情報資料室 - 専業主婦の黄金期の終焉 安倍政権「女性活躍」で風向き変わった (12/26)

専業主婦の黄金期の終焉 安倍政権「女性活躍」で風向き変わった (12/26)

2019/12/26 21:41

専業主婦の黄金期の終焉 安倍政権「女性活躍」で風向き変わった
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2019/12/26(木) 16:00配信マネーポストWEB

専業主婦の黄金期の終焉 安倍政権「女性活躍」で風向き変わった
女子大生の理想のライフプラン

 かつて「勝ち組」とされてきた専業主婦の立場に異変が起きている。実際は、さまざまな事情から経済的に行き詰まり、専業主婦を強いられ、貧困に陥る女性──「貧困専業主婦」が数多く存在するというのだ。

 厚労省は、生活に最低限必要な収入を表す指標である「貧困線」を、4人世帯で収入244万円、3人世帯で211万円としている(2015年)。

「貧困専業主婦」とは、「労働政策研究・研修機構」主任研究員である周燕飛さんによる造語だが、周さんの著書『貧困専業主婦』(新潮選書)によると、この貧困線を下回る収入の「貧困世帯」のうち、妻が無職で18才未満の子供がいる夫婦世帯を「貧困専業主婦世帯」と呼ぶと定義される。

 2011年に労働政策研究・研修機構が行った大規模調査では、そうした専業主婦世帯の貧困率が12%にも達していたことがわかった。実に8人に1人、50万人以上が貧困に陥っていたと推計された。

 このように、「専業主婦」とは、かつてイメージされた“夫に養われ余裕のある優雅な暮らし”とはかけ離れたものになっているのが現実なのだ。それでも、依然専業主婦に憧れる人は多い。『専業主婦になりたい女たち』(ポプラ新書)の著者で相模女子大学客員教授の白河桃子さんが話す。

「ある女子大でセミナーを開いた際、学生に理想のライフプランについて聞きました。すると、『いつかは専業主婦』と答えた割合は2割にとどまりましたが、一時期仕事を辞めるつもりかどうかを聞いた『バリキャリで太く短く』『子育てで辞めて復帰する』と答えた学生は、それぞれ7%と17%いました。『いつかは専業主婦』と合わせると、44%にものぼります。それだけ、隠れ専業主婦願望のある女性が多いということです。

 多くの学生が、家庭に尽くしてきた自分の母親を見て育っているため、漠然と“自分の専業主婦の姿”を思い浮かべるのでしょう」

 労働政策研究・研修機構が貧困専業主婦を対象に実施した「幸福度調査」でも、35.8%が10点満点中8点以上の「高幸福度」と答えた。3人に1人がとても「幸せ」と感じているのだ。

 専業主婦全体でみても同様だ。内閣府の「国民生活に関する世論調査」では、働く女性よりも専業主婦の方が一貫して幸福度が高くなっており、専業主婦が「幸せ」と感じるのに夫の収入は重要な要因でないことがうかがえる。

 そもそも、「専業主婦」という存在はいつ生まれたのか。『上級国民/下級国民』(小学館新書)の著者で作家の橘玲さんが説明する。

「もともと日本は、江戸時代はもちろん、戦前までほとんどが共働きでした。しかし戦後、高度成長期に突入し、日本は『総中流』社会に移行します。平均所得は右肩上がりに増えていき、多くの世帯で夫の給料だけで一家を養えるようになった。

 そうした中で、家事・育児を妻に丸投げして、夫は会社に滅私奉公する日本的雇用が定着し、サラリーマンが社会の中枢を担うようになった。こうして専業主婦の時代が本格的に到来したのです。

 戦後の日本人はアメリカのホームドラマに憧れ、『専業主婦』は豊かさの象徴でした。その欧米は今では共働きが当たり前の社会に移行していますから、専業主婦は高度成長期という時代だからこそ成立した“極めて特殊な存在”といえるでしょう」

 女性の働き方に詳しいジャーナリストの中野円佳さんが付け加える。

「他のアジアの国々では、一家総出で働いていた時代から、専業主婦化が進み切る前に夫婦共働きへとシフトしました。日本のような『専業主婦黄金期』はありません。そのため日本の『専業主婦』に憧れを抱くケースもあります」

 しかし、そんな専業主婦の黄金期は終わりを告げている。バブル崩壊で長い不況に陥り、夫の給料だけでは生活しづらくなったことで、女性も苦労して賃金を稼ぐことが期待される時代に突入した。にもかかわらず、女性はこれまで通り子育てをし、夫の食事を作ることも求められてしまう。

「とりわけ風向きが変わったのは、安倍政権が『女性活躍』を唱え始めてからです。ほんの少し前まで、保守派の政治家は『妻が家を守るのが日本の美風』と言っていたのに、突然、『女性が子供を産んでも働き続けられる社会』を目指し始めました」(橘さん)

女性に立ちはだかるさまざまな「理不尽の壁」
だが、そうして女性の社会進出が進んでも、女性の地位は一向に向上していない。非正規労働者の割合は、1990年から2011年までの約20年間に、男性は8.7%から20.1%に増えたのに対し、女性は37.9%から54.5%と大きく増加。男女の賃金格差も、女性の賃金は1990年代まで男性の6割程度で推移しており、その後、格差は縮まりつつあるものの、直近(2018年時点)でも男性の7割超にとどまる。

 これでは女性の働こうとするモチベーションが上がらないのも当然だ。男性側の意識の問題も大きいだろう。

「妻が働きたいと言い出した時に、『家のことがおろそかにならなければいいよ』という男性はいまだに多い。周さんの出身、中国は共働きが前提で、男性が家事・育児にかかわる時間が他の国より長いとされているのとは対照的です。また、子育てをしながら働こうにも、待機児童問題をはじめとする保育園の問題など、制度的な障壁も多くあります」(中野さん)

 結局、女性は頑張って働いても、心身共に力尽きていく。さまざまな「理不尽の壁」がいくつも立ちはだかり、「働いたって損」「男が働いた方が豊かな暮らしができる」「結局専業主婦が最適」と思わせる社会構造になっているのだ。

「『貧困なのに専業主婦』という言い方は、暗に自己責任論を含んでいるように聞こえます。そして当人も、『自分で専業主婦を選択しているのだからとやかく言われたくない』と予防線を張り、知らず知らずのうちに『自己責任論のワナ』にはまっています。しかし、本当は専業主婦を選んでいる背景にはさまざまな制度や風土・文化的な障壁があって、その中には社会全体で解決すべきものもあるはずです」(中野さん)

 状況は今後さらに悪化する可能性が高い。

「『女性が活躍する社会』に求められるのは、すべての女性を労働市場に参加させる政策です。当然、専業主婦を前提とした『配偶者控除』や、配偶者が受け取れる国民年金である『第3号被保険者』など、専業主婦に有利なさまざまな制度も見直されていくでしょう」(橘さん)

 一般的に、女性は男性より長生きであり、夫に先立たれた後の人生も考えておかなければならない。総務省のデータによると、現在65才以上の女性の単身世帯では、2人に1人(56.2%)が貧困に陥っている。

「バブルの時代に『玉の輿婚』や『勝ち組婚』などといわれ、一生安泰と思われた女性も、夫と死別した後の分までは稼げておらず、貧困に陥っているのが現状です」(白河さん)

 構造的な問題を抱える「貧困専業主婦」は今後も増えていくとみられている。そんな矛盾した社会をどう生きるか。やはり最後には、企業や男性、社会全体の意識が変わるほか解決の道はない。

 いつまでも「幸せ」でいられるために、主婦も、まずは現実を直視することから始めるべきかもしれない。

※女性セブン2020年1月1日号
 

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