最低賃金、各都道府県で決定へ
□最低賃金、東京・神奈川1000円超え 全国平均901円に
日本経済新聞 2019/7/31 5:23 (2019/7/31 9:34更新)
〔写真〕最低賃金の引き上げ額の目安を決める中央最低賃金審議会(30日、東京・中野)
中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は31日、2019年度の全国の最低賃金の目安を27円引き上げて時給901円にする方針を決めた。三大都市圏は28円上がり、東京都と神奈川県は初めて1000円を超える。大阪府は964円となる。引き上げ額は過去最大となった。持続的に賃金を引き上げるには、企業の生産性向上が課題だ。
〔グラフ〕最低賃金の引き上げ続く https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXMZO4800040031072019I00001-PN1-3.jpg?auto=format%2Ccompress&ch=Width%2CDPR&fit=max&ixlib=java-1.1.1&s=7d129ce71365ddc107539729bce4f359
最低賃金は法律で支払いを義務づけた最低限の時給を指す。経営者と労働者の代表に学者を加えた公労使で構成する審議会が年1回、引き上げの目安を決める。この目安をもとに各都道府県で議論し、10月をメドに改定する仕組みだ。政府が19年度の経済財政運営の基本方針(骨太の方針)で「より早期に全国平均で1000円を目指す方針」を明記したのを受け、引き上げ額に注目が集まっていた。
今の最低賃金は全国平均874円だ。今回示した27円という引き上げ目安は18年度を1円上回る。目安額は地域の経済力などに応じてA〜Dの4つに分類して提示した。東京や神奈川などAランクは28円、茨城や京都などは27円、北海道や群馬などのCランクと青森や鹿児島などDランクは26円とした。
最も高い東京都は目安通り引き上げた場合、1013円になる。神奈川県は1011円だ。Dランクの引き上げ率は平均3.4%と4グループで最も高くなる。
審議会は30日午後2時に始まり、31日午前4時40分まで徹夜で議論した。地域間格差の縮小と全国平均1000円を目指すという政府方針が議論の軸となるなか、労働者側は全ての都道府県で800円以上になるよう主張した。
経営者側は中小企業の経営環境は厳しい状況にあるとして大幅な引き上げに反対だった。生産性の向上に見合った賃上げになっていないとの不満が強い。最後は引き上げを認める形で決着した。
目安通りに引き上げた場合、17県が最低賃金800円を下回るものの、31日に記者会見した連合の冨田珠代総合労働局長は「格差拡大に一定の歯止めがかかった」と評価した。一方、日本商工会議所の三村明夫会頭は「中小企業の経営、地域経済に及ぼす影響を懸念する」とコメントした。
政府は16年に最低賃金を3%程度引き上げる目標を掲げ、3年連続で達成した。19年6月にまとめた骨太の方針では3%超の賃上げを促してきた。今回の引き上げ目安は平均で3.1%となり、厚労省は「骨太に沿った目安」としている。
〔表〕目安通りに引き上げた場合の最低賃金額(各都道府県)https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXMZO4800050031072019I00002-PN1-5.jpg?auto=format%2Ccompress&ch=Width%2CDPR&fit=max&ixlib=java-1.1.1&s=341949acfd2b50e8b87233c1f1b1b7a6
□関西の最低賃金上げ幅最大、大阪964円 京都909円
日経新聞 経済 関西 2019/8/6 6:55
関西4府県の各地方最低賃金審議会は5日、2019年度の最低賃金(時給)を答申し、引き上げ幅は大阪と兵庫が28円、京都と和歌山が27円となった。それぞれ過去最大の上げ幅で、兵庫と和歌山は中央審議会が示した目安を1円上回った。滋賀は議論がまとまらず、同日予定していた答申を7日に延期した。4府県の最低賃金は10月1日に適用予定だ。
画像 関西6府県の最賃答申額
大阪は964円となる。5年連続で20円以上となり、この間の上げ幅は126円(15%)に上る。審議会の服部良子会長(大阪経済法科大学教授)は「労働者側の代表からは非正規労働者の賃金水準の低さ、使用者側からは中小企業の負担感の大きさが指摘され、審議は簡単ではなかった」と議論の紛糾をにじませた。
京都は909円と、900円台に乗せた。審議では使用者側から「府北部では廃業に追い込まれる中小も出ている現状を認識してほしい。下請けの価格転嫁の後押しや使い勝手のいい助成金制度などが必要」との指摘があった。
兵庫は899円。昨年度に続いて目安を上回った。審議会の梅野巨利会長(大阪商業大学教授)は「中小から『限界』と悲鳴が聞こえているとの意見もあり、目安プラス1円はギリギリ妥当な金額だ。労働者側から大阪に少しでも近づきたいとの声があったが、近隣府県との差をこの場だけでは解決できない」と語った。
同様に目安を上回った和歌山。審議会の冨山信彦会長(弁護士)は「大阪などとの賃金格差をなるべく抑えたいという意向が反映された」という。
りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「昨年度後半から企業収益は悪化し、消費増税の悪影響が中小企業に大きく及ぶことを考えれば、10月からの大幅な引き上げは最悪のタイミングだ」と指摘する。パートやアルバイトは扶養者控除などを想定して働くケースが多く「就業時間を減らす動きが出ると、人手不足にも拍車がかかる懸念がある」とみる。
これまで省力化などに取り組んだ企業は多い。東大阪市のバネを手がける企業の社長は「残業削減、休日取得推進など『働き方改革』を追い風にして人件費抑制を進めるしかない」と話す。
□最低賃金 初の900円超
朝日新聞デジタル 2019年8月6日09時28分
京都府内で働く人の最低賃金が10月から、現在の1時間あたり882円から27円上がって909円となる見通しになった。引き上げは16年連続で、900円超えは初めて。引き上げ率は、最低賃金を時給で決めるようになった2002年度以降で最も高い3・06%となる。
労使の代表と学者らでつくる京都地方最低賃金審議会が5日、南保(なんぽ)昌孝・京都労働局長に答申した。引き上げ額は16年度から24円、25円、26円と4年続けて20円超。この4年で計102円のアップとなる。
審議会の複数の委員によると、労働者側は20年に最低賃金を1千円に上げるには、今後2年で118円上げる必要があるとして今年度は59円(6・69%)の引き上げを求めた。使用者側は、直近の府内企業の賃上げ率などをもとに、2%程度の引き上げを主張した。
労使間で額の隔たりが大きく、最終的には中央の審議会が京都の目安額に示した「27円」の引き上げに労働側が賛成して決着した。使用者側の委員は5人全員が27円案に反対した。
答申には、最低賃金引き上げで経営が厳しくなる中小、小規模事業者に対して助成金制度を充実させるなど、抜本的で実効性のある支援策を講じるよう国に求める内容も盛り込まれた。
日本の最低賃金は先進国では低水準にとどまっており、参院選でも争点になった。
今回の決定について、府内の最低賃金は「1500円以上が必要」とする京都地方労働組合総評議会の梶川憲議長は「1千円の実現までどれだけ待たせるのか」と、早期のさらなる引き上げを主張する。
一方、審議会の委員で京都北都信用金庫(本店・宮津市)の京崎操専務理事は「産業が活発な京都市と府北部では(経済)格差があり、賃上げで中小企業が廃業に追い込まれる現状がある」と審議会で述べ、中小企業への支援策の充実を訴えた。(佐藤秀男)