注目のニュース - 長時間・未払い残業が横行する運送業界。法律、荷主・元請けとの付き合いのしわ寄せは現場のドライバーに (11/7)

長時間・未払い残業が横行する運送業界。法律、荷主・元請けとの付き合いのしわ寄せは現場のドライバーに (11/7)

2019/11/7 23:49

長時間・未払い残業が横行する運送業界。法律、荷主・元請けとの付き合いのしわ寄せは現場のドライバーに
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191107-00205783-hbolz-soci&p=1
2019/11/7(木) 8:32配信 HARBOR BUSINESS Online

長時間・未払い残業が横行する運送業界。法律、荷主・元請けとの付き合いのしわ寄せは現場のドライバーに
サービスエリアで休息を取るトラック(筆者撮影)

長時間労働と未払い残業代が横行する運送業界
「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

 前回までは、「荷主第一主義」の弊害を前編・後編に分けて紹介したが、今回からは「運送業界の働き方改革とドライバーの給与形態」について、前編と後編に分けて述べていきたい。

 2019年4月から順次施行されている「働き方改革関連法」。

 その機運が高まったのは2013年、日本政府が国連の社会権規約委員会から、長時間労働や過労死における防止対策の強化を求める勧告を出された頃だろう。そこに、有名企業社員の自殺や過労死などが相次いだことで、政府も本格的に動きだした。

 その結果、今や「24時間戦えますか」と問いかけるひと昔の人気CMは、「なんだそのブラック思考は」と全くもって理解されなくなり、逆に会社から「早く帰れ」と促される「時短ハラスメント」が労働者を苦しめるという皮肉も起きている。

 そんな世間の「働き方改革」と一線を画しているのが、他でもない「運送業界」だ。

 2019年8月の厚生労働省の発表「自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況(平成30年)」によると、前年に実施した監督指導で、トラックドライバーを使用する事業所5,109か所のうち、実に83.6%にあたる4,271か所で労働基準関係法令違反が見つかったという。 
その中で最も多かった違反は、「違法残業などの長時間労働」で3,013か所。次いで、「割増賃金の未払い(未払い残業代)」が1,071か所だった。

 運送業界において、この「長時間労働」と「未払い残業代の発生」は表裏一体の問題である。

 ゆえに、この長時間労働をなんとかすれば、未払い残業代の発生も抑えられるはずなのだが、逆を言えば、長時間労働を何とかしない限り、この未払い残業代の問題は絶対に消失することはない。

運送会社の労基法違反の発端は規制緩和
これほどまでに多くの運送企業が、ドライバーへの「長時間労働」や「未払い」における労働基準法を守れぬ状況に陥った大きなきっかけの1つに、1990年の「物流二法」の施行によって生じた規制緩和がある。

 簡単に言うとこれは、業界に競合他社や多重下請け構造を必要以上にもたらし、荷主への過剰サービス・価格競争、そして前回紹介したような、行き過ぎた荷主第一主義などをも生じさせた、「物流業界の大事件」だった。

 そのためドライバーの長時間労働は、もはや各運送企業だけではどうすることもできない課題であるのだが、荷主とのパワーバランスや、競合他社の存在に加え、物流業界全体が「古い商習慣」で繋がっている現体制では、運送企業も荷主に「協力してくれ」とは強く言い出せず、いつまでたっても改善されない状況にある。

他業種と比べても異常なドライバーの労働時間
トラックドライバーの労働時間の長さは、他業種に比べても異常だといえる。

 今年4月に施行された「働き方改革関連法」においても、他業種の時間外労働上限が年間720時間へと順次適用される中、トラックなどの自動車運転業務においては、「人手不足と過酷な労働環境の改善に時間を要する」という判断から、年間960時間と、他業種より規定時間が240時間も長く、適用までにも2024年までの5年間という猶予が与えられたほどだ。

 荷物の積み降ろし、検品・仕分け作業などといった「オマケ仕事」のせいで、自分の作業時間が増えるだけでなく、時間通りに到着しても前のトラックの作業待ちに3時間以上待たされることもザラ。

 しかも、荷主都合による荷待ち時間に対しては、トラック運送事業における適正な運賃・料金の収受に向け、国土交通省が2017年から「待機時間料」を規定したにも関わらず、支払いはおろか、荷待ち時間短縮に向けた改善努力すらなされない現場が非常に多いのが現状なのだ。

休憩時間・拘束時間の改善基準も7割弱が違反
そんな長時間労働・拘束を制限するものとして、トラックドライバーには、一般的な「労働基準法」以外にも「改善基準」なる特有のルールがある。

 これは、「4時間走行したら30分休憩」、「拘束時間は原則1日13時間以内。最大16時間以内で、15時間を超えていいのは週に2回まで。1か月の拘束時間は293時間以内」などと定めているものなのだが、先の労働省発表の調査結果では、事業所5,109か所のうち66.9%%に当たる3,419か所で改善基準告示違反があった。

 中でも度々起こるのが、「休息時間」と「拘束時間」のうやむやな扱いだ。

 その日のうちに自宅へ帰れないことが多い長距離トラックドライバーなどには、勤務と次の勤務との間、「原則連続8時間以上の休息を取らねばならない」という決まりがある。

 が、一部の業者の中では、「荷待ち時間」をこの「休息時間」とカウントしたり、業界で一般的な「みなし残業代」に対して、一定時間を超えた分の残業代を、休息時間と曖昧にして支払わないケースが横行しているのだ。

 この件に関して、SNSや現場のドライバーに彼らの給与事情を聞いてみたのだが、意外にも、各々所属する運送企業のこうした「ごまかし」は、ドライバー本人たちも気付いているという。

 しかし、会社に「計算方法が違うんじゃないか」とは、こちらも立場上やはりなかなか言い出せないとする人や、言いに行ってもはぐらかされたとする人がほとんどで、今回、多くのドライバーが、こちらから頼まずとも「こんなことがまかり通っていいのか」と、給与明細の写真を送ってきてくれ、その不満や憤りの大きさを垣間見た。

 国が定めた法律や、荷主・元請けとの付き合いも無視できず、現場と板挟みになるのが常である運送企業。その苦労は計り知れないものがあるが、こうした深刻な影響を直に受けるのは、他でもない「現場に足を運ぶ自社所属のトラックドライバー」であることを忘れてはならない。

<取材・文/橋本愛喜>

【橋本愛喜】
フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。

ハーバー・ビジネス・オンライン 

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