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朝日デジタル 2015年4月9日
安倍晋三首相は9日の参院予算委員会で、国立大学の入学式や卒業式での国旗掲揚や国歌斉唱について、「正しく実施されるべきだ」と述べた。これを受け、下村博文文部科学相は「広く国民に定着し、国旗国歌法が施行されたことを踏まえ、各大学で適切な対応がとられるよう要請したい」と話した。
次世代の党の松沢成文氏の質問に答えた。松沢氏は「国立大学の入学式卒業式に国旗国歌があるのは当然」と指摘。安倍首相は感想として、「税金でまかなわれていることに鑑みれば、教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきだ」と応じた。
文科省は今後、学長が集まる会議や各大学への通知など何らかの形で国旗・国歌の意義を伝え、理解を求める方針。ただ、大学の自治があるとして、「強制や指導はできない。最終的な判断はゆだねることになるだろう」(担当者)という。
文科省によると、小中高校は学習指導要領で「入学式や卒業式などでは国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指導する」と決められているのに対し、大学にはルールがない。昨年度から今年度にかけての卒業式や入学式での国立大86校の対応を調べたところ、国旗を掲揚していたのは七十数校、国歌を斉唱したのは十数校だった。(高浜行人、石山英明)
■「大学の自治を脅かす」
元名古屋大副総長の森英樹・名古屋大名誉教授(憲法学)の話 政府は要請をするべきではない。憲法の保障する「学問の自由」を実現する大原則が「大学の自治」であり、学内の運営にかかわることはあまねく大学が自主的に決めるのが筋だ。要請されても自主的な判断を貫ければ問題ないのかもしれないが、現実の大学行政を考えると、拒否したら財政誘導型の圧力があるのではないかと大学側が考えても不思議はない。実質的に拒否できない可能性があり、要請は大学の自治を脅かすものだ。こんな答弁が平然とされる嫌な時代になってしまった。(高浜行人、石山英明)