書店で目に飛び込んできたのは、「働き方―『なぜ働くのか』『いかに働くのか』(2009年出版)、平積された本でした。「働き方」という表題に引かれ手にして、著者である稲盛和夫氏の名前にビックリしました。1470円もの本でしたから、立読みを決め勘どころを素早くメモにしました。
JAL“奇跡の再生”礎となった実践哲学、80万部突破、中国2500万部突破と謳い、極め付きは「人生で『価値あるもの』を手に入れる方法」とセールスポイントが躍っていました。
稲盛和夫氏といえば、京セラやKDDIを設立した実力者で、現在は日本航空会長として、JAL乗員・客乗の165名を整理解雇し、労働者を路頭に迷わしたうえに、空の安全を脅かしているその人です。しかも、今年2月には記者会見で、「会社業績は月を追うごとに良くなってきている。(整理解雇となった)160人の方々の雇用を続けていっても、会社経営上、不可能かというと、そうではないのは皆さんもお分かりになる。私もそう思う」と発言した人です。
加えて、別冊「生き方―人間として一番大切なこと」を出版していますが、最近「原発は、必要悪。原発なしで高度な文明社会を維持していくことは不可能だ」と財界のもうけのために原発を推進、福島原発事故が収束もせず、避難生活者のことも顧みず、とんでもない発言をしている人です。
問題は、稲盛和夫氏のどこに人は引き付けられているのか、です。こんな一節があります。「働くことは『万病に効く薬』」だとして、「愚直に、まじめに、地道に、誠実に」働けば、神様は絶対に幸福への切符を差し出してくれる」と書かれ、「稲盛和夫名言」では「自分の運命は自分で管理しなさい、でなければ、あなたはだれかに自分の運命を決められてしまう」というものまであります。
稲盛氏は堺屋太一氏との関わりもあることから考えると、「橋下・維新の会」押し出しとも関わっているのかと考えてしまいます。
日本維新の会が掲げた「公約素案」にもある「自立する個人」「自立する地域」「自立する国家」に誘導するつもりでの書であるのか、と思いたくもなります。読み手は、不安から来る「働き方」を捜しているうちに、誰かに強く教えて欲しいとの思いからこの書を手にするのでしょうか。
他者に任せるように「働き方」を考えるのではなく、現実の「働き方」「働かせ方」のどこに、問題があるのか掴んで欲しいと思います。真の働くルールに基づく働き方を、働く意欲と生活がむすびつく社会と政治のあり様を、私たちと一緒に考えて欲しいと立読みに疲れながら強く思いました。(副会長 服部信一郎)
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アカンやないか!?今の働き方と貧困
日 時: 11月30日(金)午後6時半〜8時時45分
会 場: エルおおさか(大阪府立労働センター)南館5階ホール
京阪・地下鉄谷町線「天満橋駅」より西へ300m
地下鉄堺筋線「北浜駅」より東へ500m
プログラム:
1.真剣対談
竹信三恵子さん(和光大学教授、元朝日新聞記者)
小久保哲郎さん(弁護士・生活保護問題対策全国会議事務局長)
2.駆け込みスピーチ 湯浅誠(反貧困ネットワーク事務局長)さん
3.参加者討論
資料代: 500円(学生、失業者、生活保護利用者は無料)
主 催:働き方ネット大阪(https://hatarakikata.net/
連絡先:民主法律協会(TEL06-6361-8624)
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