東京新聞 2014年10月1日
労働側 「残業代ゼロ 過労死招く」
経営側 「世界有数の環境を実現」
労働時間でなく成果で評価する「残業代ゼロ」制度創設などを話し合う厚生労働省の審議会が三十日開かれ、経営側と労働側の意見が激しく対立した。この日は、企業が派遣労働者を使い続けられる労働者派遣法改正案に対し、国会でも野党が政府を追及。労働者の雇用のあり方をめぐる議論が、国会の内外で繰り広げられた。 (鈴木穣)
三十日にあった労働政策審議会の労働条件分科会は、長時間労働を抑制する方策を議論した。厚労省は「残業代ゼロ」制度よりも、労働者を守る長時間労働の抑制策の議論を先行させた。反対論が強い残業代ゼロ制度を導入しやすくする狙いがある。
抑制策は残業代を割り増しして残業させないようにするもので、現行は対象企業から中小企業は除外されている。分科会では、経営環境から難色を示す経営側と、適用されない企業があることは法律の二重基準だとする労働側のそれぞれの主張はかみ合わなかった。
分科会では今後、政府の成長戦略に盛り込まれたこの他の労働時間規制の緩和策の議論が控える。政府は来年の通常国会で関連法の改正を目指すが、残業代ゼロ制度などは労働環境の悪化を招く恐れがあると指摘される。
三十日の議論でも、経営側が「成長戦略には、すべての労働者が力を発揮できる世界トップレベルの雇用環境の実現が盛り込まれた」と労働時間の規制緩和を進めたい考えを示したのに対し、労働側は「世界にないもので日本にあるものは過労死だ」と反対した。
一方、衆院の代表質問では、二十九日に閣議決定されたばかりの労働者派遣法改正案が取り上げられた。改正案は三年ごとに人を入れ替えれば、派遣先企業は派遣労働者を使い続けられるようにする内容だ。
改正案に反対する民主党の海江田万里代表は「派遣で働いている人は一生派遣で働けと言うのか」と批判。残業代ゼロ制度については「過労死防止法に逆行する」とただした。
安倍晋三首相は「派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援するもので、指摘はまったく当たらない」と説明。残業代ゼロ制度に関しては「希望しない人には適用しない」と述べた。