情報資料室 - 上司や同僚の「いじり」で、線路に飛び込みそうになる女性たち

上司や同僚の「いじり」で、線路に飛び込みそうになる女性たち

2017/11/2 0:00

写真:現代ビジネス

死のうとして飛び込もうとした

今月頭、電通の労働基準法違反事件の初公判が行われた。東京地検の強制捜査を受けて略式起訴されたことを受けたもので、争われているのはあくまでも違法残業についてだ。長時間労働は様々な弊害をもたらす。違法残業はなくなるべきだ。ただ、メンタルヘルスや過労自殺の問題を扱うときに、忘れたくないのがハラスメントに対する視点だ。職場でのいじりやハラスメントが命を奪うこともありえる。

 スカイプで、ハラスメントを受けた経験のある女性たちにインタビューをしはじめた今年5月。最初のインタビューは、以前から面識があった後輩で、メーカー勤務のアキラさんだった。一連の質問を終え、最後に、社内でセクハラホットラインに連絡を促すとか、転職を促すとか、何か具体的に脱出するための一歩を一緒に考えてからスカイプを切ろうと思って私はこう言った。

 「さて。何か、打開するためにできることはありますかね。これは質問ではなくて、一緒に考えられたらと思うんだけど……。何かアクションを起こす、声をあげるということをしたほうがいいくらい、今、辛い状況ではないですか? 

 このときまで、事の深刻さにまだ私は鈍感だったと言わざるを得ない。

 「今は元気なので」とアキラさんは笑った。「私の中で解決したから」。

 「それって解決したの……? 職場の雰囲気は変わってないんだよね? 

 「解決……全然してないんですけどね」。

 そこから出てきたのは、私の思っていた以上に深刻な事態だった。上司・同僚の態度や雰囲気は今も変わっていない。部署異動もしていない。ただ、アキラさんが「私の中で解決した」というのは、彼女側が精神的にギリギリのところまで追いつめられるような状態ではなくなった、という意味だった。

 取材した時期からさかのぼること1年、2016年の5月。メーカーで営業として働いていたアキラさんは、第3回の記事で書いたように、上司や先輩男性からの度重なる「いじり」を受けており、次第に涙が止まらなくなっていた。

 ある日、駅のホームで線路に飛び込もうとする。通りすがりの人に腕をグイッと掴まれ、「やめな、そういうの。若いんだから」と言われたという。

 「腕をつかまれてハッと我に返ったの? 

 「いや……我に返ったというかんじじゃないんですけど……そう言われて、そうだなと思ってはい、わかりましたって…」

 つまり、ぼーっとして気づいたら飛び込もうとしていたというよりは、死のうとして飛び込もうとしていたという。

 「当時、相談できた先輩が1人いたんですけど、病院に行けって言われて『病院に行って診断されて休職ってなったら、またそれで馬鹿にされるから嫌です』って言ったくらい、私、判断力落ちてたんですよ」。

 からからと笑うスカイプ越しの声。実際に目の前にいてもそうはできなかったかもしれないけれど、抱きしめられない距離にもどかしさを感じた。その腕をつかんだ誰かがいなかったら。そう思うとぞっとした。私は今アキラさんと話していないかもしれない。心底、その誰かがいてくれてよかったと思った。
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