朝日新聞 2014年2月19日
がん患者で働いている人は全国で32万5千人いることが、厚生労働省の推計でわかった。現役世代で新たにがんと診断される人が年約22万人いるのに比べると少なく、医療技術の進歩で長生きする人が増えるなか、治療と仕事を両立できる環境づくりが必要な実態が改めて浮かんだ。
厚労省が2010年の国民生活基礎調査を基に初めて集計し、17日に開いたがん患者の就労支援の検討会で報告した。仕事をしながら、がん治療のため通院している人は男性14万4千人、女性18万1千人。年代別では男性は60代が最多で6万1千人、女性は50代が7万人と多かった。
がん患者の3人に1人は現役世代の20〜64歳が占めている。診断後に3割以上が仕事を辞めたとの調査もあるが、全国的な実態は不明だった。
国の「がん対策推進基本計画」は働く世代の支援を柱の一つに掲げるが、内閣府の13年の調査では、一般成人の7割が治療と仕事の両立は難しいと感じると答えている。検討会委員の高橋都・国立がん研究センターがんサバイバーシップ支援研究部長は「職場に相談窓口を設けることが大切。患者はできること、配慮してほしいことを職場にきちんと伝えてほしい」と話す。(辻外記子)