大学生の就職が厳しい状況が続く中、就活生を支援しようと、NPO法人・自殺対策支援センター「ライフリンク」が、就活中の学生に聞き取り調査を実施する。就活失敗が原因とされる自殺の防止も視野に、就活の悩みや不安を分析しケアするのが目的だ。職業観や人生観も聞き、さらに他国と比較もして、日本の若者が感じる「生きづらさ」や価値観を浮き彫りにした上で、支援の一助にするという。
文部科学・厚生労働両省の調べでは、昨春卒業した大学生の就職率は93.6%(前年度比2.6ポイント増)。また、今春卒業予定の大学生の昨年10月時点の就職内定率は63.1%(同3.2ポイント増)で、回復傾向は見られるが、依然厳しい状況が続いている。
警察庁によると、11年の10〜20代の自殺者は3926人で前年より134人増えた。「就職失敗」が原因とされたのは、07年の60人から11年の150人と2.5倍に。大学生など学生は同16人から同52人と増えている。
調査は1〜2月、大学生と大学院生の計100人程度を対象に実施し、3月末予定のシンポジウムで結果を発表。内定を得る学生が増える夏に追跡調査もして対応を検討するという。心理学などを研究する学生らも調査に参加する。
60項目程度の質問を予定し、「就活の不安」や「親からの重圧」について実感を探る。このほか、キャリアプラン、働くことや社会へのイメージ、大学生活の満足度も聞く。「死にたい」と考えた経験の有無や受診歴、頼れる人の存在など、深刻なストレスに関連した質問も用意。また、韓国や自殺率が日本より大幅に低いトルコでも同じ調査をして比較することも検討中だ。
調査に参加する一橋大4年、松井沙斗美(さとみ)さん(23)は商社から内定を得た。企業の採用基準が不明確な場合が多く、真面目な人ほど内定を得られなかったときに自己否定につながる可能性が高いと感じたといい、「調査で就活生の実情を社会にもっと認識してもらえたら」と話す。
ライフリンクの清水康之代表は「社会を意識する敏感な時期の学生に話を聞くことで、就活生だけではなく若者世代の生きづらさや価値観を浮き彫りにしたい」と話している。【苅田伸宏】