毎日新聞 2014年01月24日
配置転換された上、長時間の面談で退職を求められた大阪府内の30代の元会社員のうつ病発症について、労災と認めなかった泉大津労働基準監督署の処分が、不服審査で先月取り消されたことが分かった。面談は録音されており、労基署はその提出を受けながら退職強要でないと判断していたが、審査結果を受けて労災認定した。
元会社員を支援した関西労働者安全センターは「労基署は録音を無視し、会社側の言い分をうのみにした」と批判した。泉大津労基署は「個別事案についてコメントできない」としている。
不服審査の決定書によると、元会社員は2008年に衣料メーカーに入社したが、11年5月に子会社の物流会社に配置転換された。1カ月後、上司から面談で退職を求められ、拒否しても「決着するまでテーブルを離れない」と言われた。その後うつ病と診断された。
労働組合の助言で元会社員は面談を録音していた。しかし労基署は、面談が長時間になったのは退職の勧めに元会社員が明確に答えなかったためだと、会社の説明に沿って判断し、昨年2月に不認定を決めた。一方、不服申し立てを受けた大阪労働局労災保険審査官は録音などを基に、元会社員が働く意思を明確に示し、体調不良を訴えても面談が続いたと認め、配置転換や退職強要でうつ病を発症したと判断した。
センターによると、録音などでは面談は3時間半に及び、元会社員はその後倒れたが放置され、同僚によって救急搬送されたという。
退職強要が精神障害の要因になったかが争われた労災案件について、2012年度に全国の労基署が決定した31件のうち、認定は8件。センターは「退職強要は心理的負担が強いのに認められない傾向がある」と改善を求めている。【大島秀利】