情報資料室 - タニタの「働き方改革」は労働規制逃れか? 社長に疑問をただしました (11/1)

タニタの「働き方改革」は労働規制逃れか? 社長に疑問をただしました (11/1)

2019/11/1 11:04

タニタの「働き方改革」は労働規制逃れか? 社長に疑問をただしました
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191101-00010000-nikkeisty-bus_all&p=1
2019/11/1(金) 6:11配信 yahoo news 〈Nikkey Style〉

タニタの谷田千里社長
《連載》タニタ流「働き方改革」(4)

真の働き方改革か、それともブラック企業の新手法か――。健康機器大手のタニタ(東京・板橋)が2017年に始めた「働き方改革」が賛否両論を巻き起こしている。「日本活性化プロジェクト」と銘打った制度では、独立を希望する社員は退職、新たに「個人事業主」として同社と「業務委託契約」を結び、それまで行っていた仕事を「基本業務」として担当する。同社の谷田千里社長に、新制度導入の狙いや「規制逃れではないのか」といった疑問についてただした。

■「報われ感」を最大化する仕組みが必要だった

――新制度についてまとめた単行本「タニタの働き方革命」を6月に出版した直後から賛否さまざまな論議が湧き起こりました。反響をどのように受け止めていますか。

「賛否が分かれることは予想していましたし、出版によって働き方改革論議に一石を投じたいと思っていましたので、まさに狙い通りです。働き方改革について議論する国の諮問機関からまだ声がかからないのが残念ですが(笑)」

――新制度はどんなきっかけで導入したのですか。

「構想は私が社長に就任した2008年から温めていました。当時は、会社の業績も下がり、リーマン・ショックも重なって、私自身、相当な危機感を感じていました。厳しい時代を生き残っていくには、優秀な人材に『ここで働き続けたい』と思ってもらえる組織にしなくてはならない。そのためには彼らの『報われ感』を最大にする仕組みが必要だと考えたのです」

■頑張るのを応援し、きちんと報いるのが狙い

――働き方改革の論議が、残業規制の話に偏っていることにも違和感を感じていたとか。

「はい。もちろん長時間労働を放置していいとは思っていません。ただ、1日8時間きっちり働くのは是で、それ以上働くのは悪であるかのような単純な話にしてしまうのは、いかがなものかと思っていました。本来、働き方改革は、労働人口が減る中で、一人一人が持てる能力を最大限発揮して活躍できるようにしよう、そのために生産性を高めよう――という話だったはずです」

「生産性を考えるときに、時間の長短以上に大事なのは、主体性の問題だと思います。同じ時間働くのでも『やらされている』と感じれば、ストレスもたまりますし、効率も下がる。度を過ぎれば心の健康にも悪影響を及ぼします。反対に『自分の能力を伸ばしたい』『この仕事をやり遂げたい』と主体的に取り組む人は、限られた時間に最大限のアウトプットを出そうとするでしょう」

「今回導入した制度は、そういう主体性のある働き手が頑張るのを応援し、きちんと報いるのが狙いです。タニタとしては、そういう優秀な人材に働き続けてもらいたい。そのために働き方を自由にし、手取り額を増やすことで『報われ感』を最大化しようと考えました」

■どう達成するかは本人の裁量

――しかし、「労働基準法違反なのではないか」との疑問の声もあがっています。独立したメンバーは、契約上は「個人事業主」でも、実質は労基法で保護されるべき「労働者」であり、偽装請負に当たるのではないかという指摘です。さらに、独立前に担当していた仕事を基本業務として請け負う点も問題視されています。「結局は会社の指揮監督下にあって、『諾否の自由』がないのなら、労働者と同じ」というわけです。どう答えますか。

「確かに委託される仕事の『内容』は変わりませんが、これを実行するための『方法』は各メンバーに委ねられます。そこに裁量権があることが社員との大きな違いです。報酬は業務に費やした時間ではなく、成果に対して支払われます」

「例えば、SNS(交流サイト)の運用を委託されているメンバーは、その内容やフォロワー数の維持・増加に応じて報酬が決まる契約になっており、それをどう達成するかは本人の裁量に任されています。業務内容にもよりますが、極論すれば会社に来なくても構いませんし、複数人でシェアして取り組んでもいいのです。ですから『指揮監督下の労働』には当たらないと考えています」

「契約締結や更新の際には、基本業務の内容と委託料について会社とメンバーで協議します。協議した結果、その業務を受けるかどうかはメンバー本人が判断して決められますので、諾否の自由はあると考えています。これは、基本業務の枠に収まらない『追加業務』についても同様です」

■一つ一つの業務について、社内相場がなかった

――働き方に裁量権があるといっても、実際には出退勤の時間が縛られるケースもあるのではないですか。

「例えば、フリーランスで建設業に携わられている方は、工事期間に合わせて、夜間などの決まった時間に決まった場所で働くケースがあります。これと同じように、請け負った業務の都合で縛られるケースはありますが、一律の出退勤時間や勤務時間があるわけではありません」

――この制度では、基本業務に対する「基本報酬」は、社員時代の給与・賞与をベースに決めることになっていますが、そこについても疑問の声があります。つまり、その報酬は、仕事の成果に対するものではなく、労働の対価なのではないか。だとすれば、実質的には業務委託ではなく雇用契約にあたるのではないか、という指摘です。

「報酬の決め方については我々も苦慮しました。欧米企業であれば、職務の内容や範囲があらかじめきっちりと定義されていて、その職務の対価はいくらだという『社内相場』があるのが一般的です。入社10年目の社員であろうと、15年目の社員であろうと、フリーランスであろうと、同じ業務を行うのであれば同じ対価となります」

「しかし、多くの日本企業と同様に、当社はこれまで給与は基本的に年功序列型でした。つまり一つ一つの業務について、社内相場がなかったのです。ところが今回、業務委託をするにあたって、値付けが必要になった。社内相場がない現状では、最初の報酬額を設定する段階で前年度の給与・賞与をベースとするのが一番妥当だろういうだけのことで、『労働に対する対価』だとは考えていません」

「制度導入をきっかけに、一つ一つの業務に値付けが行われることになり、社内でコスト意識が高まったのは良かったと思います。実はそれも狙いの一つでした。例えば、これまでは普段やっている仕事以外に業務が発生した場合、コストを意識せずに頼むことができましたが、フリーランスに『仕事』として発注するようになれば、その仕事の対価はいくらなのか、意識するようになります」

「現在では、業務を発注する際には、全くの外部のフリーランスと、日本活性化プロジェクトのメンバーに発注する場合を比較検討するなど工夫が見られるようになりました」

■規制逃れのための施策ではない

――「社員を個人事業主にするのは、長時間働かせ放題にするためではないか」「古典的な労働法の規制逃れであり、ブラック企業の手法だ」という批判もあります。

「決して労働法の規制逃れのための施策ではないことははっきりと申し上げておきます。制度導入の真の狙いは、働き手が主体性を持って働けるようにすることです。そのことは働き手の心の健康づくりにもつながると考えています。ブラック企業とは真逆の発想です」

「私も労働法の規制逃れのようなことがあってはならないと思います。もし他の企業が導入を考える際には、弁護士や社労士、税理士に相談しながら慎重に進めるべきだと考えています。そもそもこの取り組みは、長時間労働などの問題をクリアした上で行う施策なのですが、今回これだけ反響があったということは、過重労働を行っているいわゆるブラック企業が思った以上に多いからだと思います。まずはこの点を是正していくことが大前提となりますし、これに取り組む国の方針は正しいと思います」

■本人が望むなら思い切り働けるようにする

――日本活性化プロジェクトでは、社員で居続けるのか、独立してフリーランスになるのかは本人の意思で決めます。ということは時間給の発想にとらわれない人がフリーランスになることを選ぶので問題ないということですか。

「スタートアップ企業の中には、時間を忘れて全力で仕事をされている方々が多くいますよね。そこまで頑張りきれるのは、やりがいを感じる仕事に夢中になっているからだと思います。自分の仕事人生をトータルで考えた時に、『ここが頑張り時だ』という時期は誰にでもあるでしょう」

「そういう時に『残業しないで帰れ』というのはある意味酷であり、本人が望むなら思い切り働けるようにするというのが日本活性化プロジェクトです。もちろんメンバーには、長時間労働で体を壊したりしないよう、自己コントロール力が求められますが、働き方やキャリアを自分自身でデザインできることは、心の健康につながるでしょう」

――会社の社会保障費の負担を減らすのが目的なのではと疑念を持つ人もいます。独立した人の社会保障が心もとなくなるのではないですか。

「その指摘は当たらないと考えています。なぜなら、社員時代の社会保障費の会社負担分は、独立後の業務委託報酬などに組み入れているからです。つまり、会社が支払う総額はほとんど変わりません。キャッシュで渡す会社負担分をどう使うのかは本人の裁量に委ねていますが、実際には民間の保険を活用するなどして、社会保障が手薄にならないように工夫がされているようです」

=おわり

(ライター 石臥薫子)

 

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