第82回 「偽装自営業」是正を進めるスペイン(上)Amazon事件・マドリード社会裁判所判決

マドリード社会裁判所のAmazon配達員をめぐる判決

 2024年2月6日、棗一郎弁護士が、次のようなX(旧twitter)への投稿をされ、「日本でも、本日から横浜地裁労働部でアマゾン本社の配達員の解雇無効を争う裁判が始まります。争点はスペインと同じ、配達員の労働者性。日本の配達員もアマゾンアプリで配達業務の指揮命令を受け管理された労働者です。世界的大企業の使用者責任を逃れる欺瞞を許してはなりません。皆さん、応援を❕」と訴えられました。

 日本では、このNewsを流したメディアは、ほとんど見当たらず、唯一、「連合通信」の2月6日付けの日本語記事を見つけました。棗弁護士のXへの投稿は、その記事の引用だと思います。ただ、この記事はきわめて短く、判決の概要しか分かりませんので、詳細を知りたいと思いました。そして、少しずつスペイン語とスペインの労働人権保障を勉強している私としては、Webを通じて関連の情報を調べてみました。

 まず、判決を下したのは、マドリード第42社会裁判所(El Juzgado de lo Social número 42 de Madrid)です。同裁判所は、Amazonが、2019年10月から2021年11月までの間3,688人の配達員偽装自営業(falsos autónomos)として使用していたことを認め、同社と配達員との関係は、Amazonが主張するような商業的関係ではなく、労働関係であったと判決したのです。この訴訟は、社会保障出納院(TGSS-la Tesorería General de la Seguridad Social)が起こしたもので、配達員を代表する労働組合=スペイン労働総同盟(UGT)が関与しています。(El periodico 2024年1月25日

 次に、この判決は、Amazonの配達員をめぐる同様な裁判としては2回目のものでした。最初の事件は、1年前の2023年2月に、マドリード第14社会裁判所が下したもので、2017~2019年まで働いていた約2166人のAmazon配達員を「偽装自営業」ではなく、雇用関係を認めてAmazonの社会保険料不払いを確認したものでした。この最初の事件と最近の2回目の事件ともに、Amazon Flexと呼ばれるAmazonの以前の配送モデルが問題になりました。*

*スペインでは労働・社会保障関連では、労働・社会保障監督局(ITSS)が法の実効性を確保するために違反企業・使用者の監督・取締行政を行います。しかし、重要な処分については、使用者側やITSSなど行政機関からの申し立てで判断するために、426の「社会裁判所(juzgados de lo social)」が設置されています。そして、社会裁判所の判決について上訴を受ける「自治州上級裁判所(tribunales superiores de justicia)」が設置されています。また、事案によっては、全国管区裁判所(Audiencia Nacional)と最高裁判所の社会法廷が判決を行います。
 なお、「社会裁判所(juzgados de lo social)」は、日本では「労働裁判所」と訳されています。(例:厚労省『2010~2011年海外情勢報告』)実際に果たしている機能は主に労働関連事案対象の審理ですので、「労働裁判所」と訳した方が分かりやすいかも知れません。しかし、直訳では「社会裁判所」となること、また、後述するようにスペインでは「労働と社会保障」が、監督行政をはじめきわめて密接であることに目立った特徴があり、むしろ「社会裁判所」と訳す方が適切であると思います。

2023年2月のMadrid第14社会裁判所判決についての報道 El HuffPost 2023/02/03

 そこで、これらAmazonをめぐるマドリード社会裁判所の二つの判決には、どのような背景があり、どのような意味があるのか調べてみました。重要な点としては、まず、Amazon配送モデルの変遷(とくにAmazon Flexモデルの特徴)、次に、スペインにおける「偽装自営業」問題の重要性、第3に、偽装自営業摘発で際立って大きな役割を果たした、スペイン独自の「労働・社会保障監督官制度」、第4に、二つの判決に直接影響を与えた「最高裁Glovo事件判決」、第5に、Amazonが配送モデルとしてのAmazon Flexのスペインでの終了を決定する原因となった「ライダー法」制定があると思います。以下、これらの論点について、できるだけ詳しく指摘したいと思います。*

*関連した情報について、詳しくは、以下の二つの論考
「雇用類似の働き方」に対する各国の裁判・法規制と日本への示唆 労働総研クォータリー126号 2023年
スペイン「ライダー法」制定の背景を考える一「偽装」に対抗する積極的な労働法・労働行政 労働総研クォータリー128号 2023年
もご参照下さい。

Amazon Flex の導入と特徴

 Amazonビジネスモデルの基本の一つは、できれば配達員を雇用しない(多くの雇用をしたくない)ということです。とくに最終的に顧客に届ける段階(ラスト・マイル)の配達員の雇用を避けようとしてきました。Amazon関係者は、「私たちの専門は物流センターの管理であり、配送ではない」と言い、独自のアルゴリズムによって、供給者(サプライヤー)と顧客の間の最も効率的なルートを計算して、世界中の何百万もの荷物の購入と配送を管理することが基本のビジネスモデルということになります。したがって、配送に必要な何千人もの人材を確保することになれば、人件費が膨らむために利益の足を引っ張ることになり、ビジネス戦略の弱点となるということです。(El diario 2022年6月1日

 Amazonは、2011年、スペインに進出しました。そして、配達員については、まず、スペインの大手宅配業者(MRW、UPS、CorreosとSEUR)や中小業者(OTL, Tipsa, Ara Vinc e Instapack)に頼りました。しかし、大手宅配業者は、Amazonの配送業務が、低価格かつ大量であるために、あまりに過酷な条件であるとして、契約を拒否することになりました。その結果、中小業者が、Amazonの物流を請け負って時給5.38ユーロ(約800円)という低賃金での長時間労働を行うことなったのです。

 こうした劣悪条件についての反発が強まる中で、低価格の配達員を確保するために、Amazonが新たに打ち出したのが、2017年11月27日に発表した「Amazon Flex」でした。Flexの内容は、登録した配達運転手は、スマホによるアプリの指示に応じて、自分の車を使って、Amazonが指定する配送ルートに従って顧客の家に配達し、それに対して、Amazonから報酬を受け取るというものです。労働者のシフト(「ブロック」と呼ばれる)は、1ブロック(=2時間単位で)当たり28ユーロの報酬です。1時間では14ユーロです(2017年当時の1ユーロは約122円でしたので、円換算すると1時間1,708円になります)。ただ、この報酬から、ガソリン代、車の維持費、自営業の各種費用などを差し引くことになります。

 Flexのメンバーは、物流センターに行き、荷物を受け取り、最終目的地まで配達しなければなりません。すべてはモバイル・アプリを通じて一元管理されています。アプリは、配達の必要がある荷物の状況、それぞれの荷物の基本情報、配達ポイントを示す地図を表示し、最適なルートを提案します。このFlexの働き方は、既に食事配達(food delivery)部門のプラットフォーム企業(Glovo, Deliverooなど)の二輪車配達員の働き方とほぼ共通するものでした。つまり、専業でAmazonの配送だけに従事するモデルではなく、登録した個人が、自営業形式で自分の車で荷物を配達して、あくまで「副収入」を得ることを目的とするモデルです。つまり、Amazonは、配達運転手の「正規軍」を望んでいるのでなく、「パルチザン」を好んでいるのだと指摘されました。(El Confindencial 2017年11月27日)実際、Amazonも、こうしたFlexによる運転手を「協力者(colaboradores)」と呼びました。(Farodevigo 2024年1月25日)*

 とくに、スペインは、EUの中でも失業率が高く、非正規雇用も多く、まともな雇用は限られていました。その結果、失業者や半失業といえる非正規雇用労働者にとっては、Amazon Flexは、容易に収入を得られる生命線として、たとえ低賃金であっても受け入れる背景があったのです。そして、AmazonがAmazon Flex方式を進める狙いは、きわめて単純なものでした。つまり、Amazon社としては、無期・フルタイムの雇用契約によって自社の配達員を確保することになれば、それにかかる費用(コスト)が膨大なものなります。Amazon Flexは、その負担を回避して、はるかに安い価格で物流の力を得ることができると考えられたのです。(El Confidencial 2024年1月25日

(写真)Amazon Flexの配達運転手 (Tele Madrid)

Amazon Flexで収入を得ることを宣伝するサイトによれば、Amazon Flexとコラボレーションするには、以下の条件を満たす必要があるとされ、「4時間の労働で56ユーロ(約9000円)の報酬が得られます。悪くないでしょう」というのが売り文句でした。

  • 自営業であること。
  • 中型車、またはサルーン(箱型自動車の車種)などの大型車を所有すること。
  • AndroidまたはiOSのスマートフォンを持っていること。
  • 登録手続き(1日に利用可能な時間と必要な個人情報を入力する必要がある)を取ること。
  • 自由な時間を持つこと。

二つの判決で認定されたAmazon Flexの働き方

労働監督局によるインタビュー調査

 上記の2024年のマドリード社会裁判所の判決では、労働監督局(ITSS)は、Amazonの配達運転手1,505人に電子メールでインタビューを行い、Amazon Flexのアプリケーション上で配達業務がどのように行われていたかに関するアンケートに回答するよう求めました。そして、この調査に基づいて労働監督局は、Amazon Flexによる配達運転手は、自営業でなく労働者であるという報告書をまとめました。(なお、1年前の2023年判決の事案では、労働監督局が11人の配送運転手について聞き取り調査をして自営業でないと報告したことについて、Amazon側が、「調査対象が少なく、影響を受けたグループ全体について監督局の報告書の結論に達することはできない」と反論したことから、調査対象の人数を大幅に増やしたものと思われます。)

 回答者の半数以上から回答が得られました。他方、各配達員の勤務日と勤務時間のリストが、配達員を使用していた被告Amazon(Amazon Road Transport Spain)に要求されました。このアンケートなどから明らかになったのは、配達員は、アプリの中に入ると、「ブロック(bloques)」と呼ばれる「配送する荷物を受け取るために物流センターに行き、配送を行うための時間」を選らばなければなりません。Amazonは、この「ブロック」の選択は配達員が自主的に行うと主張しました。しかし、実際には、アプリを常にチェックしておかないと、他の配達員が先に選択してしまいます。幸いにも「ブロック」を取ることができたとしても、決められた時間に遅延したり、コンプライアンス違反があれば、金銭的な罰則の対象となります。その一方、配達員は、ガソリン代や車の維持費を自腹で支払うことが必要です。(Epe 2024年1月25日

Amazon Flexプログラム

 Amazon Flexの働き方については、2023年2月2日の社会裁判所判決の中では、関連した文書を詳細に検討して事実認定がされました。とくに、「契約(contrato)」と「プログラムポリシー(Políticas del Programa Amazon Flex)」がほぼ全文にわたって引用されています。この二つの文書で定められたAmazon Flexによる配達運転手の働き方に関連する事項は多岐にわたっています。これらの文書は、内容もきわめて詳細で、配達運転手が自営業者であるのか、労働者であるかを判断する上で最も重要な根拠になっていると思います。そこで以下、細部について訳語が適切かについて自信がない個所が残っているので確定訳ではなく、「試訳」として翻訳してみました。なお、重要と思われる個所は太字にしていますが、これは原文には無く訳者の判断によるものです。

***   試訳   ***

 「本契約(以下「本契約(contrato)」)は、本契約の対象である輸送および配送サービス(以下「本サービス」)について規定するものであり、本契約の別紙Aとして添付されているプログラムポリシーを含み、Amazon Road Transport Spain S.L.U.(以下「Amazon」)と貴殿との間の法的拘束力のある契約を構成します。本契約への言及はすべて、本プログラムポリシーを含むものとします。本契約は、本プログラムアカウント(以下「本プログラムアカウント」)を作成する際に本契約をクリックし、本契約の条項に同意した日、または、それ以前であれば、本サービスの提供を開始した日(以下「発効日」)に発効します。本プログラム契約と本契約の他の条項との間に矛盾がある場合は、本プログラム契約が優先するものとします。」

 契約条文を、以下に試訳しました。赤字の「クリック」を押して読んで下さい。(なお、スペイン語原文の入手先

  • 第1条 本サービス
  • 第2条 商業関係
  • 第3条 専門職報酬
  • 第4条 表明、保証および誓約
  • 第5条 本サービスを提供するために使用する機器
  • 第6条 期間および終了
  • 第7条 サービスの利用可能性
  • 第8条 責任の制限
  • 第9条 免責
  • 第10条 ライセンス対象マテリアル
  • 第11条 紛争解決(略)
  • 第12条 適用法律(略)
  • 第13条 データ保護(略)
  • 第14条 変更
  • 第15条 通知、電子/モバイル通報
  • 第16条 諸文書(略)
  • 第17条 全体的合意と一部無効:解約の効力(略)
契約 1 ~ 5条    → ここをクリック試訳閲覧可能

1º. 本サービス

a) 貴殿は、同様のサービスを提供する分別のある人が適用する程度の勤勉さと専門性をもって、安全かつ有能な方法で本サービスを実施し、プログラムポリシーに記載されているサービス提供基準に従うことに同意するものとします。サービス実施基準の適用を怠った場合は、本契約の違反となります。
b) 本契約は、「サービス」の量や頻度の下限を定めるものではありません。上記にかかわらず、確定した特定の時間枠内に本サービスを提供する申し出を承諾し、プログラムポリシーで認められている通り承諾を取り消さない場合、貴殿は、Amazonまたはその被指名人が貴殿に提供するパッケージ、コンテナ、バッグ、またはその他の成果物(以下「成果物」)を、当該時間枠(以下「納品期限」)内に納品することに同意するものとします。納品期限は、貴殿が納品物を受領したときに開始し、貴殿が最後の納品物を納品したとき、または納品が不可能な場合は、貴殿がAmazonの指示に従って納品物を返却したときに終了します。

2º. 商業関係。

本契約は、雇用関係ではなく商業関係を構築します。Amazonの独立請負業者として、本契約のいかなる条項も、貴殿とAmazonの間にパートナーシップ、ジョイントベンチャー、代理店、フランチャイズ、または雇用関係を生じさせるものではありません。独立請負業者として、貴殿は、契約上黙示された、または法的に認められた労働者または従業員の権利の目的上、または現地の税法の目的上も含め、いかなる場合もAmazonの従業員として認識されず、Amazonおよびその関連事業体の従業員または労働者が参加する福利厚生その他の計画またはプログラムに参加する義務または権利を負いません。貴殿は、プロフェッショナル・フィー(以下に定義)の支払いに起因する所得税および社会保険料、ならびに本サービスの提供に起因または関連して発生するその他の偶発事象、控除、拠出、和解または請求を含め(ただし必ずしもこれらに限定されない)、貴殿に適用されるすべての税金について全責任を負うものとします。貴殿は、Amazonに代わって義務を負う権限を有しておらず、Amazonの従業員、使用人、または代理人であることを表明したり、いかなる個人または団体に対しても、従業員、使用人、代理人、パートナー、またはその他の立場でAmazonに代わって義務を負う権限を有していることを表明したりしないものとします。本契約は、各配送枠(franja de entrega)に適用されます。ただし、ある配送枠が終了し、次の配送枠(franja de entrega)が開始される場合は、その間隔をもって両当事者の関係は終了します。

3º. 専門職報酬。

本契約に基づく本サービスの提供および貴殿の車両(下記第5条に定義)の提供に対して、Amazonは、受諾時にAmazon Flexアプリに規定されている料金、または貴殿とAmazonが随時合意する料金(以下「プロフェッショナル料金」)を貴殿に支払います。本契約に明示的に規定されている場合を除き、プロフェッショナル料金は、本サービスの提供に対して貴殿が受け取る唯一の料金です。プロフェッショナル料金には、本サービスの提供に対して貴殿に支払うべきすべての項目が含まれ、貴殿が負担する可能性のある費用(燃料費、手数料、登録税、あらゆる種類のライセンス、および政府当局により、または貴殿の設備および車両の使用に関連して、貴殿または貴殿の車両に対して課される、または徴収されるその他の査定、賦課金、税金、罰金など)に対する追加支払いは一切ありません。貴殿は、Amazonが貴殿に発生した費用を負担する場合、Amazonがより低い専門職報酬を貴殿に提示することを了承するものとします。Amazonは、サービス完了後15日以内に、専門職報酬を貴殿に支払います。

4º. 表明、保証および誓約。

貴殿は、本契約に基づく義務を引き受け、履行するための完全な法的能力および権限を有していることをAmazonに表明し、保証するものとします。貴殿は、常に以下の事項に同意するものとします。(a) (i)本サービスの提供に関連する輸送、セキュリティおよび保険(ii)顧客および配送物の健康、安全および衛生、(iii)贈収賄防止および汚職防止に関するすべての法律、規則および規制を含む、本サービスに適用されるすべての法律、規則および規制を遵守すること、 (b) 本プログラムへの参加期間中、本サービスの遂行に必要なすべてのライセンス、許可、その他の認可(運転免許、車両登録、自動車保険、VAT登録、納税者番号、社会保障登録を含む)を取得し、有効に維持すること; (c)本サービスを実施するために必要な許可、免許または認可が失効、紛失、または一時停止されたことを知った場合、速やかにAmazonに通知すること。 (d)身元調査に関するすべての質問に対して完全かつ正確な回答を提供し、クリーンな犯罪歴証明書および運転免許情報を提供すること; (f) 納品物のセキュリティにリスクをもたらす、または納品物の納品を遅延させるような事象または状況が発生した場合、直ちにAmazonに通知すること。 )およびAmazonの施設およびAmazonの納品物に関連するAmazonのセキュリティポリシー(総称して、Amazonのセキュリティ要件)を遵守し、Amazonの要求に応じて、Amazonが指定する人物が、Amazonのセキュリティ要件を遵守していることを確認することを許可すること;(g)(略)に掲載されているAmazonサプライヤー行動規範、およびAmazonの施設およびAmazonの成果物に関するAmazonのセキュリティポリシー(総称して、Amazonのセキュリティ要件)を遵守し、Amazonが随時要求する場合、Amazonの被指名人がAmazonのセキュリティ要件を遵守していることを確認することを許可すること; (h) 本サービスを提供する過程において、機密情報または専有情報に関する第三者の権利を侵害または違反しないこと、および (i) 納品物を含むAmazonの財産または資産を担保に供せず、担保権に対するすべての権利を放棄すること。本契約の期間中、貴殿は、本契約において貴殿が行った表明もしくは保証、または貴殿が本契約の条項を遵守していることをAmazonが確認するために必要な書式、文書、または証明書をAmazonに提供するものとします。

5º. 本サービスを提供するために使用する機器

a) 貴殿は、業務の遂行を管理するために、Amazon Flexアプリと互換性のあるモバイルデバイス、Amazon Flexアプリ内で貴殿が特定した車両(以下「車両」)、本サービスを提供するための自転車またはその他のモーターを使用しない移動手段、および本サービスを提供するために貴殿が選択または使用する必要のあるその他の機器を常に利用できる状態にすることに同意するものとします。

契約 6 ~ 8条   → ここをクリックで試訳閲覧可能

6. 期間および終了。

a) 本契約は、発効日をもって有効となり、貴殿またはAmazonのいずれかによって解除されるまで有効に存続します。
b)貴殿は、下記第15条に従ってAmazonに解約通知を行うことにより、理由の如何を問わず、いつでも本契約を解約することができます。解約通知日から12ヶ月間は、本プログラムに参加することはできません。
c) Amazonは、以下の理由により、第15条に従って解約通知を行うことにより、いつでも本契約を解約することができます: (i) 貴殿がサービス提供基準を遵守しない場合、(ii) 発効日の前後を問わず、貴殿が本契約を締結するための最低条件を満たさない場合、(iii) 貴殿がプログラムポリシーに重大な違反を犯した場合、(iv) 貴殿が本契約に重大な違反を犯した場合、(v) 貴殿のAmazonアカウントが無効化された場合、または (vi) その他商業上合理的な理由がある場合。
d) 貴殿が180日以上活動を停止している場合、Amazonは貴殿のアカウントを無効化することができます。活動停止によりアカウントが無効化された場合、本プログラムへの再登録を要求することができます。
e) 貴殿が電子通報(下記第15条に規定)を受け取る同意を撤回した場合、貴殿のアカウントは無効化されます。本契約の他の条項に従い、貴殿は、Amazonからの電子通報を受け取ることに同意する旨をAmazonに通知することで、アカウントを再度有効にすることができます。
f) 貴殿がライセンス対象マテリアルに関するいずれかの条項に従わなかった場合、Amazonは、貴殿に対するライセンス対象マテリアル(かかる用語は、以下の第10条で定義されます)の提供を中止し、本契約を終了することができます。
g) 貴殿またはAmazonが本契約を解除した場合、貴殿は、貴殿のデバイスからAmazon Flexアプリをアンインストールしなければなりません。

7º. サービスの利用可能性

Amazonは、本契約において、貴殿が本プログラムへの参加を通じていつでも達成できるビジネスの量について、いかなる約束または表明も行いません。あなたは、Amazonが提供するいかなる機会も受け入れることも断ることもできます。本契約のいかなる条項も、配達時間帯を除き、Amazonの競合他社を含む他の個人または団体にサービスを提供すること、またはサービスを提供するために貴殿の車両を使用することを禁止するものではありません。さらに、Amazonは、本契約の主題を構成するものと同一または類似のサービスを提供するために、他の個人または事業体のサービスを利用することができます。

8º. 責任の制限。

a) 下記第8条(b)を条件として、法定義務違反であるか否かを問わず、Amazonの責任総額は、かかる責任が発生した日において貴殿に支払われた、または支払うべき専門家報酬の総額を上限とします。
b) Amazonは、本プログラムに関連して、またはその他の方法であなたが行った営業権、機会、利益、予想売上高、経費、投資、リース、またはコミットメントの損失について責任を負いません。下記第9条に定める貴殿の免責義務、および貴殿が本プログラムポリシーの「プライバシーおよび個人情報」の項に違反したことから生じる責任を除き、また以下に定める場合を除き、いかなる場合においても、いずれの当事者も、いかなる種類の結果的損害、特別損害、懲罰的損害、付随的損害、または間接的損害についても責任を負いません、 本契約、ライセンス対象マテリアル、本ソフトウェア、または本サービスに関連するか否かを問わず、また、契約、不法行為(過失を含む)、または厳格責任のいずれに基づくかを問わず、たとえAmazonがかかる損害の可能性について知らされていたとしても、いかなる種類の損害についても、その発生原因および責任の根拠の如何を問いません。本契約のいかなる規定も、適用される法律または規制の下で制限または排除できない事項または個々の行為に関するいずれかの当事者の責任を制限または排除するものではありません。

契約 9~ 17条   → ここをクリックで試訳閲覧可能

9º. 免責。

a) 貴殿は、Amazon、その関連事業体および後継事業体、ならびにそれぞれの取締役、役員、および従業員(各々、被免責当事者、および総称して、被免責当事者)を、前述のいずれかに基づく第三者による申し立て、請求、または要求から免責し、防御し、損害を与えないものとします、 (a)貴殿による過失、厳格責任、または不当な行為に起因する、(b)貴殿による本契約の違反に起因する、損失、損害、和解、費用、経費、または責任(合理的な弁護士費用および経費を含む)に基づく第三者による請求または要求; (c) 貴殿による作為または不作為(かかる作為または不作為に起因または関連して生じる、死亡を含むすべての損失、物的損害または傷害を含む)、または (d) 貴殿による適用法、規則または規制の不遵守。
b) 貴殿の防御義務は、貴殿の補償義務とは独立したものとします。あなたは、被免責当事者が責任を免除された各請求に対して弁護するために、被免責当事者が合理的に満足する弁護士を雇うものとし、被免責当事者はそのような弁護においてあなたに協力するものとします(あなたの費用で)。免責された当事者が、免責された請求によって不利益を被る可能性があるといつでも判断した場合、その請求に対する管理を引き受けることができます。あなたは、被免責当事者の書面による事前の同意なしに、あなたが被免責当事者の責任を免除した請求に関して、いかなる判決にも従わず、いかなる和解契約も締結しないものとします。

10. ライセンス対象マテリアル。

本契約において、「ライセンス対象マテリアル」とは、Amazonまたはその関連事業体が貴殿に提供するソフトウェア、アプリケーション、ウェブサイト、コンテンツ、または情報を意味します。Amazonは、貴殿に対し、本契約の期間中、本サービスを提供し、本契約により許可された方法で本プログラムに参加する目的に限り、ライセンス対象マテリアルを使用するための限定的、非独占的、譲渡不能、サブライセンス不能、取消可能なライセンスを付与します(以下、略)。

11. 紛争解決(略)。 12. 適用法律(略)。 13. データ保護(略)。

14. 変更。

 Amazonは、Amazon Flexアプリを通じて貴殿に通知するか、または貴殿に書面を送付することにより、本プログラムポリシーを含む本契約をいつでも変更することができます。 上記にかかわらず、(i) プロフェッショナル料金の変更は、当該変更が適用される納品スロットを貴殿が受諾し完了する前に、書面またはAmazon Flexアプリを通じて貴殿に通知されます。

15.通知、電子/モバイル通報。

Amazonは、本プログラムへの参加に関して、電話、テキストメッセージ、電子メール、またはAmazon Flexアプリを通じたプッシュ通知の送信(以下、個別に「電子通報」といいます)により、貴殿と連絡を取ります。貴殿は、Amazon Flexアプリをダウンロードし、貴殿の携帯電話番号を当社に提供し、本契約に同意することにより、本契約および本プログラムに関連してAmazonからプッシュ通知、自動テキストメッセージ、またはその他の電子通報を受信することに書面で同意したものとみなされます。プッシュ通知の受信を停止するには、携帯電話の設定を変更するか、Amazon Flexアプリを削除してください。設定を変更したり、Amazon Flexアプリを削除したりすると、本プログラムに参加できなくなりますのでご注意ください。

16. 諸文書(略)。  17. 全体的合意と一部無効:解約後の効力(略)。

添付ファイルA Amazon Flex プログラム・ポリシー (略)

添付ファイルA(Anexo A) Amazon Flexプログラムポリシー → ここをクリックで試訳閲覧可能

添付ファイルA(Anexo A) Amazon Flexプログラムポリシー

I Amazon Flexへようこそ(以下、略)。

II プログラムの要件

A. プログラムに参加するためには
1) Amazonの基準に従い、身元調査および該当する場合は運転免許証の確認に合格していること;
2) 法定年齢に達していること;
3) サービスを提供する各法域において、法的に就労が許可されていること;
4) Amazon Flexアプリを効果的に操作し、顧客とコミュニケーションできること。
5) スマートフォンにAmazon Flexアプリをインストールすること。

B. 本サービスの提供において、利用者は以下のもののみを使用することができます:
1) 自動車以外の交通手段(徒歩や自転車など)を使用すること;
2) 以下の乗り物:乗用車(最大車両総重量2トン)、バン(最大車両総重量2トン)、軽トラック(最大車両総重量2トン)。
3) 公共交通機関。
指定された納品物の輸送に使用する交通手段をAmazonに通知する義務がある場合、貴殿は、当該納品物の輸送に当該交通手段のみを使用することを約束するものとします。

C. 本サービスの提供に関連して車両を使用する場合、貴殿は以下の条件を満たさなければなりません:
1) 有効な運転免許証を所持していること、
2) 該当する場合、有効な自動車登録証を保持すること、
3) 当該車両を使用するために適用される法令で義務付けられている自動車保険に加入していること。
4) 当該車両を運転することが法的に認められ、かつ適切であること。
要請があれば、これらの要件を遵守していることを証明する書類をAmazonに提出するものとします。

D. すべての車両は、有効な自動車登録証明書を有し、適用されるすべての地方、州および地域の環境および安全要件に準拠していなければなりません。

E. サービス提供中に武器を携帯することはできません。

F. 貴殿は、現在Amazonに雇用されている場合は本サービスを提供せず、Amazonの労働力に加わる場合は本サービスの提供を中止するものとします。

III サービスの履行基準
A. 独立請負業者として、あなたは、以下の基準(以下「サービス履行基準」)に従い、Amazonの顧客に、荷物、バッグ、コンテナ、またはその他の物品を、タイムリー、効果的かつ破損なく、Amazonが満足するように配送するという結果を提供することに同意するものとします:

1) 安全性(略)
2) 信頼性: i) 配達枠への時間通りの到着、または時間通りの放棄。i)納品枠への定刻到着または定刻の放棄。貴殿は、a)確定した納品枠に定刻に到着し、本サービスを提供できる状態であること、またはb)納品枠の開始45分前までに納品枠を放棄する必要があります。デリバリースロットの開始時刻の少し前(デリバリースロットの開始時刻の20分前など)にデリバリースロットを選択した場合でも、Amazonはそのデリバリースロットに時間通りに到着することを要求します。配達時間に何度も間に合わなかったり、遅刻した配達枠を放棄した場合、本プログラムに参加する権利を失います。
3) 配送の品質 (i) 遅延配送。利用者は、時間通りに顧客に荷物を配達しなければなりません。本アプリは、顧客が荷物の配達を期待する配達時間帯を指定します。荷物の配達に何度も遅れた場合、プログラムに参加する資格を失います。 (ii) 配達済みと表示されたにもかかわらず、顧客が受け取っていない荷物。貴殿が荷物を配送した場合、Amazonは貴殿がその荷物を見つけられることを期待します。顧客からAmazonに対して、あなたが配達済みと表示した荷物が見つからないと何度も言われた場合、あなたは本プログラムに参加する権利を失います。 (iii) 配達未遂または配達不能の荷物が期限内にAmazonに返送されなかった場合。Amazonは、利用者が受取ったすべての荷物を、配達可能時間内に配達することを期待します。配達が不可能な場合、貴殿は、Amazonから別途指示がない限り、すべての荷物をAmazonの配達場所に返却する必要があります。配達可能時間内に集荷したすべての荷物の配達を何度も試みなかった場合、または配達不可能な荷物をAmazonが指定する場所に返送しなかった場合、本プログラムに参加する権利を失います。
4) カスタマーサービス(i) 失礼または不適切な行為。貴殿は、本サービスを提供する過程において、顧客、配送拠点従業員、加盟店、およびその他の配送パートナーと接する際には、敬意とプロ意識を持って行動しなければなりません。貴殿、配達員、加盟店、その他の配達パートナーが、貴殿が無礼、無作法、不適切、非専門的、危険、または脅迫的な態度をとったことを繰り返しAmazonに報告した場合、貴殿は本プログラムに参加する資格を失います。また、一度でも違反があった場合、その重大性によっては、本プログラムへの参加資格を失う場合があります。 (ii) 指示に従わない場合。利用者は、本アプリに表示された、または顧客から受領した配送指示に従わなければなりません。ただし、顧客の指示が合理的であり、安全衛生規制およびその他の適用法に反していない場合に限ります。貴殿は、冷凍商品またはアルコール飲料を放置してはなりません。指示に従わないことが繰り返された場合、プログラムに参加する権利は失効します。

B. 独立した請負業者として、また本契約の規定にのみ従うことを条件として、貴殿は、どのような手段および方法でサービスを提供し、合意された結果を達成するかについて、独自の裁量で決定するものとします。従って、サービスを提供するにあたり、あなたは自由にスケジュールを定め、成果物を手配し、成果物の引渡しの手段と方法を管理するものとします。

IVプログラムアカウント
A. Amazonは、貴殿のプログラムアカウントを作成または維持するために、貴殿から提供されたデータを使用します。利用者は、契約プロセスの一環として、正確、最新かつ完全なデータを提供し、常に正確、最新かつ完全な状態を維持するために、必要に応じて当該データを更新するものとします。
B. 貴殿は、第三者が貴殿のプログラムアカウントまたはライセンス対象物(Amazon Flexアプリを含む)にアクセスすること、または貴殿のIDもしくはログイン認証情報を使用してサービスを提供することを許可しないものとします。貴殿は、第三者が貴殿の本プログラムアカウントまたはライセンス対象マテリアル(Amazon Flexアプリを含みます)にアクセスすることを許可したり、第三者のIDまたはログイン認証情報を使用してサービスを提供したりしないものとします。貴殿は、貴殿の本プログラムアカウントもしくはAmazon Flexアプリへのアクセスに必要なパスワード、または本プログラムもしくは本アプリに関連してAmazonから貴殿に提供された身分証明書の安全性および機密性を確保するものとし、貴殿は、貴殿の本プログラムアカウントおよび関連するパスワードの下で発生する全ての活動について責任を負うことに同意するものとします。

V 保険
A. 本サービスの提供に関連して自動車を使用する場合、貴殿は、自己の費用負担で、賠償責任保険(略)に加入するものとします。
B. 貴殿は、配送枠での本サービスの遂行中に道路上で事故または事件が発生した場合、直ちにAmazonに通知し、当該事故または事件の調査においてAmazonおよび関連する保険会社に協力するものとします。

VI プライバシー
A. Amazonは、本サービスの提供または本プログラムへの参加の過程で、また、当社、当社のモバイルアプリケーション、または当社のウェブサイトとのその他のやり取りおよび通報を通じて、貴殿が当社のウェブサイトおよびモバイルアプリケーションに入力したデータを受け取り、保存します。ライセンス対象マテリアルは、貴殿によるライセンス対象マテリアルの使用に関する情報、貴殿のジオロケーションおよび関連するトラッキングデータ、ならびにその他の個人情報をAmazonに提供する場合があります。例えば、ライセンス対象マテリアルにより、Amazonは、貴殿が配送地点にいる時間帯、貴殿が配送地点に到着した時間帯および配送地点から出発した時間帯、配送ルートにおける貴殿の進捗状況、およびAmazonのパッケージが正常に配送されたかどうかを確認できる場合があります。Amazonは、プログラムおよびサービスに関連するデータを使用する場合があります。たとえば、火災が発生した場合に建物が立ち退いたことを確認するため、配達状況について貴殿に情報を提供するため、貴殿が貴殿利用アプリケーションで宅配業者の名前と場所を確認できるようにするため、専門職料金を計算するため、貴殿が事故に巻き込まれた場合に緊急サービスと連絡を取るためなどです。

VII ライセンス対象物(略)。

VIII 機密保持および個人情報(略)。

IX 税金。
各当事者は、適用される法律が要求する範囲において、本契約に基づく取引および支払いに関連して支払うべきすべての税金およびその他の管理費および関税(これらに関連する罰則、利息および課徴金も含む)を特定し、支払う責任を負います。Amazonは、本契約に基づき貴殿に支払うべき金額から、法的に控除または源泉徴収が必要とされる税金を控除または源泉徴収することができ、かかる控除または源泉徴収後の貴殿への支払いは、本契約に基づき貴殿に支払うべき金額の貴殿への完全な支払および免除を構成します。本契約の期間中、貴殿は、本契約に基づく支払いに関してAmazonが報告または源泉徴収の義務を満たすために必要なフォーム、書類、または証明書をAmazonに提供するものとします。

X 追加条項
A. (略).
B. ただし、Amazonが随時通知する手続きに従って事前に通知することにより、Amazonが随時本プログラムに参加する資格を有し権限を付与した人物に、サービスを提供する義務を再委託する場合を除きます。本契約に違反してかかる権利または義務を譲渡、再委託、または委任しようとする試みは無効です。

判決に対する評価と影響

 以上、マドリード社会裁判所判決の内容を調べてきました。ただ、2024年1月の二番目の判決については、判決文を入手することができていません。また、専門的な立場からの判例批評や論文はもちろん、メディアでの報道もまだ多くないようです。そこで、問題を提起し、裁判の利害関係者としても大きな役割を果たしてきた、CCOOとUGTの声明や見解を調べてみました。

労働者委員会(CCOO)の声明・Amazon全体を代表する組織設立

 スペインの労働組合組織率は17%と多くはありませんが、職場全体を代表する労働者代表組織選出では二大労組が70%近くを占めており、社会的にはきわめて大きな存在です。最も多くの代表を選出している全国的労働組合組織は、「労働者委員会(CCOO)です。CCOOは、「偽装自営業」問題を告発する中心的な組織の一つでした。プラットフォーム企業による食事配達での二輪車配達員の問題に続いて、Amazon Flex導入にともなう「自営業形式」の運転手について、もう一つの労働組合組織のUGTとともに労働監督局(ITSS)に告発しました。2023年の社会裁判所の判決では、傘下のCCOOサービス連盟(FSC-CCOO Federación De Servicios A La CiudadadanÍa De Comisiones Obrerasが利害関係者として名前を連ねています。

左は、アンダルシアの労働者委員会(CCOO)が2018年7月のAmazon Flex配達運転手の「偽装自営業」によるビジネスモデルの問題点を指摘した動画
(動画内容) Amazonは、人々のオンライン・ショッピングのあり方を変えつつあるeコマース・プラットフォームのひとつである。そして今、Amazonは「Amazon Flex」によって宅配便分野に本格的に参入し、個人でも自分の車で配達ができるようになった。CCOOによると、このプラットフォームは社会保障制度の対象外であり、労働者の雇用保障は一切なく、流通部門をさらに不安定なものにしている。
 小包・宅配便部門はわが国で3万人以上の労働者を抱え、電子商取引のブーム以降、成長を続けている。現在では1日に125万個の小包を配達しており、わずか5年前の10倍になっている。労働組合は、この部門はすでに十分に不安定であり、労働条件をさらに引き下げることは新たな搾取であると指摘する。 会社には何の責任もなく、保険もなく、これらの商品の輸送のための安全保険もなく、もちろん社会的保護もいかなる制度への拠出もない。

CCOO、Amazon Flexに対する判決を歓迎

 マドリード第14社会裁判所は、AmazonのFlex部門で働き、配達のために自家用車を使用する配達員は偽装自営業者であると宣言した。
 2023年2月3日
   (写真)Amazonのエル・プラット工場のアーカイブ画像。
 マドリードで、配達員を偽装自営業者とみなす判決が下され、また、これらの労働者の待遇改善を求める欧州指令が出されるなど、昨日からデジタル・プラットフォームで働くスタッフにとって朗報が続いている。
最初のニュースは首都マドリッドの第14社会裁判所からで、アメリカの多国籍企業Amazonを相手取り、Amazon Flexと呼ばれるモデルで配達に従事している2,166人(自分の車を使って仕事をし、配達する)は偽装自営業者であり、会社に雇用されなければならないとの判決を下した。
 Amazonは、配達員を偽装自営業者として使用し、自分の生産手段で仕事を遂行することを強要しているとして非難されてきた。この事案では、配達の時間や場所、働き方を指示する会社のアプリケーションを通じて、自分の車を使って荷物を配達していた。
これは新しい判決ではなく、「Glovoの配達ドライバーは会社と雇用関係があり、デジタルプラットフォームによる偽装自営業者の利用という新しいケースを示す」と判断した2020年9月の最高裁判決に依拠したものである。
この判決は昨日2月2日に発表され、欧州議会で可決された指令の承認と同時に発表された。この指令は、さらなる一歩として、この新しい労働組織における偽装自営業と不安定労働に終止符を打つべく、デジタル・プラットフォームで働く労働者の条件を改善するための新たな措置に関する交渉を開始するものである。
 Amazonの裁定により、スペインが欧州で承認された指令に先んじていることは明らかである。その主な理由は、CCOOの圧力によっ て、このような雇用モデルの労働化を認める役割を果たすライダー法が制定され、この新しい労働組織による不安定労働の影響を受ける人々が権利を主張で きるよう、その後の行動が調整されたからである。
 労働組合の使命は、労働者とその労働権、労働組合保障を保護することである。労働のデジタル化は、労働規制と相容れない新しい現実をもたらしてはならない。現実は変化し、進化するが、法の支配と民主的で責任ある社会の義務を守るための場所は、常に法の中に存在する。 (原文は、FSC-CCOO 2023年2月3日

Amazon従業員全体を代表するCCOO組織設立 FSC-CCOO 2023年11月15日

 なお、FSC-CCOOは、2023年11月、Amazonの従業員全体を代表する組織を立ち上げました。倉庫部門会社(Amazon Spain Fulfillment S.L.)と配送部門会社(Amazon Road Transport Spain S.L.)の労働組合部門は5人の執行委員会で構成され、スペインのAmazonグループ企業(系列・関連企業)の労働組合部門は7人で構成されます。これらの組合はすべてFSC-CCOOの道路・物流部門に属し、書記長は対応する総会で満場一致で選出されました。選出された役員は、数年間、全国オルグとして働き、2社で最大の代表を擁する組合となることに成功した後、スペインに数万人の労働者を擁するこの大規模多国籍企業で、CCOO加盟の労働者代表として完全な労働組合権と保障を備えた労働組合組織の設立を進めました。承認された活動計画は、労働組合の目標として、労働者が苦しんでいる労働衛生、 賃金、雇用の安定、平等、訓練・職業的昇進、国際参加、人工知能とアルゴリズ ムの導入による新しい労働組織システムがもたらす挑戦に取り組むことを掲げてい ます。組織目標には、すべての地域において労働組合組織を組織化し、すべての職場で加盟・代表化を進める必要性も含まれています。(FSC-CCOO 2023年11月15日

労働総同盟(UGT)の声明

 スペインの全国的労働組合組織で二番に労働者代表を選出しているのは「労働総同盟(UGT)」です。UGTは、CCOOとともに「二大労組」と呼ばれる全国的な組織ですが、「偽装自営業」の問題に熱心に取り組んできました。

 UGTは、「偽装自営業者」問題を早くから取り上げてきました。UGTは、AmazonがAmazon Flexを導入したときから、これは、食事配達部門のプラットフォーム企業であるDeliveroo、Glovo、Ubereatsなどと同じ路線を再現していると主張し、偽装自営業の類型による「詐欺行為(fraude)」であると主張しました。UGTのサービス・移動・消費連盟(FeSMC-UGT Federación Estatal De Servicios. Movilidad y Consumo De La Union General De Trabajador)は、FSC-CCOOと共同して、マドリード労働監督局に告発しました。

UGT、Amazon Flex詐欺を告発 UGT 2019年7月16日

 UGTによれば、会社が小包の数と配達地域を選択する配送システムを確立し、2時間単位で28ユーロを支払い、そこから燃料、自動車保険、偽装自営業者としての税金が差し引かれるため、偽装自営業者で。さらに、プラットフォームと顧客による常時評価のシステムが確立され、それによって翌週の労働時間が決定されること、労働者はAmazonが課す条件を受け入れる義務があること、あるいは事前に強制的なトレーニングが必要であることを主張しました。これらの理由から、同労組はバルセロナ、ビルバオ、セビリアでもこの活動を告発すると発表し、労働省に対して「労働者や社会保障に対するこれ以上の詐欺行為を直ちに防止せよ」と要求しました。とくに、UGTは、「すべての税金を支払った後の最低職業間賃金(SMI)さえも稼げない可能性があり、月600ユーロにさえ届かないかもしれない」ことを認識するように社会全体に対して呼びかけました。(El Plural 2019年7月17日)

UGT Amazonが配送ドライバーを偽装自営業として雇用していると非難される
 マドリード第14社会裁判所は、2,166人の配達労働者の雇用関係を断罪した。

 2023年2月2日
 これは、Amazon Flexと呼ばれる同社の労働モデルに対する最初の判決である。Amazon Flexでは、配送ドライバーは、仕事の仕方を指示する会社のアプリを使って、自分の車で荷物を配送するように強制されていた。
 デジタルプラットフォームでの労働を規制する欧州指令の条文が欧州議会で承認された同日、マドリード第14裁判所は、グロボ社の配達ドライバーのサービス提供関係が雇用としての性質があることを判決した2020年9月25日の最高裁判所の解釈を適用し、この訴訟の当事者であるUGTの法的サービスを支持した。これは、生産工程におけるコンピューター・アプリケーションの統合に伴い発生する新しい労働形態を正しく適応させるためのメカニズムとして、法解釈がさらに進歩したことを意味する。
 この判決は、会社が店舗と配達員の間の単なる仲介者として運営されているという可能性を否定している。
同判決は、「従属関係と他人決定関係の要素が最終的には一致する」と断定的に述べている。これは、清算報告書の対象期間内に各人がサービスを提供した特定の期間において、言及された人物がAMAZON SPAIN FULFILLMENT S.L.と雇用関係を維持していたことを宣言し、請求が支持されることを意味する。
 当裁判所は、欧州司法裁判所(CJEU)で統合された被雇用者の概念は、より広範な雇用契約の概念を想定していると考える。この概念は、スペインではライダー法によって取り入れられており、新しい技術やデジタル・プラットフォームを通じてサービスを提供する企業の出現を考慮したもので、本日欧州議会で承認された指令にも含まれている。
 UGTは、デジタル・プラットフォームでサービスを提供する労働者の権利が尊重され、彼らの労働が安全かつ尊厳のある最低条件で提供され、残念ながらこのような新しい形態のビジネスで非常に頻繁に発生する労働搾取の状況が回避されるよう、引き続き闘う。将来の指令は、雇用関係の兆候を明確に判断することにより、配達員の保護を強化し、何十万人もの労働者の利益のために、この大規模な不正行為が最終的に消滅することを保証するのに役立つであろう。 (原文は、UGT 2023年2月2日

UGT 配送ドライバーを偽装自営業者として利用していたAmazonに対する新たな最終判決
社会裁判所が社会保障出納院の請求を支持

2024年1月25日
 Amazonはスペインで、Amazon Flexと宣伝的に呼ばれる労働モデルで、配達ドライバーは自分の車で、同社のAPPを使って荷物を配達するよう強制され、その働き方を設定したことで、2度目の、そして最後の有罪判決を受けた。すでに2023年2月にも同じ理由で断罪されている。
 マドリードの社会裁判所第42号は、本日公表された1月22日付判決第9/2024号において、社会保障局(Seguridad Social)による拠出金請求を認め、その立場を全面的に支持し、多国籍企業によって疑問視されていた労働者3,688人の労働諸権利(derechos laborales)を回復するとともに、彼らを代表するUGT労働組合の立場を確認した。
もちろん、高等裁判所社会法廷に上訴することは可能であるが、私たちはこの判決を重要な一里塚(un hito important)と考えている。というのも、この特定の企業におけるこの痛ましいエピソードに終止符が打たれたからである。私たちは労働者が、この「偽装自営業」期間に奪われたその他の権利(例えば休日)について会社に請求できる可能性を分析するためにも、この会社や他の会社で現在の労働条件(労働協約、下請契約など)と闘って交渉するためにも、引き続き当組合に依頼することを勧める。
 もう一度、私たちが常に労働組合として擁護してきた立場を明らかにする。つまり、コンピューターアプリケーション、アルゴリズム、またはAIがあなたの労働条件を支配する場合、あなたは明らかにその会社の従業員であるが、それだけでなく、あなたの権利が脅かされているので、いわゆる「ライダー法」でスペインで先駆的に実施されたように、オートメーションを透明化して制御する規制と労働協約を確立する必要がある。そして、それは、明確なデジタルプラットフォーム指令によってヨーロッパ全土で実施される必要がある。
UGTは、Amazon、Glovo、Uber、YouTubeなど、デジタル化の過程にあるあらゆる企業と同様に、デジタル・プラットフォームでサービスを提供する労働者の権利が尊重されるよう闘い続け、彼らの労働が安全かつ尊厳のある条件で提供され、残念なことに、投資と革新の輝かしい言説の下に隠されたこれらの新しいビジネス形態で非常に頻繁に発生している労働搾取の状況を回避する。デジタル・プラットフォームに関する将来の欧州指令は、人工知能法と同様に、雇用関係の兆候を明確に判断してこの保護を強化し、何百万人もの労働者、企業間の公正な競争、そして民主主義自体の利益のために、この大規模な不正行為(fraude masivo)が消滅することを確実にする手助けをしなければならない。  (原文は、UGT 2024年1月25日

小括

 Amazon Flexの運転手を「偽装自営業」だと認定したマドリード社会裁判所の二つの判決を検討してきました。とくに注目されるのは、スペインでは、労働監督局、労働組合が積極的に問題を受け止めて対応をしていることです。これは、日本やアメリカだけでなく他の欧州諸国に比べても際立ったスペインの独自的な点であり、私は、きわめて先駆的な対応だと思います。とくに、自営業を偽装した、労働法や社会保障法が定める使用者責任回避の問題を正面から捉えず、曖昧な「フリーランス」などと呼んで、むしろ、不安定・劣悪な働き方を追認し、さらに増やしていこうとする対応とは対照的です。実は、スペインでも、経営者の一部には、プラットフォーム企業による新たなビジネスモデルを肯定し、これを規制する対応に批判的な議論があり、激しい論争が起きていました。

 こうした論争を背景に労働行政→裁判所判決→立法へと重要な転機を越えて大きく前進してきたスペインの「偽装自営業」をめぐる状況や議論の内容は、日本ではほんとど知られていません。しかし、世界的にはこうしたスペインの経験は大いに注目され、EUやILOでの新たな展開でも多く引用されています。そこで、スペインの「偽装自営業」をめぐる動きと議論について引き続き調べてみることにします。(未完・続く)

参考文献・情報

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