脇田滋の連続エッセイ - 第33回 テレ朝の派遣切りを許してはならない

第33回 テレ朝の派遣切りを許してはならない

2020/1/10 23:39

テレ朝の派遣切りを許してはならない

テレビ朝日が報道ステーションを長年支えてきた、経験豊かなスタッフを大量排除した。※
※テレ朝「報ステ」で大量派遣切り…年の瀬に非情な通告が (2019/12/24) http://hatarakikata.net/modules/hotnews/details.php?bid=1815

この非常な「派遣切り」は、決して許してはならない。派遣社員は長期に働いても「外部社員」として、派遣先は「痛みなく」事実上の解雇をしたが、形式は派遣契約打切なので、解雇の責任を問われない。テレビ朝日は、報道機関なのに長く働いて番組を支えた多くの人を「ぼろ切れ」のように排除したのである。

日本社会で不安定雇用が広がって既に4割に達するまでになり、社会的格差が広がり、若い世代は安定雇用につけず、氷河期世代と呼ばれ、苦しんでいる。結婚、出産、子育てを放棄する人々が増加し、少子化が進み、社会保障の基盤も壊れつつある。報道機関=社会の公器として、このような多くの社会問題を掘り起こして提起をするのが放送会社、しかも報道番組の基本的な役割のはずだ。そんな放送会社が利潤を優先して「悪法」を使って、働く人の雇用や生活を簡単に踏みにじることが許されるのか?そんな姿勢で、まともな報道ができるのか?社会的な問題を提起ができるのか?報道機関=社会の公器が、何たる不正義なことをするのか!

1985年制定の労働者派遣法は今年で施行35年目に入った。しかし、「偽装請負を排除し、ルールに従わせるため」とか、「企業に縛られない自由な働き方を保障する」とか、もっともらしい「口実」で作られた派遣法だが、その役割は、34年間、日本の社会、とくに雇用社会の劣化を進める営利企業のための道具でしかなかった。反労働者的な、企業のための法律でしかないことが、今回の事件で改めて明らかになった。

派遣法は、施行34年間、日本の労働法体系を壊し雇用破壊、労働者分断、団結破壊、差別拡大のための法律として、働く人の権利や利益を踏みにじる手段となってきた。まさに、私が警告し続けてきた通り「毒の缶詰」である。既に多くの害毒が雇用社会に流れ出し、日本社会全体を蝕ばもうとするまでになった。

公務部門でも、派遣労働が広がっている。大阪市の区役所でも戸籍などの住民に密接な部署は、公務員ではなくパソナの派遣社員が担当している。京都市なども民間委託を進めようとしているが、その多くが派遣やそれと実体が変わらない請負形式である。安倍政権が重用する竹中平蔵氏(パソナ会長)は「官から民へ」を叫び、民間委託を推進するが、それは派遣業の業域=利潤確保が目的である。住民サービスを公務員でなく、不安定・劣悪雇用の派遣労働者に置き換えている。住民にとっても、質の良いサービスを受けるためには、住民の声をしっかり聴ける、安定した雇用の保障があって長く豊かな経験を積める担当者でなければならない。

今からでもできるだけ急いで「毒の缶詰」に蓋をかぶせて、その毒を弱め、速やかに「缶詰」=派遣法を廃止しなければならない。

韓国では日本とは違って派遣や用役などの「間接雇用」の弊害を縮小する方向で、大法院の判決、国家人権委員会の勧告が出されている。この20年間、派遣法を批判し続け、その廃止のために闘ってきた「民主労総」が急速に組合員を増やしついに「第一労総」になった。

ECの2008年「派遣労働指令」は、派遣労働者と派遣先正社員との均等待遇=「非差別原則」を命じた。EU諸国では、日本のような派遣労働者の身分的差別的劣悪労働条件は許されない。また、派遣は一時的労働(temporay work)であり、長期の「一時的労働」はあり得ない。テレビ朝日のように10年もの長期の派遣労働はEUではあり得ず、許されない。当然に、派遣先に直接雇用=正社員化されることになる。

国際的に日本の派遣法は、相次ぐ改悪の結果、世界標準とは乖離した、あまりにも異常な「日本的派遣労働制度」を作り上げてしまった。こんな派遣労働制度がある限り、日本では「人間らしい労働(decent work)」を実現することは不可能である。すみやかに廃止すべきである。真剣に社会的に議論を広げるべき時点に達している。

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第11回 KBS労組「無期雇用化闘争パンフ」を読んで
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