<埼玉の私立高>「教員の偽装請負」と非常勤講師が提訴

毎日新聞 3月4日


埼玉県深谷市の私立正智(しょうち)深谷高校(渡辺達治校長)の非常勤講師だった20代の女性が4日、違法な偽装請負で働かされたとして、同校側などに正規職員としての地位確認と未払い賃金約450万円の支払いを求め、さいたま地裁熊谷支部に提訴した。私立高校などの教育現場で派遣や請負など非正規で働く教員が増えているが、原告側弁護士によると、偽装請負を巡る提訴は初めて。
 
訴状などによると、女性は10年4月、学校を運営する智香寺(ちこうじ)学園と人材サービス会社イスト(東京都渋谷区)の結んだ業務委託(請負)契約に基づき、イストと契約を結び同校で勤務を始めた。本来、請負契約では勤務先から指揮命令を受けずに働くが、女性は学校側からテスト作成を指示され出退勤を管理されるなど指揮命令を受け、1週間で16コマ(1コマ50分)の授業をするなどしていた。
 
女性は業務請負のため雇用保険など社会保険もなく、イストに学園が支払った年約314万円のうち、受領したのは額面で約172万円。学園とイストは12年9月、女性の雇用を巡り労働者派遣法違反があったとして東京労働局から是正指導を受けている。
 
女性は「直接雇用の講師と同じ仕事をしているのに偽装請負という違法行為で働かされ賃金の45%をピンハネされた。こうした働かされ方が教育の現場に広がることを阻止したい」と話した。智香寺学園は「訴状も見ておらず担当者もいないのでコメントできない」と話している。
 
全国私立学校教職員組合連合が昨年590の私立高校を対象にした調査では、少なくとも35の高校で140人の派遣や請負の講師がいることが判明している。【東海林智】

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