注目のニュース - <働き方改革の死角>日本、国際水準遠く パワハラ・セクハラ対策 (6/9)

<働き方改革の死角>日本、国際水準遠く パワハラ・セクハラ対策 (6/9)

2019/6/9 9:45

 <働き方改革の死角>日本、国際水準遠く パワハラ・セクハラ対策

 https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201906/CK2019060902000138.html  

東京新聞 2019年6月9日 朝刊

 

  職場でのパワハラやセクハラの規制策について日本の国際潮流からの周回遅れが鮮明になっている。今年創立百周年になる国際労働機関(ILO)は十日からスイス・ジュネーブで開く総会で、職場でのハラスメント全般を禁止する条約を採択する。だが、日本が五月末に成立させた女性活躍・ハラスメント規制法は条約案とのかい離が大きく、日本の条約批准は現時点では困難との見方が多い。 (岸本拓也)

 条約案は昨年から加盟百八十七カ国が議論を本格化させており、交渉筋によると今総会で最終日の二十一日に出席者の三分の二以上の賛成を得て条約が採択される見込みという。

 だが、日本が批准(国内同意手続き)にすんなり進むかは分からない。国内規制法が来春以降施行されても条約案が求める水準に遠く及ばないためだ。

 最大の違いは、ハラスメントの禁止規定だ。

 ILO事務局がまとめた条約原案によると、ハラスメントを「身体的、精神的、性的または経済的危害を引き起こす可能性のある行為」と幅広く定義し、これらの行為を「法的に禁止する」と明記。制裁も設ける。刑事罰まで設けるかは各国の判断だが法律で禁止されると、民事訴訟で賠償請求の根拠となるなど行為の抑止につながり被害者も救済しやすくなる。すでに欧州など多くの国が禁止規定を設けている。

 これに対し、日本の法律はハラスメント行為を禁止する規定は盛り込まれず、相談窓口設置など防止対策を企業に義務付ける内容にとどまる。被害者や加害者の範囲についても条約案は、取引先や顧客、求職者など第三者まで幅広いが、日本は企業の幹部・従業員に限定している。

 日本の規制が甘くなったのは、経団連など経済界が訴訟リスクや罰則を恐れ、規制に反対、政府が配慮したためだ。

 連合など労働組合は追加改正や指針強化を急ぎ、速やかに条約を批准することを主張しているが、日本政府は慎重。根本匠厚生労働相は条約を支持し、批准するかについては国会で「内容を踏まえて検討する」と明言を避けている。

 昨年の総会では欧州やアフリカ諸国が主導し、条約制定が決まったが、日本は必要性について立場を保留。中身に関しても日本は「各国の事情に合わせ柔軟な内容にすべきだ」と被害の対象者の限定など水準引き下げを要求した。出席者によると、「後ろ向きな主張が多い日本政府に各国から失笑が漏れた」という。

 今総会でも、日本が昨年同様に条約基準の緩和を主張するなら、ハラスメント根絶に向けた国際的な流れから孤立しかねない。ハラスメント問題に詳しい労働政策研究・研修機構の内藤忍(しの)副主任研究員は「条約基準を緩くして批准しても意味はない。本当にハラスメントがなくなる実効性がある対策を急ぐのが本筋だ」と指摘している。

<ILO条約> 国連の国際労働機関(ILO)が労働環境改善のため定める。拘束力を持ち、批准した国は条約に合わせ国内法整備を求められる。強制労働・児童労働の禁止など多岐に及び、これまでに189条約が制定された。日本は労働時間規制は批准していないなど批准数は49と先進国平均を下回る。条約と別に各国事情を考慮し改善を求める勧告もあるが、拘束力はない。

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