森岡孝二の連続エッセイ - 第316回 呆れる日本経団連役員企業の最新36協定

第316回 呆れる日本経団連役員企業の最新36協定

2016/12/25 1:59

日本経団連の榊原会長(東レ)は、2016年10月24日の記者会見で、安倍内閣の「働き方改革」に触れて、次のように述べました。

「過労自殺は誠に遺憾なことであり、絶対にあってはならないことである。経営トップが先頭に立って、過労死防止対策に取り組まなければならない。経団連では、今年を働き方・休み方改革に向けた集中取り組み年に位置づけて活動している。とりわけ過重労働と長時間労働の是正が重要課題であり、この取り組みを企業社会に浸透させていきたい。/長時間労働の是正に向けて、法的な対応が検討されているが、経団連としてもしっかり議論に参加して対応していく。同時に経済界の自主的な取り組みを推進していく。政府の取り組みと相俟って、長時間労働の撲滅につなげていきたい」。

これが電通の女性新入社員、高橋まつりさん(当時24歳)の過労自殺事件に対するコメントであることは明らかです。榊原会長は「過労自殺は……絶対にあってはならないこと」と言い、また「過重労働と長時間労働の是正」に取り組んでいきたいと言います。これが真意ならまことにけっこうなことです。しかし、経団連はいつから悔い改めたのでしょうか。東レをはじめとする経団連会長・副会長企業の労働時間管理の実態はいうと、残念ながら、従業員のあいだでいつ過労死・過労自殺が起きても不思議でないほど酷いものです。

そのことは下の別表をみれば一目瞭然です。この表は過労死問題連絡会が松丸正弁護士の手を煩わせて入手した、経団連役員企業17社の36協定の情報公開結果から作成しました(日本生命保険は未入手)。表の数字は、17社の36協定に盛り込まれている時間外労働(残業)の最大延長時間を示しています。

労働基準法は、36協定の締結と届け出を条件に、1週40時間(当初は48時間)、1日8時間の法的規制を解除し、事実上無制限の残業を許してきました。1998年の労働省告示によって残業の延長に関して1週15時間、1ヵ月45時間、年間360時間などの限度が設けられたものの、行政上の指導基準にすぎず、法的な強制力をもつものではありませんでした。「業務の繁忙」「納期の逼迫」「機械のトラブルへの対応」などの事由を付して、特別条項付き協定を結べば、上記の限度を超えて無制限に労働時間を延長できるのです。

表に出ている住友化学、東京ガス、三菱商事、三越伊勢丹の4社は、1日15時間となっています。法定8時間、休憩1時間のうえにさらに延長15時間がOKということは、使用者は労働者をまる1日24時間働かせも罰せられない、ということを意味します。しかし、これは驚くにあたりません。1日15時間もさきの限度の1週15時間のうちに含まれているのですから、特別延長の手続きをとるまでもなく許容された時間なのです。

さて会長企業の東レですが、なぜか1日は中央労働基準監督署で情報公開されたときに黒塗りになっていました。次の欄は1ヵ月100時間となっています。これは過労死ラインとされる月80時間の残業を超えています。年間900時間まで残業させることができるというのも猛烈です。なにしろ1日平均4時間は残業をしてもらいますよ、というわけですから(厚労省「毎月勤労統計調査」の2015年平均出勤日数224日で計算)。

これでも、2009年に株主オンブズマンが行った36協定の情報公開の結果と比べるとまだましになっています。そのときの東レの残業延長最大時間は、1ヵ月160時間、1年1600時間となっていました。これはアバウツに月4週、年間50週で計算すると、最大月320時間、年間3600時間の実働もありうるという協定です。

株主オンブズマンの情報公開で批判を浴びたからか、経団連の会長企業になったからか、今回公開された東レの36協定は2009年時点のそれに比べると、多少抑えられてはいます。それでも、過労死ラインの時間をもってよしとしている点では、あまりにもBAU(business-as-usual、旧態依然のビジネス)であると言わなければなりません。

  別表 日本経団連会長・副会長企業17社の36協定

出所)過労死問題連絡会の情報公開請求結果。
(注)協定期間は2016年4月1日からの1年間。三越伊勢丹のみ2015年4月1日からの1年間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            

 

 

 

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