リクナビ問題 厚労省が運営会社を行政指導 (9/6)

リクナビ問題 厚労省が運営会社を行政指導
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NHK Web News 2019年9月6日 18時46分

就職情報サイト「リクナビ」の運営会社が学生の内定を辞退する確率を予測し企業に販売していた問題で、厚生労働省は6日、個人情報の管理と扱い方が不適切だったとして運営会社に対し職業安定法に基づく行政指導を行いました。

「リクナビ」を運営するリクルートキャリアは、サイトを利用する就職活動中の学生の内定を辞退する可能性を数値化して34の企業に販売し、およそ8000人の学生については、本人の同意を得ていませんでした。

これについて厚生労働省は、求人サイトの運営会社が集めた個人情報を本来の業務の目的以外に使う場合、本人の同意を得るよう定めた職業安定法の指針に違反していたうえ、学生のサイトの閲覧記録などをAI=人工知能を使って分析し、その後を予測するという情報の扱い方にも問題があったと判断したということです。

また、厚生労働省は、データを購入する契約を結んだ企業についても職業安定法に抵触していなかったか調査を進めています。

この問題をめぐっては先月、個人情報保護委員会が、情報の管理が不適切だったなどとして是正を求める勧告と指導を行っています。

厚労省が指摘した問題点
厚生労働省が今回指摘した問題点は2つあります。

1つは、学生から同意を得ずにデータを販売していたこと。

職業安定法では、求人サイトの運営会社が集めた個人情報を本来の業務の目的以外に使う場合、本人の同意を得るよう定めています。

しかし、リクルートキャリアは、学生から個人情報の提供を受ける際、内定を辞退する確率を予測するという企業向けのサービスに活用することまでは、説明していませんでした。

もう1つは、学生の情報を使って内定辞退を予測し、販売するというサービスを行ったことそのものです。

厚生労働省は、こうしたサービスを学生本人のあずかり知らない形で、採用選考の合否が決まる前に企業に提供することは、学生の立場を弱め、就職活動を萎縮させるなど、学生の不利に働くおそれが高いとしています。

そのうえで、求人サイトなどで集めた個人情報について、運営会社の判断で選別や加工をすることは認められず、本人の同意があったとしても、学生が内定を辞退する可能性を予測し販売するサービスそのものが、職業安定法に違反していると判断しました。
根本厚労相「必要な対応行う」
根本厚生労働大臣は、6日の閣議後の会見で、就職情報サイト「リクナビ」の運営会社リクルートキャリアに行政指導を行ったことを明らかにしたうえで「指導を踏まえた是正状況を注視し、必要な対応を行っていきたい」と述べました。

そのうえで「就職活動中の学生を不安にさせたり、萎縮させたりしないよう、業界団体に対してもみずからの問題として受け止めてほしい」と述べ、同様の問題が起きないよう求人情報サイトを扱う業界団体に対して個人情報を適切に扱うよう求める要請文を出したことを明らかにしました。
運営会社「改善取り組む」
厚生労働省から職業安定法に基づく行政指導を受けたことについて、リクルートキャリアは「学生や企業、それに大学の関係者など、皆様にご心配とご迷惑をおかけし誠に申し訳ありません。今回の指導を厳粛に受け止め、このような事態が再発することのないよう経営と従業員が一丸となって改善に取り組みます」というコメントを出しました。
企業「合否判断に使用せず」
リクルートキャリアによりますと、内定を辞退する可能性を予測するデータを購入する契約を結んでいた38社のうち、実際にデータの提供を受けていたのは34社で、このうち、NHKの取材に対して、これまでに回答が得られた20の企業は、いずれも「採用選考の合否の判断には使用していない」と回答しています。

また、データを購入した目的については、内々定者や内定者へのフォロ−が10社と最も多く、次いで選考前や選考中の学生に対するフォローが7社などとなっています。

具体的には「採用担当者の数が十分でないため、データを利用して辞退させないように対策をとる学生を絞ることで、効率のよいケアができると考えた」とか「内定を出す前に、辞退する確率が高く出た学生にリクルーターをつけるため」などと説明しています。

このほか「採用活動にAI=人工知能が技術的に使用できるのか検証するため」と説明した企業もありました。
大学生「気持ちのよいものではない」
この問題で、サービスの対象となっていた大学生のなかには不信感を募らせている人もいます。

都内の大学に通う4年生の大学生は、リクナビをはじめ複数の就職情報サイトを利用しておよそ30社の採用選考にエントリーし、その後、内定を得てことし7月末に就職活動を終えました。

その数日後に、問題が発覚しました。

大学生は、ニュースで知った時のことを振り返り、「最近はビッグデータも話題になっていて、内定辞退に関わる予測もしているんじゃないかという疑いは以前から持っていたので、やはりそれが現実に行われていたのかと、正直余り驚きはありませんでした」と話していました。

しかし、先月下旬になると、大学生のもとにリクナビの運営会社から謝罪のメールとともに、サービスの対象となっていたかどうかを確認できる専用サイトのURLが送られてきました。

URLをクリックするとログイン画面が表示され、IDとパスワードを入力すると、「サービスの対象に含まれていました」と表示され、大学生は自分のデータが企業側に提供されたことを初めて知りました。

さらに、エントリーした企業の中に、データの提供を受けた企業があるかどうかインターネットで調べたところ、少なくとも1社が提供を受けていて、大学生はこの企業の採用選考を通っていませんでした。

提供をうけた企業側は、いずれも「採用選考の合否判定にデータは使用していない」としています。

しかし、大学生は、今も判断の一つとして使われたのではないかという疑いをぬぐえず、「では何のためにデータをもらったのかという話になりますから、全く使っていないというのは少し無理があると感じます」と不信感を示していました。

そのうえで、「同意を得ずに販売されたことも問題ですが、妥当なものなのかどうか分からないデータで、判断されることは気持ちのよいものではありません」と話していました。
専門家「新たな仕組み作りを」
個人情報保護やAI関係の法務に詳しい杉浦健二弁護士は「学生にとっては、リクナビへの登録を大学のキャリアセンターから勧められるなど、採用活動でリクナビを使わざるをえない状況にある。学生は、仮に個人情報をサービスに使用することを明記されていたとしても、断れなかった可能性もあり、こうした実情があること自体、問題だと思う」と話していました。

そのうえで「あくまで内定者のフォローに使用し、合否の判定には使用していないとしているが、採用の過程で情報のやり取りをしていることからも、辞退率が高いというデータが出た学生を採用の途中で落とすというようなことが行われていたとしてもおかしくないと思う。学生が安心して就活に取り組むためにも、どのように個人情報を使うのか、どこまでなら使用していいのかなど、新たな仕組みやガイドラインが必要だ」と指摘しました。
 

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