森岡孝二の連続エッセイ - 最新エントリー

10月8日の新聞は昨年のクリスマスに過労自殺した電通新入社員の高橋まつりさん(当時24)の労働実態を詳しく報じています。労災認定された彼女の昨年10月9日から1ヵ月間の時間外労働は、105時間におよび、睡眠が1日2時間というときもありました。上司から「君の残業時間は会社にとって無駄」「髪がボサボサ、目が充血したまま出勤するな」「女子力がない」などの言辞でパワハラも受けていました。

こうした悲惨な事件に武蔵野大学・長谷川秀夫教授が、Facebookで「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない。会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない」とコメントをしたことが大きな批判を招いています。

“ぎるすた”というハンドルネームの女子学生がツイッターでこの冷酷なコメントに「この国は本当にどうしようもないとつくづく思う」と嘆いています。今夜7時50分現在、このツィートに対する「リツイート」は2万3674件、「いいね」は1万2048件に達しています。長谷川氏のFacebookは炎上して、上記の書き込みは削除されたようです。

それにしても酷い言い方です。電通では1991年に大嶋一郎さん(24歳)が過労自殺した事件がありました。死亡前の月平均残業時間は147時間にも上りました。電通青年過労自殺として知られるこの事件では、2000年3月24日に最高裁が使用者の労働者に対する健康配慮義務を厳しく問う以下のような判決を出しています。

「労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである。/使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである」。

長谷川氏はこの判決をご存じなのでしょうか。武蔵野大学の教員情報によると。彼は1989年には東芝アメリカ情報システム社の財務部長となり、2001〜2002年には東芝アメリカ医用システム社の取締役になっています。その後、2002〜2005年は株式会社コーエー執行役員、2006〜2007年はニトリ取締役も務めています。いまはグローバル学部グローバルビジネス学科の教授のようですが、根っ子はプロの経営者です。同じことを弁護士や社会保険労務士が言ったら懲戒処分を受ける恐れがありますが、学者や経営者なら何を言っても許されるわけではありません。

まつりさんの過労死事件が報じられた今月8日の朝刊には、過労死防止法にもとづく最初の「過労死白書」が発表されたという記事が出ています。防止法には、過労死は「本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失である」と書いています。法にもとづいて策定された「過労死防止大綱」には、「法が成立した原動力には、過労死に至った多くの尊い生命と深い悲しみ、喪失感を持つ遺族による四半世紀にも及ぶ活動があった」と述べられています。長谷川氏がこの法律や大綱を知っていたなら、たとえそれに不同意でも、上記のような非常識で恥知らずのコメントはしなかったのでないでしょうか。

長谷川氏が払った代価は本人が考える以上に大きいと思われます。今後、彼を役員として登用する大企業はないでしょう。政府の諮問会議や審議会などの重要機関に声がかかることもないでしょう。今年のブラック企業大賞は電通で、ブラック教授大賞は長谷川秀夫氏で決まりでしょう。
 

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政府は、本年6月2日に「ニッポン一億総活躍プラン」を、また8月2日に「未来への投資を実現する経済対策」をそれぞれ閣議決定しました。いずれにおいても「最大のチャレンジ」と位置づけられているのは「働き方改革」です。

この働き方改革構想に掲げられている、「同一労働同一賃金の実現」についてはこの連続エッセイの第312回で、「最低賃金の引き上げ」については第313回で、「勤務間インターバルの導入」については第309回で取り上げました。

そこで今回は、政府のいう働き方改革で最も注目される「長時間労働の是正」のための「36(サブロク)協定の再検討」について、真偽のほどを見てみたいと思います。すでに取り上げた「勤務間インターバル」についても関連する範囲で触れます。

労働基準法では、法定労働時間(使用者が労働者に命ずることのできる最長時間)を、1週40時間、1日8時間と定めています。しかし、同じ法律の36条で、労使協定を結んで労働基準監督に届け出れば、法の定めにかかわらず時間外および休日に働かせても罰せられないことになっています。労基法が「ザル法」と言われる所以です。そのために青天井と言われる無制限の残業(時間外労働)がはびこってきました。

これではあまりにひどいというので、労働省(現厚生労働省)は1998年に残業の限度に1週間15時間、1ヵ月45時間、1年360時間などの基準を設けました。しかし、これは強制力のない目安で、協定の特別条項の但し書きに「業務の繁忙」「納期の切迫」などの事由を付記しさえすれば、いくらでも延長できるという抜け道が認められています。そのために過労死ラインを優に超える月100時間超あるいは年1000時間超の36協定を結んでいる企業も少なくありません。

長時間労働を是正するには36協定の見直しを避けて通ることはできません。野党共同提案(本年4月19日)の「長時間労働規制法案」は、36協定による労働時間の延長に上限を規定し、具体的な時間については、「労働者の健康の保持及び仕事と生活の調和を勘案し、厚生労働省令で決定する」としています。すぐにも実行可能な限度時間としては、現行の残業の限度に関する指導基準を強制力のある基準にするという選択肢もあります。政府がいうように「欧州諸国に遜色のない水準を目指す」なら、週労働時間は残業を含めて48時間まで、1日の残業は2時間までとすることが望ましいでしょう。

先に政府の働き方改革プランは「36(サブロク)協定の再検討」を謳っているかのように書きました。しかし、これは不正確です。正確には「長時間労働の是正については、労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる36(サブロク)協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する」と述べています。

これは現行の36協定の認識からして誤っています。36協定は時間外労働の規制を定めたものではなく、1週40時間、1日8時間の労働時間規制の抜け道、したがって時間外労働の無規制を定めたものです。そこにはこだわらず、36協定のあり方について、再検討を開始するとしても、肝心の再検討の方向性は示されていません。

長時間労働の是正で挙がっている「勤務間インターバルの導入」については、その方向性はすでに見えています。それは、法的規制によらずに、助成金方式で企業による自発的導入を促進するというものです。

これから推し量れば、36協定の再検討においても、政府・厚生労働省は、法的強制力をともなう残業規制ではなく、労働時間の決定をあくまで労使自治に委ね、残業時間に関して多少ともましな36協定を結んだ企業に対して助成金などで優遇する方式でお茶を濁そうとしているのではないでしょうか。障害者雇用制度においては、法定雇用率(常用労働者数の2%)を達成していない企業から納付金を徴収し、それを元に、法定雇用率を達成している企業に対して、調整金、報奨金などを支給することになっています。この例からいうと金銭的誘導を併用する余地はありますが、それが有効な奨励策となるには、法定雇用率のように法律で規制の基準が定められている必要があります。

厚生労働省は、これまで要綱や指針のかたちで過重労働対策を次々と打ち出してきながら、残業の上限規制については一貫して慎重に回避してきました。36協定の見直しや勤務間インターバル休息制度についても、それが長時間労働の解消において実効性をもつかどうかは、法的規制に踏み出すかどうかにいつにかかっています。

この点では私たちは残業時間の法的規制に踏み込む改革にイエス!、踏み込まない改革にノー!の声を上げるべきです。
 

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最低賃金は法律にもとづいて決定される賃金の最低額(1時間の賃金=時給)です。略して「最賃」といいます。最低賃金制度の下では使用者は労働者に国が定めた最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。最賃を下回る賃金しか支払わなかった場合には、それが労使の合意に基づくものであっても無効とされ、最賃との差額を支払わなくてはなりません。使用者が最賃より低い賃金で労働者を働かせると違法となり、罰則(50万以下の罰金)が科せられます。あなたの賃金をチェックし、時給(月給なら月々決まって支払われる賃金÷1ヵ月の所定労働時間)が最賃を下回る場合は、労基署にその事実を申告(通報)してください。

最低賃金法は、「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」(同法第一条)と規定しています。最賃制は、生活保護制度とともに、憲法25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と謳われている生存権を保障する制度です。

最賃制が機能するには、賃金の最低額を定めるだけでは不十分です。最賃の基準となる最低生活費は、生活様式の変化や物価の動向によって上昇する傾向があります。それゆえに最賃制は、最低生活費の変化を考慮して賃金の最低額を年々引き上げる措置をともなって、はじめて有効に機能します。

日本では、厚生労働相の諮問機関である「中央最低賃金審議会」が、政府の政治的判断を受けて、地域最低賃金(時給)の全国平均(過重平均)をどれほど引き上げるかを答申します。これを受けて、都道府県の最低賃金審議会が各地域の最低賃金を、たとえば東京907円、大阪858円、愛知820円、北海道764円、沖縄693円(16年8月現在)などと決めます。

最賃は、労働組合と経営者の交渉によって決まる賃金ではありません。最賃はパートタイム労働者の時給相場に左右される面がありますが、労働市場の需給関係によって自然に決まるというものでもありません。最賃は、資本主義経済においてはめずらしく、政治的に決まる賃金なのです。

政府が現在約800円(細かくいうと798円)の全国平均を50円(6.3%)上げると言いさえすれば、850円になるのが最賃です。毎年、これと同じ比率で上げれば、4年後には全国平均は1000円になります。しかし、安倍内閣は「一億総活躍プラン」にそって最賃を年率3%引き上るように指示し、それを受けて、7月28日、中央最低賃金審議会は全国平均を24円(昨年は18円)引き上げることを決めました。来年度以降も同様に引き上げるかは不確かですが、たとえ実行されても年率3%の引き上げでは、全国平均が1000円になるのは8年先です。アメリカの15ドル運動の影響を受けて、日本でも時給1500円の要求が広がっています。3%ではその実現は22年先ですが、安倍内閣は1000円から先のことは何も言っていません。

最賃制があり、賃金の最低額が引き上げられると、いくぶんなりとも貧困と格差を改善し、生活水準の底上げを可能にします。また全体の賃金水準を引き上げて個人消費を拡大する効果もあります。

しかし、企業は賃金をそれを下回れば違法となる最賃レベルまで引き下げようとします。そのためにパートタイム労働者だけでなく、初任給レベルの若年正社員についても、時給はぴったり最賃か、最賃に限りなく近いレベルに貼り付けられる傾向があります。

また、たいていの国では最低賃金は全国一律ですが、日本では地域別最低賃金になっていることも問題です。たとえば、2016年8月1日現在、ワタミ(飲食)の「清掃・仕込みスタッフ」の時給は大阪では858円、京都では807円となっています。これはそれぞれの地域最賃と同額です。

最賃は国が定める賃金でありながら、地域間で格差があることも問題です。東京と沖縄の差は、2005年度から2015年度のあいだ106円から214円に拡がっています。最賃が貧困と格差を是正する役割があるとするなら、最賃は全国一律に引き上げられるべきです。これには法改正を要しますが、全国一律最賃制の実現を粘り強く要求していくべきです。

「維新の会」は、12年12月の総選挙に際し、最賃制の「廃止」を打ち出したことがあります。最賃制をなくせば雇用が増えるというのです。たとえば、最賃が850円なら10人しか雇えない企業でも、最賃制が廃止され時給が600円に下がれば、14人雇えるようになると言おうとしたのでしょう。しかし、600円では最低生活さえできないことは無視されています。最賃制がなくなれば、時給が500円、さらには400円に引き下げられる恐れがあることも考慮されていません。あまりの暴論で有権者の不評を買ったためにすぐに引っ込められましたが、こういう乱暴な最賃無用論は労働経済学者のあいだにもあります。

日本では非正規労働者が全労働者の4割を占めるまでなり、低賃金労働者の貧困がかつてなく深刻な問題になっています。それだけに最低賃金の大幅な引き上げが差し迫った重要な課題になっています。

*最低賃金の仕組みや、時給計算の仕方については厚生労働省のネットパンフ「必ずチェック 最低賃金(http://pc.saiteichingin.info/)を見てください。

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政府は本年6月2日、「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定しました。このプランが目新しいのは、これまで安倍内閣の金看板になってきた「働き方改革」のなかに、「同一労働同一賃金の実現」という宣伝文句が入っていることです。

これについては労働界も政府の雇用改革に批判的な人々も、実効性は疑わしいと留保しながら、おおむね「原則賛成」「一歩前進」と評価しています。「同一賃金の実現」が、現在の性別・雇用形態別の賃金格差の是正・解消を意味するとすれば、何も異を唱える必要はありません。しかし、私はそうした評価はあまりにあますぎると思います。

まず確認しておく必要があるのは、雇用労働の規制緩和論からの「同一労働同一賃金」論は、けっして新しいものではないことです。政府・財界寄りの労働経済学者で雇用改革の旗振りをしてきた八代尚宏氏は、ずっと以前から経済成長のための「年功賃金の解体」と「雇用の流動化」の切り札として「同一労働同一賃金の実現」を提唱してきました。彼の定年制不要論も「同一労働同一賃金」を前提としています。この場合の「同一労働同一賃金」は、労働市場をもっと流動化して、正規労働者の賃金を非正規労働者の賃金水準に引き下げろという主張にほかなりません。今回の「一億総活躍プラン」における「同一労働同一賃金の実現」も、この間の働き方改革における「究極の成長戦略」として出てきたものです。

非正規労働者の多くはパートタイム労働者です。アルバイトも低時給の細切れ雇用である点でパートタイム労働者に含まれます。正社員とパートの「均等待遇」をもって「同一労働同一賃金の実現」というなら、それがいかにまやかしかはすでに明白になっています。

パートと正社員の差別的待遇を禁じた改正パート労働法が昨年4月に施行されました。しかし、、この法律は職務内容、仕事の責任、転勤、配置転換、異動範囲などが同程度のパートと正社員のあいだの「均等待遇」を求めるにすぎず、この法律によって正社員との同一賃金が実現するのは、940万人のパートのうち32万人(3%)にとどまると見積もられています(「毎日新聞」本年2月12日)。

同一賃金の比較基準となるのは時間賃金(月給制の場合は月々決まって支給される賃金を1ヵ月当たりの所定労働時間で除して求められる時給)です。この時給には、諸手当や社会保険料の事業主負担分などの付加給付と賞与(ボーナス)は含まれません。仮にパートも正社員も1000円の時給で同一賃金だとしても、実際には正社員はそれに加えて付加給付や賞与でふつう1時間当たり400円〜600円の追加支払いを受けていると考えられます。かりにその追加分を500円とすると、年収ベースでは年間1200時間働くパートは120万円ですが、年間2000時間(残業は度外視)働く正社員は300万円となります。これが同一賃金の実例です。実際には正社員にはサービス残業(賃金不払残業)がついてまわる一方、初給・昇進の可能性がある、また勤続年数に応じて退職金も支払われるなど、複雑な事情があります。だとしても、同一労働同一賃金は、格差解消の万能薬でも切り札でもありません。

同一賃金や格差解消をいうなら、現行の地域別最低賃金(東京907円、沖縄693円)を全国一律最低賃金に改めることが先決です。賃金は労働市場の需給関係に左右されますから、地域によって格差があるのは当然です。しかし、この格差を是認するのではなく、すくなくともこれ以下では働かせてはいけないという最低基準だけは全国共通にして、賃金格差をなるべく小さくするのが最低賃金制の役割の一つです。先進国では国の最低賃金制度は全国一律になっているのもそのためです。

同一労働同一賃金が実効性のある有効な格差是正策となるためには不本意な長時間労働と不本意な短時間労働がともども解消されることが先決条件です。これについては「一億総活躍プラン」における「長時間労働の是正」を検討する際に取り上げましょう。

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厚生労働省は6月24日、2015年度の「過労死等の労災補償状況」を公表しました。過労死等防止対策推進法(過労死防止法)が成立したのは2014年6月、施行されたのはその年の11月でしたから、2015年度は施行後最初の年度でした。それだけに過労死・過労自殺がどういう状況になっているか注目されていました。

図1に示したように2015年度の労災請求件数は、過労死(脳・心臓疾患)が795 件で前年度比32 件の増(うち死亡事案は283件で41件の増)となっています。また過労自殺(精神障害)は1,515 件で前年度比59 件の増(うち死亡事案は199件で14件の減)となっています。

過去数年を見ると、労災請求件数は、過労死では高止まりで推移していますが、過労自殺では13年度、14年度、15年度と3年度連続で過去最高を更新しています。過労自殺は全年齢層で増えているとはいえ、過労死と比べると、比較的若い世代で多発している点で特別に深刻な問題をはらんでいます。

いずれにせよ防止法の施行によって過労死・過労自殺への関心が高まり請求件数が増えた可能性はあるかもしれませんが、施行後の取り組みによって過労死・過労自殺(死亡事案以外を含む)が減少に転じたと言えるような兆候は見出せません。

労災認定率(年度内に「業務上」か「業務外」かの決定が出た件数に占める労災支給件数の割合)は、前年度比で過労死が43.5%から37.4%(うち死亡は49.4%から39.0%)に、過労自殺が38.0%から36.1%(うち死亡は47.1%から45.4%)になっており、それぞれ少なからず下がっています。この事実は、もともと「高い壁」と評されてきた過労死・過労自殺の労災認定が、防止法施行後、前より容易になったどころか、むしろ困難になっていることを示唆していると解釈することもできます。

業種別には2015年度の過労死の労災請求件数で最も多いの道路貨物運送業です。図2に見るように、2011年度から2015年度の5年間の累計をとっても、過労死の最も多いのはやはり道路貨物運送業です。道路旅客運送業も第4位で過労死多発業種であることがわかります。運送業は図2で2位と6位に挙がっている建設業とともに36協定における時間外労働の延長の限度時間が適用除外になっている業界です。便宜的に設けられている拘束時間、休息時間、運転時間などに関する「改善基準」は、過労死ラインを超える時間外労働を容認しており、まやかしでしかありません。

過労自殺で2015年度の労災請求件数が最も多い業種は「社会福祉・介護事業」*です。図3で過去5年間の累計を見ても、社会福祉・介護事業が突出しています。安倍内閣は親や家族の介護のためにやむをえず仕事を辞める「介護離職」をなくすと言っています。しかし、介護職場が長時間過重労働と低賃金を絵に描いたような酷い状況にあり、介護労働者の離職率が著しく高いために、介護施設は深刻な人員不足に陥っています。緊急に改善措置を講じなければ、介護労働者も介護施設利用者も救われません。

運送業や介護事業にかぎらず異常な長時間労働がはびこっている現状を変えないかぎり過労死・過労自殺をなくすことはできません。そのためにも時間外労働(残業)の上限規制や、仕事と仕事の間に最低の必要休息時間(EUでは11時間)を確保するインターバル規制を導入するための法改正が求められています。

*厚労省の資料では「日本標準産業分類」の「社会保険・社会福祉・介護事業」とされています。ここの分類は社会福祉・介護事業に関連する社会保険関連事業も含んでいますが、ここではわかりやすく「社会福祉・介護事業」と表記しました。なお、福祉・介護分野にかぎらず「公務災害」として取り扱われる公務労働者の過労死・過労自殺は厚労省の労災関連資料の対象になっていません。

 

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今回は脱線して、NHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」に関連した話をすることをお許しください。今週のあらすじを見ると、1941年の太平洋戦争突入後、ヒロインの常子が勤める出版社も一段と厳しい言論統制におかれるようになります。深川の木材商は個人営業が禁止され、材木問屋の青柳商店を営む祖母の滝子は陸軍の統制下に入るという苦渋の決断をするそうです。

このことを知って、戦時中に戦後の新制国立大学の経済学部の前身である高等商業学校(旧高商)で「商業」の看板を掲げることが禁止された歴史を想い起こしました。

以下は関西大学経済学部の100周年記念誌(2004年)にあらまし書いたことですが、高商や商科大から 「商業」が一斉に排除されたのは1944(昭和19)年3、4月です。その法的根拠になったのは、1943(昭和18)年10月12日閣議決定の「教育ニ関スル戦時非常措置方策」と、それを受けた同年12月21日閣議決定の「教育ニ関スル戦時非常措置方策ニ基ク学校整備要領」です。

前者は、冒頭に「現時局ニ対処スル国内態勢強化方策ノ一環トシテ学校教育ニ関スル戦時非常措置ヲ講ジ、施策ノ目標ヲ悠久ナル国運ノ発展ヲ考ヘツツ、当面ノ戦争遂行力ノ増強ヲ図ルノ一事ニ集中スルモノトス」という方針を掲げています。そして、国民学校、青年学校、中等学校などについて教育内容を「生産ノ増強、戦力ノ増進ニ資スル」ものに「刷新」することことに関連して、「男子商業学校ニ就テハ昭和十九年度ニ於テ工業学校、農業学校、女子商業学校ニ転換スルモノヲ除キ、之ヲ整理縮小ス」としています。

後者は、さらに「高等商業学校ニ付テハ一部ハ之ヲ工業専門学校ニ転換シ其ノ他ハ生産技術ヲモ修得セル工業経営者ヲ養成スベキ工業経営専門学校(仮称)又ハ従来ノ高等商業教育ノ内容ヲ刷新シタル経済専門学校(仮称)トス」としています。これは、高商を、工業専門学校、工業経営専門学校、経済専門学校に改称・改編せよという指令だと読めます。

ウィキペディアの「高等商業学校」の項をみると、「官立高商のうち高岡・彦根・和歌山の3校は工業専門学校に転換(彦根・和歌山は戦後経専に再転換したが、高岡は工専のまま廃校となった)、その他の高商はすべて経済専門学校(のちの経済学部)に改称され、東京商科大は東京産業大、神戸商業大は神戸経済大に改称された(前者は戦後の1947年、東京商大の旧称に復した)。 結局、市立の大阪商科大を例外として、全ての官立商大・高商の校名から「商」の文字が消えた」という説明があります。官立だけでなく私立も同じような改称・改編を余儀なくされたようです。

例外的に改称を免れた大阪商大も1944年4月に高等商業部を「大阪工業経営専門学校」変えさせられています。大阪商大の名が残ったのは、凶暴な軍部といえども、商都大阪の「商」を完全否定はできなかったということでしょうか。

戦争末期に「商業」が排斥されたのは、すでに戦時統制下で流通が配給制になっていたなかで、軍部が自由を志向する「商業」を徹底的に嫌い、商業無用論を唱え、高商を目の敵にしたからだと考えられます。大学時代の恩師からは「商いは武士(もののふ)の心にもとる」という理由で排斥されたと聞きました。

1944年3〜4月に実施されたこの廃商強制はもっと語られていい負の歴史だと思います。にもかかわらず、ほとんど語られていないのは、おそらく当時は軍事教練や学徒動員で大学自体が圧殺されていたという事情があって、当時の人々も関係者以外は知らず、戦後は忘れられたからではないでしょうか。

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過労死防止大阪センターの先日の幹事会で、安倍内閣の「一億総活躍プラン」(以下、一億プラン)のなかの「勤務間インターバル」が話題になりました。

安倍政権が参院選の看板政策として打ち出した「一億総活躍プラン」は何でもありの「総花プラン」です。また、法制度的実効性を欠いている点でも、財源の裏付けがない点でも「絵に描いた餅」の域をでません。そのことについては次回以降に述べることにして、今回は、プランのいう「勤務間インターバル」がどういうものか見てみましょう。

本年5月18日に「一億総活躍国民会議」に提出された「ニッポン一億総活躍プラン(案)」は、「長時間労働是正や勤務間インターバルの自発的導入を促進するため、専門的な知識やノウハウを活用した助言・指導、こうした制度を積極的に導入しようとする企業に対する新たな支援策を展開する」と言っています。これは労働基準法について「労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる36(サブロク)協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する」と言っていることと合わせて注目されます。

この二つは過労死防止大綱を策定する「協議会」でも議論されたことです。政府が「勤務間インターバル制度の導入」と「36協定における時間外労働(残業)の限度時間の見直し」に踏み込むとすれば、これまでの規制緩和一辺倒の労働行政を規制強化の方向に大転換するものと評価できますが、残念ながら手放しで肯定できないのが安倍内閣の働き方改革です。

注意すべきは「勤務間インターバールの自発的導入」という表現をしていて、「勤務間インターバル制度の導入」とは言っていないことです。これがまともな制度と言えるには少なくとも以下の6つの要件が必要です。

〜案の勤務の終了から翌日の勤務の開始まで最低必要休息時間が確保されること。
∩艦働者に適用される一般法として定められること。
K‥強制力のある規制であること。
は働時間が適正に把握されていること。
ツ蟷勤務が原則で、残業は臨時的・例外的な超過勤務に限られること
Γ影ないし1週間の最長労働時間規制と一体で適用されること。

一億プランのインターバルはこれらの要件のいずれをも欠いています。政府が言い始めたインターバルは、厳格には「制度」ではありません。せいぜい労働時間の決定を「労使自治に委ね」、勤務間隔を労使協定で定めた企業には奨励策を講ずるというものです。これには規制力はありません。労働時間の適正把握の義務化も、全労働者への適用の義務化もありません。

最近ではよく知られているように、EU(ヨーロッパ連合)加盟国は、法的強制力をもつ労働指令で、勤務間インターバル規制を定め、「24時間につき最低連続11時間の休息時間」を義務化しています。たとえば定時が9時〜5時のとき、残業で例外的に午後11まで働いたとすると、11時間のインターバルをはさんで、翌日は午前10時までは就業させてはなりません。そのために賃金がカットされることはありません。

最低11時間の休息が確保されなければならないという規定は、最低休息時間は食事・入浴・排泄・身繕い・睡眠などの最低生活必需時間に制約されているという知見をもとにしています。新聞を読む、テレビを観る、ネットを利用するなどの精神的欲求を充足するために最低限必要な時間をも考慮すると、11時間の休息では睡眠時間が6時間を下回ることもあるかもしれません。それでも日本のように深夜帰宅・早朝出勤が連日続くということは、EUではよほどの例外でないかぎりあり得ないことです。

ところで厚労省(みずほ情報総研)の「過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業報告」に「勤務間インターバル制度導入状況」の調査結果が出ています。この調査の質問では「勤務間インターバル制度」をEUの例で説明しています。

しかし、この調査における「勤務間インターバル制度」という表現は不適切です。企業福祉的な福利厚生では社内だけに通用する取り決めも「制度」という場合がありますが、ふつう社会政策では法的仕組みをもって制度といいます。法定労働時間やホワイトカラー・エグゼンプションなどの労働時間制度も、法的仕組みとしての制度です。その意味からいうと先の調査における「勤務間インターバル制度」は紛らわしい表現です。質問は正確には「勤務間インターバルの確保に関する労使協定」というべきでしょう。

先の情報総研の報告書によれば「勤務間インターバル」を自主的に導入している企業の割合は1743社中2.2%(38社)でした。導入企業のうちの間隔時間は、「7 時間超8 時間以下」が28.2%で最も多く、次いで「12 時間超」15.4%、「11 時間超12 時間以下」が12.8%ででした。5時間以下も7.7%あります。5時間以下で睡眠時間をどう確保せよというのでしょうか? なお「勤務間インターバル」を導入していない場合の今後の導入意向については、「導入する予定である」はわずか0.4%にとどまっています。

労使協定でも勤務間インターバル規制の導入は、労働組合に規制力があり、かつEUの労働指令並みの休息時間が確保されるならば、前進的な取り決めとして評価できます。組合サイドの「勤務間インターバールの導入」運動もそういう立場から進められるべきでしょう。その場合も立法措置を含む制度化の要求を掲げることが肝要です。

次回以降では必ずしも毎回ということではりませんが、一億プランの主要項目を見ていきます。36協定の見直しもそこで取り上げる予定です。

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過労死を考える全国家族の会と過労死弁護団全国連絡会議の運動が実って、2014年6月、「過労死等防止対策推進法」(略称・過労死防止法)が成立し、同年11月1日から施行されました。それとともに、法にもとづいて厚生労働省に設けられた「協議会」を経て、2015年7月には「過労死防止対策大綱」(「過労死等の防止のための対策に関する大綱 〜過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ〜」)が閣議決定されました。

法の制定にともない、11月を中心に厚労省および都道府県労働局と民間の過労死防止団体とが協力・連携して、全国各地で過労死防止のシンポジウムや啓発集会が行われるようになりました。また、過労死の総合的で本格的な調査研究がはじめて国の責任で行われることになりました。それらの成果の一部は、近く厚労省から公表される「過労死防止白書」(過労死等防止対策に係る年次報告)に盛り込まれています。

こうした国の取り組みと並行して、民間でも過労死(過労自殺および過労疾病を含む)に関する調査研究を行い、その成果を過労死の効果的な防止のための対策に生かすことを目的に、「過労防止学会」が結成され、2015年5月23日(土)午後、明治大学駿河台キャンパスで第一回大会が開催されました。会員は現在約230名で、学際的、分野横断的に、過労死被災者の家族、勤労者のいのちと健康に関心をもつ医師、研究者、弁護士、活動家、ジャーナリスト、その他本会の目的に賛同する個人から構成されています。

昨年行われた結成大会の記念シンポジウムでは、「急がれる過労死の調査研究と防止対策――いま何が問われているか」をテーマに、寺西笑子会員(過労死家族)、熊沢誠会員(社会政策)、加藤敏会員(精神科医)が報告を行い、ノース・スコット会員(労働社会学)、岸玲子会員(産業医学)、西谷敏会員(労働法)、東海林智会員(ジャーナリスト)が討論に立ちました。

今年の大会は、関西大学千里山キャンパス(経済学部)を会場に開催されます。第1日目の5月21日(土)午後は過労死国際シンポジウムがあります。このシンポでは、日本、韓国、フランスの専門家が「過重労働による健康障害と労働時間規制」をテーマに報告します。日本以外の報告には通訳がつきます。

日  本: 天笠 崇さん 代々木病院精神科医師 
  精神医学から見た日本の過労自殺対策と過労死防止法
韓  国: イム・サンヒョクさん 労働環境健康研究所所長
  韓国における過労死問題の現状と課題
フランス: セバスチャン・ルシュバリエさん 国立社会科学高等研究院教授
 フランスの週35時間制:時短の一方で労働強度の増大と作業組織の再編で高まるストレス

第2日目の22日(日)午前は、四つの分科会−−第1分科会:道路旅客運送業の労働実態、第2分科会:教員の過重労働と公務災害、第3分科会:ホワイトカラーの労働時間管理、第4分科会:若者の過重労働−−が開かれます。22日午後は、共通論題で、「過労死防止法・大綱と労働時間の制限・短縮」について報告と討論が予定されています、

過労死とその防止に関心のある方はこの機会にぜひご入会ください。年会費は一般会員5,000円、労死遺家族・大学院生・学生会員2,000円です。未入会あるいは非会員の方のご参加も歓迎します(資料代および大会準備費として当日受付で参加費1000円をいただきます)。

詳細に関しては http://www.jskr.net/annnai/514/をご覧ください。プログラムもここにあります。 

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4月4日のNHKニュース(首都圏)は、新潟県の北越銀行がこの春就職したばかりの新入社員69人を研修目的で上越市の自衛隊駐屯地に3日間の体験入隊をさせたと伝えています。これは規律の厳しい自衛隊で集団行動の大切さを学び、学生気分から抜け出し、社会人としての一歩を踏み出すために行われるのだそうです。

新入社員の自衛隊研修はめずらしいものではないのに、なぜいまニュースになるのでしょうか。3月29日に戦争法が施行され、自衛隊が殺し殺される軍隊になってからの最初の新入社員研修だったからではないかと推測されます。しかし、先のニュースは奇妙なことにそのことにはまったく触れていません。ニュースを文字で読んで印象に残るのは、NHKが新入社員の自衛隊研修にまったく無批判であることです。

昨年9月16日の「しんぶん赤旗」によると、2014年度の1年間に企業研修で自衛隊に体験入隊した労働者は1万3041人のぼるそうです。防衛省が共産党の吉良よし子参院議員事務所に回答したものです。同じ記事は、防衛省が2013年に、民間企業の新入社員に対する2年間の自衛隊入隊制度を検討していたとも伝えています。

企業の社員研修は、業務に関係するものと、関係ないものとに大別されます。銀行員の自衛隊研修が銀行の業務に無関係であることはいうまでもありません。銀行に限らず企業は、新入社員に「社会人」としての「自覚」を持たせることは業務遂行に必要だと言うかもしれません。

私がYou Tubeで見た陸上自衛隊下志津駐屯地の取材報道では、2泊3日の日程で、千葉県内3企業の79人の新入社員が迷彩服を着て軍靴を履き、怒声が飛ぶ中で、基礎教練や行進訓練をさせられていました。2日目のように早朝から深夜に及ぶ研修は、たとえ昔の日本軍のようにビンタやリンチがないとしても、「しごき研修」あるいは「スパルタ研修」と言えます。

企業による「しごき研修」は、古くは寒冷の五十鈴川での「みそぎ研修」のような例が知られています。ネットには餃子の王将が、神奈川県の山中にある施設で、軍隊のような生活を5日間送る「ブラック研修」を行っていたという情報も出ています。

それにしても企業はなぜわざわざ自衛隊で新入社員研修を行わせるのでしょうか。費用が安く、食事代やその他の経費を入れても1人1日2000円ほどで済むからです。業者に委託すればおそらくその何倍もかかるでしょう。また、自衛隊にとっては社員研修の受入は広報活動の一環でもあるからです。自衛隊に対する抵抗感をなくしたり、隊員募集への理解を広めたりするために、国費による出血サービスの研修を行っていると考えられます。

ごり押し戦争法の影響で、自衛隊員の応募者数が減少しています。また、防衛大学校を卒業しても自衛官にならない任官拒否者が増えています。このように自衛隊はいままで以上に「嫌われる軍隊」になってきていますが、そうなればそうなるほど、さまざまなルートを通じた自衛隊の売り込みも強まっていると言わなければなりません。それだけに、いま止めなければ自衛隊に研修に行かされる労働者は1万人台にとどまらず、2万人台あるいは3万人台に増える心配もあります。また、2〜3日の研修ではなく、徴兵制並みに2〜3年入隊し、銃を持っての行進や射撃訓練もさせられるということもありえるかもしれません。そうした徴兵制への地ならしにつながる恐れのある新入社員の自衛隊研修は見過ごせない大問題です。

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岸-金堂玲子・森岡孝二編著、ミネルヴァ書房、2016年3月刊行、321頁、3,400円+税

今日、働く人びとの労働と雇用が深刻な困難に直面し、健康と安全が大きく脅かされている。「健康・安全で働き甲斐のある職場をつくる」課題は、日本社会の発展や持続性、日本の将来のあり方にも直結する重要な課題である。日本学術会議では、医学、保健学に加えて労働法学や経済学、工学など多様な分野から専門家が参画し、労働に関連した健康・安全問題について、海外の動向を含めて広く検討し、2011年4月に「提言」としてまとめた。また、その内容は、2012年4月から14年3月にかけて24回にわたり月刊雑誌『公衆衛生』(医学書院)に連載された。

本書は、上記の提言と連載に関わったメンバーのほかに新たに書き手を得て、最近の社会状況の変化を踏まえ内容を拡充・刷新し、わかりやすく解説したものである。それだけに本書は、当事者である働く人、産業保健専門家、公衆衛生行政や労働行政に携わる方、高校・大学でキャリア教育に携わる方、経営者および労働者諸団体など、広範な人びとに役立つと同時に、現場での問題解決に有効で、かつ近未来の確かな羅針盤になるであろう。

[ここがポイント]
◎ 日本学術会議がまとめた提言を拡充しわかりやすく解説。
◎労働・雇用環境をめぐる最新の話題を提供。

<目次>
序章 労働雇用問題がなぜ現代日本で最重要課題なのか―過去100 年の歴史を遡り考える 岸-金堂玲子
第吃 今,雇用の場で何が起こっているか?――働く人の実態
第1章 現代日本の長時間過重労働の実態とその背景 森岡孝二
第2章 過重労働と過労死をいかに防止するか 森岡孝二
第3章 ブラック企業の雇用実態と労務管理戦略――労務管理と技能の階層差の視点から 今野晴貴
第4章 非正規雇用労働者の安全・健康・権利 矢野栄二
第5章 非正規雇用――労働法から見た問題点と今後の解決の方向性 和田 肇

第局 職場の環境安全問題とリスク管理・マネジメント
第1章 日本の労働安全衛生統計・調査と予防活動 小木和孝
第2章 危険有害な労働環境の現状と今後の改善方策 久永直見
第3章 産業環境の変化と労働災害管理システム―建設プロジェクトにみる労働環境改善への取り組みについて 草柳俊二
第4章 放射線作業者の健康と健康リスク管理 武林 亨
第5章 公害から見た労働者災害―アスベスト災害を中心に 宮本憲一

第敬 労働と関係する病気の予防と働く人の健康増進
第1章 労働関連疾患としての循環器疾患,糖尿病,不眠症などの実態,予防対策 吉岡英治/西條泰明/ 岸-金堂玲子
第2章 印刷労働者の胆管がん多発はなぜ起こったのか―化学物質による健康障害を防止するために 熊谷信二
第3章 職場のメンタルヘルス―現状と課題 川上憲人
第4章 これからの職場のメンタルヘルス対策第―1 次予防への新しいアプローチと職場復帰への支援 川上憲人
第5章 女性労働者の健康と安全 北原照代/岸-金堂玲子
第6章 働く高齢者の健康・安全―現状と課題 神代雅晴

第孤 これからの職域保健サービスのありかた―重要な専門職の役割
第1章 労働安全衛生法体系と自主的改善のありかた 小木和孝
第2章 産業医制度の歴史・現状・課題 堀江正知
第3章 産業看護職【制度】の歴史と課題 五十嵐千代
第4章 オキュペーショナルハイジニストの重要性―日本でどう育てるか? 橋本晴男
第5章 それぞれの職場における産業技術職の活動・位置づけと教育訓練 酒井一博
第6章 中小企業・小規模事業所における産業保健活動―現状・課題と今後の方策 柴田英治
第7章 地域における産業保健活動の現状と課題,方策 宮下和久

第紘 新しい取り組みの強化―世界の潮流を踏まえてどのような改革と改善を進めるか?
第1章 未来の労働者の健康・安全・生活を守るために 森岡孝二/久永直見
第2章 国際労働基準の日本での批准状況 吾郷眞一
第3章 企業の労働CSR強化の方向性と労使関係の今後の在り方―真に社会的パートナーになりうるには? 吾郷眞一
第4章 子育てと仕事の両立の現状と課題―ワークライフバランスと家庭生活・健康の向上に向けて 小林章雄
第5章 税・社会保障一体改革により,「逆機能」の解消を 大沢真理
終 章 日本学術会議提言が実効あるものになるために―生活に根ざした改革のグランドデザインを 岸-金堂玲子

資 料: 日本学術会議 労働雇用環境と働く人の生活・健康・安全委員会「提言 労働・雇用と安全衛生に関わるシステムの再構築を―働く人の健康で安寧な生活を確保するために」

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