森岡孝二の連続エッセイ - 番外 拙著『雇用身分社会』(岩波新書)の書評が読売新聞に掲載されました

番外 拙著『雇用身分社会』(岩波新書)の書評が読売新聞に掲載されました

2015/12/7 10:07

読売新聞 2015年12月6日

森岡孝二著 雇用身分社会
評・濱田武士(漁業経済学者、東京海洋大学准教授)

 今日、民間企業であれ、公務員であれ、組織の中で働き手の階層分解が進み、非正規職員枠が拡大し、固定化されつつある。しかも、正規職員との待遇格差は広がっている。朧気(おぼろげ)に感じていたが、本書はこのことを、歴史と制度及び客観的なデータを使って明快にしている。 

 とりわけ、雇用身分制度があった戦前の働き方が今日の職場の中に復活しているという論旨には衝撃を受ける。戦前、労働者供給制度の下で、派遣労働者は賃金を供給元からピンバネされ、供給先からは奴隷のように働かされていた。このような間接雇用は悲劇を生むことから戦後制定された職安法によって禁じられた。にもかかわらず、法の隙間をかいくぐって請負という間接雇用が1950年代から芽生え、60年代後半には人材派遣会社が登場、85年には間接雇用の部分開放を認める労働者派遣法が制定された。それでも当初は専門的なスキルを必要とする職種に限られ雇用期間も限定されていたが、その後規制緩和が進められ、派遣労働者数は激増する。直近の法改定では「職種を問わない正社員の派遣労働者への置き換えと派遣の恒久的受け入れ」が可能になるという。奴隷労働の現場が広がり、戦前回帰するのではと、著者は警鐘を鳴らす。

 日本では賞与・昇給もないのにパートの長時間労働が常態化している。リーマンショック以後、リストラが進められ、これまで正現職員だった枠も非正規化され、「低所得層の拡大と貧困化、中所得層の没落、高所得層の縮小」が伴った。弱い立場の中高年の女性職員はより弱い立場に追いやられ、派遣労働者層から抜け出せなくなっている。またエレベーターを使わせないなど正規と非正規職員を差別化する職場が増えている。持って生まれた身分などはない。だが、株主資本主義の底辺には、こうした雇用身分社会が形成されているのだ。本書は使用者優位の社会に一石を投じ、この状況から脱却する課題を探る一冊だ。

 ◇もりおか・こうじ=1944年、大分県生まれ。関西大名誉教授。専門は企業社会論。著書に『就職とは何か』など。

12月6日現在までの書評・紹介については以下にアップしています。http://www.zephyr.dti.ne.jp/~kmorioka/20151129review.htm

 

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