森岡孝二の連続エッセイ - 第320回 残業月100時間まで許容する政府・経団連案での幕引きは受け入れられません

第320回 残業月100時間まで許容する政府・経団連案での幕引きは受け入れられません

2017/2/24 21:51

働き方改革の行方が注目されているなかで、去る2月14日に第7回「働き方改革実現会議」が開催され、残業の上限規制についての政府案の骨子が「事務局案」として示されました。

事務局案は、「3 6 協定により、週40 時間を超えて労働可能となる時間外労働(残業)時間の限度を、月45時間、かつ、年360時間とする」としています。これを「法律に明記」し、この上限を上回る残業をさせた場合は「罰則を課す」というのです。

一見、厳しい線を打ち出しているような印象を受けます。しかし、これには「特例の場合を除いて」という条件が付されています。従来もあったように、特例条項付き協定を結べば、月45時間あるいは年360時間を上回る時間外労働をさせてもよいことになっています。従来との違いは、1週15時間という限度がなくなり、1年は720時間(360時間の2倍)を上回ってはならないとされている点です。

1年720時間という上限は、毎月80時間の残業を9ヵ月続けることを許容する時間です。月90時間の残業でも8ヵ月は続けることができます。これは過労自殺を含む過労死のリスクが高い働き方/働かせ方です。80時間あるは90時間の残業が続けば、1〜2ヵ月でも脳・心臓疾患や鬱病などの精神疾患を発症する心配があります。たとえ過労死しなくても、健康に極めて有害な労働時間であると言わなければなりません。

事務局案には月の上限は示されていません。1月28日のNHKニュースは政府の動きを「罰則つきの時間外労働上限 月最大100時間で調整」と伝えていました。1月29日の朝日新聞には「残業上限は月(平均)60時間、繁忙期100時間 政府が改革案」という見出しの記事が出ていました。それに対して各方面から強い批判と反発があったことから、このたびは上限を明示するのを避けたようです。

けれども、「改正の方向性」に関する注に書かれていることから推し量ると、今後出てくる最終案では、繁忙期などの特別な場合は、1ヵ月100時間か、2〜6ヵ月の平均で80時間といういわゆる過労死ラインを基準として、単月では100時間、複数月では80時間を上回ってはならないとするのではないかと予想されます。

2月24日付けの朝日新聞は、連合が「とくに忙しい時期の残業時間」を「月最大100時間」とする(政府・経団連)案の受け入れを検討していることが分かった」と報じています。これは2月27日に予定されている経団連の榊原会長と連合の神津会長とのトップ会談を前にしての内情記事だと思われます。つい先頃まで、残業の上限規制をめぐっては経済界と労働界とあいだに大きな隔たりがあると言われていました。それから見れば大きな変化です。

仮にこれで手打ちがされるなると、いままでの抵抗は何だったのでしょうか。連合が政府・経団連の案を丸呑みにするいうことはないだろうと思いたいのですが、週労働時間の上限規制や勤務間インターバル休息規制もないまま、単月100時間、複数月の平均80時間が公認の上限とされたら、過労死の認定はかえって従来以上に困難になるとも言えます。

先の朝日の記事では、連合は「一定期間後に上限の時間を見直すことなどを容認の条件にし、連合の主張を反映させることを求める構えだ」そうです。しかし、特例条項を認めず、「月45時間、年360時間」を、災害などのよほどの事情がある場合を除いて、例外なき原則とするのでなければ、まともな残業規制は20年経っても、30年経っても実現することはないでしょう。

事務局案は、年720時間を12ヵ月で割った「月平均60時間」を示して、それが規制の何かの基準であるかのように見せようとしています。しかし、上限規制を言うときに、規制力をもたない月平均を持ち出しても何の意味もありません。仮に「月60時間」に意味を持たせるなら、それを上限にしなければなりません。私は残業月60時間の上限は健康配慮の観点からは甘すぎると考えます。それでも、月60時間の残業が法定の最大限度とされるなら、まだしも現行の青天井状態よりはましだと評価できます。

いまは真の働き方改革のための、残業のまともな上限規制に踏み出すか、名ばかり規制に終わるかの正念場です。連合が経団連に押されて、年間720時間、単月100時間、複数月80時間の残業上限案を呑むことのないよう要望します。 (25日朝改題)


 

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