子育て支援策 新レポート 「家族にやさしい政策」で先進国を順位付け
上位はスウェーデン、ノルウェー、アイスランド
日本は父親の育児休業制度1位、取得率は低い
日本ユニセフ協会 【2019年6月13日 ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童機関)は本日発表した報告書の中で、データが入手可能な31の先進国のうち、最善の「家族にやさしい政策(family-friendly policies)」を有している国として、スウェーデン、ノルウェー、アイスランド、エストニアおよびポルトガルを、逆に政策が最も不十分である国としてスイス、ギリシャ、キプロス、英国、アイルランドを挙げています。
「家族にやさしい政策」で先進国を順位付け
『先進国における家族にやさしい政策(原題:Are the world’s richest countries family-friendly? Policy in the OECD and EU)』
ユニセフのイノチェンティ研究所が作成した報告書『先進国における家族にやさしい政策(原題:Are the world’s richest countries family-friendly? Policy in the OECD and EU)』は、経済協力開発機構(OECD)または 欧州連合(EU)に加盟する国を、「家族にやさしい政策」を基準に順位付けしています。家族にやさしい政策には、両親の有給育児休業期間や、0歳から6歳までの子どものための就学前教育・保育サービスなどが含まれます。
報告書は、ユニセフによる乳幼児期の子どもの発達に関する政策およびプログラムの一部として、また、幼い子どもを持つ家族が子どもの健康な脳の発達に必要な養育環境と、良い刺激となる経験を子どもに提供できるよう支援することを目的とし、今年で3年目に入ったキャンペーン「すべての子どもにとって”はじめ”が肝心(Early Moments Matter)」の一環として作成されました。
「子どもたちの脳の発達にとって、ひいては彼らの将来にとって、人生の最初の時期より重要な時期はありません」とユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォアは述べました。「各国政府は、親が幼い子どもたちのための養育環境を整えるのに必要な支援を提供しなければなりません。そして、それを実現するためには民間セクターの協力と影響力が必要なのです」
家族にやさしい政策は、親子の絆を強め、家族や社会の結びつきを強めます。ユニセフは、両親が少なくとも6カ月間の有給育児休業(全額支給ベースに換算した期間。本信および報告書ではすべて同様)が取得できること、生まれた時から小学校にあがるまでのすべての子どもが通うことが可能な、質の高い、安価な就学前教育・保育サービスを提唱しています。ユニセフは「すべての子どもにとって”はじめ”が肝心キャンペーン」と合わせて、各国政府、市民社会、学識者、および政策に重要な影響力をもつ民間セクターと協力して、家族に対するより多くの投資を奨励しています。
有給育児休業取得の厳しい現状
Young family with their first-born child (2 y.o). The father is engaging in reading and playing activities; baby is very responsive and intrigued. The family is supported with counseling, practical pieces of advice and emotional support by a visiting nurse from the UNICEF-supported Center for Maternal and Child Health in Sliven.
© UNICEF/UN039273/Popov
看護師が定期的に自宅訪問し、子育てのアドバイスを受けるブルガリアの家族。
報告書は、先進国41カ国における両親の育児休業制度について分析し、母親が少なくとも6カ月間の有給育児休業期間を取得できる国は全体の半数にとどまっていると指摘しています。
母親に最も長い有給育児休業期間を提供しているのはエストニアで85週間、次いでハンガリーが72週間、ブルガリアが61週間となっています。米国は、本調査に含まれる国の中で唯一、母親・父親への有給育児休業に関する政策がない国です。
日本は父親の育児休業制度1位、取得率は低い
報告書はまた、父親も対象となる有給育児休業制度があるにも関わらず、多くの父親が取得できていない実情もあきらかにしています。
日本は父親に6カ月以上の(全額支給換算)有給育児休業期間を設けた制度を整備している唯一の国ですが、2017年に取得した父親は20人に1人にとどまっています。2番目に長い父親の育児休業制度を有する韓国でも、実際に取得した父親は育児休業を取得した親全体の6人に1人に過ぎません。
父親の育児休業制度は、父親と赤ちゃんとの絆を深め、乳児・子どもの健やかな成長、母親の産後うつ症状の軽減、ジェンダー平等の促進に貢献すると報告書は述べています。
職場復帰を控えて保育園・幼稚園を探す親の中には、その費用が最大の障害になることがあります。29カ国のデータによれば、3歳未満の子どもを持つ親が、保育園・幼稚園などに入れない理由として費用を挙げた割合が最も高いのは英国でした。一方、チェコ、デンマーク、スウェーデンでは、費用を理由とした人は100人に1人にも満ちませんでした。
家族にやさしい政策改善のために
ECD(乳幼児期の子どもの発達)のプログラムを受ける2歳のセルバちゃん。
© UNICEF/UN0312687/Sokol
ECD(乳幼児期の子どもの発達)のプログラムを受ける2歳のセルバちゃん。
報告書は、各国政府が家族にやさしい政策を改善するための指針を示しています。
両親を対象とした少なくとも6カ月間(全額支給換算)の、国全体をカバーする有給育児休業制度を法律で定めること。
家族の置かれた環境に関わらず、すべての子どもが、質の高い、年齢に適した、安価で、アクセスが可能な保育園・幼稚園に通えるようにすること。
育児休業の終了時期と幼稚園・保育所に通い始める時期の間が開かないようにし、子どもたちが中断なく成長していけるようにすること。
母親が職場復帰する前も後も母乳育児ができるように、十分な有給育児休業期間、職場での休憩時間の保証、授乳あるいは搾乳が安全かつ適切に行える場所を確保すること。
各国の家族にやさしい政策に関するより多くのより良いデータを収集し、プログラムや政策をモニターし、各国比較をできるようにすること。
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■データソース
本報告書の母親・父親の有給育児休業制度および3歳未満および3歳から小学校就学年齢までの保育園・幼稚園等への参加率に関する分析は、2016年の経済協力開発機構(OECD)および EU統計局(Eurostat)のデータを基にしています。日本における男性の育児休業取得状況に関しては三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査」を基にしています。
■日本について
日本については、比較可能なデータが足りないため、総合順位はついていません。母親のための育児休業制度については16位、父親のための育児休業制度については1位(いずれも41ヵ国中)となっています。
■ユニセフ・イノチェンティ研究所
イノチェンティ研究所は、世界の子どもたちの権利を推進するユニセフのアドボカシーを支えるために設立されました。子どもの権利と開発に関する諸問題について調査し、ユニセフおよびパートナーのアドボカシー活動の戦略的方向性、政策およびプログラムの形成を支え、特に最も弱い立場にある世界のすべての子どもたちに必要な世界的な調査および政策課題を提供しています。