脇田滋の連続エッセイ - 第17回 BBCが世界に伝える日本の外国人労働者問題

第17回 BBCが世界に伝える日本の外国人労働者問題

2019/8/26 23:45

BBCが世界に伝える日本の外国人労働者問題

 平野啓一郎さんのTweetで知った、BBC Japanのニュース動画(日本語字幕付き)を見た。
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2019.8.26視聴時間 08:24
日本で「搾取」される移民労働者たち
低賃金で長時間働かされた――。日本で「搾取」されたと訴える移民労働者たちをBBCが取材した。世界的服飾ブランドの服を作っていた人や、自殺を図った人もいた。
BBC News Japan


https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57445?utm_source=newspicks&utm_medium=feed&utm_campaign=link&utm_content=title
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 動画の内容は、この7月、大阪で開かれた労働法の研究会で聞いた話とほぼ重なっている。研究会では、日本で働くベトナム人労働者を支援してきた研究者から、きわめて実際的、実践的な報告を受けた。最賃を下回る低賃金、長時間労働、自由の束縛、セクハラ・性暴力など、余りにも酷い実態に驚かされた。不自由な日本語、在留資格、母国で抱えた借金など、弱い立場に置かれた外国人労働者たち。その弱い立場につけ込み、過酷な労働環境で働かせて搾取する人権侵害の数々。若い世代の報告者自身が体験した話を基に、現在日本の雇用社会の紛れもない現実が浮かび上がった。

 外国人労働者と言っても、とくに韓国、中国、ベトナム、フィリピンなど、アジア諸国出身の労働者が差別的に搾取や人権抑圧の対象となってきた。朝鮮半島出身の「徴用工」問題も、そうしたアジア出身者への差別という点で問題になる。アメリカ人やヨーロッパ人も日本国内で就労しており、制度的な不備から問題がない訳ではないが、それと比べるとアジア出身者への差別的処遇には余りにも劣悪な場合が少なくない。

 私が、研究会での話を聞いたときに感じ、この動画を見て改めて思ったのは、次の4点である。

 第一は、マスコミでの報道や議論が余りにも少ないことである。深刻な外国人労働者をめぐる差別と人権無視という事実があるのに日本のマスコミは何故報道しないのか、いったい何をしているのかという疑問である。イギリスのBBC放送が、わざわざ日本に来て取材し報道している。NHKや民放にも多くの報道番組があるのになぜ報道しないのか強く疑問に思う。日本のマスコミも深刻な労働実態を報道するべきである。

 第二は、外国人労働問題も、あくまで本質は労働問題だと思う。「外国人は別だ」と考えるべきではない。日本国憲法の下では外国人にも基本的人権を平等に保障する。戦後の世界では、日本だけでなく、労働法や社会保障法では「内外人平等」が原則となっている。労働基準法第3条は、国籍による差別扱いを明文で禁止している。これは、労働関係における「内外人平等」を確認したものであり、労働・社会保障分野では外国人差別は許されない。これは必ずしも常識となっておらず、誤解の多い点である。労働者としての権利よりも、国籍区別を重視する考え方が依然として根強い。むしろ、最近になって、日本だけでなく世界各国でも外国人への冷たい対応が広がっているので、「内外人平等原則」の意義を強く訴えたい。

 第三は、現在、大きな焦点となっている「徴用工」には多様な側面があるが、その中の一つは労働者の人権を尊重していないことである。現在の外国人労働者も、過去の徴用工も、労働者の人権を尊重しない使用者の下での働かせ方という点で共通している。そうした労働人権は、人権保障がはるかに遅れていた第二次大戦中には、現在より酷い形で行われていたと考えられる。
1947年制定の労働基準法は使用者による差別禁止(第3条)、強制労働禁止(第5条)、中間搾取禁止(第6条)を規定した。これらの規制が必要であったのは、それ以前は、深刻な人権侵害の労働環境があったからである。
現在の外国人労働者も、労働者としての人権問題が、「外国人の弱い立場だから対抗できないだろう」と考える、悪徳使用者によって、きわめて露骨に現れているのだと思う。

 第四に、「徴用工」問題については、上記の労働者の人権尊重という面とともに、とくに、日本国憲法制定の意味からも考えるべきだと思う。
つまり、戦前のナチス・ドイツは、ユダヤ人をはじめ、ポーランド、イタリア等で、生命、自由、財産を奪う蛮行を行った。それらを許されないことであったと認め、その深い反省に基づいて、戦後、再出発した。それがドイツが国際社会に再び受け入れられる前提になった。戦後制定されたボン基本法は外国人を含めて、自由、平等、人権を保障することを約束して民主国家になることを国内外に約束する証(あかし)であった。日本国憲法も、大日本帝国時代の軍国主義や人権抑圧を改めることを国内外に約束する証(あかし)として制定された。それによって東アジアを含む国際社会に復帰することを認められたのである。

 過去の「徴用工」問題を無視・軽視したり、現在の外国人労働問題を深刻な問題と考え議論しないのであれば、どんなに「お・も・て・な・し」と口先で言っても、「過去も現在も労働人権を尊重しない日本」になってしまう。そうであれば東アジア諸国だけでなく全世界からの日本への厳しい眼差しは、より厳しさを増すことになるだろう。

 

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