取材に応じた元作業員の男性。東京電力福島第1原発の過酷な労働環境を打ち明けた=東京都内で(写真省略)
事故発生から11日で2年になる東京電力福島第1原発。現場には今も放射線量が高い場所があり、配管からの汚染水漏れや作業員の負傷が後を絶たない。昨年10月まで同原発で働いていた東京都内の男性が取材に応じ、作業員が置かれている苛酷な状況を明かした。
男性は30代前半で、昨年1月から1次下請け会社の社員として、放射線管理業務に従事していた。作業拠点の免震重要棟脇のプレハブで、出入りする作業員のかっぱを脱がせたり、長靴の放射線量を測ったりしていた。
現場では元請け会社の社員と同じ班で働いた。自分の雇用主ではない元請け会社から直接指示を受けると違法だが、こうした「偽装請負」が横行していたという。男性は「逆らうと次の契約に響くので黙って働くしかない。元請け社員は立場が強く、王様みたいだった」と振り返る。
福島県いわき市にある宿舎との往復を含め、1日12〜13時間拘束され、日給は1万円程度。残業代などを入れても手取りは月16万円余りで、もらえるはずの危険手当は支払われなかったという。
仕事中、作業員から受け取ったかっぱに汚染水が付いていたり、使い回しの長靴に穴やひび割れがあるのを見たことも。屋内でも毎時数十マイクロシーベルト被ばくしていたが、「そこで食事したり、マスクをせずに寝転がったりすることが当たり前になっていた」。働いた10カ月間で、被ばく線量は計20ミリシーベルトになった。
勤務先は昨年10月末、元請けに契約を切られた。その影響で男性は翌月解雇された。「元請けに気に入られないと長期契約につながらない。住む場所にも困り、友人宅や漫画喫茶を転々とした」と話す。
男性は元請け会社に直接雇用などを求め、東京都労働委員会に救済を申し立てた。生活費は失業給付でしのいでいる。「原発の仕事をしていると『体をちゃんと考えなよ』と言われるが、飯が食えなくなったら結局体調が悪くなる」と話し、立場の弱い労働者にしわ寄せが行く現状の改善を訴える。