森岡孝二の連続エッセイ - 第331回 書評 濱田武士『魚と日本人――食と職の経済学』岩波新書、

第331回 書評 濱田武士『魚と日本人――食と職の経済学』岩波新書、

2017/9/2 22:10

 エコノミスト 2016年12月6日

濱田武士『魚と日本人――食と職の経済学』岩波新書、820円 + 税

水産物流通の現場訪ね「魚職不朽」を説く

著者は各地の漁港や魚市場を歩き、おいしい魚を求めて近所の鮮魚店にも足を運ぶ漁業経済学者である。 

昔は魚屋さんに行けば、いまは何が旬か、この魚はどう食べたらおいしいかを対面で教えてくれたものだが、消費者が顔のないセルフ形式の買い物を好むようになって、街から魚屋が消えてきた。それに追い打ちをかけるように「魚離れ」が進み、魚を探し求めて料理して食べる「魚食」は日常生活から消えつつある。

切り身は買われても丸魚は敬遠され、包丁で魚を処理できる人は少なくなっている。消費者が魚と出会うのは、最近ではスーパーの魚コーナーであるが、なかには魚(おそらくは切り身)に骨があるからと言って、店にクレームをつける顧客がいるらしい。市場にはレトルトや冷凍食品やファストフードが溢れていることも、食べるのに時間と手間がかかる魚食が廃れていくことの一因となっている。

魚食とつながる魚職についていうと、鮮魚店も大きく減少している。スーパーの魚コーナーにはアラスカ産のサケ、モーリタニア産のタコ、ベトナム産のブラックタイガーといった輸入水産物が増えている。これも国内漁業との関係では魚職の減少である。それだけに最大の中央卸売市場である築地市場の集荷範囲は世界に拡がっている。

簡単ではあるが、本書には小池都知事の誕生にともなう築地市場の豊洲移転計画の延期や土壌汚染の話も出ていて、時事問題を考えるうえで勉強になる。

漁業経済学者である著者の真骨頂は魚食と魚職を結ぶ、消費地卸売市場と生産地卸売市場の役割の考察にある。

魚を含む水産物は、漁業者から産地卸売市場の卸業者(荷受)、仲卸業者(仲買人または買受人)を経て、消費地卸売市場の卸業者、仲卸業者を介し、小売業者や外食事業者に渡り、消費者に届けられる。漁業者から消費者までの間には、流通6段階と呼ばれる取引がある。

この取引の担い手を、著者は食べる人たち(第1章)、生活者に売る人たち(第2章)、消費地で卸す人たち(第3章)、産地でさばく人たち(第4章)、漁る人たち(第5章)に分け、順に訪ねていく。

なかでも漁師や漁業者の話と重ねて読むと、「食は職が支えている」ことがわかる。だから魚食も魚職も朽ちさせてはならない。各地で「魚食普及」の取り組みがされているが、それを「魚職不朽」につなげて欲しい。そのことが著者の提言であり、願いである。評者もそう思う

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