(働く人の法律相談) シフト組む店長、残業代はなし?

朝日新聞 2013.11.18

■現実的に労働時間の裁量なければ請求を
 私はチェーンレストランの店長です。シフトを自分で組んでいますが、人件
費を浮かせと社長の要求が厳しく、残業代の出ない私が、アルバイトを雇う代
わりに長時間働き続けています。本当に残業代はもらえないのでしょうか。

 こういう悩みが寄せられたことがあります。労働基準法41条では、監督も
しくは管理の地位にある者(管理監督者)には労働時間や休憩、休日に関する
規定は適用しないと定められています。1日8時間・週40時間勤務といった
制限や、週1日は休みという労働基準法の決まりが適用されず、割増賃金など
を支払わなくてよいということです。

 相談の場合、社長は、管理監督者なら労働時間規制の適用除外ということを
言いたいのでしょうが、それに当たらない可能性もあります。管理監督者とい
うのは狭い概念ですから。

 これまで積み重なってきた判例では、(1)労働時間規制の枠を超えて活動
をすることが求められてもやむをえないような重要な職務と責任を有するか。
つまり経営者と一体的な立場か。(2)時間規制になじまない勤務形態か。つ
まり労働時間に関する自由な裁量があるか(3)ふさわしい給与をもらってい
るか――。これらの観点から、肩書きにとらわれず勤務実態に即して判断されて
きました。管理監督者であると認められた例は多くありません。

 仮に自らシフトを組むことができて、ある程度労働時間に裁量がある立場に
あったとしても、人件費などのノルマを課せられていた場合など、裁量の余地
は極めて少ないと言えます。こういうケースでは、相談者には残業代はぜひ請
求すべきだとアドバイスします。

 残業代を払わなければならないとなれば、人件費を節約したい社長もお店の
体制と労働時間も考え直さざるを得ないでしょう。法が割増賃金を払わせるの
は、使用者が労働者を酷使することの歯止めとするためですから。残業代には、
労働者の休む時間を確保するという役割があるのです。(弁護士・木下徹郎)

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