オランダの裁判所でUberが敗訴。それを受けて欧州労連(ETUC)が声明(2021.9.13)

 欧州諸国では、この数年間、プラットフォーム企業を通じて労働を提供する人々が「自営業者(self-employed)」とされ、既存の労働法や社会保障法の適用を受けず、不安定で劣悪な労働条件で働かされることが大きな社会問題になってきました。
 この間、労働組合の支援もあって各国で、プラットフォームで働く人々が、労働法や社会保障法の適用を求めて、自らが「労働者」であると主張して各国で裁判を提起してきました。その判決が、各国で出されていましたが、ほぼ共通して、Uberなどのプラットフォーム企業を通じて働く人々の「労働者性」を認めるものでした。
 Uberの運転手については、イギリス、フランスなどの最高裁判決が相次いで出され、二輪車による配達ライダーについても、イタリア、スペインなどで労働者性を認める判決、さらには立法が生まれています。そうした中、EU(欧州連合)ではプラットフォームでは働く人の地位、権利を守るための「EU指令」をめぐって、議論が高まり、早ければ今年中に指令が決まる直前の段階に至っています。
 そうした中で、オランダのUber運転手の労働者性を認めるアムステルダム地方裁判所の判決が出されました。詳しくは、 オランダ裁判所がUberドライバーは従業員と判断、Uberは控訴の意向(TecCrunch 2021年9月14日)や、以下のニュース動画を参照して下さい。
 これまで、このブログでも、関連した記事を掲載してきました→検索結果
 この記事では、こうした背景の中で、ETUC(欧州労連)のホームページにあった記事を日本語訳してみました。
 日本では、欧州と比べて、フリーランスへの保護がきわめて貧弱です。今年、政府が出した「フリーランス・ガイドライン」では、労災保険加入を認めず、保険料を使用者が負担せず、働く側が全額負担する「特別加入」の対象として拡大しただけです。これは、Uberなどプラットフォーム企業が望むものと同じで、きわめて中途半端な対策に過ぎません。→第51回 「死ぬまでギグ・ワークの劣悪環境で働け」ということ?! ー 政府が示した「フリーランス・ガイドライン」(案)を考える
 日本との比較で欧州の解決方向に注目していく必要があると思います。参照→脇田滋「フリーランス・プラットフォーム労働をめぐる問題点と権利運動の課題」月刊全労連2021年4月号」(文責 swakita)

 テレ東BIZ 2021/09/14
World Business Watch: Uber drivers are employees, not contractors, says Dutch court | Latest News 2021/09/14

欧州労連(ETUC) オランダでUberが敗訴した後、EUプラットフォームのルールが急務
13.09.2021 プレスリリース


欧州各国の労働組合は、本日、Uberによるドライバーの搾取に対して今年3回目の大勝利を収めた。これは、プラットフォーム企業による偽装自営業の紛争を終わらせるためにEU(欧州連合)が緊急の対応をする必要性を示している。
Uberの運転手を代理してFNV労働組合が提起した訴訟では、アムステルダムの裁判所は「Uberと、その運転手の間の法的関係は、雇用契約のすべての特性を満たしている」との判決を下した。
オランダの判決は、Uberに対する労働組合の勝利としてベルギーと英国での問題に続くものであり、また、スペインとイタリアでのDeliverooとGloboを相手とする同様な問題での勝利に続くものである。
そして、デジタル労働プラットフォームを通じて働く人々の労働条件を改善する方法に関する欧州委員会の協議第2段階の水曜日(9月15日)の締め切りの直前である。


ETUC協議の回答では、次のような指令が必要である。

  • すべてのデジタル労働プラットフォームにおいて雇用関係の推定をする
  • 労働者から使用者に雇用上の地位に関する立証責任を転換させる
  • Uber&coがロビー活動を行っているような雇用される者と自営業者の間に第3の労働者カテゴリーを創ることを含まない

ETUC連合事務局長のLudovic Voetは次のように述べている。

「今日の判決は、プラットフォーム企業が、搾取的雇用慣行について法的に敗北した多くの事例の最新のものである。」
「各国の国内裁判所と政府は、一貫して、プラットフォーム企業が適切な賃金と労働条件についての労働者の権利を無視していると認めています。」
同氏は、「すべての加盟国での偽装自営業者の紛争に終わらせるために、欧州全体の行動が必要だということが、もうこれ以上明らかなことはあり得ません。」
「〔欧州〕委員会は、破綻したビジネスモデルを救おうとするプラットフォーム企業の必死の最後のロビー活動を拒否し、すべての労働者が、公正な賃金と労働条件に対する基本権を確実に享受できるようにしなければなりません。」
「なぜなら、すべてのデジタル労働プラットフォームは、使用者であるか、又は、使用者になる可能性があるので、雇用関係の推定と立証責任の転換は、一方では、自営業者と誤分類された労働者を保護することができ、そして、他方では、真の自営業者を、その労働条件の予期せぬ変化から保護できる唯一の政策ツールです。」

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