元職員を直撃! 日本全体で毎月130億円を「売り上げ」る、技能実習「監理団体」の闇
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2019/10/20(日) 8:33配信HARBOR BUSINESS Online
元職員を直撃! 日本全体で毎月130億円を「売り上げ」る、技能実習「監理団体」の闇
まちゃー / PIXTA(ピクスタ)
奴隷労働が横行する技能実習制度で甘い汁を吸う連中
現在、日本で働く外国人労働者が増加している。特にアジアの途上国から多額の借金をして日本に出稼ぎに来る技能実習生と留学生が急増している。だが、夢見た日本で待っているのは「奴隷労働」である。
保守言論誌『月刊日本』では、保守の立場からこの問題を常に追及。1か月の給料がマイナス2万円の明細書という衝撃的な実態を描き、「低賃金」どころか「無賃金」という奴隷労働の実態を浮き彫りにした第一回は大きな衝撃を与えた。
そして前回は、技能実習制度は「現代の奴隷制」であると問題提起をした。その中心を担うのが、監理団体の存在である。
もともと監理団体とは、「技能実習生の実習活動の監理を行う非営利団体」である。監理団体にもいくつか種類があるが、その大半は中小企業団体(事業協同組合)だ。現在、監理団体は国による許可制になっており、2019年10月時点で認可法人「外国人技能実習機構」(OTIT)から許可を受けた監理団体は全国で2654ある。
この監理団体がさまざまな問題を起こしているのは周知の通り。しかしその実態はあまり知られていない。本誌も監理団体の調査を中々進めることができなかったが、今回、監理団体の元職員に話を聞くことができた。今月号では、その内容を紹介しながら、監理団体の実態に迫りたい。
監理費の総額は毎月130億円
――どういう団体に勤めていたのか?
「私がいたのは関東で建設業を中心とする監理団体だ。実習生の人数は約3000人、契約企業の数は北海道と沖縄を除く全国400社で、監理団体としては最大規模だ。いま監理団体は全国に2600ほどあるが、1000人規模の団体は5%以下。500〜1000人規模もそれほど多くなく、大半は100〜500人規模だろう」
――売上と年収は?
「職員は約100人で、年収は役員1000万、営業500万、一般職300〜400万、事務300万くらいか。監理団体は『非営利団体』だから営業は禁止されているが、企業に対する営業はどこもやっている。非営利の監理団体に売上はないが、資金収入は年14億円、資金残高は年3000万円程度。この辺の数字が監理団体としての資金収入の上限だろう」
――監理団体をめぐるカネの流れはどうなっているのか?
「入国前のカネの流れから話そう。まず監理団体は加入企業から入会費、年会費をもらう。相場はピンキリだが、それぞれ1〜10万程度。これは大した額ではない」
「大きいのは初期費用だ。監理団体は企業から実習生一人当たり30万円程度の初期費用をもらう。内訳は紹介料8〜10万円、入国前の費用6万円、実習生の渡航費6万円、入国後の費用13〜14万円といったところか。しかし、ここには裏がある。実は、入国前の費用と渡航費は実習生が借金で払っているから、これらは監理団体がピンハネしているわけだ。実習生は基本的に3年で帰国するので毎年3分の1の実習生を入れ替えることになるが、実習生を一人入れる度に毎回20万円以上の利益が入ってくるということだ」
――入国後のカネは?
「そこが一番儲かる。最大の収入源が管理費だ。これは技能実習の期間中、監理団体が企業からもらう費用で、実習生一人当たり毎月3〜5万円程度。たとえば管理費が4万円だとすると、実習生300人で毎月1200万、500人で2000万、1000人で4000万。うちは3000人いたから、管理費だけでも毎月1億2000万入ってくる計算だ。もっとも管理費は監理団体から送り出し機関にも月5000〜1万円ほど支払われている」
「非正規ルート」で行われる小遣い稼ぎ
現在、技能実習生は32万8360人。一人当たりの監理費が4万円だとすると、日本全体の監理費の総額は1か月で131億3440万円(1年で約1576億円)、監理団体は1か月で平均505万円(1年で約6060万円)の監理費をもらっている計算になる(監理費の総額を監理団体数2600で割った)。
しかしこれらは正規ルートのカネの流れだ。営利活動が禁止されている監理団体は抜け道も作っているはずだ。
――非正規ルートのカネの流れはどうなっているのか?
「それもある。海外出張の際、実際は送り出し機関に払わせた経費を領収書で落とすとか、監理費名目で送り出し機関にカネを渡して後からもらうとか、そういう小遣い稼ぎはどこでもやっているだろう」
それ以外にも、監理団体が送り出し機関からキックバック(謝礼)をもらっていたり、実習生が失踪した場合に賠償金(保証金)をもらう裏契約を交わしていたことが報道されている(『朝日新聞』8月19日、10月8日など)。
技能実習制度には、監理団体という「仲介業者」が組み込まれている。そこから構造的な搾取が生まれているのだ。
業界用語「エア監査」とは何か
――次は監理事業について聞きたい。結局、監理事業は儲かるのか?
「それがそうでもない。事務所の家賃・通信費・人件費などの固定費に加えて、海外出張費・実習先への巡回訪問費・書類申請費など、とにかく経費がかかる。特に最近は行政の締め付けが厳しくなり、どこも厳しい」
「役員は知らないが、少なくとも職員は大変だ。年収は先ほど言った通り、それほど高いわけではない。それに対して仕事量は膨大だ。何より書類関係の業務がバカにならない。ビザの申請・更新、入管や外国人技能実習機構(OTIT)への書類提出、企業から毎月上がってくる賃金台帳の審査など、とにかく書類の処理に追われている。実習生一人当たり数十センチの書類を作らなければならない。うちの場合は職員100人のうち、30〜40人程度は書類関連業務で、5000万円のデータ管理ソフトを導入しなければ間に合わなかったほどだ」
――実習生のトラブルが後を絶たないが、監理団体の実習生に対するサポートはどうなっているのか?
「まず確認しておきたいのは、実習生は監理団体に所属しているわけではないということだ。送り出し機関や受け入れ企業は実習生と契約を結んでいるが、監理団体は彼らと契約しているわけではない。監理団体は送り出し機関と受け入れ企業と契約して、実習生に対するサービスを提供しているだけだ」
――しかし監理団体は国から許可を受けた団体でもあり、技能実習制度の監理事業に責任を負っているはずだ。
「そこがややこしいところだ。たとえば1年目の実習生に対しては1か月に1回の訪問、2年目以降の実習生に対しては3か月に1回の監査が義務づけられている。しかし、小さい団体では人手が足りず、実際に訪問しないで書類だけで済ませる場合が多い。監理団体の中では『エア訪問』『エア監査』という言葉が使われている。賃金台帳の審査でも過払い・不払いなどのミスが目立つが、ちゃんとチェックしておらず、ミスに気づいていないところも少なくないだろう」
「ハンコ貸し」で作成される申請書類
この点について、事情に詳しい行政書士に確認した。
「行政書士が仕事として監理団体の書類作成を代行することはあります。監理団体の認可申請書を作成したり、監査報告書を作成したり。『エア監査』の書類を作成しているところもある。中には送り出し機関や監理団体が作成した書類に行政書士がハンコを押すだけの『ハンコ貸し』を行っているところもあるそうです」
――行政はこのような問題に気づいていないのか?
「そりゃ気づいていますよ。しかし行政にとって『事実』とは『書類』なのです。書類さえしっかりしていれば、それは事実です。もちろん行政も『エア監査』などに気づいているでしょうが、実態調査に乗り出すことは絶対にない。そんなことをしたら問題が山ほど出てくるのは目に見えていますから。わざわざ自分から面倒事を引き起こして、自分たちが技能実習制度を監督できていない事実を明るみに出す必要はない。問題が起きれば認可を取り消すだけです。仮に行政が実態調査をやる気になっても、人手が足りなくてできないでしょう」
監理団体は監理事業を適切に行っていない。だが、2019年10月現在、監理団体に対する行政処分は認可取消3件、業務停止命令0件、改善命令3件しか公表されていない。現在、2017年に設立された国の認可法人「技能実習機構」(OTIT)が監理団体を監督しているが、その実態を取り締まれているとは思えない。
監理団体の買収?
最後に提起したい問題は、監理団体の不可視性だ。監理団体の実態は外から見ているだけでは分からない部分が多い。監理団体は社会的に「見えにくい」存在なのだ。監理団体の監督機関であるOTITはその実態を把握できていない。マスコミもその実態には迫れていない。実習生の支援者もそうだ。
ある支援者は「所属先の監理団体に連絡しても最初から電話がつながらない、一度つながってもその後はつながらない。本社を訪ねても雑居ビルの一部屋で、社長と事務員の二人しかいなかったりする」と語った。
また実習生を支援するNPO法人の代表は「北関東の監理団体を回ったが、私が訪ねたところは半分が無人だった。事務所はマンションの一室だったり、元パチンコ屋だったり、いろいろだ。ただでさえ監理団体の実態は分かりにくいが、近頃は監理団体の買収が行われることもあり、分かりにくさに拍車をかけている」
監理団体の買収? どういうことか。前出の元職員に聞いた。
「監理団体の買収は少なくない。買主は企業や送り出し機関。監理団体に仲介手数料をとられたくないから、自分の監理団体を欲しがるわけだ。企業の中には監理団体の認可が取り消された場合の予備として、別の監理団体を用意しておくところもある。当然ながら監査される側の企業と監査する側の監理団体が一体になっているところでは、実習生の問題は発覚しづらくなる。最近では人材派遣会社が監理団体を買収して、技能実習制度に参入するケースが増えている。送り出し機関による買収は中国やベトナムが多く、外国人が代表を務める監理団体も増えている」
監理団体は外から様子が窺えない「密室」になっている。この「密室」の中で月130億円以上、年1500億円以上ものカネが動いているのだ。そして、「密室」に閉じ込められた実習生が苦しんでいるのである。
すべての監理団体を一概に悪者扱いするわけではないが、監理団体の在り方に修正が必要なのは誰の目にも明らかである。
<取材・文/月刊日本編集部>
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