公立学校の先生!給特法は勤務全てに関する法律なのか?

 “「土曜も学校独自で半日授業になり、振替を取ることになっていますが、そもそも授業があり取れません。形だけ振替を設定して勤務している日々が続いていますが、もう教員の勤務について管理職や県なども考える気はないのだろうとむなしくなります」東海地方の高校教員(40代女性)から弁護士ドットコムニュースのLINEにこんなメッセージが寄せられた。”と弁護士ドットコムニュース(教員が悲鳴「土曜授業で、振替休日がとれない」 休みは形だけ設定、コロナ禍で始まった学校も – 弁護士ドットコム (bengo4.com))は報じている。この先生の勤務校では、平日の放課後の部活動の確保を目的として土曜日に授業を行い、地域への公開授業日としているとのことである。振替日を年に2回計画的に設定し、取得するという前提で動いている。ただ、テスト日の午後に振替を設定しても、15時ごろに上がれればいい、ということだ。また、土曜日まで授業を行うことで、教員も生徒も疲弊しているとのことである。

 この制度では、平日に通常通り勤務していることで週40時間労働は満たしてしまう、土曜日に半日授業を行うことで超過勤務が発生する、振替時間はテスト日などに取る計画を立てている、ということがポイントだ。この点について、記事では、埼玉大学教育学部の髙橋哲准教授によって、「通常授業としての土曜授業は超勤4項目に該当しないため、労働基準法32条違反になる」と指摘している。超勤4項目とは、「校外実習などの生徒の実習に係る業務」「修学旅行など学校行事」「職員会議」「災害などの緊急事態」である。

 つまり、土曜日の授業は、超勤4項目にない。そのために給特法の適用範囲を超え、労基法が適用されるということである。この指摘は非常に重要である

 この指摘を、労基法と給特法について条文を参照しながら整理してみよう。

①週40時間労働は大前提である。
②給特法は、超勤4項目を定め、その業務については労基法第37条の適用を除外する。超勤4項目については、4%の賃金を支給する。
③しかし、超勤4項目以外の勤務については、給特法は適用されない。超勤4項目は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令」に定められている。内容は、1教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとする。2教育職員に対し、時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむをえない必要があるときに限るものとすること。
 イ校外実習その他生徒の実習に関する業務 ロ修学旅行その他学校の行事に関する業務 ハ職員会議に関する業務 ニ非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務、ということである。

 給特法及び給特法に関する政令では、超勤4項目以外は「時間外勤務を命じない」としている。しかし、記事の公立学校においては、週40時間を超え通常勤務を土曜日に命じている。したがって、超勤4項目以外の業務については労基法第32条に定められている、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」という項目に違反している。ということだ。

 多くの先生方は、給特法の「第三条 教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。2教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」という規定により、どんな場合も残業代は発生しないと考えている。しかし、その業務は、「第六条 教育職員(管理職手当を受ける者を除く。以下この条において同じ。)を正規の勤務時間(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成六年法律第三十三号)第五条から第八条まで、第十一条及び第十二条の規定に相当する条例の規定による勤務時間をいう。第三項及び次条第一項において同じ。)を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。」と定めている。繰り返しになるが、法律では学校の先生方を時間外において、政令で定める超勤4項目以外で働かせてはいけないということなのだ。

 つまり、記事の中の土曜日の勤務については、校長による「給特法に定めのない違法な時間外勤務命令」である可能性が高いということである。「残業代不払いを前提に、規定にない時間外勤務を命じている」ということだ。法律に規定されている仕事以外の仕事をさせていることを、校長は知っているのであろうか。労基法第32条違反は罰則が課される。この罰則は誰に課されるのであろうか。

この記事を書いた人

伏見太郎