派遣モデル殺害:厚労省審査会が労災認定 労基署判断覆す

http://mainichi.jp/select/news/20150722k0000m040144000c.html
毎日新聞 2015年07月21日 22時53分

  モデル事務所に所属していた名古屋市西区の大学生、朝日なつみさん(当時21歳)が2011年8月、派遣先の男に殺害された事件で、遺族側弁護士は21日、厚生労働省労働保険審査会が労働基準監督署の判断を覆し、朝日さんの死を労災と認定したことを明らかにした。
 
 遺族側弁護士によると、朝日さんは愛知県一宮市の丹羽雄治受刑者(49)=殺人罪などで懲役27年が確定=の自宅で刺殺され、遺族は12年11月、名古屋北労基署に遺族補償の支給を請求。労基署は、モデルが個人事業主の性格が強いなどとして不支給を決定した。

 これに対し、労働保険審査会は今年1月、モデル事務所「ヴィズミックモデルエージェンシー」(東京)の指示で、朝日さんがモデル以外にも受付業務などの仕事にも従事していたことなどから、事務所との間に使用従属性のある労働者にあたると判断。被害は業務に起因するとして、労災保険の対象と裁決した。

 一方、朝日さんが死亡したのは、事務所側が安全配慮義務を怠ったためとして遺族が1億円の損害賠償などを求めていた訴訟は21日、名古屋地裁(中村さとみ裁判長)で和解が成立した。

 遺族側弁護士によると、モデル事務所と▽和解金の支払い(金額は非公表)▽遺族への謝罪▽所属モデルの安全対策を取る▽モデル業界と事務所の安全対策の取り組みを書面で定期的に遺族に報告する−−などで合意した。

 遺族は他のモデル事務所が丹羽受刑者の依頼を不審に思い、派遣に応じていなかったことなどを挙げ、事務所が安全確保を怠ったと主張、12年12月に提訴していた。朝日さんの姉沙織さん(28)は21日、名古屋市で記者会見し「納得できない面もあるが、これで妹を安心させられる。事務所は所属モデルの大切な命を預かっていることを忘れないでほしい」と話した。【大野友嘉子】

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