情報資料室 - 佐野SAストライキの「深層」…39日間の闘争が明らかにしたこと (9/26)

佐野SAストライキの「深層」…39日間の闘争が明らかにしたこと (9/26)

2019/9/26 9:20

佐野SAストライキの「深層」…39日間の闘争が明らかにしたこと
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190926-00067412-gendaibiz-bus_all
2019/09/26(木) 8:01配信 現代ビジネス

佐野SAストライキの「深層」…39日間の闘争が明らかにしたこと
写真:現代ビジネス

「拡散希望 犯罪を告発します」
東北自動車上り線の佐野サービスエリア(SA)で発生していたストライキ騒動は、運営会社の復帰要請で約60人の従業員が職場復帰、元の状態に戻った。

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 <運営会社ケイセイ・フーズ岸敏夫社長の運営方針にはついていけません。これは従業員と取引先のみなさんとの総意です>

 こんな訴えが入り口に張り出され、従業員がストに突入したのは、お盆でSAが最も賑わう8月14日だった。

 フードコート、レストラン、売店の明かりが消え、客のいないSAは一種、異様である。その光景は、労働争議の発生が少なくなったという世相もあって、全国ニュースとなって流れた。

 だが、会社側が応援部隊などで営業を再開、佐野SA騒動も忘れられるなか、従業員のストは続行されていた。

 それが岸社長の退任という会社側の譲歩を引き出し、39日ぶりに解決した背景には、総務部長を務め、私費を投じて従業員をまとめた加藤正樹氏(45)の存在があった。

 <拡散希望 株式会社ケイセイ・フーズ社長 岸敏夫氏の犯罪を告発します>

 経営再建のために昨年5月、ケイセイ・フーズに入社した加藤氏は、商社を始め様々な職種に従事、経理・財務に明るく、ITやネット環境にも詳しい。その強みを生かして、SNSなどで今回の背景を情報発信していた。

 メディア関係者で<拡散希望>の情報に関心を持った人間は少なくない。私もそのうちのひとりである。

解雇を告げられたが…
メールと電話のやり取りを経て、9月3日、労組従業員約50人が、毎日、集会を開いている佐野市の会館を訪ね、加藤氏に会った。

 驚いたのは、背景の複雑さであり、加藤氏がそれをほぼ突き止め、群馬銀行など金融機関と金融庁、SAを管理するNEXCO東日本、栃木県警佐野署などに「公益通報」という形で情報提供していたことだ。

 そこから窺えるのは、これは単なる労働争議ではないこと。そう伝えられ、確かに結成されたばかりの労働組合と会社側との団体交渉が続けられていたが、ストに至った深層は、ケイセイ・フーズと親会社で岸氏が社長を務める片柳建設の乱脈経営にあった。

 「6月20日、片柳建設のメーンバンクが融資凍結処分を下し、7月20日の労使交渉の場で、会社側がそれを認めました。当然、従業員は動揺するし、取引先は先行きを懸念、8月に入るとバックヤードからほとんどの商品が消えてしまいました」(加藤氏)

 加藤氏は岸社長と、状況をどう改善するかという話し合いを持ったが、「現状維持」という岸社長の方針は変わらず、8月13日、激しいやり取りの末、解雇を告げられた。

 本来なら、ここから先は労働基準監督署を舞台にした加藤氏と会社側の争議である。だが、事態を知った従業員たちは「このままでは将来が不安。加藤さんについて行きます」と、声を上げ、翌日からのスト決行となった。それだけ会社への不満が鬱積していた。

 「従業員の今後」に責任を持つことになった加藤氏は、私費で1500万円を用意、労組の闘争資金とした。その必死の思いが、フェイスブックやツイッターを通じた私的な情報の拡散と、金融庁や警察、NEXCO東日本の「コンプライアンスホットライン」などへの公的な情報提供につながった。

禁断の資金調達をおこなった背景
問題となったのは、ケイセイ・フーズよりむしろ、公共工事を請け負い、ピーク時の売上高が約52億円で県内中堅業者の片柳建設だった。

 19年3月期の売上高が約38億円と右肩下がりとなった同社は、その業績悪化が招く資金不足を、契約書の多重発行による資金調達などで乗り切った。

 「融資詐欺」を疑うこともでき、そうした資金不足と綱渡り経営が、SAという安定収入を誇るケイセイ・フーズから岸氏の関連企業への資金流出にも繋がっていた。

 「放置すれば、ケイセイ・フーズまで共倒れになる」(加藤氏)という思いが、岸氏への全面対決姿勢につながり、それが馘首に至った理由である。

 そもそも片柳建設が、ケイセイ・フーズの経営権を取得する時から波乱含みだった。
地元資産家が、地縁血縁を利用する形でSAの権利を取得。その会社を、14年3月、約9億円で不動産会社に売却したあたりからケイセイ・フーズは迷走を始める。株の二重発行など、詐欺的手法による売買だったとして訴訟が起こされるなどトラブル続き。

 それを購入したのが片柳建設で、岸氏は16年末、取締役に就任。「購入価格は11億円だったが、6億円の負債がついていた」と、ボヤいていたという。未経験のSA運営に加えてスタート時の負債。加えて本業の不振が禁断の資金調達につながった。

 公共工事を担う業者の“宿命”として、片柳建設は地元政界との関係を欠かさなかった。経団連にも加盟、その際は内閣官房参与の飯島勲氏を顧問に迎え、月に100万円ともいわれる顧問料を支払っていたという。

 6月に金融機関との関係が冷え切ってからは、下請けとして入ることが多かった千葉県の建設会社の支援を受けるようになった。また、ケイセイ・フーズの方は、岸氏に運営ノウハウはなく、食材の提供を通じて債権を持つレストラン運営会社が人員を派遣、SAを仕切っていた。

 つまり岸氏は、本業でもSAでも当事者能力を失っていた。金融機関はソッポを向き、NEXCO東日本も不審の目を向けるようになっていた。それは加藤氏の情報発信力と、それを掬い取ったメディアの力が大きく、文春オンライン、FRIDAYデジタルが継続して配信。私も、『週刊現代』のコラムや情報紙『インサイドライン』で報じた。

情報拡散が世論を動かす
岸氏の退任は、SAを継続するにはやむを得ない選択だったろう。このまま対立しては、どんな爆弾がいつ破裂するかわからず、監督官庁や捜査当局が、早期に乗り出す可能性があった。

 トラブルを避けるようにSAを運営していたレストラン会社が撤退を決め、19日までに会社側から「岸社長は退任するので戻って欲しい」という連絡が労組に入った。用意した闘争資金は底を突きつつあった。20日に佐野市を再訪すると、加藤氏はホッとした口調でこういった。

 「一時は、もうダメかと思いましたが、みんなの力でここまで頑張れた」

 復帰して、第一の目的は達成できた。だが、前述のように、これは単なる労働争議ではない。片柳建設による経営権取得の時点から複雑な資金移動の履歴が残り、その解明は欠かせず金融機関を巻き込む問題も未解決だ。

 封印させなかったのは、加藤氏の能力と意欲だが、SNSをフルに活用してメディアや当局を巻き込む戦法がうまく嵌まった。

 「継続こそ力」を実践、「情報拡散が世論を動かす」ことを示した加藤氏の39日間の戦いが持つ意味は大きく、次はストライキの真相に迫らねばなるまい。

伊藤 博敏 

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