注目のニュース - 過労死対策に矛盾、残る高プロ制度 遺族「防止と逆行」

過労死対策に矛盾、残る高プロ制度 遺族「防止と逆行」

2018/6/1 23:24

朝日DIGITAL 2018年6月1日

写真・図版:インターバル制度と過労死の現状(省略)

 政府の過労死対策の矛盾が浮かび上がっている。31日に公表した新たな「過労死防止大綱」の最終案では長時間労働を防ぐ新目標を掲げた。一方でこの日に衆院を通過した働き方改革関連法案では、働き過ぎへの懸念が強い高度プロフェッショナル制度(高プロ)導入にこだわる。過労死遺族は政府の姿勢に疑念を深める。

 過労死防止大綱は「過労死ゼロ」の実現を目指す政府の基本方針を示すもので、厚生労働省の施策の土台となる。2015年に初めて策定され、3年に1度見直すことになっている。

 その新大綱の最終案に、「勤務間インターバル制度」の導入企業の割合を2020年までに10%以上にするとした数値目標が、初めて盛り込まれた。仕事を終えて次に働き始めるまでに一定の休息時間を確保することで長時間労働を防ぐ制度で、過労死防止策の「切り札」とされるものだ。

 今の大綱の策定作業でも過労死遺族らが導入を求めたが見送られたため、遺族らは厚労省の本気度を疑ってきた。それだけに、多くの過労死遺族の代理人を務めてきた川人(かわひと)博弁護士は「数値目標が追加された意味は大きい」と評価する。

 ログイン前の続き新大綱は7月にも閣議決定される。その後、目標達成に向けた実効性がある施策を打ち出せるかが焦点となる。厚労省によると、17年時点の導入企業の割合は1・4%。社員一人一人の労働時間の管理が複雑になり、企業の労務管理の負担が重くなることがハードルになっている。

 インターバルの具体的な時間をどう設定するかも課題だ。同制度を企業に義務づける欧州では「11時間以上」が原則。これより短ければ、通勤時間を差し引いた休息時間が十分に確保できないとの考えからだ。

 厚労省の調査では、日本で制度を導入している企業のうち「11時間以下」が半数以上を占める。「5時間以下」と設定している企業もあり、こうした「名ばかりインターバル」を防ぐ必要もある。厚労省は、導入企業の好事例をセミナーで紹介するといった制度の周知や、休息時間が長いほど金額が高くなる中小企業向けの助成金を活用するなどして導入を促す方針だ。

 最終案には働き手の労働実態を特別に調査する業種に、メディアと建設業を追加することも入った。広告大手・電通やNHK、新国立競技場の建設現場をめぐる過労死・過労自殺が大きな問題となったためだ。対象業種の労働者には数年おきにアンケートを実施。長時間労働の理由や労働者のストレスなどを分析し、過労死対策に生かしていく。

遺族「過労死防止の動きに逆行している」
大綱見直しの最終案が厚労省の「過労死等防止対策推進協議会」で公表されてから約4時間後の31日午後2時ごろ、衆院本会議では働き方改革関連法案が可決・通過した。

 協議会に委員として出席した「全国過労死を考える家族の会」のメンバーは本会議閉会後、国会内で記者会見を開いた。寺西笑子代表は最終案について「(過労死防止へ)前進と思っている」と評価した後、法案通過については「過労死防止の動きに逆行している」と批判。過労死に対して正反対の対応を取る政府の姿を浮かび上がらせた。

 法案には、残業時間の罰則付き上限規制が含まれるほか、勤務間インターバル制度の導入を企業の努力義務とする内容も含まれている。新大綱の最終案のインターバル制度の数値目標は、こうした長時間労働是正策に沿うものだ。

 これとは逆に高プロは、年収1075万円以上の一部専門職を対象に労働時間規制を完全に外す。家族会は「過労死を増やす」と懸念し、法案から外すよう政府に求め続けてきた。

 政府は「健康確保措置をしっかり盛り込んでいる」(加藤勝信厚労相)として、過労死は防げると説明してきた。年104日の休日取得や、残業が月100時間を超えたとみなされるケースでの医師の面接指導が、新たに企業に義務づけられることになっている。だが、高プロが適用された働き手には仕事の量を自分で決める権限はなく、「長時間労働しなければ終わらないほど大量の仕事を押しつけられる」との懸念は払拭(ふっしょく)されていない。

 同様の懸念は、既存の裁量労働制にもある。実際に働いた時間に関わらず一定時間を働いたとみなし、残業代込みの賃金を払う制度だ。政府は当初、裁量労働制の健康確保措置の強化策を法案に盛り込む予定だったが、裁量労働制の対象拡大の全面削除とともに削除した。与党の一部にも健康確保措置の強化は残すべきだとの声があるが、政府は応じていない。

 寺西代表は「過労死があちこちで起きている現実を胸に手をあてて考えてもらいたい」と政府に求めた。(村上晃一、千葉卓朗、贄川俊)

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