間、大きな開きがあります。
働き過ぎをなくし、労働者の健康を確保する、という観点でいけば、過労死ラインの月80時間を上限にする、つまり、過労死ライン直前までは、法的に残業が許される、というのは、水準としては低すぎると言わざるを得ません。
上限規制は、その水準をどういうレベルにするかで、規制そのもの意味が大きく変わってしまいます。重要な問題です。

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次に△痢⊂絽造魴茲瓩燭箸靴董△修譴鬚匹譴世厩い範囲に適用できるのか?
これも、難しい論点です。
勤務が不規則だったり、公共的なサービスを行っている業種などからは、一律の上限規制ではなく、個別の基準での規制を求めたり、また、適用除外を求める声が出てくることも予想されます。
労働時間に、これまで日本にはなかった明確な上限を設定する以上、様々な業種や現場に応じた、ある程度の融通性を持たせることは必要だと思いますが、あまり個別の事情に配慮しすぎると、上限規制そのものが、事実上骨抜きになるおそれもあります。

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そしての、どうやって強制力を持たせるか?
せっかく、上限を設けても、守られなければ意味がありません。
そのために、違反があった場合は、罰則を適用したり、36協定を無効にすること、などが考えられます。
企業からすれば、もし、36協定が無効になったり、締結できなくなれば、いっさいの残業を命じることが不可能になりますので、これは影響甚大です。

【 働き方の未来 】
これまで見てきましたように、長時間労働を減らすには、まず、残業時間に上限を設けることが必要ですが、もう一つ、重要な点があります。
それは、残業しないと生活できないという、賃金水準を改善することです。
この両方がセットでないと、長時間労働はなくせません。

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そのためには、最低賃金の引き上げ、同一労働同一賃金に近づける取り組み、そして、残業を前提としない、仕事の進め方や賃金の在り方を労働者と経営者双方で作りあげていくことが必要です。必要なのは、労使双方の意識改革です。

できるだけ多くの人が、短い時間で効率よく働き、仕事も家庭も両立させる。
働く人の健康を守るためにも、そして、人口が減る中で、日本が成長していくためにも、実現させなければいけない、まさに待ったなしの課題です。

(竹田 忠 解説委員)

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日経WEB 2016/10/16
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO08426720W6A011C1PE8000/

 釈然としない判決である。東京都内の私立学校に勤める女性教諭が結婚後も職場で旧姓を使いたいと学校側に求めていた裁判で、東京地裁が教諭の訴えを退けた。

 判決は旧姓の使用が法律上保護される利益であると認める一方で、「旧姓を戸籍姓と同じように使うことが社会に根付いているとまではいえない」という判断を示している。

 ちぐはぐな印象が否めず、社会の流れを理解していないとらえ方といわざるを得ない。

 確かに旧姓がすべての職場で使えるわけではない。しかし状況は、確実に変わりつつある。たとえば国家公務員は2001年から職員録など広い範囲で旧姓を使うことができる。政府は5月、女性活躍のための重点方針に「旧姓使用の拡大」を盛り込んだ。マイナンバーカードや住民票も旧姓が併記できるようになる。

 旧姓が根付いていない根拠の一つとして判決は、既婚女性の7割以上が職場で主に戸籍名を使っているとのアンケート調査をあげた。だが旧姓は希望する人だけが使えばいいものであり、この数字をもって定着していないとするのは説得力に欠ける。

 今回の判決は15年12月の最高裁判決とも食い違う。

 最高裁は民法の夫婦同姓規定を合憲と判断した。その理由としてあげたのが、旧姓を通称として使うことの広がりだ。改姓により女性は、心理的にも、社会的な信用維持の面でも不利益を受ける。だがこの不利益は、通称使用で一定程度は緩和される。そういう論理だ。今回とは逆の見方になる。

 この最高裁判決では、15人の裁判官のうち5人が夫婦別姓を認めないのは違憲とした。結婚後の姓を巡る考え方が今まさに変化のさなかにあることがうかがえる。

 そもそも選択的夫婦別姓が実現すれば今回のような問題は生じない。結婚後の姓のあり方は本来、国会や社会で考えていくべきテーマだ。地裁判決を改めて議論を深める契機にしたい。

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北海道新聞 2016/07/08
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0066955.html

 参院選では与野党がそろって雇用・労働政策を重要公約に掲げている。

 「同一労働同一賃金の実現」「最低賃金の引き上げ」「長時間労働の是正」など、似通った項目が並ぶ。

 これまで野党側が掲げてきた同一労働同一賃金などを、与党側も主張し始めたことが大きい。このため「争点が見えにくい」などの指摘も出ている。

 肝心なのは、こうした公約を「看板」で終わらせず、中身も伴わせることだ。

 与党は公約に掲げる以上、責任をもって遂行しなければならない。野党も言いっ放しで済ませず、実現への道筋をきちんと示す必要がある。

 安倍晋三首相は1月の施政方針演説で、「同一労働同一賃金の実現」などに言及した。

 背景には、政府の経済政策「アベノミクス」で大企業は潤ったものの、その果実が国民全体に行き渡っていない現実がある。

 実質賃金は5年連続でマイナスだ。アベノミクスを推進するためにも、消費の活発化につながる賃金の底上げなどが欠かせないということなのだろう。

 政府や与党がこうした改革に乗り出すことは、方向性として間違っていない。

 問題は、これまでの雇用政策との整合性だ。

 昨秋には、最長3年だった派遣労働者の受け入れ期間制限をなくす改正労働者派遣法が成立した。

 一部労働者の残業時間をなくす労働基準法改正案も、国会で継続審議になっている。

 こうした労働分野の規制緩和策と、公約に掲げた政策には距離がある。国民が納得できるような説明を求めたい。

 野党各党は、与党の雇用政策を「アベノミクスの失敗隠し」などと批判する。

 ただ、アベノミクスの成否という入り口論にとどまっているため、議論に深みが出ない。これでは国民の支持は広がらないだろう。

 最低賃金については、多くの政党が時給千円や1500円への引き上げを唱えている。

 ならば、与野党を超えて実現の道筋を探るべきだ。中小零細企業には大幅な引き上げは経営を圧迫するとの危惧もある。現実的な折り合いをつけなければなるまい。

 雇用・労働政策は少子化や社会保障など、この国の将来を左右する重要課題と深く関わっている。正面から議論を戦わせてほしい。
 

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しんぶん赤旗 2016年4月17日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-17/2016041701_05_1.html

 熊本地方を中心に九州で続いている連続地震は、16日未明にマグニチュード(M)7・3の、阪神・淡路大震災に匹敵する大きな地震が発生、地震の発生は阿蘇地方や大分県にも広がり、亡くなった人やけがをした人がさらに増えるなど、被害は拡大を続けています。現地では余震が続くなか、被災者の救出や救援の活動が続いていますが、16日夜から17日にかけては強い雨の予報が出され、被害が広がることが懸念されています。事態の拡大に備え、最大限の対策を強めることが求められます。

阪神・淡路大震災に匹敵

 16日未明のマグニチュード7・3の地震では、熊本県菊池市などで最大震度6強の揺れを記録しました。気象庁はこの地震が今回の一連の地震の「本震」で、それ以前の14日夜の最大震度7などの地震は、本震に先立つ「前震」との見方を明らかにしました。

 16日未明の地震は14日夜の地震で動いたとみられる日奈久断層と交接する布田川断層付近で起きたとみられます。この地震の後、震源の北東側の阿蘇地方や大分県でも地震活動が活発化しており、震度5や6クラスの強い地震が相次いで発生しています。

 一連の地震では熊本市内や益城町内だけでなく、阿蘇市や南阿蘇村など阿蘇地方でも、住宅の倒壊や地滑りなどが相次ぎ、多くの死傷者が出ています。道路が寸断されたり、住宅やアパートの1階が完全につぶれ住民が生き埋めになったりしたところもあり、寸刻争う捜索と救援が求められます。

 それぞれの地震の関係はすべて明らかになっているわけではありませんが、大分から熊本にかけては「大分―熊本構造線」や「別府―島原地溝帯」とも呼ばれ、日本列島が形成される過程でできた、本州から四国、九州にかけての「中央構造線」と呼ばれる日本最大の断層帯の西の端です。大分側では「別府―万年山(はねやま)断層帯」、熊本側では「布田川・日奈久断層帯」などの断層が複雑に絡み合っています。断層の一部が動いたのがきっかけになって動かなかったところが動いたり、他の断層が動いたりすることもあり、警戒が必要です。

 断層帯の延長に位置する阿蘇山の動きも気になります。現在のところ、阿蘇山の火山活動の活発化と地震の関連は薄いといわれていますが、今後、断層帯が大きく動いたことがきっかけで阿蘇山が大噴火することにでもなれば、広い範囲に大きな被害を及ぼすことになります。とりわけ全国で唯一稼働中の九州電力川内原発など、原発への影響が懸念されます。地震と火山噴火への住民の不安に応えるため、原発への対応を根本から見直すべきです。
雨などの二次災害を防ぐ

 警戒が必要なのは、雨風への対策です。度重なる地震で屋根など家屋が破壊され、地盤も緩んでおり、少しの雨でも大きな災害につながりかねません。もともと熊本県から大分県にかけては阿蘇山などの噴火で堆積物が降り積もった弱い地層です。被災した住民に安全な避難場所を確保するとともに、土砂災害などが起きないよう対策を急ぐべきです。

 被災者が狭い車のなかで長時間過ごしたため健康を損なうこともあります。地震で助かった命が避難中に損なわれることが決してないよう、対策を強めるべきです。

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毎日新聞2016年4月16日
http://mainichi.jp/articles/20160416/ddm/005/070/020000c
 
 局地的に激しい揺れを伴う内陸直下型地震の怖さを改めて示した。

 14日夜、熊本県を中心とする地域を襲った地震は、東日本大震災以来の震度7を記録した。自然エネルギーのすさまじさは、多くの人を震え上がらせた。多数の死傷者が出ている。関係機関は、被災者の救援と安全な避難先の確保にまず全力をあげてもらいたい。

 気象庁は、この地震を「2016年熊本地震」と命名した。

 気象庁が観測を始めて以来、九州で震度7を記録したのは初めてだ。強い揺れは、九州全域から四国にまで広がった。

 震源の近くには、二つの断層帯がある。地震が内陸部の浅い場所で発生したため、震動が地表にそのまま伝わりやすく、地震の規模の割には激しい揺れになったとみられる。

 複雑な地下構造のため、大きな余震も続く。直下型地震への警戒は怠れない。そのことを再認識したい。

 運転中の川内(せんだい)原発(鹿児島県)と、停止中の玄海原発(佐賀県)に異常はなかったという。新規制基準では、活断層の真上に原発の重要施設を建設することは禁じられている。

 とはいえ、未知の活断層もある。活断層は、日本列島に2000以上走っている。いつ、どこで直下型地震が起きてもおかしくない。

 こういう地震列島の中で原発を維持していくリスクを改めて考えた人も多かっただろう。

 今も避難生活を余儀なくされている人が大勢いる。熊本市や益城町(ましきまち)などでは、停電や断水が続く地域がある。被災者の支援と、ライフラインの復旧に万全を期してほしい。

 停電などで必要な医療体制が確保できず入院患者を避難させる病院が出ている。激しい揺れによる精神的なダメージは、病状を悪化させる危険がある。病人や高齢者ら災害弱者への目配りは特に欠かせない。

 余震による2次被害も要注意だ。地震で地盤が緩んだり、建物がもろくなっていたりする可能性がある。雨が降れば土砂崩れも起きる。危険な場所に近づくのは避けるべきだ。

 熊本城の石垣の崩落や高速道路の陥没など、地震の深い爪痕が残る。九州新幹線も大きな被害を受けた。地震の際、6両編成の回送列車が非常停止措置をとったものの脱線し、本線をふさいだ。運休が続く。

 新幹線で全車輪の脱線は初めてだ。運輸安全委員会は、鉄道事故調査官を派遣した。高速で大勢の人を運ぶ新幹線で、ひとたび事故が起きれば大変なことになる。原因の解明を尽くし、対策に生かしてほしい。

 東日本大震災後、地震活動は活発化している。耐震化、防火対策など各自が減災を心がけ

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 http://mainichi.jp/opinion/news/20150920k0000m070117000c.html

毎日新聞 2015年09月20日 02時30分

  ◇国民が監視を強めよう
 
 戦後70年かけて慎重に積み上げられてきた安全保障政策が、抜本的に変わる。

 集団的自衛権の行使を容認し、自衛隊の海外での活動を飛躍的に拡大する安全保障関連法が、国会が大混乱する中で成立した。

 半年のうちに関連法が施行され、新法制のもとで現実に自衛隊が海外に派遣されることになれば、国のかたちは大きく変容するだろう。

 安保関連法の成立は、多くのものを傷めた。

 まず、平和国家の根幹である憲法9条は変質し、海外で武力行使をしないとの制約が緩められた。

 ◇「総合的判断」の危うさ

 そして、憲法は国民が国家権力を縛るものだという立憲主義の理念が傷ついた。憲法や法律の解釈がむやみに変わらないという法体系の安定性に疑問符がついた。

 民主主義を踏みにじるような安倍政権の強引な政治手法が、国会と民意との乖離(かいり)を広げ、政治不信を深刻化させたことも残念だ。

 しかし、この新法制は、成立すればそれで終わり、というものではない。国民が監視を続けることが、法律の性質上も重要であり、有効だ。

 新法制は、集団的自衛権の行使や他国軍への後方支援を世界中で可能にするが、どういう場合に自衛隊の活動を認めるかの判断基準があいまいだ。政府の裁量の範囲が大きい。

 集団的自衛権を行使するには、我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」などの新3要件を満たす必要がある。

 字面だけ読めば一見、歯止めが利いているように見えるが、何が明白な危険にあたるかは政府の判断にゆだねられる。

 国会審議でも基準は明確にならず、政府は最後には「総合的に判断する」というばかりだった。

 政府は「自分たちがきちんと判断するから、国民は政府を信頼して任せてほしい」と言いたいのだろう。

 だが、あいまいな基準は政府の拡大解釈を可能にする。法律の運用次第で、米国の要請に応じる形で日本の安全に直接関係のない戦争にも関わることになりかねない。そんなリスクを受け入れるわけにいかない。

 もちろん、集団的自衛権の行使も重要影響事態での後方支援も、原則として国会の事前承認が必要だ。だが、緊急の場合は事後承認でいいことになっている。自民党「1強多弱」の国会では、国会の承認がどこまで歯止めになるかも疑問が残る。

 ここで、やはり大きな力になるのは、国民の声だ。国民がこの問題に関心を持ち続け、政府の判断を監視する。政府が誤った判断をしそうになれば、おかしいと声を上げ、法律を現実に発動させない。そういう国民の意思表示が、重要な歯止めの役割を果たすだろう。

 新法制のもと、安倍晋三首相はどんな国を目指そうとしているのか。

 首相は、法整備によって日米同盟が強化され「抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性はいっそうなくなっていく」という。

 ◇普通の市民が動き出す

 自衛隊と米軍の一体化をさらに進め、自衛隊が米軍の戦いを世界規模で支援する。日本が米国の負担を肩代わりすることで、米国のアジア重視の政策を支え、中国への抑止力を強化するということだろう。

 そこには、首相の宿願も影響しているように見える。首相は、日本が集団的自衛権を行使できる国になることで、祖父の岸信介元首相が改定した日米安保条約の双務性を高め、憲法改正につなげたい、と考えてきた。日本を軍事的に「普通の国」に近づけようということだ。

 こうした首相の外交・安全保障政策は、軍事面に偏り過ぎているのではないか。

 対中抑止を目指した日米同盟の強化は、かえって地域の緊張を高めかねない。だが、首相にはそういう目配りはほとんどない。外交努力は当然の前提と口では言うが、その割には、中国、韓国などとの関係改善の努力は物足りない。抑止力が高まったとして、対中外交で柔軟性を失うことがあってはならない。

 野党にも注文をしておきたい。

 民主党が、今国会で領域警備法案しか対案を出さなかったのは、国会戦術としてはあり得ても、野党第1党として十分だったとは言えない。来年夏には参院選がある。安全保障政策について全体像を示せるよう、党内議論を詰めてもらいたい。

 新法制の成立で私たちが失ったものもあるが、希望も見えた。

 多くの人が安全保障や日本の国のあり方を切実な問題として考えるようになったことだ。

 憲法学者、法曹界、労働組合、市民団体だけでなく、これまで政治への関心が低いと見られていた若者や母親ら普通の市民が、ネットなどを使って個人の意思で声を上げ、デモや集会に参加した。これらの行動は決して無駄に終わることはない。

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http://www.asahi.com/paper/editorial.html#20150920
朝日新聞 2015年9月21日(月)
 
 自衛隊に対する憲法の縛りをゆるめ、時の政権の判断による海外での武力行使に道を開く。

 それが、新たな安全保障法制の核心といっていい。

 政権が常に正しい判断をする保証がないことは、先の大戦の重い教訓だ。政権の判断を監視する目が機能するかどうかが、従来以上に大切になる。

 国家安全保障会議(日本版NSC)、特定秘密保護法、そして今回の安保法制――。安倍政権がめざしてきたのは、安全保障をめぐる判断の権限を首相官邸を中心に一元化することだ。

 刻々と変化する国際情勢について、政権が情報を集め、的確に分析し、過ちなき決断ができる。そんな前提の仕組みだ。

 問題は、その判断の是非を、だれがチェックするのかだ。

 やはり国権の最高機関である国会の責任は大きい。

 今の国会は自民、公明の与党の数の力が圧倒的だ。「違憲」法制の歯止め役は果たせなかった。野党が求めた、自衛隊海外派遣の「例外なき国会の事前承認」も盛り込まれず、特定秘密保護法の壁も立ちふさがる。

 しかし、厳しい監視が欠かせない論点は数多い。

 法制を政権がどう運用し、自衛隊の活動はどう広がるのか。専守防衛が変質しないか。軍事に偏らない外交・安全保障の努力は。強大な同盟国・米国に引きずられないか。文民統制は機能するか。自衛隊の活動拡大で防衛費が膨らまないか……。

 安保政策は本来、幅広い国民の支持の基盤のうえに、与野党を超えた合意に基づき継続的に運用されることが望ましい。

 だが今回の安保法制審議は、政治に対する国民の基本的な信頼を傷つけた。法制がこのまま続く限り、結局は、安保政策の安定的な継続性は望み得ない。

 「違憲」の法制については、継続性より正しい軌道に戻すことを優先すべきだ。法制に反対した野党には、政権交代が実現すれば、法制を是正する意思を明確にしてもらいたい。

 野党には、もう一つの選択肢を国民に示すことも求めたい。

 日本のあるべき将来像や国際貢献策は何か、具体的に示すこと。そしてその実現のために、自公政権に代わり得る民意の受け皿を形にすることだ。

 法制に対する国民の監視が大切なことは言うまでもない。国会の行方を左右するのも、選挙を通じて示される国民の意思である。判断材料を提供するメディアの役割も重い。

 安保法制の成立は、議論の終わりを意味しない。これからの不断の監視の始まりである。

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