外国人研修制度で来日した中国人技能実習生が、茨城県潮来市の金属加工会社で実習中に死亡したことについて、鹿嶋労働基準監督署は2日、違法な長時間労働による過労死として労災認定する方針を決めた。外国人研修生問題弁護士連絡会によると、外国人実習生が過労死で労災認定されるのは初めて。
同労基署によると、労災認定されるのは、潮来市の金属加工会社「フジ電化工業」で勤務し、08年6月に心不全のため社宅で死亡した蒋暁東さん(当時31歳)。遺族側が昨年8月、労災申請した。
同労基署によると、蒋さんは05年に研修生として来日。死亡直前の08年3〜5月には、1カ月に最大で98時間の時間外労働をしていたことが確認された。
同労基署は、同社が長時間労働をさせていたほか、虚偽のタイムカードに基づく賃金台帳を作成したうえ、台帳を破棄したり、残業代不払いなどもあったとして、代表取締役(66)を労基法違反の疑いで2日、水戸地検土浦支部に書類送検した。
毎日新聞の取材に対し代表取締役は「死亡前の08年4月にも健康診断を受けさせ、注意をしていた。時間外労働も本人の要請に基づくもので労災とは考えない」と話している。
遺族側代理人の指宿昭一弁護士は「研修生の労災は、遺族と連絡がとれず申請が困難。今回の事件は氷山の一角だ」と指摘した。【岩本直紀】
◇来日中死亡 08年度は34人
外国人研修制度は、日本の技能習得を支援する制度として81年に創設。1年の研修を経て技能実習生となり、最長3年の滞在が可能。入国管理局の08年末統計によると、同制度を利用した外国人は約8万7000人で、うち中国人が約6万5700人と最も多い。
しかし今月の改正入管法施行までは、研修の1年間は労基法が適用される労働者として扱われなかったこともあり、低賃金や長時間労働などが各地で問題化。労働基準局監督課によると、08年には受け入れ機関に対し2612件の是正指導を行った。
財団法人「国際研修協力機構」(JITCO)によると、来日中に死亡した外国人研修生や実習生は、08年度には過去最高の34人。うち長時間労働が原因とされる脳・心疾患は16人で、前年度と比べ2.5倍以上増えた。
外国人研修生問題弁護士連絡会には過労死の相談が相次いでいるが、本国にいる遺族が日本での勤務実態を把握していない場合が多く、労災申請自体が難しいという。蒋さんのケースは死亡直前、中国の家族に「休みが取れずつらい」と電話で訴えていたため、申請できたという。【杣谷健太】