ヨーロッパが導入する新型コロナウイルスとの戦い方は「労働者に給料を払って、家にとどまってもらう」
https://www.businessinsider.jp/post-210080
Joseph Zeballos-Roig Mar. 30, 2020, 04:30 AM POLITICSフランス、リヨン。
Associated Press新型コロナウイルスが、世界経済に深刻なダメージを与えている。経済活動がストップする中、労働者階級の人々は最も職を失うリスクにさらされている。
ヨーロッパでは、デンマーク、オランダ、イギリス政府が自宅にとどまって何もしていない労働者に、その家計を救うべく報酬を支払うことにした。
デンマークでは、労働者を解雇しない限り、企業に対し、政府が労働者の給料の最大90%を払うと約束している。
新型コロナウイルスの大流行で経済活動がストップし、大量解雇が起きる中、アメリカでは数百万人が失業給付を申請する見込みだ。多くのエコノミストたちが、アメリカはすでに景気後退入りしているだろうと指摘している。
だが、世界経済への打撃は、特に労働者階級の人々に大きな痛みをもたらす恐れがあると、ニューヨーク・タイムズは報じている。ウイルスの感染拡大を食い止めるようと、世界中で経済活動がストップしつつある。国は国境を封鎖し、何百万という国民に自宅にとどまるよう求めている。
そしてこの危機は、政府が社会の中で最も弱い人々へのセーフティーネットをどう強化すべきかという課題に対する、それぞれの異なる姿勢を浮き彫りにしている。新型コロナウイルスと戦う上で、ヨーロッパで今、広まりつつある1つの考え方は、労働者に自宅にとどまり、何もしないでいてもらうために、報酬を払うというものだ。
デンマーク、オランダ、イギリス政府は、大量解雇による経済崩壊の危険を冒すより、人々の雇用を継続するために報酬を払う方がいいと考えているようだ。
一方、アメリカでは、政治家の目は主に失業給付の充実と給付を受ける人の条件緩和に注がれている。NBC Newsによると、その2兆ドル(約218兆円)の経済対策には、失業者に支払う給付金の額を1週間あたり600ドルに引き上げることや年収7万5000ドル以下のアメリカ人に1200ドルを給付することなどが含まれている。
以下、デンマーク、オランダ、イギリスの対応を詳しく見ていこう。
デンマーク:解雇されない限り、労働者の給料の最大90%をカバーする
デンマーク
Jacob Gronholt-Pedersen/Reutersデンマーク政府は3月半ば、大量解雇を防ぐため、企業に対し、労働者の給料の75〜90% —— それぞれの労働者にひと月あたり最大2万6000デンマーククローネ(約42万円) —— を払うと発表した。
この計画の下、政府は病気休暇もカバーし、賃料といった固定費も補償するという。6月末までを予定している。
「ここには、政府は企業に対し、労働者との関係を維持してもらいたいという基本的な考えがある」とデンマークのエコノミスト、フレミング・ラーセン(Flemming Larsen)氏はAtlanticに語った。
「企業が解雇した労働者を雇い戻すのに時間を使わなければならないとなると、力強い回復が難しくなる」
デンマークはこの計画のために、GDP(国内総生産)の最大13%を使う可能性がある。
デンマークのPeter Hummelgaard雇用大臣は、政府は一般市民の経済的な痛みに積極的な措置で取り組むつもりだと話している。
「これは、アメリカ的に言えば、金融業界を救済し、実体経済のことを忘れた12年前とは全く違います」と大臣は同誌に語った。
「今回は、実体経済をできる限り守るということです」
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4月、新しい自分になる!見た目が整う便利アイテムとはオランダ:大量失業を防ぐため、労働者の賃金の最大90%を払う
オランダ
maydays/Getty Imagesオランダ政府が示した計画では、収益の少なくとも20%を失った企業は、政府の緊急支援金に申請できる。
申請後、従業員の賃金の向こう3カ月分をカバーできるよう政府が企業に資金を提供する。
このアプローチは、デンマークのアプローチとよく似ている。
イギリス:史上初めて、政府が労働者の賃金を払うとしている
スナック財務大臣
リシ・スナック財務大臣。
Matt Dunham/Pool via REUTERS/File Photoイギリス政府は、労働者の給料の最大80%、ひと月あたり最大2500ポンド(約33万円)をカバーする新たな計画を発表したとBBCが報じている。
リシ・スナック財務大臣は3月20日、「史上初めて、政府は一歩踏み出し、国民の賃金を払います」と語った。
この政策は遡って申請することが可能で、経営者は新型コロナウイルスのせいで解雇した従業員を再雇用し、休暇扱いとすることができるという。
スナック大臣は、この「前例のない」措置を3カ月継続するとしていて、必要があればさらに延長するという。
このプログラムに加え、イギリス政府は中小企業への助成金や所得税納付の6カ月の延期を行う。
[原文:One simple idea is catching on in Europe to fight the coronavirus: Pay workers to stay at home and do nothing.]
(翻訳、編集:山口佳美)
〔swakitaコメント〕デンマーク、オランダは賃金の90%、イギリスは80%を3ヵ月支給するという措置。いったん解雇してしまうと、雇い戻すのに困難があるからという企業側にも大きなメリットのある措置という位置づけに納得する。社会的安全網が比較的に整備されている欧州の基本的な考え方だが、やはり、働く人の生活を維持することが重視されている。
韓国では、97-98年の経済危機の際に、社会安全網が機能せず、働く者に犠牲を強いて、多くの自殺者を出しながら、財閥資本優先の経済成長してきた。非正規職を拡大し、格差を拡大するという歪んだ社会構造になった。多くの苦難の末、ようやく、これを改めようとする労働運動、市民運動が台頭している。
日本はどうなのか?欧州のような社会安全網も規制緩和の名目で壊してきた。医療、公衆衛生など、公的社会的インフラを壊して、大企業本位の政治、経済に進んできた。安倍政権は、まさにその延長路線で、オリンピック、カジノなどを推進してきたが、欧州、韓国の事例を参考に、従来の路線を180度転換することが必要だと思う。