情報資料室 - 働き方改革関連法案:高プロ「働かされ放題」の恐れ

働き方改革関連法案:高プロ「働かされ放題」の恐れ

2018/4/8 16:53

働き方改革関連法案を巡る主な動き=共同


 後半国会の焦点になる働き方改革関連法案が6日、閣議決定された。与野党の対立軸となるのは、高収入の一部専門職を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)。財務省の決裁文書改ざん問題や、防衛省の日報問題などへの追及が強まる中、法案の行方は見通しづらくなっている。

 「働かされるだけ働かされて、つぶされるのではないか」。企業でコンサルタント業務を担う首都圏の40代男性は、高プロの導入に危機感を抱く。コンサルタント業界では長時間労働が常態化しているという。男性は多忙な時期に睡眠が1〜2時間の日が続き、過労で倒れた経験がある。

 高プロの対象として政府が想定するのは、年収が1075万円以上で専門性が高い金融ディーラーやコンサルタントなど一部の働き手。労働基準法上の労働時間規制から外れ、残業や休日労働をしても、その分の賃金は支払われない。男性は「会社は常に『プロなんだから』と成果を求める。野放図に働かされるのが怖い」と言う。

 働き方改革関連法案は、残業の上限規制といった労働者保護と、高プロなど規制緩和の要素が「抱き合わせ」になり、8本の労働法規の改正が一本化されている点が問題視されている。

 安倍晋三首相は「健康を確保しつつ、誰もが能力を発揮できる柔軟な労働制度へ改革するもので、一つの法案で示すのが適当」と説明する。しかし、日本労働弁護団幹事長の棗(なつめ)一郎弁護士は「8種類の法律の改正案は、趣旨も目的もバラバラ。本来なら一つ一つ丁寧に審議すべきものだ」と指摘。「規制強化とセットにすれば、規制緩和にも反対しづらいだろうという政府の思惑が透けて見える」と批判する。

 高プロは第1次安倍政権が2006年にホワイトカラー・エグゼンプションとして導入を目指したが、「働き過ぎを助長する」との懸念から法案提出が見送られた。その後、政権は経済界の要望を受けて15年に高プロを盛り込んだ労働基準法の改正案を国会提出したが、野党の猛反対で2年以上たなざらしになった。安倍首相は今国会で「必ずやり遂げる」と成立に強い意欲を示す。

 棗弁護士は、高プロが創設されて一部専門職が労働時間規制から外れると、「労働基準監督署の取り締まりからも漏れ、長時間労働の歯止めが利かなくなる」と懸念を示す。年104日以上の休日取得を義務化するなど、健康確保措置も盛り込まれたが「長時間の連続勤務は放置され、効果は期待できない」とみる。

 高プロの対象者は今のところ限られているが、対象業務や年収要件は、国会審議の不要な省令で変えることができる。経団連は、05年のホワイトカラー・エグゼンプションの新設を求める提言の中で、賃金要件を「400万円以上」としている。なし崩し的に対象が広げられていくとの懸念は労働界に根強い。

 一方、残業の上限規制や、正規・非正規の労働者の不合理な待遇差を禁じる「同一労働同一賃金」については、連合なども一定の評価をしている。ただし、残業の上限規制の「最長で1カ月100時間未満、2〜6カ月の月平均で80時間以下」は、脳・心臓疾患の労災認定基準がベースになっている。野党は「法律で、過労死ラインまで働かせていいというお墨付きを与えてしまう」と、上限時間の引き下げを求めている。【市川明代】

◇残業規制 骨抜き懸念

 働き方改革関連法案は、中小企業に対する配慮が盛り込まれたのも特徴だ。法案の柱の一つである残業時間の上限規制については、労働基準監督署の助言・指導について「中小企業の事情を踏まえて行うよう配慮する」という付則が加えられた。ただ、具体的にどのような「配慮」が行われるかは明確でなく、野党から「規制が骨抜きになるのでは」との指摘も出ている。

 「中小企業にとっては規制強化だけになる法案だ」「働き方改革が中小企業をつぶす方向の流れになっているのはおかしい」。法案を事前審査した自民党の合同部会で、出席した議員からこうした声が相次いだ。

 自民の姿勢は中小企業の懸念を受けたものだ。日本商工会議所が昨年11月〜今年1月に全国の中小企業を対象に行った法案に関する調査(回答1777社)では、「残業時間の上限規制の施行を遅らせるべきだ」と回答したのは760社(約43%)に上った。

 東京都内の運送業者約50社が加入する業界団体の担当者は「法律でこの規制をかけられると、とてもやっていけない」との経営者の声を聞く。法案ではこの業界は残業の上限規制の適用が5年先送りされるなど猶予措置がとられているが、多くは下請け業者で人手が慢性的に足りない。競争が激しく、担当者は罰則規定がある上限規制を「絶対にやめてほしい」と強調する。

 厚生労働省はこうした声を受け、中小企業に上限規制などに関する助言や指導をする際には、労働時間の動向▽人材の確保の状況▽取引の実態−−などの事情を踏まえて行うよう配慮するという付則を加えた。厚労省は配慮する期間について「事情が改善されるまで」とする。ただ、具体的な配慮の内容は明確でなく、希望の党の山井和則氏は「実態といえば何でもありになる。中小企業で働く人への裏切り行為だ」と指摘する。

 神奈川県の電装メーカーで働く男性(50)は訴える。「国の働き方改革は、大企業の社員だけのものなのか。現場には常に人手不足感があるが、残業が多いと若者が集まらない。残業を減らす必要があるのは大企業も中小企業も同じはず」【古関俊樹、神足俊輔】
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