朝日DIGITAL 2017年7月12日

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政府が導入をめざす働き方(図表省略)

国会で2年以上もたなざらしになっていた「高度プロフェッショナル制度」を含む労働基準法改正案が政労使が合意したうえで再提出される運びとなった。「残業代ゼロ法案」と強く批判してきた連合が一転、修正を条件に容認に転じたためだ。制度が実現する可能性が出てきたが、連合執行部の唐突な「方針転換」に身内から異論が相次いでいる。

「残業代ゼロ」政府案修正へ 連合の要請を反映

同制度は、専門職で年収の高い働き手を、労働時間の規制から外す新たなしくみだ。対象となる働き手は、残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が全く支払われなくなることから、連合や野党は「長時間労働を助長する」と強く反発。連合が法案の取り下げを求め、改正案は2年以上も審議すらされなかった。

こうした中、政府が3月にまとめた「働き方改革実行計画」に、国会に提出済みの労基法改正案の「早期成立を目指す」ことが明記された。昨年9月に始まった「働き方改革実現会議」で、同制度についてはほとんど議論が交わされなかったにもかかわらずだ。

連合は、実行計画に盛り込まれた残業時間の罰則付き上限規制を「70年の労基法の歴史の中でも最大の節目になり得るもの」(神津里季生〈こうづりきお〉会長)と評価。一方で、同制度の導入も含めて労基法を改正したい政府との意見のずれを埋める必要に迫られていた。唐突な方針転換について、「連合はけりをつける必要性に迫られていた」と厚生労働省幹部は明かす。

■傘下の労組・民進は困惑

連合はなぜ、方針転換に踏み切ったのか。

政府が同制度を盛り込んだ労基法改正案の成立に強い意欲を示し、今秋の臨時国会で審議入りする可能性が高まるなか、その前に働き過ぎを防ぐしくみを制度に反映させた方が「実がとれるとの判断に執行部が傾いた」(連合幹部)との見方が出ている。

だが、法案の修正を求めたうえで制度の導入を容認する兆しは今春からあった。3月にまとまった「働き方改革実行計画」を受けて連合が発表した談話で、逢見(おうみ)直人事務局長は国会に提出済みの労基法改正案について「是正が不可欠」と言及していた。この時点で「連合はルビコン川を渡った」と関係者は指摘する。

ただ、方針転換の表明はあまりにも唐突だった。執行部は政府や経団連と水面下で調整をつける一方で、組織内の根回しは直近までほとんどしていなかった。

連合の事務局から傘下の主要産別の幹部に伝えられたのは今月8日。関係者によると、事務局側は「労働側にとって有利な条件を得るために動き出した」と説明。政府や経団連と話し合いをしていることも明らかにしたという。

ただ、8日の会議では傘下の主要産別の幹部から異論が相次いだ。「高度プロフェッショナル制度への反対を確認していたのに、組織にどう説明すればいいのか」「なぜ内部で深く議論せずに結論を急ぐのか」

11日には、急きょ追加の説明をする会議も開かれた。ここでも「組合員に説明がつかない」といった声が出たという。

同制度の導入に反対してきた民進党にも戸惑いが広がる。大串博志政調会長は11日、記者団に「政党としての態度は変わらない。制度の本質が変わらなければ、賛成するのは難しい」と話した。(贄川俊、千葉卓朗)