朝日DIGITAL 2017年2月3日
1年前に石川県野々市市立富陽小学校の教員だった山口聡美さん(当時51歳)が勤務中に倒れて亡くなったのは過重な勤務が原因として、遺族が命日の3日、市役所を訪れ、民間の労災にあたる公務災害認定を地方公務員災害補償基金県支部あてに申請した。
小中教諭の7割、週60時間超勤務 医師や製造業上回る。
申請した夫で白山市議の俊哉さん(51)によると、聡美さんは2014年度から同小に勤務し、5クラスある1年生の学年主任を務めていた。15年の夏以降、担任2人の産休などで残業や自宅での仕事が重なり、土日も学校に行くことがあった。昨年1月20日、校内での研究会中に倒れて意識不明となり、2月3日に死亡した。死因はくも膜下出血だった。
俊哉さんは「本人は毎年人間ドックを受け、健康には気を使っていた。学校の勤務時間内の会議中に倒れて亡くなったので公務災害だろう」と、認定申請の準備を進めてきた。
市教委は昨年6月に市学校職員公務災害調査委員会を設置。調査委は検証の結果、「業務と病気との因果関係を認める余地はあると考えられる」との報告書を提出していた。
この日、俊哉さんから申請書類を受け取った堂坂雅光教育長は「山口さんは子どもたちに慕われていた。教育に対する情熱もあったので残念だ。情熱を引き継いで、子どもたちのための教育行政を進めていきたい」と述べた。市教委は聡美さんの死を受け、昨年4月から午後7時以降の時間外勤務や休日出勤も記録するよう市内の小中学校に指示。長時間勤務で疲労がたまっている教員がいないか把握し、そうした教員がいれば個別に指導するなどの対応も取ってきたという。
命日までの申請を目指してきた俊哉さんは「あとは基金がどういう判断をするか。これから学校はタイムレコーダーなどできちっと勤務時間を把握してほしい。そのうえで負担軽減や先生を増やすことに取り組んでいってもらいたい」と話した。(伊藤稔)