脇田滋の連続エッセイ - 第20回 「労働法のない世界」で働く医師たち

第20回 「労働法のない世界」で働く医師たち

2019/8/31 19:05

 「労働法のない世界」で働く医師たち

「労働情報」9月号が届きました
労働情報No985(2019年9月号)に寄稿しました。「労働情報」は、各地の労働問題に関する貴重な情報を提供する雑誌です。

 9月号の「特集 告発!無給医問題」は、次の記事を掲載しています。

〇全国医師ユニオン 声を出さない医師たち(植山直人)
〇当事者たちの声 
〇無給医ホットライン 不利益おそれ権利行使ためらう 無給ゆえに長時間労働の実態も(竹村和也)
〇労働法の視点から 明らかな労働者性 団体行動と連帯が不可欠(脇田滋)

(朝日新聞2019年6月29日)

 私の記事は、医師も労働法が適用される「労働者」であることを指摘し、若い医師が過労によって死亡した関西医大研修医事件、鳥取大学病院事件を紹介して、労働法的な問題点を指摘しています。

医師と労働法

 かつて国立大学の法人化の際に、ある大学の組合に呼ばれて学習会で講演したことがありました。「医師にも労働基準法が適用され、原則、法定時間を超える長時間労働はできない。例外的に36協定締結などの要件を満たさないと違法だ」と話しました。
すると「大学病院の現在の働き方では法違反になってしまう。どうしたら違法とならないのか」という質問が異口同音に出たことがありました。長時間労働の現実を改める必要を指摘した積りでしたが、現状を変えるのは無理だという前提での質問ですので、納得してもらうのは大変だと思ったことがあります。
労働法的には大学病院の勤務医に「労働者性」があるのは明白ですが、きわめて専門性の高い医師の多くは自身が労働者であると思っていないと感じました。
この8月4日に参加した医師の働き方をめぐる研究会で、医学部教育の中で「労働法」の話を聞く授業はほとんどないこと、ドイツ、イギリスなどと違って、日本では医師の労働組合加入はきわめて少数であることなどの現状を知りました。

患者にとっても、人間らしい医師の働き方が重要

 若い時にはほとんど大きな病気をしなかった私も、定年退職後は入院や通院を繰り返して何とか健康を維持できています。まさに、医療サービスのおかげだと実感します。患者の立場からも医師、看護師をはじめ医療従事者が過労で倒れるのは大いに困ることです。
「無給医」が数多く存在し、医師の過労死も少なくないのが日本の医療界の現状です。まさに、医師の世界は「労働法のない世界」と言える状況です。ドイツでは、医師が労働組合を通じて自らの労働条件改善を求め大きなストライキもあったとのことです。労働法の視点からだけでなく、医療の安全や医療サービスの保障という患者・住民の視点からも「医師の働き方改革」が重要です。
医師ユニオンが長年、医師の働き方を改めることを問題提起してきました。しかし、現在、厚労省が進めているのは過労死認定基準の約2倍に当たる長時間労働をも可能とし、異常な現状を追認する方向です。これでは問題の解決にはなりません。
社会全体で医師の長時間労働の現実について正確な認識を共有し、それに基づく議論を急いで広めていくことが必要だと思います。労働法学の世界でも医師の問題を本格的に検討する必要があると思います。マスコミも、政府の情報を無批判に垂れ流すのではなく、しっかりと取材をして医師の働き方の現実を伝えることが必要だと思います。

 

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