SankeiBiz 2014.5.28
ユニクロが開いた地域正社員の選考会=28日、東京都千代田区(平尾孝撮影)(省略)
カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは28日、東京都千代田区で開催した「地域正社員」の選考会を公開した。転勤を伴わず、勤務地を限定するほか、短時間勤務などを認めるもので、政府の規制改革会議や成長戦略の中で議論されている「限定正社員」と同様だ。人手不足に直面する小売りの現場では、「地域限定」により人材を確保する動きが強まっている。
28日の選考会には、事前応募の既卒者60人が参加した。この日は面接し、後日インターネットを使った試験が行われ、内々定がでるという。給与は月額17万7500円からで、福利厚生面ではほぼ正社員と同等。勤務体系も「1日6時間、週4日勤務も可能」(同社)だという。
ファストリはこれまで「全社員がグローバル人材でなくてはならない」として、店長を中心に国内外で活躍できる人材の登用を進めてきた。転勤を伴わない地域限定の正社員制度は平成19年から導入していたが、対象はフルタイムの勤務者のみで、パートやアルバイト社員の離職を食い止められなかった。
ファストリは時短勤務などに制度を広げることで、パートやアルバイトなど約1万6千人の非正規社員を2〜3年ですべて正社員化する考えだ。
ファストリが方針転換した背景には人手不足がある。製造小売り(SPA)を展開するユニクロにとって、販売員の高度なサービスが不可欠。キャリアがあり、地域の来店客と密接な関係を持つパートやアルバイトを確保するため、「日常生活で成長する人生も認める」(柳井正会長兼社長)とグローバル人材一辺倒の方針を転換した形だ。
小売業や飲食業では、化粧品製造・販売のファンケルが地域限定の正社員制度を始めたほか、うどん・そばチェーンのグルメ杵屋も、中途採用者を対象に地域限定の勤務制度を新設する予定だ。働き方の自由度を上げる制度として注目を集めている。
労働問題に詳しい日本総研の山田久チーフエコノミストは「こういった人手確保の対策をとらなくては、デフレが終わる中で生き残れないことは確実だ」と指摘する。その上で「地域正社員という働き方で生産性を高め、収益向上ができれば、今後、日本企業に共通の課題となる人手不足に対応するビジネスモデルになり得る」と期待を寄せた。