長時間労働やパワハラでうつ病 元社員、西濃運輸と和解

 
「まさか自分がうつ病になるとは思ってもみなかった」と語る原告の男性=大阪府茨木市(写真省略
 


物流大手「西濃運輸」(本社・岐阜県)の元従業員の男性(51)が、長時間労働やパワーハラスメントでうつ病になったとして、同社と上司2人に計約1億円の損害賠償を求めた訴訟が10日、大阪地裁で和解した。会社側が責任を認めて謝罪し、解決金2600万円を支払う内容という。


訴状や和解条項などによると、男性は大阪府の西濃運輸摂津支店で、2007年から長距離輸送のトラック運転手として勤務。時間外の労働時間は11年6月までの1年間で月平均約120時間に上り、190時間の時もあった。

男性は11年6月、三重県内の高速道路を走行中、並走していた車から「当て逃げされた」と警察に通報された。男性は身に覚えがなく、車体に傷がないことから「事実無根」と否定したが、上司は通報者が得意先だったため、当て逃げを認めて謝罪するよう強要。男性は納得できないまま従ったが、上司はその後も激しく叱責(しっせき)し、反省を促すという理由で3日間の草刈りを命じたこともあった。


男性は翌月にうつ病と診断され、休職。長時間勤務や上司の言動が原因だったとして14年6月に提訴した。男性は同年12月に退社し、現在も治療を続けているという。


和解条項では「確認を十分せずに事故と断定し、警察への申告や炎天下での草むしりを強制し、深刻な精神的打撃を与えた」として上司2人が男性に謝罪。会社は「長時間の過密労働に従事させながら心身の健康に配慮しなかった」とうつ病発症の責任を認めた。


男性は同居する女性(55)と時々外出するが、帰宅すると必ず体の痛みを感じ、数日間ベッドから動けなくなるという。朝日新聞の取材に対し、「会社が非を認めてくれたのはありがたいが、長引きすぎた。今回の和解を社員の待遇改善に生かしてほしい」と話している。


西濃運輸は「元社員の方の意向を尊重し、早期解決が最良と判断し和解することとした。同様の事例が起きないよう社員教育などに努めてきたが、今後も一層取り組みを強化する」とコメントした。(釆沢嘉高)

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